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「大気爆裂マックスフィールド!」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第19話

◆第19カイ!「ゼンカイ改め、超ゼンカイ!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 「やはり……似ている」
 研究の進捗が思わしくないイジルデが気分転換にスパに向かった隙に、ラボに忍び込んだステイシーが隠しパネルを操作すると、まるで冷凍睡眠中のような五色田夫妻の顔が浮かび上がり……うーん……映像のトーンが既に不吉な雰囲気なのですが、データとして保存されている……?
 トジテンドのステイシーが不穏な真実に一歩近付いていた頃、カラフルでは店に飛び込んできたスーさんが虫取り網を振り回して完全な不審者、すわなちこれはトジテンドの悪巧みだ!(適応早い)
 街に繰り出した介人たちは、カブトムシワルドの能力により、老若何女を問わず麦わら帽子に白いランニング(ワンピース)の夏休み概念を強制装着させられた人々が幻のカブトムシ捕りに夢中になっている姿を目撃。クダックと市民が入り乱れる戦いの中でビートル光線の餌食となり、今回も、OPから2分で敵の術中にはまるゼンカイジャー。
 「喜んでくれて良かったカブトムシ」
 そこにツーカイが乱入し、ゼンカイジャーや一般市民を平然と盾にする、らしい狼藉でビートル光線を回避すると、相性が悪いとみたカブトムシワルドは撤退。直後、カブトムシ扱いで一斉に網を被せられ、周辺被害を気にしないアバレぶりの後に、即ギャグに巻き込む事で悪印象だけを残さないのが上手いバランス。
 また、金があくまで別枠な為に、一人か二人残す事なく五人まとめて思い切って行動不能にしてしまえるのは、界賊の存在感が活きると同時に今作らしいドタバタの面白さも増して、キャラ配置の使い方も秀逸になりました。
 かくしてアース-45でゼンカイジャーが実質全滅していた頃、イジルデラボでは五色田データ(仮)に対してステイシーが様々なキーワードを口にしていたが特に反応がなく……最後の手段としてゼンカイジャーの名乗りを真似し、
 「秘密のパワー! ゼンカイザー!」
 で終わらずに、
 「ぜんりょくーぜんかーい!(ダッシュ) とわぁーー!!」
 まで加えて万全を期すのが、君は最高だな!!
 客観的に見れば完全にギャグなのですが、あくまで本人が真剣かつ、ヤツデの為に何かできる事を、と考えている節があるので無理矢理感がなく、それ故にこそまた笑えて、ステイシーが、こういう方向で面白くなるとは、想定外(笑)
 「……くっ……やるんじゃなかった」
 ところが、空振りに終わったと思い込んだステイシーが立ち去った後に、五色田データの両目が夫婦揃ってカッと見開かれ(この映像がまた、非人間的で怖い)、突如として指令が送り込まれたセッちゃんは、秘密の基地で新たなデータを発見。
 一方、カブトムシワルドを誘き出そうとする界賊一味は、セッちゃんから得た情報で27バーンのギアを用いると、アバレキラー先輩にレボリューション。ときめく羽ペンで巨大メープルシロップを実体化する事でカブトムシを誘き出すが、そこにバラシタラが現れて2対1の戦いとなり、このところ玩具にされ気味だったゾックスに真っ当にスポットを当ててきて、今回はエピソード単位でもストーリー単位でも、バランスの取り方が秀逸です。
 「貴様に踊ってる余裕など、無いのでアル!」
 相も変わらず幻の虫取りに興じ続けるゼンカイジャーは、巨大なカブトムシを見せ合っているつもりで、現実には、石・カップ麺(ゴミ)・空き缶を手に持っているのがだいぶ悪夢的で、このギャップの見せ方が、作戦の真の恐ろしさを炙り出して好演出。
 そうこうしている内に、介人は少年期に両親とキャンプに行ってカブトムシを捕まえた事を思い出し……
 「父ちゃんと母ちゃんと、3人で一緒に出かけたの。あれが最後だっけ」
 またさらっと重いよ……!
