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銀河最強! 越えるぜ限界!

地球戦隊ファイブマン』感想・第40話

◆第40話「少年魔神剣」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:渡辺麻実)
 古式に則りザゼーンを組むビリオン目がけて飛来した一振りの剣、それは、銀河魔神剣サーベルギン!
 「ふふふふふふふ……相変わらずいい腕ですな、ビリオン様」
 伝説のマジックアイテムの類かと思ったら、喋る剣(ドラゴン系の顔付き)が、そのまま銀河闘士(魔神)扱いは、意表を突かれました(笑) ……ネーミングセンスからはお馴染みバード星の関与を窺わせ、元来はなにがしかの実験生物兵器であったのかもしれません。
 「銀河魔神剣サーベルギン! おまえの力を借りる時が来た」
 「銀河魔神剣を手にするもの、己であって己でなし。よろしいのですか」
 「ふん、承知の上だ!」
 神に逢っては神を斬り魔物に逢っては魔物を斬る、銀河魔神剣を手にしたビリオンの瞳が紅く輝く一方、街でチンピラに絡まれていた家族を助けたのが縁で、学兄貴は青空剣道教室で子供達に剣の道を教えていた。
 「練習次第で、誰でも強くはなれるさ。でも剣道に強くなるだけじゃ、本当に強くなったとはいえないんだ」
 「本当に強くなる?」
 「ああ。腕よりここだ。心を鍛える事。心が強ければ、どんな事にも立ち向かえる」
 学に憧れるあまり、「もっと強くならなくちゃ……力をつけなくちゃ駄目なんですよ!」と倒れた相手にも竹刀で打ちかかる「まなぶ」少年を諭す学だが、そこに奇襲をかけてくるビリオン!
 「甘いわ! 強くなる為に心など必要ない!」
 ビリオンは巨大な魔神剣(率直に取り回しが悪そう)を振り回し、弟妹に子供達を逃すよう指示した学は、華麗な真剣白刃取り。
 「ふふはははは、あーひゃはははは!」
 口の端から涎でも垂らしていそうな勢いで笑いながら剛剣を振るうビリオンは、じわじわと学を追い詰めていき、剣道着姿の学が跳んだり跳ねたり転がったりする大サービス。
 「戦え! 俺と戦え! そうすれば俺はもっと強くなれる!」
 「ビリオン! 魔剣に魅入られたか!」
 光線技をかわした学兄貴は、回転飛びでビリオンの背負った剣を抜き取ると、振り向きざまに魔神剣を弾き飛ばす格好いいアクションを見せるが、ビリオンの手を離れた魔神剣があろう事か、戦いを見つめていたまなぶ少年の足下に転がってしまう。
 「この剣を持てば、強くなれる!」
 強さに執着するまなぶが剣に手を伸ばして魔神まなぶが誕生すると魔剣に操られるままに学へと襲いかかり、魔神剣は、顔部分の目がぎょろぎょろ動くのが、秀逸な造形。
 魔神剣の凄まじい力の前にファイブマンは揃って崖落ちし、戦えば戦うほど強くなる魔神剣に力を蓄えさせる為にはむしろ好機、とビリオンはまなぶを利用する事を思いつくと、そうだ、辻斬りしよう。
 さすがに少年による直接の刃傷沙汰は控えられて水飲み場や自転車が次々と刀の錆になり、無機物でも経験値は上がるのか銀河魔神剣?!
 とにかく戦闘回数をこなす事が重要なのだ、と範囲攻撃で爆発を撒き散らしたところで駆け付ける星川兄妹。
 (ゆけ! あいつらも叩っ切れ! そうすれば俺はビリオン様を、最強の剣士に出来る)
 「学! 剣に惑わされるな!」
 「うるさい! 俺はもっと強くなるんだ!」
 少年はすっかり剣と同調して5人に襲いかかるが、なんとか正気を取り戻させようと学は決死の説得を続け……そういえば、表のジョブが教師なので、《説得》や《交渉》にスキルポイントを振ってあるのでした。
 「本当の強さは、剣に強くなる事だけじゃない! 思い出すんだ!」
 「本当の強さ……」
 「迷うな坊主! おまえは今、銀河最強の剣士だ!」
 だが魔神剣はまなぶの心を巧みに操り、強さを求めるあまり邪悪な力に溺れてしまうド定番のストーリーラインなのですが、台詞回しと造形の光る魔神剣が随所でいい味を加える事で面白さが出ています。
 「俺はまだ、あの子に本当の強さを教えていない。今がその時かもしれん!」
 ……だったのですが、赤が捨て身の突撃から体当たりで説得すると問題解決、はセオリーをそのまま当てはめただけになってしまい、ファイブマンならでは、星川学ならでは、といったもう一工夫が無かったのは残念。
 全体としては“教師と教え子”の構図に収められているのですが、3クールを経た上で、その蓄積を活かした飛躍がこれといって無いのは、物足りない部分でした(作風なのか、脚本陣の役割分担なのか、渡辺脚本回は意識的にオーソドックスに徹していそうな節はありますが)。
 まなぶ少年は魔神剣から解放されるが、辻斬りのパワーをたくわえた剣は自らビリオンの手に戻ると驚愕の合体をし、誕生するゴールデンコンド……じゃなかった、サーベルビリオン。
 ……どうせなら、合身銀河剣士ビリベルギンにでもなってくれれば応援のし甲斐があったのですが。
 「勝負だ、ファイブレッド!」
 「数美、まなぶを頼む!」
 角張ったアーマー姿となったビリオンの攻撃を受け、またも折られるVサーベル。青からレンタルした剣で赤は反撃に転じ、ビリオン自身はそこまで嫌いではないのですが、なにぶん赤との因縁は藁半紙よりも薄いので、一騎打ちしても盛り上がりに繋がりません。
 「剣に心を売り渡した奴に、負けるわけにはいかない!」
 「銀河魔神剣、俺に最後の力を!!」
 OPの剣道要素がそこはかとなく拾われ、ごくごく普通に赤に敗北したスーパービリオンは、遂に巨大化。
 よし! 今こそ! マックスマグマの出番だ!!
 ……などという事は勿論なく、辛うじてファイブロボと互角の戦いを演じたスーパービリオンは、超次元ソードの一撃でサーベルギンが両断されると、強化エネルギーを失って元の姿で地面に転がり、特にトドメを刺される事もないまま捨て置かれるのであった!
 「おのれファイブマンめ! お前達を倒せるならこの命、悪魔にくれてやるぜ! うぁぁぁぁぁ! うぉぉぉー!」
 強化の反動か、吐血しながら絶叫するビリオンは、リタイア回ではなくリタイア前振り回となり、まあ今回の一騎打ちのように、盛り上げようとしても因縁が薄すぎる点は懸念通りだったので、強い怨恨を剥き出しにしたのをステップに大輪のラストジャンプを改めて期待したいです。
 前回-今回と、他の幹部陣がほとんど登場せずにビリオンにスポットを集中したのは、初回から登場しながら活躍しきれずにいたビリオンへの配慮も感じますが、宿敵はガロア、最強の敵はシュバリェ、で既に予約が一杯になっているのはつくづく辛いところで、なんとか巧く、満足の行く最期を迎えてほしいところ。
 次回――数美に迫るデート商法の罠。「乙女の怒りが悪を討つ!」(と予告ナレーションで本人が言いました)