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「産業革命!」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第21-22話

◆第21カイ!「大カイジュウの大破壊!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 悪の人格を持ったコピー体を作り出すコピーワルドによって街は大混乱! 立ち向かった白と金もコピーを作られてしまい、秘密のコピーと海賊のコピーが極悪全開!!
 予告からは、コピー介人とコピーゾックスでどのぐらい面白くしてくれるか期待していたのですが、蓋を開けてみたら、両者の悪事が単純な強盗行為を繰り替えずばかりで、物足りない内容(ニュース報道のダイジェスト映像で、各種コスプレのサービスカットは盛り込みましたが)。
 劇場版とのスケジュールの兼ね合いなどあったのかとは思われますが、クライマックスの大怪獣大暴れさえ盛り上げれば、後は省エネで、といった感が強く、シナリオにもこれといっったひねりが無ければ、演出も悪い時の加藤監督というか忙しい時の加藤監督というか、巻いて撮ってくれと頼まれました、みたいな出来。
 コピー(偽物)の悪事、ではありませんが、ヒーローが人格変化して悪さをするエピソードというと個人的に印象深いのが炎神戦隊ゴーオンジャー』GP-30「友情ノパンチ」(監督:竹本昇 脚本:會川昇で、敵の薬物を浴びて悪の心を増幅された赤と青がチンピラのようになって最初に始める悪事が……保険金詐欺、でまず一つくすぐりを入れ、その後は強盗(ギャグ気味に処理)を働くのですが、そこでセレブの仲間がフォローに入る事で普段とは違う人間関係の一面が描かれ、仲間達のやり取りで「正義」とは何かが問われ、サポートロボにも見せ場が与えられ、『ゴーオン』の特性である「相棒」との関係も掘り下げられ……って、自分の感想を読み返して、どれだけ詰め込んでいるの?!となりました(笑)
 勿論、作品それぞれの方向性やオーダーがありますし、『ゴーオン』第30話は『ゴーオン』屈指の傑作回なので単純比較できるものではないのですが、どこで面白がらせるかといえば「変化後の行動」だと思うので、そこで今回は凝りません、が露骨になってしまったのは、残念でした。
 『ゼンカイジャー』的には、出会ってからの名乗りで笑いを取りにいくのをパターンにしていて、そのこだわりは悪くはないものの、折角のシチュエーションなのでもう少し、偽介人と偽ゾックスの悪人芝居で面白がらせて欲しかったな、と。
 あと“法の介入”もあまり作風と合っていないので、ゾックスなら法の壁を突破できる――つまり、「馬鹿な! 国家権力の壁をぶちやぶるとは!」(ジョージ真壁)もぼんやりとしてしまい、「掟破りが状況の逆転」に繋がる面白さもいまひとつ生まれず。
 これを面白くするには、ジュラン達が介人の救出方法について悩んでいた方が効果的ですが、ヤツデの心情に焦点を合わせ、揃ってセッちゃんの索敵待ちになってしまい、流れが悪くなってしまいました(為に、「そもそも界賊」というオチもあまり効果的にならなかった感)。
 ただそこから、「でも俺たちには、これがある!」で、コピーとの差別化をスーパー化で図る、というのは成る程。
 「兄貴! 介人! ゼンカイジュウギアを使えーー!!」
 巨大コピーワルドの繰り出す、コピービルや歩道橋、果てはコピーゼンカイオーの攻撃に赤黄桃青が敗れると、フリントのアドバイスを受けて怪獣ギアを操作したゼンカイザー……とうとう、巨大化。
 続けてツーカイザー……何故か、SD化。
 機能自体は五色田夫妻が考案したものだと思われますが、設計書を見てそのまま組み込んで実用化してしまう、フリントのブレーキの無さが怖い。
 挙げ句に改良を加え、一家が苦しんでいる呪いを一時的とはいえ兄の身にも降りかからせてしまう、フリントの発想が怖い。
 ……この先どうなるかはともかく、介人と凄くお似合いといえばお似合いな精神構造の気はしますが(そして、二人を見守るジュランおじさんが、心労のあまり、ハゲる)。
 「そんでもってこっからが、本領発揮だーー!!」
 戦隊の歴史を振り返るにあたり、杉村升成分を担当していたフリントの手により、とうとう、変形合体してしまう白と金。
 …………あの……ゼンカイザー……顔、剥がれてるのですが。
 人の尊厳、とは……何か。
 世界を守る、とは……何か。
 人は、何かを犠牲にせずに何かを得る事は出来ないのか。
 様々な疑問が脳裏を駆け巡る中、ZとTと怪獣を掛け合わせた禁忌の果てに誕生する、ゼンカイジュウオー。
 火力があれば、心なんていらないですよね?
