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『アギト』最終盤

仮面ライダーアギト』感想・第46-47話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第46話「人に残されたもの」◆ (監督:金田治 脚本:井上敏樹
 「もういいじゃありませんか。俺たちはアギトじゃなくなったんです。ただの人間として、みんな勝手に生きていけばいいんです」
 アギトの力を黒の青年に奪われた、否、奪わせた翔一の捨て鉢な台詞がなかなか面白く、アギトの縁で知り合った者達が、その力を失ってただの人間になった時、みんな勝手に生きていけるのか? むしろ、力を失った時に、残ってしまうものこそが、ただの人間である事の意味なのではないか、という示唆はクライマックスに繋がる事に。
 「ねえ、これからどうするの?! 誰がアンノウンと戦うわけ?! ……今のままじゃどうしようもないじゃない!」
 「……そう。今の我々はただの人間だ。どうする事もできない。津上が言うように、それぞれ自由に生きていけばいい。……我々を繋ぐものは、もう何もない」
 「……出来ないな俺には。ようやく見つけた絆だ。津上を放っておくことは俺にはできない」
 様子のおかしい翔一を気にする涼は、ヤマアラシアンノウンに襲われる真魚を助け、木野と真島はそこに集い、ヤマアラシの攻撃から真魚をかばった翔一には、人体を溶かし去る針が突き刺さる!
 「津上……俺は、アギトである事に飲み込まれてしまった人間だ。だがそれはアギトのせいではない! 俺という人間が弱かったからだ。俺は、自分の弱さと戦う。おまえも負けるな!」
 木野はその場で緊急オペを開始し、問題なのはアギトの力ではなく、それを受け止める人の心なのだ、と木野さんが辿り着くのは感慨深く、そこに真島くんが居るのも、手堅い。
 追い詰められた涼と真魚を救うも、視力の異常から苦戦を強いられるG3-Xだが、何故か病院に付き添っていた北條さんがトレーラーに飛び込んでくると的確なアドバイスを送り、G3ユニットにずっと足りなかったものを、埋めた……!
 G3-Xがワシを葬ったのに続き、復活した翔一くんがヤマアラシを轢くが、そこに現れる黒の青年。
 「残念です。あなたたちの命を、奪わねばならない」
 「……翔一くん戦って! もう一度、アギトとして戦って!」
 生身で突撃した翔一のパンチは届かないが、G3-Xのガトリング砲が火を噴き、その弾幕の中に突っ込むようにして放ったパンチが、結界を貫いて顔面に直撃。リバースされたアギトの力を取り戻した翔一・諒・木野は、連続変身からの連続キックでヤマアラシを撃破し、黒の青年はショックのあまり姿を消すのであった……。
 “この世”で翔一君を“許せる”のは真魚ちゃんだけなので、真魚ちゃんに許された事で(沢木哲也としての中身を取り戻した)翔一くんが再びアギトとして戦えるようになる、のは構造としては納得がいく一方で、「失ったヒーローの力を取り戻す」に際しては、“見知らぬ誰か”の為に立ち上がってほしかったところはあって(それはどちらかというと、氷川や涼に割り振られたポジションではありますが)、納得感と物足りなさの同居する復活劇でありました。
 今作における、聖→俗へのベクトルを考えれば、その俗が極まったところでヒーローの喪失と復活が描かれるのは必然とはいえますし、真魚ちゃんの存在こそ、翔一くんにとって「ただの人間として、みんな勝手に生きていけ」ない事の証左でもあり、個人的にやや盛り上がりのツボと外れていたところはあるものの、積み重ねてきた「ヒーロー」性を剥ぎ取った時に、そこに残った「人間」性を炙り出すのは井上敏樹らしい話作りで、そこに残り話数で、「ヒーロー」として何を乗せてくるのか、期待したいと思います。
 あと、前回取り沙汰された真魚父の問題点がなぁなぁ流されたのは引っかかったところですが、風谷教授もまた、「アギトに飲み込まれてしまった人間」の一人ではあったといえましょうか。
 「俺、やっぱり医者を目指してみようかなって」
 「そうか。おまえなら出来る」
 そして木野に憧れてきた真島が、再び自らと向き合う事を決める事で、木野さんからの魂の継承が描かれるのは、好きな流れ。真島を激励する木野だが、ワシアンノウンの頭突きにより大きなダメージを受けており、その身体はゆっくりとソファに沈みこみ、その魂はあの雪山へ還っていくのだった……で、つづく。

◆第47話「私のG3ユニットが解体される筈がない」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
 翔一に殴られたショックで黒の青年が引きこもり、アンノウン事件の発生が確認されなくなってから一ヶ月――警察上層部はG3ユニットの運用見直しを宣言して活動を一時休止させ、例によって例の如く、何を言っているのか理解不能、という反応を示す小沢さん。
 基本、天上天下唯我独尊な天才の感性と理屈で生きている人なので、組織内部での立ち回りに縁遠く、ユニット継続のための足場固めとか根回しとか一際せずに、優秀な私の作った優秀なシステムは、未来永劫、人類の為に尊重されて当然である、と思い込んでいるのでしょうが……つくづくG3ユニットに必要だったのは、そこをサポートできる人材です。
 まあ上層部がそこをカバーしようとしないのは、いつでも足切りできるようにする為、とも考えられますが。
 ひたすら畑を耕していた翔一くんは、調理師学校時代の恩師と再会してオーナーシェフを務めるレストランに誘われ、涼は行きつけのバイク屋でアルバイトをしないかと持ちかけられ、それぞれに訪れる、転機と出会い。
 「そうか、記憶を取り戻して、翔一くんも新しい人生を歩み始めるというわけか」
 黒の青年が、一ヶ月溜めた宇宙パワー蠍座のアンタレスを動かす不穏な動きが描かれつつ、嵐の前の平穏が、作風と合致していて痛いほどに爽やか。
 「このところアンノウンも出てこないし、いい感じですよね。ずっとこのままならいいんですけど」
 「そうだな」
 「…………俺、時々、木野さんの事を思い出すんです。木野さん、前にこんなこと言ってました。自分の人生を狭くするのは自分自身だって。本当にそうですよね。だから俺、なんか、うぉぉぉぉ、って感じで頑張ろうって」
 「ああ。きっとあの男も喜ぶだろう」
 木野さんに触れてくれたのも嬉しく、新たな居場所で歩み始める二人。
 働く翔一の姿を外から見守り激励するなど、涼からの友情ゲージがやたら上昇する一方、事件が起きないと全く接触する機会の無い氷川くんとの距離感がシビアですが、いつの間にこんな事に……!!
 まあこれはこれで、ヒーローフィクションの時間が終わりに近付いているのを感じさせて、今見るとちょっと面白くはありますが。
 一方、世間ではドッペルゲンガーに出会った人間が自殺する奇妙な事象が発生。
 「人間という、種そのものに、私は、裏切られたようだ。……もう一度、最初からやり直しましょう」
 沢木の前に現れた黒の青年は、沢木を使徒にした顛末を明かし、ここに来て急浮上する、もしかして:節穴。
 星辰の力を利用した人類粛正の御業が開始され、宇宙パワーのチャージを開始する黒の青年からは、鳥の王様っぽい新たな使徒・風のエルが誕生。
 「ここは聖地。人間の来るべきところではない」
 ……竹藪。
 風のエルが人間が襲う場面を目撃した涼はギルスに変身するが、強化形態も一蹴され、ビルから転落して、つづく。