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コスモス貯金

ウルトラマンコスモス』感想・第17-18話

◆第17話「異次元の罠」◆ (監督/特技監督:村石宏實 脚本:武上純希
 今回の迷言。
 「心配するな。建物は狙っていない」
 ……いや、狙ってなくても、いきなり地上に実弾を撃ち込む時点で駄目ではないですかね……。
 そんな事案発生のしばらく前、ヒウラキャップは、開発中の新装備についてSRCのサワグチ博士と議論を戦わせていた。
 「文句なんかある筈ないわよね。ヒウラちゃん?」
 「敢えて言わせてもらえば……完璧すぎるんだ」
 「……完璧すぎる?」
 「初心に戻って、科学があって人間があるんじゃなくて、人間が居て科学を――」
 集中力を鍛える為にエアコンはいらないとか言い出しそうで大変面倒くさそうなキャップですが、突如として研究所のシステムがダウン。現地に向かったキャップとムサシは怪しい影を目撃し、研究所に宇宙人が潜り込んだ……?! というサスペンスは、今作ここまであまり無かったアプローチでもあり、面白い展開に。
 だが、敵の存在に気付いたキャップとムサシは相次いで小型化されてしまい、サワグチ博士らと共に囚われの身となってしまう。
 「我々の次元は今、崩壊の危機に直面している。この次元に急いで、移住する必要がある」
 「そんな! 勝手な!」
 巨大な野生動物としての「怪獣」と、地球人以外の知的生命体は全く違うものではありますが、あれだけ怪獣保護に熱心であり、ウルトラマンとも融合しているムサシが、意思疎通を図る素振りが全く無しに見た瞬間から殺る気満々だぜぇなのは、『コスモス』の悪い意味でふわっとした――前提条件がしっかり設計されていないように見える――部分。
 コンセプトが「怪獣保護」であるだけに、対宇宙人になると従来作と同じ、どころかむしろ過激ともいえる対応になっているのが嫌でも悪目立ちするわけですが、この地球はなにか、異星人に対して反動的な歴史でも持っているのでしょうか。
 地球への移住を強行しようとする、幾何学模様に3人1セットの異次元人ギギは三面怪人ダダ、二千億人移住計画は「侵略者を撃て」、人間小型化は「1/8計画」を思わせ、シリーズ過去作のオマージュというか、ある種の意識的なパッチワーク感。
 小型化実験のサンプルとされたムサシたちは、ヒウラが持ち込んでいた旧型の装備で、外部との連絡に成功。
 「あの頃の不完全なメカの方が、役に立つ事もある」
 ……と言うのですが、別に今回、「完全なマシンが、その完全さ故に脆さを見せる」ようなエピソードでもなんでもなく、繰り返し描写されるローテク凄いぜ、がヒウラのこだわりが役立つ事もある、以上でも以下でもなく、一つのフレームに5つも6つも題材を収めようとして、総じてピンぼけ。
 「当たり前でしょ。二人のスピリッツが詰まっているのよ」
 で、ハイテクが封じられた状況でローテクが活路を切り拓くのも、丁寧にやれば知的な面白さを出せたと思うのですが、精神論に集約されてしまうので、「人間とテクノロジーの関係」が主題として浮かび上がるわけでもなく、視点が異次元の迷宮を彷徨い続けます。
 「完璧な解決方法を捨てて、武力での解決を選ぶとは残念だ」
 脱出口を探すと別行動したムサシがコスモスに変身するとギギから厭味を言われ、コスモスさん、多分ちょっとショック(笑)
 合体したギギは3つの顔がアシュラマン状態な姿に巨大化し、頭部をグルグル回しながらの連続ビーム攻撃は面白くて、デザインは秀逸。
 コスモスさんはひとまず、謎のパワーで小型化された人々を元の大きさに戻し、
 「ムサシは?!」
 「ムサシ隊員は、先に救出した」
 当然のツッコミを受けると普通に弁明し、“ウルトラマンと人類の直接対話”を凄く雑に放り込んできて、変な笑いが浮かびます。
 巨大化したコスモスはギギ怒濤のビーム攻撃に苦戦するが、テックサンダーの急降下攻撃がギギの頭上に直撃した隙に体勢を立て直し、コロナの発動と共に挿入歌が流れ出すのは、前回に比べてだいぶ納得の使用法(笑)
 コスモスが怒りの踵落としを炸裂させていた頃、研究所内部ではギギが潜入に使用した装置を前に、人類の技術的進歩の為に装置を確保したいサワグチと、コスモスの援護の為にも装置を破壊したいヒウラの意見が対立。
 結局ヒウラの意見が通るのですが、異次元のオーバーテクノロジーなど無くても……という「人類の可能性」の話かと思いきや、何故か、天才の君が居れば大丈夫、という「個人の才能」にスライドしてしまい、ここも激しくピンぼけ。
 人類の技術水準を上げたい、というサワグチの考えも、これといってエピソードの芯として機能せず(故に、それとは別のヒウラキャップの考え方も、その場その場のトラブル解決手段以上のものにならない)、もはや教科書的なピンぼけぶり。
 ヒウラが鉄パイプで装置を破壊するとギギはこの次元で存在を保ちにくくなったところを、コスモスが爆殺。
 やたらと親しげなヒウラとサワグチはかつて恋人同士だった事が明かされ、気取った事を言う割に、相手が踏み込んでくると有耶無耶加減で逃走を図るキャップがヘタレ、でつづく。
 古典的な侵略サスペンスの要素を取り込んで状況設定そのものは面白かったのですが、パッチワーク要素も含め、盛り込んだテーマがあまりにも散らかり放題で残念でした。
 次回――怪獣(ポジション)のデザインが怖すぎるのですが。

