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果てなき極上スピリッツ!

ウルトラマントリガー』感想・第2-3話

◆第2話「未来への飛翔」◆ (監督:坂本浩一 脚本:ハヤシナオキ)
 ルルイエ、抱えて、来ちゃった。
 財団S会長と共に地球に降り立ったケンゴはガッツセレクトのメンバーに紹介され、入隊試験とかすっ飛ばして腹に植物を抱えたどこの馬の骨とも知れない男をいきなり部隊にねじ込まれたら反発が起きそうなものですが、約1名を除いてめったやたらにフレンドリーで……偉い人が思いつきで仕様変更する事に慣れきっているなガッツセレクト。
 そして、誰も、植物にツッコまなかった。
 ケンゴは、ガッツセレクトの一員であり会長の娘であるユナを見ると、夢に出てきた少女に似ていると熱烈にアプローチし、仮に夢に当人が出てきたとしても、それは夢だからな……という線が引けていなさそうで大変不安を誘いますが、前回ちょっと思った『鎧武』感も上昇。
 「いいか、世の中の全ての悩みはな、筋トレすれば解決するんだよ!」
 筋トレ、それは悟りへの最短走路……新入隊員は何故お腹に植物を抱えているのか? どうしてブリッジクルーに異星人が混ざっているのか? なぜ現役女子高生が隊員に居るのか? 全てはスポンサーからの鶴の一声、色即是空空即是色、大胸筋を信じる者は救われ、あなたのハッキングスピードは3倍に加速しながら世の一切の苦しみから解き放たれていくのです……。
 昔の人は言いました。
 「物事の基本は、体力……!」
 6年前から怪獣の出現頻度が上がっている地球では、ガッツセレクトの母艦ナースデッセイ号の発進を目前にして、海中から怪獣が出現。
 怪獣の能力に関してはメトロン星人が解説してくれる仕様ですが、テロップでは「吸血怪獣」と出ているのに、解説の中に吸血要素が全く無いのは、元ネタの都合でしょうか。
 無人戦闘機は今風でありますが、映像の方はあまりにも板野サーカス過ぎて、これといって面白みは無し。勿論、新味があればいいわけではありませんし、諸々検討した上でこれがベストとなったのかもですが、戦闘機の高速機動で大量の触手を回避、となると安直に板野サーカス(的な画)になってしまうのは、物足りないところです。
 そこに物語が乗っかれば話はまた変わりますが(というよりも個人的には、物語の乗らない画には興味が薄いので)、もう少し、ならでは感を付加して欲しかったなと。
 避難誘導をしていた主人公は早めの変身をすると怪獣に立ち向かい、主人公の心理として引き延ばす必要は無いので妥当ではある一方、おもむろに「みんなを笑顔にしなきゃ」みたいな事を呟いてから変身への流れが劇的さに著しく欠け、もう少し波を作る工夫がほしいところ(まだ第2話、地球では初の変身なわけですし)。
 怪獣に立ち向かうトリガーの、飛びつきからの零距離必殺光線は格好良く、爆発の衝撃で吹き飛ぶのも、戦いに慣れていない感じが出て良かったです。
 かくして地球でのデビュー戦を勝利で飾るトリガーだったが、直後、地球に飛来する、赤黒い巨人・剛力闘士ダーゴン。
 「久しぶりだな、我が好敵手」
 ……カルミラとは違った意味で面倒くさそうな人だった。
 「あれは……石版に描かれていた、闇の巨人。二体目か」
 カラータイマーも鳴っていたトリガーはダーゴンに一方的に殴り飛ばされて地面に倒れると、変身解除。
 CM明けると、超古代の神器を参考にした変身アイテムの開発者であり、ケンゴ=トリガーと知るヒジリ・アキトに噛みつかれて、いきなり重い感情のぶつけ合いになるのですが、ケンゴにしろアキトにしろ、キャラクター描写の積み重ねが3ステップずつぐらいすっ飛ばされているので面食らいます。
