東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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胸のエンジンに火がつかない

仮面ライダードライブ』感想・第21-22話

◆第21話「不揃いの死者たちはなにを語るのか」◆ (監督:金田治 脚本:三条陸
 場所はバラバラだが死亡推定時刻がほとんど同時な5つの変死体が都内で発見され、現場の一つ付近の監視カメラに、走り去るチェイスらしき男の姿が捉えられる。
 果たして事件にはチェイスが関わっているのか? 奇妙な死者の群れは何を意味するのか? あくまでチェイスを信じたい霧子と進ノ介だが、追田と同僚刑事が、重要参考人として追っていたチェイス職務質問しようとして宙を舞い……完全に、チェイスについての情報を止めていた進ノ介のせい。
 「俺が守護するのはロイミュードだけだ。ロイミュードの為なら、他の、どんな命も、奪う」
 メディックによる再調整と強化改造を受けたチェイスはドライブへの殺意に突き動かされる破壊者と化しており、チェイスの打破に逸る剛、惑いながらも対峙を余儀なくされる進ノ介、とVSチェイスが加熱していくのですが、どうも話の流れに乗れず……どうしてだろうと考えて思いついた理由は主に二つ。
 理由その1は、りんな前後編・追田前後編、と来て、急に西城編は1話にまとめられて今回冒頭の怪事件が発生するので、前回から今回への話の流れの切断感が強い事。
 一応、アニメ好きロイミュードが西城に接触してきた際の事例から、ネットワーク上のロイミュードを追えるようになった……と繋げてはいるのですが、正直それはいつでもいい話ですし、VSチェイスの決着を付けるならば、前回の時点でもっとチェイス自身に焦点を当てておいて欲しかったな、と。
 理由その2は、根本的にVSチェイスが盛り上がる流れが組めていない事で……チェイス=ナンバー000と判明後、霧子が“人を守るロイミュード”の姿をチェイスに重ね、チェイス=プロトドライブ、と判明する14-15話はともかく、16-20話でデッドヒートとかしている内に、VSチェイスのドラマが行方不明になってしまいました。
 特状課メンバーの掘り下げそのものはあって良かったと思うのですが、間に5話挟んだ事で、チェイスに対する進ノ介や霧子の葛藤が完全に間延びしましたし、物語の流れだけを考えるならデッドヒートは完全にノイズで、15話までの流れでそのまま先にチェイスと決着を付けた方が良かったのではないかな、と(第16話で殴り飛ばされたハート様の格も滅茶苦茶落ちましたし)。
 また、プロトドライブ=ロイミュードナンバー000=「人間を守れ」とプログラミングされロイミュードと知った時点で、進ノ介の抱える葛藤にも変化が生じるべき――具体的には、ロイミュードはどうして悪になってしまったのか」こそが進ノ介が追求すべき問題であると思うのですが、毎度毎度、話の都合で進ノ介は考えるのを止める(考えるべき問題から目を逸らす)ので、その点には触れないまま、ロイミュードは基本的に「悪」だけど「いい奴になっちまうロイミュードだって、居るかもしれないだろ」と、ふわっとした人情の問題に落とし込もうとするので、「ロイミュードとはそもそも何か」を劇中人物が腰を据えて検討しないまま(ベルトさんは把握している筈なのですが、誰も追求しようとしない)ここまで来てしまった膿が大噴出。
 で、進ノ介がロイミュード人間性を見ているのかといえば(見てはいるのですが)、チェイスを説得しようと持ち出す「仮面ライダーの心」とはすなわち、「過去のプログラム」なので、アニメ好きミュードに寄り添おうとした際の根拠と、チェイスを信じようとする際の根拠が別のものであり、時と相手に応じて根拠が違う事そのものはおかしくないとはいっても、進ノ介がロイミュードに向き合おうとする際のアプローチが物語の要素として繋がっていない、という奇妙奇天烈な事になっており、それがVSチェイス決着編の唐突かつ上滑りな印象になっているかなと思われます。
 「進ノ介、こうなったら一か八かだ! 君に隠していた新シフトカーを使うしか、生き残る方法はない!」
 強化チェイサーに追い詰められたドライブに対してベルトさんがまたベルトさんな事を言い出し、前作はDJが悪目立ちしていましたが、今作の、主人公の全く関与しない無から強化アイテムが次々と飛び出してくる展開も、大概酷い。
 特状課やピットクルーにシフトカーの存在、次回クライマックスにおける「りんなを信じよう!」の台詞などを見るに、組織のバックアップと一体化して戦うヒーロー、をやりたい意図は見えるのですが、率直なところ上手く行っていません。
 これはもう、変身ヒーロー以外をれっきとしたメインキャラとして扱う事に限度がある東映ヒーロー作劇とは、相性が悪いのだろうなと。

◆第22話「F1ボディでどうやって戦えばいいのか」◆ (監督:金田治 脚本:三条陸
 「進兄さんと俺は違う! ドライブは人を助けるライダー! マッハは敵をぶっ潰すライダー! ……それでいいじゃん」
 ロイミュード殲滅に執心する剛が、飄々とした仮面を脱いで声を震わせる今後への布石を打ち、ロイミュード側ではメディックの足を引っ張ろうとしたブレンがお仕置きを受け……第16話以降の構成の問題について上述しましたが、ブレンが急激にネタ扱いされていくのもまた第16話以降であり、第15話と第16話の間に、制作サイドで何かあったのか、と勘ぐりたくなってきます。
 街で大暴れするチェイサーを前に、覚悟を決めた進ノ介はドライブに変身すると、タイプフォーミュラ。
 ……段ボールの電車ごっこのごとく、寸詰まりのF1マシンを頭から被った! みたいな、かつてなく動きづらそうな姿になると、超高速移動でチェイサーを滅多打ち。
 ハーレー博士の残したヒントから、りんなが完成させたフォーミュラ砲を発射してチェイサーは木っ葉微塵となり、構成の問題で、全く盛り上がらない決着となりました。
 チェイサーは実質洗脳されて暴れているだけなので信念も情念もそこにはなく、ならば、それを倒さざるを得ない進ノ介の辛さや決断こそが物語を劇的にするキーなのですが、進ノ介が信じているチェイサー=「人間の都合により人間を守るアンドロイド」に好意を抱ける物語構造になっていないので(むしろ最近やたらと、人間の“悪意”をこそ描いていたわけで……)、何もまとまっていないのに状況だけ放り込まれた、みたいになってしまって残念。
 第16話で(マッハと兼用とはいえ)デッドヒートして、第22話でフォーミュラするのがあまりに詰め込みすぎなので、商業展開の要請による苦しい事情もあったのかとは思いますが。
 チェイスのバイクは回収されてピットで邪悪な存在感を放ち、気持ちを整理できないままの霧子だが……雨の夜に、チェイスを拾う?! で、つづく。