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闘いの場所は心のなかだ

ウルトラマンコスモス』感想・第28-29話

◆第28話「強さと力」◆ (監督:市野龍一 脚本:大西信介 特技監督:高野敏幸)
 「怪獣を救うか被害を防ぐか、その選択を迫られりゃ、攻撃はやむを得ない。そういう事だ結局は」
 「でもそれじゃ! アイズがなんの為にあるかわからない! すぐに攻撃をしてしまうのは、ある意味僕たちが弱いからですよ! そう……弱いから。力が足りないから。すぐに怖じ気づいて、攻撃に走ってしまうんだ。もっと強くならなくちゃ……力をつけなくちゃ駄目なんですよ!」
 圧倒的強者なれば、あまねく慈悲の心を与えられよう、というのは一面の真理ではあるのですが(ウルトラ族にそういった側面があるのは皮肉であり)、ムサシの心情としては、どうも、急。
 一応この後、第26話のカオス星人との闘いを回想して大きな動機付けとするのですが、出来ればこの半年の積み重ねを活かしてスムーズに納得させてほしかったところです。
 今作はこの辺りイデア先行の面があって、「怪獣保護」を主題として持ち込んではいるものの、「怪獣保護」とは何かを掘り下げているとは言いがたいので、それに伴う、主人公ムサシのキャラクター性の弱さが出てしまった感。
 ある意味でムサシは、『コスモス』のアイデアを成立させる為に、“変われない”キャラクター――なので例えばテックブースター回でも「かつての夢」との間に葛藤が生じず、「怪獣保護が全て!」しかリアクションが無くなってしまう――だったのですが、そこにいきなり“変化”を投げ込んだ事で、飛躍が激しくなりすぎてしまいました(物語全体が次のステージに進んだ事で、急に「スキルが解放された」ような感じというか)。
 一話完結性の強さと、エピソードのバラエティ性重視で、継続的なキャラクター性は優先順位が落ちるのは、当時の《ウルトラ》シリーズの手法としてはむしろスタンダードだったかもしれませんが、20年後に見ている&直近の『ガイア』が非常に上手く主人公の「変化」を多彩なエピソードと両立させていた作品だったので、引っかかってしまうところ。
 「強くなる事と、力をつけることは、同じだと思うか?」
 「え?」
 「力に頼らない強さもあると思うがな、俺は」
 今回は随所で貫禄を見せるキャップは、暴力だけが全てではない、とムサシを諭すが、筋トレの暗黒面に目覚めてしまったムサシは、鍛え上げた筋肉は恐怖心を消滅させると主張。
 魔境(偽りの悟り)に入り込んでしまったムサシは、肉即是空空即是肉南無上腕二頭筋、と(後ろのドイガキを巻き込んで)毒ガス怪獣に接近すると、粘着弾で毒ガスの噴出阻止に成功。ところが麻酔弾を撃ち込まれた怪獣は、内部に存在していたカオス粒子が活性化して凶暴になってしまい、思わぬ事態に責任を感じるムサシは(後ろのドイガキを巻き込んで)正面突撃を敢行。
 「危険を恐れていたら、何もできない!」
 「怪獣を守るのはアイズの義務だ。だがな、俺には、おまえ達を守る責任がある!」
 今回ようやく、保護推進派のマスコミの取材をきっかけに「怪獣保護」に対するアイズの優先順位が明示され、またチームとしての人命への配慮が描かれ、いずれも常識の範囲内であるのですが、今作は独自の要素として「怪獣保護活動」を掲げているわけなので、それにまつわる行動に関する劇中人物たちによる一線の引き場所についてはやはり、1クール目の内に描いておいてほしかったと思うところです(それこそ軍隊色の強い組織なら、「怪獣撃破」の為にだいぶ後ろの方に一線が引いてある場合の方が多いわけで)。
 最初にそこを物語全体の土台として提示できていれば、その土台からの距離でメンバーの温度差やムサシの特別性なども表現できたと思うのですが、「理想」と「現実」の衝突こそ描いたものの、そこから先は「キャップの思惑通り、みんな何となくムサシの影響を受けました」で済ませてしまった為に、主人公も尖らず、土台の形も曖昧なままになってしまい、それは良く言えば作風ではあるのですが、個人的には多方面で物足りない要因になってしまいました。
 筋肉肉肉肉十八一切煩悩筋肉之種プロティンみんなで摂れば怖くないと、(後ろのドイガキを巻き込んで)毒ガス怪獣に再び粘着弾を放とうとするムサシだが、撃墜されて辛うじてコスモスに変身。
 だが癒やしの波動が怪獣に通用せず、まさかの、オペ失敗。
 (力が……怪獣を守る為にも、必要なのは力なんだ!)
 げしげしと踏まれるコスモスは、ムサシの気迫に応えるかのように立ち上がると(戦闘中の主導権は今ひとつハッキリしないのですが、とりあえず今回はムサシ主体の模様)、コロナにモードチェンジ。挿入歌に乗せて空手チョップから連続で打撃を繰り出し、本体が弱ったところでコロナ熱風責めにより、カオスヘッダーの切除に成功。
 両手が鎌の凶暴なカオス怪獣が誕生して派手な立ち回りとなり、荒ぶる鶴の構えからのコロナバーストでカオス怪獣を撃破するコスモスだが……カオスヘッダー切除の為にコスモスに殴られすぎた怪獣は力尽き、力の加減を誤って救おうとするものを殴り殺してしまう、かなりムサシに厳しい展開。
 「何故だ……何故なんだコスモス!! …………僕が力を……力を求めすぎたのがいけなかったのか?! ……力は……優しさを消してしまうのか?! 返事をしてくれ……コスモス、……コスモスぅ!!」
 夕陽を浴びながら虚しく怪獣の亡骸を抱えるコスモスの姿は印象的な画となり、慟哭するムサシで、つづく。
 構成としては、第26話に出てきたカオス星人がステージ1のボスキャラで、インターミッションを挟んで、今回からステージ2に入った形。
 で、上述したように「今回からステージ2です」を理由に、キャラクターの意識において前回までは見えなかった部分が突然アンロックされたようになってしまい、ステージ1とステージ2の接続(関連づけ)がスムーズにならなかったのが残念ですが、大きな節目として一度限りともいえる大技を放り込んできたので、物語全体の上手いステップアップを期待したいです。