 というわけで、ゼンカイ獣の宇宙警察的一斉射撃が景気良く火花をあげるシーンは力が入っており、恐竜メカとしてはかなり洗練されてデザインも格好いいだけに、何故か必殺技は白金の姿に戻ってイメージ(?)で攻撃するのは、どこか日和った感。
 まあ、怪獣のまま倒すと、二人が合体して協力している感が出にくい、というのはあったかもですが。
 コピーワルドは木っ葉微塵に砕け散り、なんかもう、あいつが一番ヤバいのでは……?! とトジテンドの中でフリントの株価が急上昇していく中、イジルデがステイシーに与える、新たな武器とは……?!

◆第22カイ!「ウシシなモ~れつ闘牛会!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
 空手道場の猛者たちやラグビー選手のマッチョマンたちが、闘牛ビームを受けて次々と闘牛ニンゲンになってしまい……あ、80年代ノリ(笑)
 「俺は自分の好きな色を指定して、牛にした奴らに襲わせる事が出来るトウギュウ」
 からの、ちょっとプラスアルファで、標的にする色を変えてはゼンカイジャーが次々と襲われ、怪獣ギアを呼ぼうとする白だが……つまみ食いをガオーンにこっぴどく叱られて、家出中だった。
 ゼンカイジャーは闘牛ワルドの鼻息嵐で思い切り吹き飛ばされ、失踪するほど怪獣ギアを叱り飛ばしたに違いない、とジュランからキカイ差別主義を糾弾されたガオーンはさすがにうなだれ、ひとまず手分けして怪獣ギアと闘牛ワルドを探す事に。
 (そうだよね…………いい奴らなんだよね)
 ベンチに座り込むガオーンは“仲間”達に思いを馳せ、公園で遊ぶキカイノイドの子供が転んだ際に、アース-45人の子供達が心配して手を伸ばす姿に、いつまでも偏見にこだわり続ける自らを省みる。
 (みんな、こんな僕の事……受け入れてくれててさ)
 ガオーンの問題は、厳密にやると感じ悪くなりすぎるのでマイルドな描写になっていかざるを得ず、『ゼンカイ』全体で種族差別の問題が危うい爆弾に膨らみかねない雰囲気にもなっていたので、この辺りでガオーン自身が環境の変化にともなう心境の変化を受け止める、のは納得のいく落としどころとなり、子供達の自然な交流の姿にその一歩を踏み出す、のは『ゼンカイ』らしい説得力になりました。
 一方、“ニンゲンの子供”と“怪獣ギア”を同じ列に並べるのはちょっと無理があるのでは……と思われたジュランはジュランで、フリントの言葉から、怪獣ギアに人格を見過ぎていた事に気付いて冷や汗を垂らしていた。
 「これ俺……やっちまったか……?」
 キカイノイド的には、怪獣ギアをキカイの子供と見るのはおかしくなかったのかもですが……もしかすると元々、キカイノイドの子供にガオーンが冷たく接してジュランが本気で怒る、ような想定だったのを、あまりにも印象が悪すぎる、という事で怪獣ギアに置き換えた、なんて事はあったのかもしれません。
 ゼンカイジャーと闘牛ワルドの戦いを物陰から見つめていたサトシは、邪魔が入らないのを確認してからカラフルを訪れると満面の笑みでパフェをすくっており、縦横無尽に面白いぞサトシ!
 そこから、セッちゃんがサトシを警戒 → 鳥についてヤツデに訪ねるサトシ → 介人の両親について語り始めるヤツデ、と異常なほどスムーズに話が転がって、凄い! 凄いぞサトシ!