 “選ばれなかった者”(会長は恐らく、選ばれないのを知っていて装備開発をさせていた感があるのでタチ悪い)としてのアキトの鬱屈はまだともかく、前回に続き、主人公のモットーを具体的に物語の中に落とし込む作業が全くされていないのでケンゴの言行の土台が弱く、とりあえずキャッチコピーを言わされている感じになっていて、心に響いてこないのが、辛い。
 やらないといけない要素が多くて一杯一杯なのは伝わってくるのですが、それならそれで成立する物語を構築するべきであって、理想のドラマと現実のノルマを擦り合わせずに、理想のドラマをダイジェスト化してしまう、大変よろしくないやり方。
 適度なインターバルを挟んで突如としてダーゴンが再出現する話の都合丸出しの展開から、ダメージを負いながらも出撃しようとするケンゴの姿は辛うじてヒロイックになりましたが(むしろここにドラマの焦点を合わせてモットーを表現した方が良かったのでは……)、アキトの態度の軟化は説得力皆無(9割方、会長の説得の効果と思われますが、それはそれで主人公の意味が無くなりますし)で、ふわっと誕生したパワーメモリをケンゴに渡すと、新たなトリガーの姿をモニターで見て既にニヤニヤしており、ユナの為にという情念はそんなあっさり上書きされてしまうものだったのか、と典型的な負のドミノ倒しが発生。
 アキトとユナの関係性はこれから掘り下げられるにしても、ユナを守りたくて変身装備を開発したのにあんなぽっと出の植物フェチ野郎にヒーローの座を奪われるとか有り得ねぇぇぇ、というキャラクターを形作る情念がダイジェスト作劇によりファスト解決されてしまい、そんなインスタントに処理するのだったら、ややこしい感情の軋轢など最初から設定しない方が、視聴者にもキャラクターにも誠実なのではないか、と思うところです。
 「勝利を掴む、剛力の光! ウルトラマントリガー!」
 トリガーは体色が赤ベースのパワータイプにブーストアップすると、戦いの舞台は市街地からやがて海中へ。戦闘中にまたもひらめキングしたトリガーは、召喚した剣をハサミに変形させ……なんか、見た目が、エグい。
 聖剣ウルトラハサミでダーゴン(人型)をグサグサ刺しに行くと無闇にドキドキするので、手持ち武器は適度なファンタジー感があった方がいいよな、と(笑)
 「それでこそ我が好敵手。また相まみえようぞ」
 ウルトラパワーゲイザーの打ち合いの末に大爆発したダーゴンは撤収し、OP映像のファーストカットが元カノと愉快な仲間達(三悪?)な事からも、どうやらVS闇の巨人にフューチャーした物語になりそうですが、第2話から怪獣が完全に刺身のツマ扱いなのは、なかなか大胆な方向性でしょうか。
 『タイガ』のトレギアはちょっと思い出しますが、序盤のカタルシス不足は懸念したのか、前回今回と、ひとまずトリガーが押し勝って闇の巨人が撤収する形に(これはこれで繰り返すと脅威として弱くなるのでどう見せてきますか)。
 ガッツセレクトの隊員が登場した事で第1話における独り言問題は解消され、巨人vs巨人のバトルは力が入っていて迫力はあった一方、助走の足りないまま突発的ダイブ気味に青年の主張を放り込んでくる作劇は相変わらずで、いずれ会長娘も含めるであろうケンゴとアキトの関係性構築の入り口、その最初の変化の流れがすっからかんになってしまったのは、つくづく残念。
 ラスト、「トリガーの正体を秘密にしてくれてありがとう」とケンゴがアキトに擦り寄るのですが、そもそもトリガーの正体は秘密だよ、とケンゴを丸め込んだのが会長で、その会長ルートで正体を知っていたアキトが独断でバラすわけがなく、二人の距離感が縮まりました、を表現するにしてもあまりにも頓珍漢なやり取りで、前途多難。
 次回――「何かを得るためには、何かを捨てなきゃ」。

◆第3話「未来への飛翔」◆ (監督:坂本浩一 脚本:ハヤシナオキ)
 「いいねぇ。極上だ」
 特上の変態、現る。
 地球では、女性の部屋に無断で侵入した場合、その場で射殺しても許されるんですよ!!
