『ウルトラマンコスモス』感想・第27話
◆第27話「地球生まれの宇宙怪獣」◆ (監督:市野龍一 脚本:前川淳 特技監督:高野敏幸)
地球に落下した宇宙怪獣の姿がのほほーんと描かれ、とりあえず捕獲しようとするアイズは例の如く失敗し、代わりに怪獣を地上へと引っ張り出すコスモスだが、ユーモラスな動きの怪獣は、なんと妊娠していた。
コスモスはひとまず母怪獣を沈静化し、チームアイズは過去の記録から海で出産する事がわかった怪獣を海まで誘導する作戦を発動し、コスモスらしさを出したほのぼの編としては、悪くないアイデア。
後はもうちょっと、コミカルさを見せる演出が面白ければ良いのですが……どうも今作の、「緩い時は全てが緩くなる」傾向は、苦手なタイプ。
「やったー! 作戦成功!」
「やって、みるもんだな」
基本的にアイズ、「怪獣の保護」か「周辺被害の抑制」か、優先すべき命題を葛藤する描写が不足しているので、住宅地の寸前まで怪獣を引きつけた上で、驚愕の表情を作るキャップには、幾ら緩めの回といっても、笑えるというより引きます。
個人的には、そこをしっかりと掘り下げてこそ、寓意としての「怪獣を保護するとは何か?」が意味を増すと思うのですが、以前にも触れたようにその対となる「怪獣を排除する事」を、従来シリーズに外部委託してしまっているので、パンチが来ないのにカウンターを打つ、みたいになっているのが、今作の物足りない部分。
そういった作品全体の不足と関わる問題もありましたが、地上班が波音で怪獣を誘導し、上昇した体温を降雨弾で冷却し、チームの役割分担を描きつつ、出産と高温化のタイムリミットサスペンスも機能して、話の構成そのものは初参加の前川さんがいい仕事。
チームアイズの連携により成功の近付く作戦だったが、海岸の手前に見物客の集団が集まっているという、思わぬアクシデントが発生し、トラブルの原因を、紋切り型にタチの悪い不良集団などにせず、考えが少し足りないが悪意は全く無い人々、としたのも物語のスパイスとして良かったです(ラストシーンでも効果を発揮する事に)。
誘導ルートを外れてしまった怪獣の体温は急上昇していき、高熱を発する怪獣の足下で看板が燃え上がっていくのは、秀逸な演出。
やむなくムサシはコスモスに変身すると、パニック状態の怪獣から火球を放たれながらも、大先輩譲りのウルトラ水流ならぬ、ウルトラ冷却ガスを噴射。体温の低下した怪獣を光の泡に包むと海へと運び、無事に出産した怪獣は、子供と共に宇宙へと帰っていくのだった――。
次回――ぐっとシリアスになって、とうとう「怪獣の保護」の妥当性に切り込んでくれるようですが、果たしてコスモスの拳はどこに振り下ろされるのか。