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彼の救いはどこにあるのか

仮面ライダードライブ』感想・第29話

◆第29話「強盗事件で本当はなにがあったのか」◆ (監督:田崎竜太 脚本:香村純子)
 姉チャン以外の姉属性に惑わされるなんて、俺は自分を許せねぇ! と自分の中の姉信仰を揺さぶられてテンション最悪の剛は、001の元へ来ないか、というブレンの誘いを当然断るとマッハに変身。
 おまえに、姉じゃない女に姉だと偽られた男の気持ちがわかるか?! と一方的にブレンを殴り飛ばすマッハだが、タブレットで謎の画面を見せられると、何故か攻撃の手を止める……。
 「どうだ! 001のところは」
 「実に仕事が捗りますよ」
 「是非その成果をゆっくり聞きたいものだ」
 ハートからの誘いに満面の笑みを浮かべて振り返るブレンだが、直後に脳裏を駆け巡る、メディックとのメモリー
 「…………あの女が居る限り、あなたのところには戻りません!」
 メディックへの嫉妬からハートの元を家出したブレンと、チェイスへの複雑な感情から霧子と顔を合わせづらい剛を重ねる事で、特状課に居場所を見出せなくなった剛の行動に説得力を増そうとしているのですが、剛とブレンでは共通点が少なすぎて、だいぶ無理矢理感。
 剛の孤独を強調するなら、ロイミュードへの憎悪――父への想い――を掘り下げる方が納得しやすいのですが、そこは話の都合でまだ触れられないので……という苦肉の策にどうも見えます。
 そもそもチェイスに関しては、チェイス(の前身)=プロトドライブ=ベルトさんが“利用価値を見出したロイミュード”なので、剛が最初に話をつけるべき相手はベルト野郎だと思いますし、逆に剛に道理を説くべきもベルト野郎だと思うのですが、引き続き「ロイミュードとは何か」の核心に触れない事により、ベルトの理屈も、それに納得できない剛の情念もすっ飛ばされてしまい、剛の彷徨に効果的な説得力を与えられず、それと連動する001からの揺さぶりも、あまり面白く感じられない展開に。
 また、その展開を発生させる為に事の発端であるベルトが心配する素振りも見せないのはもはや諦めるとしても、剛を心配しているどころではない、と半端な対応に終始する霧子と進ノ介の株まで揃って下げられているのは、ちょっと辛い。
 「……どうして仲良くできないんだ」
 ……そして、ハート様ハート様で、ちょっと天然に進化していた(特状課陣営の株価が下落傾向の中、ハート様の株価が上がっていきますね……)。
 世間を騒がせる連続銀行強盗殺人犯の正体が鍵開けロイミュード(十徳ナイフ……?)であり、現場に駆け付けたドライブは、あらゆるロックを解除する……というか鍵のかかる属性を持つ物体を自在に操るトリッキーな攻撃に苦戦。ドアに吹き飛ばされながらの空中タイプチェンジは格好良く、テクニックからワイルドになると力でねじ伏せようとするが、階段から転落した少女を助けた隙に、鍵開けミュードは逃走してしまう。
 事件の犯人――鍵開けロイミュードと融合しているのは、12年前に強盗殺人で逮捕された男、根岸であり、その根岸こそが進ノ介の父親を射殺した人物であった。
 強盗殺人の被害者は、いずれも12年前の事件の関係者であり、真の狙いは、12年前の事件を知る者を抹殺する事。
 12年前の根岸の共犯者・丸谷は、警察の質問に対して「根岸は殺していない」と主張するが、それは12年前の証言とは食い違っており……丸谷の首筋についた傷跡が、父の死体についていたものと同じだと気付く進ノ介だが、その丸谷にも鍵開けミュードの魔の手が迫る。
 「親父……また家族か」
 「本当に……フフフフフ、人間というのは面倒な生き物です」
 鍵開けミュードから真実を聞き出そうと猛るドライブと、それを見つめるチェイスの前に現れたのはブレン、そして、姉信仰に揺らぎが生じ、新たな救いを求める迷える仔羊・やさぐれ剛。
 「彼はもう、三次元を捨てました。私と共に、『ごちうさ』という真の信仰に目覚めたのです」
 ブレンが高々と掲げたタブレットには、仕事もせずにネットサーフィンで集めたファンイラストの数々が!
 ……という事はひとまずなく、マッハは背中からドライブを撃つと、そのまま鍵開けミュードに協力して、ドライブを攻撃。
 「ふざけんな! こんな時に! どいてろ! 俺は親父の真実を知りたいんだ!」
 そんなマッハの態度に、おまえに構っている場合じゃないんだよ! とフォーミュラ発動するドライブの対応が凄まじいですが、剛の彷徨同様に、「進ノ介がそこまで冷静さを欠く想い」の説得力が弱いので、進ノ介父の存在が、数話前に突然生えてきた設定になってしまったのは、つくづく残念。
 「何をしている。人間を守るのが仮面ライダーの使命ではないのか」
 そのままマッハと激突しかけるドライブだが、鍵開けミュードから丸谷を守ったチェイサーに、怒られた。
 「……お前の言うとおりだ」
 …………この、いつの間にか「仮面ライダーの使命」(敢えて言うなら、プロトドライブに施されたベルトさんのプログラムなわけですが……)とやらが虚空から生えてきて、目指すべき理想に設定されるの、(順序は今作が先ですが)『ウルトラマンルーブ』ぽいですね……。
 『ウルトラマンルーブ』(2018)は、ウルトラマンの力を得た兄弟二人が「ウルトラマンとして」とか「それがウルトラマンってもん」とか言い出すものの、では「ウルトラマン」とは何か? についてはメタ的な外部(シリーズ従来作)に丸投げされており、劇中で定義が掘り下げられもしなければ、新しく構築もされず、劇中人物が知る由もない作品外部に存在する理想の「ウルトラマン」が何故か引用されてしまう作品だったのですが、今作における「仮面ライダー」も、物語によってその中身を詰める事よりも、作品の外部にある理想の「仮面ライダーが持ち込まれつつある印象(多かれ少なかれ、長期ブランド作品では発生しうるとはいえますが、その度合いが大きい)。
 後年の作品を踏まえると、恐らく大森Pの悪い癖なのですが、大森P脳内にある「仮面ライダー」像が、『ドライブ』劇中における「仮面ライダー」像として出力されていないにもかかわらず、されているつもりで話を作っているので、話が進むほどに亀裂が広がっていく感じ。
 少なくとも、進ノ介の短慮をひっくり返すには、劇中で積み重ねられたその言葉の持つパワーが弱いのですが、あっさり反省したドライブは、丸谷と霧子を回収し、ライダー組は一時撤収。
 果たして、やさぐれ剛の真意とは? 001の狙いとは? 混迷を深めながら、嫉妬の炎が駆け巡る! そう、「俺のジェラシーが、その男を倒せと言っている」!