 「俺は宇宙一のトレジャーハンター。銀河を股にかけ、極上な物だけを手に入れる」
 前回ラストで顔見せしていた、細貝圭さん演じる謎の男が不法侵入で本格デビューを飾り、肩書き・突飛な台詞回し・極上のプレシャスの為なら自分がルールな姿勢、とそこはかとなく漂う東映感。
 『ゴーカイジャー』から10年が経ち、扮装も違うと顔だけでは細貝さんとわからなかったのですが、喋ると実に、ああ……! という感じであり、台詞回しもちょっと意識が見えるというか、アテ書き感もなんとなく。
 アキトが思春期男子のパワーでなんとか極上ハンターを追い払うも、今度は青い異星人がユナをさらい、それは極上ハンターの正体……ではなく、新たなる闇の巨人・俊敏策士ヒュドラム。
 極上ハンターと何やら因縁があるらしい闇の巨人は、今回もお手軽に怪獣を召喚し、ガッツファルコン(今回はガゥオーク形態に変形し、本当にバルキリーだった)出撃。
 前回に比べるとパイロット側にもカメラを向けてくれたのは良かったですが(出来れば操縦中の主観映像が欲しいですが)、VR的なゴーグルを付けて叫ぶ演技をすると、どうしても開けた大口が目立つのが映像的に苦手な類で、なかなか難しいファルコン……。
 アキトから新たなメモリを受け取ったケンゴはトリガーに変身し、「天空を翔る、高速の光!」によりスカイタイプにブーストアップ。
 「……責任は私が持つ。ナナセ隊員……ウルトラマントリガーを援護しろ!」
 地球平和同盟TPUからは監視対象扱いになっているトリガー支援の決断をやたら劇的に描くのですが、正体を伏せたまま自然と手を取り合ってほしいという思惑はわかならないではないものの、情報を止めている当の本人(会長)が背後でニヤニヤしているので、盛り上がるというよりも、これで責任負わされる隊長が可哀想だな……感の方が正直強く(笑)
 ファルコンとの連携で怪獣を撃墜したトリガーは今回もひらめキングし、ウルトラ聖剣がタイプごとに変形するのは成る程のアイデア。トリガースカイアローで怪獣を撃滅するトリガーだったが、直後に背後から攻撃を受けて地上に叩き落とされ、その前に降り立ったのは、自分で策士と言ってしまう俊敏策士。
 「エクセレント。懐かしいですね、トリガー」
 両者はそのまま高速機動対決に入り、トリガーの3タイプと3体の闇の巨人を対応させる事で、それぞれの特徴を際立たせるのは立ち上がりの詰め込みの処理として秀逸な組み方となり、ここは良かった部分。
 筋トレ不足のトリガーは今日も地面に転がされるが、ファルコンの援護、そしてナース戦艦が迫り、ド派手に火柱をあげるナースキャノン発射。
 ……むしろ怪獣より被害を拡大しているのでは、というロマン巨砲がヒュドラムに直撃し、どうせトリガー支援の件で査問会議に召喚されて減給処分とか喰らうならいっそナースキャノンもぶっ放してやるぜぇぇ、ひゃっはー、ざまぁみろ! と会心の笑みを浮かべる隊長の背後で、え?! 何これ?! マスコミ対策とか賠償金とかどこから資金出ていると思っているの?! と、会長が狼狽えているのは少々気持ち良かったです(笑)
 「エクセレントじゃねぇな!」
 横槍の一発を食らい、憤激にかられたヒュドラムは丁寧な言葉遣いをかなぐり捨てるが、愉快な仲間達に回収されて、三悪は撤収。
 アキト&ユナの元に戻ったケンゴは、トリガー=ケンゴと知り、わざとらしく姿を見せた極上ハンターに名乗るとユナをヒュドラムから守ってくれた礼を述べ、底抜けのお人好しなのか、人間として大事な部分の底が抜けているのか、は判断保留。
 極上ハンターはイグニスを名乗ると去って行き、ヒュドラムと因縁を持ちつつ状況を色々かき回してくれそうなポジションは、なかなか面白そう。
 「闇の巨人が……3体揃ってしまったか」
 ケンゴには会長から、超古代の巫女ユザレの思念体がユナに憑依している事が明かされ…………か、火星のプリンセス……ううっ……パンドラボックス……げふげふ、どうやら三悪はユザレがその在処を知るエタニティコアなるものを狙っているらしい、と敵方の目的を整理。
 「さあ、ここから情熱的に行くよ」
 「いよいよ、我が好敵手と決着を付ける時か!」
 「エクセレント。ま、わたくしは二人より、百年早起きして待っていましたけどね」
 「三千万年前に成し得なかった悲願を今――エタニティコアを、闇の手に!」
 海底で盛り上がる3人で、つづく。
 怪獣退治を主題に謎や因縁が少しずつ解きほぐされていくのではなく、謎や因縁を主題にして怪獣はその隙間を埋める爆発要員という思い切った構成で連続物の要素が強い立ち上がりとなり(言ってしまえば《平成ライダー》寄りの文脈)、トリガーの3タイプを印象づける事には成功しましたが、その代償として主人公周りの組み立てが掘っ立て小屋同然に。
 サブタイトルと予告内容からすると、次回ようやく主人公周りに背骨を与えてくれそうなので、上手く噛み合ってくれる事を期待したいです。