◆第29話「夢みる勇気」◆ (監督:根元実樹 脚本:大西信介 特技監督:佐川和夫)
 前回から気になって仕方がないもの:フブキの触角(前髪)。
 ぶつかり合う、赤と青、二人のコスモス、という不思議なシーンからスタートし、両者の力がぶつかり合ったところで、ムサシは悪夢から目を覚ます。
 「夢を見続ける、勇気か……」
 ムサシの幼なじみとクレバーゴンが登場して恐らくは劇場版で描かれたムサシの過去が拾われ、最近なにかとアヤノ隊員を可愛くしよう派が暗躍しておりますが、序盤の雑な扱いより全然いいと思うので、頑張っていただきたい(笑)
 数千年に一度規模とされる大規模な皆既日食を前に、観測態勢を強化する宇宙開発センターでは、重力場の異常を感知。その波形がカオスヘッダー反応と一致した事から、それはカオスヘッダーの通路なのではないか、と推測されるが、その検討中にカオス毒ガス怪獣が再び出現。
 いきなりカオスで腐食ガスを吐く怪獣にどう対処するかを悩むアイズだが……毎度の事ながらこの人達はどうして、飛行機で怪獣の目の前まで飛んでいってから、作戦を悩むのか(笑)
 そもそも、カオスヘッダー分離の研究とか進んでいる節が無いわけですが……冷静に振り返ると、テックブースターの予算の使い方が間違っている感と、どうしてアイズが運用を任されてしまったのか感。
 この辺り、もう少し色々な対策や研究を進めている様子を端々で出してくれると、諸々の説得力がまた変わるのですが、「現実」をどうやって「理想」に近付けようとしているのか、の描写が不足しがちなのは勿体ないところ。
 別行動だったムサシはコスモスに変身するとカオスヘッダー切除を図るが、またもオペに失敗。前回の反省から、今度はじっくり麻酔をかけてから再挑戦しようとするが、眠ったと思われた毒ガス怪獣が、なんとカオス星人に!
 残りエネルギーの少ないコスモスはコロナ発動に失敗し、毒ガス怪獣に擬態する事で、手術にこだわるコスモスの消耗を狙うカオス星人の卑劣な罠にはまって大ピンチ。滅多打ちをうけるコスモスは、捨て身の秘拳で相討ちに持ち込もうとするも、半透明のふにゃふにゃしたスライムのような姿になってしまい、ムサシと分離。
 「コスモス……もう、僕を……必要としていないのか?」
 変身ステッキは石に戻り、倒れたムサシの眼前でコスモスは消滅し……秘密を知るものはローストチキンにされて強制送還されないだけ良心的といえますが、まさかの二話連続の敗北(1回目は、怪獣は倒しているが、コスモスとしての敗北だったのは、お見事)で、つづく。