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妖怪とストレス

ウルトラマンコスモス』感想・第9-10話

◆第9話「森の友だち」◆ (監督:原田昌樹 脚本:武上純希 特技監督:原田昌樹)
 隊長! 空手チョップ隊長じゃないですか!
 ……という反応は、『牙狼』で邪美さんが出てきた時にもやったような覚え。
 そんなわけで、後に『ネクサス』でナイトレイダーの隊長を演じる石橋保さんがゲスト出演し、山の妖怪・ヤマワラワと少年の交流話……かと思ったら、かつて同じ妖怪と親しかった少年父の郷愁と訣別が主題となる、ちょっとした変化球。
 「駄目なんだ……僕はもう、大人になってしまったから。……もう、君と……遊んでは、いられないんだ」
 人の子の親となった事で、かつての少年は大人であり続ける事を選び、あの日の友達は静かに姿を消す――。
 「ヤマワラワは、どこに行ってしまったのかしら……」
 「……きっと、人間には近付けないあいつだけの世界があるんでしょう」
 原田監督らしいファンタジックな演出が貫かれた一編で(なお、らくだ便がちらっと登場)、もともと親和性が高いとはいえ、怪獣の撃破に縛りの緩い今作の特性も活かして、完全に《ウルトラ》というより怪異譚なのですが、幅広く仕事をしている方とはいえ、武上さんにこういう引き出しもあったのはビックリ。
 エピソードとしてはこれといって響いてきませんでしたが、ビッグフット系のヤマワラワのデザインは面白かったです。
 それにしても、ヤマワラワはカオス化しているのでは? というミスディレクションの為だけに飛んできたカオスヘッダーさんには、もう少し真面目に仕事をしていただきたい。

◆第10話「青銅の魔神」◆ (監督:根本実樹 脚本:大西信介 特技監督:佐川和夫)
 紀元前5000年前の遺跡から発掘されたガラスケースと、その中に収められた青銅の魔神像。遺跡発掘の功労者であり、学生時代の友人であった吉井の依頼でケースと像を調査したドイガキは、その像が、人間のストレスを吸収する事を突き止める。
 ところが、アイズメンバーのストレスを次々と吸い取っていった像は形相が変化するとアイズ基地から瞬間移動で姿を消し、人々のストレスを吸収しながら徐々に巨大化していってしまう……魔神像ゲシュートは確かに人々のストレスを吸い取り心を穏やかにする力を持っていたが、同時に、蓄積したストレスが一定を越えるとゲシュートそのものが怒れる魔神と化してしまう、厄介な存在だったのだ!
 「あの青銅像ゲシュートは、空からの友人がくれた物とも書いてあります」
 「空からの友人?」
 「多分……宇宙から来た誰かが、ストレスを吸収する青銅像を、プレゼントしてくれたんですよ」
 またバー○星人の仕業か。
 空からの友人といってもカーゴカルト的な発想と思われますし、プレゼント=手に負えなくなったマジックアイテムを不法投棄、が想像に難くありません。
 そうこうしている内にゲシュートはビルよりも大きくなってしまい、遺跡の碑文に刻まれた“神の怒る日”が来ると、その目から放たれる光線を受けた人々は凄まじいストレスに苛まれる事になり、この像の落とし主からは、地球文明に対する強烈な悪意ないし全くの無関心を感じます!
 激しい攻撃衝動に取り憑かれたフブキが巨大ゲシュートのみならずコスモスに攻撃を仕掛ける一幕があるもウルトラネコだましで正気に戻ると、コスモスはゲシュートと激突。両生類系の顔をしたゲシュートのデザインは面白く、スペース拳法のぶつかり合いの末(コスモスに合わせてなのか、今作の人型怪獣はスペースクンフーマスターが多いような……)ストレス光線の連打を浴びて苦しむコスモスだが、秘拳ストレス返しによって増幅したストレスを逆に打ち込むと、膨大なストレスエネルギーを吸収しきれなかったゲシュートは、木っ葉微塵に吹き飛ぶのであった。
 どうしてコスモスがストレスを増幅反射できたのかは割と謎なのですが、同僚や親族が血に飢えた戦闘民族ばかりだと、何かとストレスが溜まるのです、きっと。
 ラスト、どういうわけか元に戻った青銅像は再び封印のガラスケースに収められ……封印を解くと生命体のストレスを無差別に吸収・神出鬼没の瞬間移動能力・ストレスエネルギーが一定まで蓄積されると破壊とストレスを撒き散らす・ウルトラマンでも破壊不能、って全銀河レベルでヤバいブツなのでは、これ。
 古代遺跡からの発掘品が巻き起こす珍騒動に現代社会への風刺を交え、アイズメンバーに愛嬌をつけようとする意識もハッキリと見えて、なかなか面白かったです。
 ただ、ただでさえ下を軽んじ高圧的に接するパワハラ体質の気があるフブキ隊員、ストレスが溜まると攻撃的になる、ってスーパー駄目人間すぎて目も当てられず、フブキみたいなタイプこそ、ストレスが溜まると落ち込みやすくなるとか、物語が破綻しない程度にコミカルな味付けをした方が良かったようには思え、この辺りのデリカシー不足は、引き続き、気になるところ。