 だがそれがきっかけで、両親の不在とトジテンドとの戦いを思い出した介人は正気に戻り……楽しいドタバタ劇と五色田夫妻の謎が錯綜してここまで面白かったのですが、行動不能系の能力に囚われたゼンカイジャーが、過去の記憶から正気を取り戻すくだりが完全にレトロ回と被ってしまったのは、役回りが逆転こそしているものの、残念。
 「父ちゃんと母ちゃんが、助けてくれたんだ!」
 五色田データの登場に合わせて回想シーンで夫妻を出演させ、カブトムシワルドに高さと飛距離のあるドロップキックを決めた介人が、親子の繋がりを口にするのは、タイミング的に良かったですが。
 「今度は俺が、みんなを助ける版だ!」
 金vsバラシタラ、白vsカブトムシのマッチアップとなるも一対一の戦いに苦戦する白の前にフリントとセッちゃんが降り立つと、セッちゃんの提供したデータを元にフリントが造り出した新装備、恐竜型のゼンカイジュウギア(なんか既視感あるデザインだなと思ったのですが、ファングメモリ……?)を渡され、スーパーチェンジ全開。
 Z印の恐竜アーマーを身に纏い、ドリルスピアを手にした秘密のパワーアップを果たし、
 「見たか、これぞ――恐獣ケンプ」
 ……じゃなかった、スーパーゼンカイジャーが誕生する!
 早めの追加戦士の投入後、これといった商業展開が無かった今作ですが、夏休み手前で強化装備が盛り込まれ、ざっと00年代以降のスーパー化タイミングを確認したところ(未見作品を除く)……
 〔『アバレ』31・『デカ』33・『マジ』30・『ゲキ』21・『シンケン』24・『ゴセイ』24・『キョウリュウ』27・『トッキュウ』27・『ニンニン』20・『キュウレン』30・『ルパパト』38・『キラメイ』26〕
 で、話数としては歴代最速でしょうか。その年の放映日程もあるので実際の放映日は様々ですが、ざっくり調べた限り、7月中のスーパー化は『ゲキ』『ニンニン』に続く3作目の模様。
 ごついアーマーを身に纏ったゼンカイザー、被り物ないし着ぐるみ路線という事のようですが、如何にも恐竜パワー(というか豪獣レックス)なので、今後、百獣バージョンや魔法バージョンや轟轟バージョンも出てきて、殺る気満々になったり勇気があれば何でも出来たりオヤジくさい発言をするようになるのか。
 《俺は既にいい事を言った! このズーパーゼン(びしっ)カイザーが!》
 なにぶんカブトムシ合わせなので高速のビジョンを見逃さないマスクドゼンカイザーは、その重装甲でカブトムシワルドの攻撃をものともせず(弾き返されるだけなのですが、頭部後方に仕込まれたブースター点火によるカブトムシのチャージ攻撃が格好良い)、ドリルワイヤーから銃撃を浴びせると、スーパーバスターで必殺全壊。
 これにて正気に戻ったジュラン達が巨大化して駆け付けるとダイカブトムシワルドを総攻撃で打ち破り、早めのぼくのなつやすみは終わりを告げるのであった……。
 戦い終わってカラフルで祝勝会となり、あまりやりすぎると映像として見苦しくなるので案配が難しいところですが、界賊一座の食事の仕方があまりお行儀がよろしくないのは描写として一貫しており、ヤツデさんなんかはそれを見ると多分、この子たちも何とかしてやりたい感が強くなるのだろうなと推測される一方、ステイシーはステイシーで、(何やら抱えていそうだけど)介人の友達にしては上品な子だね……とか思われているのだろうなぁと、想像の広がる対比です。
 「でも、なんで急に新しいデータなんて見つかったんだろう?」
 「あの二人が、介人のことを助けようとしてたんじゃないのかな」
 「……そっか。……そうだな」
 介人は写真立てを見て微笑み、両親の不穏な状態を示しつつ物語に改めて絡めた上で、本人がそれと知らずにこの強化にステイシーが関わっているのがキャラ配置として引き続き面白く、両者の関係性がどうなっていくかは改めて楽しみ。
 香村脚本とは相性の良い加藤監督による、奇を衒いすぎずに要所を押さえた演出がドタバタ劇の面白さと物語の背景にわだかまる不穏な要素を綺麗にまとめて第17-18話からは持ち直しましたが、上述したように逆転の筋道がレトロ回とまるっきり被ってしまったのは物足りなく、香村さんの切れ味が好調時よりはだいぶ落ちて見えるのは、不安材料。
 物量をこなせるのも能力ではありますが、金子さんや下さんの参加は切実に考えてほしいところで(単純に見たい)、次回――合体SPで、スーパーツーカイ。