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光よりも速く……?!

ウルトラマンコスモス』感想・第19話

◆第19話「星の恋人」◆ (監督/特技監督八木毅 脚本:梶研吾
 廃棄された軍事衛星アンジェリカが、接近した未知の宇宙船を自動迎撃システムによって破壊してしまう事故が発生。アヤノに接近した謎めいた男がチームアイズの司令室に立てこもり、その目的は、誤射事故によって死亡した恋人の復讐の為、血を血で贖うべく、アンジェリカをジェルミナ3に激突させる事!
 洗脳したアヤノにアイズの誇る高性能コンピューターを使わせ、コントロールを取り戻したアンジェリカはジェルミナ3へ向けて移動を始め……衝突までの時間は、11分。
 ……て、え?! 地球まで11分なの「遙かなる宇宙の彼方」(って冒頭でナレーションさんが言ってたんですが)?!
 名作回「時の娘(前後編)」に登場して印象的だったジェルミナ3の再登場は世界観を接続・拡大してくれて嬉しかったのですが、お陰で廃棄された軍事衛星が地球軌道まで11分で帰還してしまう事になり、こういったスケール感の出し方は難しい部分があるにしても、幾らなんでも宇宙感ゼロ。
 そもそも衛星に燃料残っているなら、廃棄処分時に太陽の方へ向けて加速させておけば良かったのでは……という話になりますし、衝突の危機をやりたい都合があるなら、地球近海に廃棄処分場を設定したとでもしておけば誤魔化しが効いたのに、どうして冒頭で「遙かなる宇宙の彼方」と言わせてしまったのか。
 ……というと恐らく、アンジェリカの攻撃を受ける未知の宇宙船の“雰囲気を出す”為なので、目の前の展開の為にのみ状況を設定していった結果、トータルのレベルデザインが崩壊してしまうという、デバッグ時間の足りなかったゲームみたいな流れ(さすがにこのレベルだと、作っている最中に誰か止めてほしい)。
 「復讐と破壊は、何も生み出さない!」
 多分コスモス的な力でショックビームに耐えたムサシは宇宙人の説得を試みるが、聞く耳を持たない宇宙人は、怒りと憎しみを怪獣化。
 「破壊せよ……! 抹殺せよ……!」
 歪な人の顔、とでもいった憎悪を具現化したような怪獣のデザインはインパクトがあり(腹部の裂けた巨大な口とアンバランスに長くて太い右腕が秀逸)、市街地で暴れる怪獣を止めるべく、ムサシはコスモスに。
 復讐の心を否定しようとするコスモスは敢えて攻撃をせずにガードに徹し、その姿に惑う宇宙人に何故かアヤノの霊体が話しかけると、その姿は死んだ恋人のものとなり……ヒロイン展開かと思ったら、シャーマン扱いでした!
 復讐テーマとしてはこれといって面白くはなく、非常にオーソドックスな“復讐に意味はない”で恋人の魂から説得された宇宙人は、最後の力を振り絞るとアンジェリカの軌道を変更。
 ここも、迫る衝突のタイムリミットサスペンスを設定したにも拘わらず、視点が「怪獣」と「説得」に行ったきり、ジェルミナ3に接近するアンジェリカのアの字も出てこなくなるのでなんら劇的にならず、通して物語の視界が狭すぎます。シナリオ的には、“ウルトラマンと怪獣を戦わせないといけない都合”の方が邪魔だった感もありますが、上記した宇宙感の不足も含めて、刑事ドラマ的なプロットを《ウルトラ》に上手く翻案できなかったような雰囲気も漂うところ(宇宙スケールの筈の軍事衛星が、暴走する列車みたいなノリといいましょうか)。
 宇宙人の憎悪が収まると共に動きを止めた怪獣を鎮めたコスモスは、コロナモードとなるとアンジェリカを破壊し、星の恋人たちは、大いなる宇宙へと帰っていくのだった……。
 地球人が全面的に悪い案件を、被害者側が復讐は何も生まないと納得して昇天し(納得しにくい)、でも市街地には相応の被害が出ており、そもそも救われない話(見ていて気分は良くない)を、都合良く救われた風にして片付けてしまう(表向きだけ美しい)、個人的には非常に苦手なパターン。
 せめて、感傷的な語りで終わらせないで、この悲劇を繰り返さない為にも、と「行動」で示してくれればまだ良かったのですが……。
 次回――ムサシの「夢」に再びフォーカスを当ててくれるのは楽しみで、サブタイトルも格好良くて、期待したい。