『仮面ライダードライブ』感想・第6話
◆第6話「戦士はだれのために戦うのか」◆ (監督:諸田敏 脚本:三条陸)
ブレン毒に冒されたドライブは777に紛れて辛うじて身を隠し、救急車の力で緊急回復するも、気絶。爆薬密輸疑惑のかかるフォントアール社の社長には任意で事情聴取が行われるが、何故か公安の介入により、社長の身柄は解放された上、特状課は活動を凍結されてしまう。
「あの死神の言った通りになっちまったぜ……正義なんか、どこにもありゃしねぇ!」
う、うん……まあ、ええと……わかりやすいといえばわかりやすいのですが、進ノ介、捜査一課でバリバリやっていたにしては、ピュアすぎなのでは。
まだ立ち上がりなので進ノ介のキャラクターが固まりきっていない部分はあったのでしょうが、前回-今回と、物語の中で直面した命題に向き合うキャラクターを描くのではなく、やりたいテーマの為にキャラクターの言行を著しく歪めてしまっていて、脚本・演出ともに冴えない出来。
特に進ノ介の場合、過去のトラウマによりエリート刑事から脱落してサボり魔に落ち着いたが本質は正義感に溢れる切れ者、というのが第1-4話までで確立したアイデンティティ(その背景そのものが、進ノ介の知性・閃きや、追田刑事との信頼関係を担保しているので崩せない)であったので、人間の悪意とか初めて見ました!レベルのやたらピュアなリアクションは、土台ごと大穴を空けてジャンプ台として全く機能していません。
どういうわけか接収した特状課の部屋でくつろいでいた公安の人が、FR社と繋がっていた汚職警官だと判明し、液体爆薬を求めてFR社の工場を狙う金槌ミュード。
「正義じゃない! 俺は市民を守るんだ! 変身!!」
人の善意に救われて再びギアの入った進ノ介は、立ちはだかるチェイス@普段はヘルメットも被るタイプを前に、パッション全開でタイプワイルドを発動。
特徴的だった胴体輪切りタイヤが右肩に移動すると……ゴーグル部分以外ほぼ別人の大胆なフォームチェンジを遂げ……えー……レーシングカーから4WD車へみたいなイメージなのか、フォームチェンジというよりは2号ロボが出てきたというか、お見合い写真と実物が違いすぎて詐欺で訴えたら勝てそうなぐらい面影のない、タイプゴリラに。
ゴリラドライブは前回使い越せなかったドリルでチェイサーを殴り倒し、筋肉至上主義を見せつけると現場へ急ぐが、バイラルコア(ロイミュードの肉体の素との事)を過剰摂取したナンバー074が巨大コブラへと変身。
《平成ライダー》名物の巨大CGバトルがだいぶ強引に始まると、トライドロンもワイルドタイプへ変形してドリルアタックで074を粉砕し、
〔ドライブ新タイプ・発動する為に主人公を襲う試練・そのテーマを補強する為に人類悪を語り出すチェイス・チェイス追加装備・主人公が直面する試練の過程でチームアップを見せる特状課・タイプワイルド・巨大CGバトル・ワイルドトライドロン・ワイルドドライブの見せ場〕
は、いっくら『ドライブ』でも、詰め込みすぎ感。
「新車だ! ひとっ走り付き合えよ!」
残るニトロ金槌とのパワー対決に打ち克ったドライブは、トドメを刺そうとハンドル剣を召喚しようとするが、呼んでも来ないハンマーに兄上大ショック! ……じゃなかった、何故かりんながそれを持ってやってきて、急に差し込まれるギャグの間合いが極めてテンポ悪し。
これは『オーズ』後半ぐらいからシリーズで目立ってくる演出で、流れを考えると、それがウケている、という事ではあるのでしょうが、コミカル要素を物語に馴染ませるのではなく、全く別の空気として挿入してくるのは、個人的には苦手な手法。
ドライブは気を取り直してドリフト回転斬りで勝利を収め、シフトカーをむんずと掴んでいたりんなさんは、最初からベルトさんの一味でした! で、オチ。
「秘密主義も大概にしてほしいぜ! もう無いだろうな!?」
さすがに不機嫌を露わにする進ノ介だがベルトさんはノーコメントでやり過ごし、進ノ介が協力者として正体を明かしてもいいのでは? とした公安の人が汚職警官だった要素を仕込む事で、ベルトさんの秘密主義を否定しきれない構造にしているのですが、その為に、ちょっと特状課と仮面ライダーを認められただけでコロリとほだされる迂闊な進ノ介が誕生してしまい、とにかくやりたいテーマの為に、肝心のコア部分である主人公像が雑な扱いになってしまったのは残念
そして、ハンドル剣の開発者などで存在を匂わされていた“協力者”そのものは妥当な上で、これもベルトさんに否定された特状課への正体公開……も何もそもそも特状課の正規メンバーの半分がドライブの正体を知っていた事になり、もはやほとんど有名無実というか、知る者が少ないほど秘密が守られるのは全く間違っていないのですが、ただの女好きみたいですよベルトさん!
本当にベルトは信じていていいのか……進ノ介は、考えるのをやめた。