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キャップがルールだ

ウルトラマンコスモス』感想・第6話

◆第6話「怪獣一本釣り」◆ (監督:市野龍一 脚本:増田貴彦 特技監督:村石宏實)
 地下鉄の拡張工事によって地底怪獣モグルドンが目を覚まし、捕獲作戦を立案したドイガキは、その為に苦手な3号機のパイロットを任される事に。
 「言い出しっぺがする! それがアイズのルール」
 ……ホント大丈夫ですか、このキャップ。
 「あ、アイズのルールって……初めて聞きましたよそんなルール?!」
 ……ホント大丈夫ですか、この組織。
 「目標があると燃えるわね」
 かくしてリーダーのスパルタ指導により、3号機の操縦訓練にいそしむ事になるドイガキだが、及第点にはほど遠い段階で再びモグルドンが出現。
 全体のコミカルな調子で誤魔化していますが、正直、マグニチュード8レベルの直下型地震を引き起こす怪獣とか、捕獲作戦を立案している場合ではないと思うのですが(地中攻撃用の装備とか無いのかもですが……)、なまじ第1話で対立項としての「防衛軍」を出してしまった事で漂う、これはもはや防衛軍案件なのでは感。
 まあ防衛軍は防衛軍で即応体制が取れないとか問題があると考えればSRC主導に納得はできるのですが、限りなく失敗の許されない作戦に、評価40点の隊員をそのまま投入するチャレンジ精神は不要だと思いますし、怪獣の脅威は描かなければならないが(描かないと「怪獣」にならないが)、描けば描くほど、そんな悠長な対応をしている場合ではないのでは、となるのは難しいポイント。
 今後そのポイントが作劇の洗練により克服されていくのか、そういう作品世界なのでと押し通すのか、防衛軍や人類社会との関係性を含めてよりシビアに掘り下げられていくのか……今作の針路は興味深いところです。
 絶縁状態の父からのアドバイスを受けて怪獣一本釣りを成功させるドイガキだが、釣りあげたモグラ発電所を破壊した際の衝撃で3号機は墜落し、ムサシはコスモスへと変身。
 地上で直立したモグラ怪獣は、ハクション大魔王のツボのごとき、にやけた顔のように見える腹の模様を見せつけ、その瞬間にコスモスさんがブチギレコロナしたら個人的には大変面白かったのですが、青い姿を保つコスモスさん、子供怪獣にいきなりヤクザキックを叩き込むような諸先輩方とは一線を画す聖人の対応。
 だがそれが裏目に出てしまい、顔の模様の持つ催眠効果に引っかかったコスモスは尻尾ではたかれ、ここで改めて怒髪天を突いたら個人的には非常に面白かったのですが、逆に尻尾を利用してモグラをふん捕まえると、わざとらしくつぶらな瞳の怪獣を引きずり回し、時と場合によっては、青でもそれなりにえぐい。
 そうこうしている内にタイマーが鳴ったコスモスは、尻尾でぐるぐる巻きにして怪獣の動きを封じると、落ち着けビームを放って眠らせ、撤収。残った怪獣はアイズの手によって保護センターへ運ばれていき、家を継がずに飛び出していった息子の活躍をTV中継で目にしながら、ドイガキ父はグラス一杯の日本酒をあおるのであった……。
 後日、アイズにはドイガキ家から鰹一尾がまるごと送られてくるが、同封されていた手紙には「へたくそ」の4文字が大書されており、男親面倒くさい、でオチ。
 全体を緩い空気でまとめて、“そういうエピソード”として今回は成立させているのですが、作品全体としては「人類に怪獣を駆逐する権利があるのか?」という命題を劇中で取り上げないまま「怪獣の捕獲を基本的前提とした物語(世界)」を走らせている結果、「怪獣被害の規模と捕獲作戦の妥当性が検討されない」問題が発生しており、ではその消去されたテーゼ――「怪獣を駆逐するという選択肢」がどこに存在するかといえば、現時点ではシリーズ従来作の中(或いは、前日譚の映画に盛り込まれていた可能性はありますが)であって、アンチテーゼとしての『コスモス』を成立させる為のテーゼ(『コスモス』のテーゼを成立させる為のアンチテーゼ)が、メタ的に外部に依存しているというのは、良くも悪くも円谷らしい方法論(例えば作風の全く違う『ネクサス』も、根っこは同様の方法論が用いられている)。
 次回――どう見てもガラモンだ!