 明るく息子夫婦を紹介してから、その声音に悲しみが混ざり、介人両親の失踪がサトシと共有されると、帰ってくるのを諦めていないとは言いながらも、サトシにさえどこかで見る事があれば、と望んでしまう藁にもすがる苦しさまでが短いやり取りの中に凝縮され、物語の手綱をぎゅっと引き締めます。
 ステイシーの姿を見て店外で体育座りしていた介人(この辺りが介人のいいところであり)は、桃青から闘牛発見の方向を受けて走り出し、サトシもまた、それをきっかけに席を立つ。
 「サトシくん。またおいでね」
 「今日が…………最後かもしれません」
 そんなサトシの姿に何かを感じたのか、ヤツデはサトシにカラフルおやつ券を渡し、明るく振る舞うヤツデの心に「息子夫婦との思わぬ別れ」が影を落としているのが直前に描かれている事で、サトシとの「別れ」の場面がより劇的になるのが、よく計算された作り。
 「またおいでね」
 サトシはおやつ券は受け取るがイエスともノーとも口を開かないままカラフルを出ていき、一足早く猛牛ワルドと戦っていた赤桃青金の方では、赤桃青が闘牛ビームを受けてしまい、目つきの悪くなった面々の顔がちょっと格好いい(笑)
 闘牛軍団に囲まれた金は、黒騎士先輩にレボリューションすると、スキル《牛飼い》を発揮して、闘牛軍団を懐柔。
 「星獣戦隊ギンガマンの黒騎士は、牛に懐かれるチュン」
 本編での描写は限りなく存在しなかったけど、ソーセージのおまけシールとかのフレーバーテキストに書いてあったりしそうで微妙に否定しにくい設定を出してきた!
 そこに白と黄が到着するが、闘牛ニンゲンに擦り寄られるのが面倒くさくなってきた金が闘牛赤を投げ飛ばすと《牛飼い》スキルが解除されてしまい、再び乱戦に。このままでは金がニンゲンを射殺しかねない! と慌てる白だが闘牛ワルドに苦戦し、迷えるガオーンは……闘牛ワルドを挑発する事で黄色を標的に変えさせ、自らが囮となって誰も傷付けずに時間を稼ぐ事を選ぶ!
 ガオーンが、キカイノイドだから大丈夫でしょ、を卒業して仲間の為に体を張っている間にスーパー白金が闘牛を撃破し、闘牛ニンゲンらは正気に回復。
 互いに謝罪したガオーンとジュランはハイタッチをかわし、あっさり加減になりましたが、上述したようにガオーン問題はこの辺りで片付けておくのは無難な判断かな、と。結果的に、劇的な「変化」ではなく、過ごした時間によるじんわりとした「成長」になったのは、シリーズとしてはやや珍しい形になったでしょうか。
 「おい! なんか盛り上がってるけど、あいつ来てるぜ」
 「いい話は終わったか?」
 気配りのできるダイ闘牛ワルドの誕生により、闘牛もとい焼き肉の力が充ち満ちて、スーパー戦隊》は一緒に焼き肉を食べると凄く仲が良くなるチュン!
 実に、ガオーンほだされ回にふさわしいワルドだったといえるでしょう(なの?!)。
 ガオーンが負傷しているので躊躇無く禁忌の全開獣が再臨し、一斉射撃を排気ダクトに逸らされてしまうと、ドリルモードに変形してよっほほーい!
 だが、そこに現れるサトシを終えたステイシー。
 「ゼンカイザー。――僕は今日こそ君を倒す」
 久方ぶりのバトルジャバーンから、飛んできたのは、バトルシーザーロボ2世!
 シンケンツーカイオーの刀の錆になって終わりではあまりにも呆気なかったので、ここでバージョンアップしての再登場は嬉しかったところ。このネーミングなら、何度踏み台にされても帰ってこれそうですし(笑)
 「前より強い!」
 「言っただろう。今日こそお前を倒す覚悟で来たんだ」
 激しく火花を散らす怪獣vs2世! で、つづく。
 中澤監督が『テン・ゴーカイジャー』、田崎監督が劇場版に入った関係でか、渡辺勝也監督、参戦! こうなると後は、竹本監督には是非、参加していただきたいところです。
 次回――サブタイトルが、東宝