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7月10日はウルトラマンの日

ウルトラマンコスモス』感想・第16話

◆第16話「飛ぶクジラ」◆ (監督:市野龍一 脚本:長谷川圭一 特技監督:佐川和夫)
 ある日突然、都市上空に巨大なクジラが浮かび……意図的なものか、CG担当者の作風なのかはわかりませんが、以前に出てきた夢の羊と似た雰囲気。
 調査の結果、クジラは実体の無い幻像と判明するが、それを見上げる一人の少女。
 「みんな嫌い……でも、私にはジラークが居るもの」
 少女の憎しみを吸って成長するかのように、強力な電波障害と共に、空飛ぶ巨大クジラ――ジラークがカオス化し、異常な現象の背後には、生物・無機物・そして人の心にまで取り憑いたカオスヘッダーが存在していたのだった!
 クジラと泳ぎたい、という少女の夢を否定して傷付けてしまった事が、クジラ騒動の原因かも、と思い悩む少年の相談を受けたムサシは少女宅へと向かい、突拍子もない事象が進行中とはいえ、大人からすれば突拍子もない少年の話を真剣に聞いて対応する姿で、ムサシのヒーロー像を補強。
 特にムサシの、“怪獣への純粋な想い”“子供に近い目線”の部分は、「現実に対する認識の甘さ」「感情で動きすぎる浅はかさ」といったマイナス面の扱いが大きくなっていたので、そのプラス面を描いてくれたのは良かった点。
 だが、案の定《説得》スキルにポイントを振っていなかったムサシは判定に失敗し、周囲に憎しみを募らせ続ける少女は、光の球となって自室の外へと飛び出してしまう。
 「もうじき、ジラークが空から、降りてくるよ」
 「え?」
 「そして、学校から何から、跡形もなく吹き飛ばすの。きっと、気持ちいいよね。いい気味だよね」
 だいぶこじらせていた少女がジラークと一体化すると、何故か人型(クジラを下から見たフォルムを人型に落とし込んでいるのですが、髭モチーフと思われる部分が触角にも見えてGっぽくもあったり)の巨大怪獣として実体化。
 まずは貴様から血祭りだぁ! とクジラ巨人の放った火球が少年を飲み込まんとしたその時、コスモスがそれを防ぐと、その登場に合わせて挿入歌が劇中初使用され……正直、え、ここで、急にそんな盛り上がり演出なの?! と思いました(笑)
 コスモスアイで体内の少女を確認したコスモスは癒やしの波動を放ち、突然、「フルムーンレクト」と技名と効果の説明がアイズから入って、同年の放映という以上の作品的関連性は無いのですが、この辺り『アギト』と真逆の作風なのはちょっと面白いところです。
 だが、クジラ巨人の素体となった少女の憎しみは簡単には消えず、反撃を受けて大地に叩きつけられるコスモス。
 「このままじゃ、コスモスが」
 意を決した少年は少女へと必死に呼びかけ、少女を傷付けた事を悔いた少年が、少女の為にクジラと泳げる場所について調べていた、のは説得力があって定石が綺麗にまとまり、少女が憎悪の呪縛から解き放たれた事で弱体化したクジラ巨人から、コスモスは無事に少女の切除手術に成功するのであった。
 ……以下ちょっと、話の良し悪しとは全く別の、“体験による見え方の違い”の話なのですが、私、自身や周囲を含めて“家業を持つ家の子供”と親しく付き合った経験がない為、登校の時点から父親に「寄り道しないでさっさと帰ってこいよ! 今日も忙しいんだから!」と声をかけられ、帰宅するや否や配達を頼まれる家庭で育っているゲスト少年が、自分の夢を持てずにいて、ハッキリと夢を口に出来る少女へ必要以上に辛く当たってしまった、のがすっごいキツかったのですが、私が過敏に反応しすぎなのか、ある程度は作り手の意図を見て然るべき部分なのか、後者だったら結構重苦しいエピソードではあるな、と。
 大団円のシーンで、少年にとっての“パンの肯定”要素が入るので、少なからず後者への意識は見えるのですが……勿論、仮に家業が無くとも、個々の家庭に様々な事情があって、その影響は否応なしに受けるわけですが、少年少女を軸に据えつつ幼い心に宿る負の感情を抉り、そういった部分の切り込み方などに、長谷川さんらしさを感じるエピソードでありました。
 次回――なにやらダダっぽい。