◆第18話「二人山伝説」◆ (監督/特技監督:村石宏實 脚本:川上英幸)
 どうして、2話連続、年長組のロマンスの話になったのか。
 休暇を取ったリーダーが、妻を亡くしたかつての上官、竹越チーフの暮らす香野村を訪れるが、無理な開発で言い伝えの封印が壊された事により伝説の怨霊鬼が甦ってしまい、このデザインが超怖い。
 2クール目からOP映像に登場した新規メカ、海中メカ回はまさにメインの扱いでしたが、ドリルメカの方は山を掘り抜くも怨霊の霊気に吹き飛ばされ、ビーム攻撃も通用せず、冴えない扱いのまま、コスモス登場。
 癒やしの波動を使ってみるが地球の怨霊には通用せず、日本刀vsスペースクンフーは迫力のバトル。前回-今回と、比較的動きやすいデザインの人型を相手に、アクション面は充実しており、コロナモードによる突然のスペースサンダーも直撃による爆発と合わせて映像は派手で格好良かったです。
 大ダメージを負いながらもコスモスに迫る怨霊だったが、シノブの説教により成仏し……「6年越しで恋愛感情を抱いていた男に年頃の娘が居た事から身を引く事を決め、今の幸せは仕事の中にある、と新しい一歩を踏み出すシノブ」という主題と、「戦国の世の悲恋伝説」の接点があまりにも強引で、辛い恋から逃げ出した末の逆恨みとか許さない、とリーダーが切々と訴えるクライマックスに、正直ぽかん。
 恋愛ドラマとしてシノブの心情に重きを置くならせめて前後編は必要ですし、「恋愛に至上の価値を置かないで歩んでいく生き方」を描くにしては、伝説の悲恋と現在のシノブが向かいあう障害の種類が違いすぎますし、「普遍的な人を愛するという事」を表現するにしては、互いの背景が重苦しい上にどちらも成就しないので、ユーモア皆無で本当にただ辛いだけの話になっていますし、そこにクライマックスを持ってくるのなら最低限、現在と過去の接点をもう少し広げてほしかったところ。
 なにより、シノブと竹越父娘の間のドラマに関して、再婚を考えている父親を持った中学三年生(+シノブ&竹越)の複雑な心情、とか明らかに1話にまとまりきらない要素なので、“それらしいシチュエーションの断片を散りばめて視聴者に行間を定石で埋めてもらう”形で誤魔化せば当然、上辺の約束事だけの物語しか表現できはしない(要するに、シノブの物語、にならず、どこかで見たような物語の継ぎ接ぎにしかならない)ので、それを前提としたクライマックス(シノブ説得)が劇的になるわけがなく、率直に、どうしてこんな話を出してしまったのか、というレベル。
 上辺といえば、「悲恋伝説」にしろ「開発計画で封印を解放」にしろ月並みな要素を填め込んだだけとはいえ、総じて、珍しい内容のエピソードをやろうとして空回りした部分もありそうでしょうか。
 次回――も、ロマンス……?