東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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民俗学とかミステリとか

梅雨時の読書メモ

●『蛇』(吉野裕子
 古代日本人の蛇信仰を様々な角度から検証し、蛇の見立てとそれに由来する呪物、現在にも見えるその名残、を紐解き、なかなか面白かったのですが、あまり反証なしに、ダイナミックにガンガン「私はこう推理する」で進んでいくので、丸呑みにはしにくい印象。無論、学問的には、ここから批判と考証が重ねられていくものなのでありましょうが。

●『レヴィ=ストロース』(吉田禎吾・板橋作美浜本満
●『レヴィ=ストロース入門』(小田亮
 いい加減、レヴィ=ストロースを通っておかねばと、ひとまず平易な解説書の類を探してみたのですが、『入門』とついている方は全く「入門」ではなく、ついていない方がまだわかりやすかったです(笑) 双方を読み比べる事で、なんとか理解度が増しましたが。
 とりあえず両方とも、本人の著者は大変難解、で一致。

●『難事件カフェ2』(似鳥鶏
 父親から継いだ喫茶店を経営する兄・季と、元敏腕刑事の弟・智。極めて優秀なキャリアながら退職した智は、趣味の菓子作りを活かしてすっかりパティシエとして店に定着していたが、その頭脳を手放したくない県警は、あの手この手で智を復帰させようと秘書室の直ちゃんを店に送り込んでは、難事件の捜査協力を持ちかけ、気がつけば直ちゃんにペースを握られている兄弟が事件の謎に挑む事になる連作ミステリ。
 いつの間にやら出版社とタイトルを変えてシリーズ続刊が出ていた! 案件で、作者の持ち味でありますがキャラクターのやり取りが軽妙で面白く、兄キャラ好きとしてはお兄さんと直ちゃんのやり取りだけで楽しい。

●『キッド・ピストルズの妄想』(山口雅也


 「犯人は、ある意味で狂っていたんじゃろう」
 「――そうか、結構だ。おいらは、犯人は狂ってました、って結論でもいっこう構わない。しかし、その<ある意味で>というやつが知りたいんだ。人はわけのわからない事件に出合うと、みな、狂人のやったことでしょう、で済ませてしまう。おいらが知りたいのはその先だ」
(「神なき塔」)
 パラレル英国でパンク刑事が、マザーグースをモチーフにした奇怪な事件と遭遇する<パンク・マザーグースの事件簿>シリーズ3作目(未読ですが、ゲームブックを原型にした長編『13人目の探偵士』があり)。
 反重力の証明を目指す物理学者が塔から飛び降りた筈が、その死体が何故か屋上で発見される「神なき塔」、現代のノアを標榜する大富豪が作り出した、新たなノアの箱舟の中で死体が発見される「ノアの最後の航海」、200年の歴史を持つ巨大庭園で行われる宝探しゲーム「永劫の庭」……今作でも凝った舞台設定、奇矯だがどこかユーモアのある登場人物たちが織り成す混沌が魅力的な謎を生み出し、面白かったです。
 3作それぞれ、重力理論、遺伝子学、仏国式~英国式庭園の思想、といった主題に関するかなり長い語りを含むのですが、いずれも登場人物の造形としっかりと噛み合っており、重さを感じずに読ませる手腕が実に鮮やか。とにかく語り口の巧さが光ります。
 3作いずれも結末が美しく、甲乙付けがたい出来の短編集でした。

●『キッド・ピストルズの慢心』(山口雅也
 <パンク・マザーグースの事件簿>シリーズ4作目。
 『妄想』が比較的長めの中編3本だったのに対し、やや短めの5本が収録され、世界観と語り口が魅力の作品だけに、中編ぐらいの分量で少し饒舌なぐらいが面白い、という印象。唯一、中編程度の分量の「ピンク・ベラドンナの改心」で滔々と語られる主題がSM、というのが振るっていますが(笑)
 ただ、一編一編が短めな分、謎解きはシャープにまとまっていて、古典の趣のあるミステリとしては、読みやすい内容。