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「武突参流古武術、ジョギング!」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第10話

◆第10カイ!「お昼も夜でもブルースカイ!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 介人との約束を守り、物々交換で食糧調達をする劇団ゴールドツイカー一座は、ビルの上に立つマヒルワルドを見つけると、問答無用でいきなり銃撃。
 ゾックスは、ギアに接吻するキザな仕草から、満面の笑みでへい! へいへい! すると、丁度やってきたゼンカイジャーに戦闘員を押しつけてワルドを追い……
 「あ! 雑魚という事は、雑魚でない奴も居たのでは?!」
 という頭の使い方が、今回の地味に好きなポイント(笑)
 白と赤が金を追いかけていったところでOPに入り、カラフルにおけるゼンカイジャーの日常シーンの映像がちょこちょこ変わっておりますが、今回で3パターン目ぐらいでしょうか。
 ツーカイジャーは真昼ワルドを追い、変な太陽頭と変な金色スーツが走ってきた上に足下で銃弾が爆ぜても一切動じずいちゃいちゃしているカップル、周囲が見えていないというよりも、アース-45人の根本的な肝の太さを感じます(笑)
 これ幸いとカップル男を人質に取る真昼だったが、金は一切の躊躇なくトリガーを引く人質無用体質を見せつけ、前回に続いて、この世界の事はどうでもいいという態度を貫いて、現状、心配になるぐらい、悪党寄り。
 ……だって多分、ステイシーはお金払ってタコ焼き買ったよ?!
 そもそも“世界のヒーロー”となる積極的な理由が全く存在しない者、を真っ正面から放り込んできたのは、吉と出るか凶と出るか、今後の成り行きを期待したいですが……数多の並行世界の存在を前提とする今作、「ヒーローはどこまでの世界を守るべきなのか、或いは、どこまでの世界を守ればヒーローなのか、また或いは、全ての世界を守れなければヒーローではないのか?」といった狙いが潜んでいる可能性もありそうでしょうか。
 ゾックスも見方によっては、“家族という世界のヒーロー”とはいえますし。
 今のところは大丈夫そうですが、あまり露悪的な方向に行かないいいな、と思いつつ、人質無用で戦闘を繰り広げる金を目撃した赤と白は、21バーンのギアを発動すると、メガレンジャーの力を発動し、ジュランの盾でサーフィンしようぜ! で、光るネットの網をくぐって人質を救出。
 「あのね、俺たちは人助けやってんじゃねぇの。……そいう事で。さらばーーーい」
 その間に真昼ワルドには逃げられてしまい、介人の文句を受け流したゾックスは離脱しようとするが、ジュランを踏み台にファイト! いっぱーつ! …………で、今度は届いた(笑)
 「弟を元に戻す為だよ!」
 宇宙船に乗り込んできた介人の一方的な詰問口調に腹を立てたフリントが一座の目的を明かし、兄妹4人が仲良く写った写真を……う……家族写真……わ、惑星シドン……げふげふ、今ちょっと、地球戦隊が混信しましたがひとまず置いておいて、そこにゾックス&フリントと共に笑顔を浮かべていたのは、双子の少年。
 「この姿で兄弟っておかしいだろ」
 「他の世界じゃ……よくある事なのかなって」
 トジテンドから奪った技術で並行世界を渡り歩き、世界海賊を行っていた一座だが、SDトピアで「ちょっとしくじった」2人が呪いで奇妙な姿に変わってしまい……この2人に漂うどこか懐かしい感じは、割とそのままであった事が判明(笑)
 2人の治療の為に再びSDトピアに乗り込もうとした一座だが、折悪しくトジテンドの侵略を受けたSDトピアはギアに封じられてしまい、以後4人は、SDトピア解放の為にトジテンドを倒すべく行動していたのであった。
 「……つー事で、俺たちは一日も早くトジテンド倒して、SDトピア開放するしかないわけ。他人の事なんか、いちいち構ってらんねぇんだ。おまえらと違って」
 並行世界移動技術はトジテンド由来なので、それを自分たちのものにしたゾックス達だけが世界界賊であり、トジテンドには侵入を試みたがファイアウォールに阻まれて失敗、と素早くもろもろ整理され(整理する事を恐れない、のは香村脚本の長所の一つ)、カラフルに戻った介人は情報を共有。
 「僕は……ゾックスたちの気持ち、わかるなぁ」
 「はん、おまえもこの世界の生き物だけが大事で、キカイノイドの事、どーでもいいもんな」
 「うん!」
 「いや、否定してくれる?」
 一応、100%それだけではない事が示されてはいるものの、ガオーンは今日も清々しかった。
 「俺もわかるんだよなぁ……」
 「でも介人は、他の人のこと、どうでもよくないっチュン。だから今、ゾックス達のこと考えてるチュン」
 「まあね……」
 個人の理由の為に大義を見失う事もあるが、それでも、ゾックス達も何とかならないかと気に懸ける事そのものが介人の持つヒーロー性である、というのは巧い接続。
 「自分的には、あいつらの事こそどうでもいいっていう……あいつらが呪われたのって、よその世界に悪い事しようとしたからだし……」
 後々、双子が「ちょっとしくじった」のは私利私欲の為ではなかった、といった理由付けはされそうですが、マジーヌがきちっとここにツッコんできたのは、偉い。
 黙り込んでいたブルーンは、「SD」とは何か、の答を見つけて快哉をあげ、「おまえ全然話聞いてねーのなー!」と、各人各様の物の見方や価値観、別々の反応を織り込んでくるのは、香村さんらしい構成。
 ちょっと気になるのは、このパーティにおける“良識”の人であるジュランが、相槌を打ったりツッコミを入れる一方、自分自身の意見は明確に発言していない事で、介人に気を遣っているゆえ、とも取れますが、もしかするとこの辺りに、ジュランのネガ部分が潜んでいる可能性はあるかもしれません。
 意外と、積極的に自分の信念で動けないというか(この場面で一番際どいところへ言及しているのはマジーヌですし)、介人が引っ張ってくれる現状、に居心地の良さを感じていたりするのかも。
 「世界が広がると、いろんな人が居るって事チュン」
 「……うん」
 敵の敵は即味方、とはいかない無法者集団との付き合い方に悩める介人たちだが……その一方で、トジテンドの作戦は深く静かにそしてまばゆく進行していた。
 真昼ワルドがその力により地球を常に真昼の世界に変える事でアース-45の生命は永遠の正午に囚われ、ワルド怪人の影響範囲が、本当に凄い(笑)
 宇宙からこれに気付いて地球に乗り込んだゾックスは、地下道に潜んでいた真昼ワルドを発見し、「また踊ってるー!」
 目的のギアを引っ張り出す為には、ワルド怪人を片っ端からフォージャスティス、その際、周辺で発生した被害の賠償に関してはトジテンドまで、とゾックスの行動原理が明文化され、周囲の被害にかまう事なく戦闘を繰り広げると、金はマーキングからのホーミング攻撃を披露。
 だがその一撃で吹き飛んだ真昼ワルドがビルにめり込んだ衝撃で壁面が落下し……逃げ遅れた人々を守って巨大な瓦礫を受け止めたのは、介人ら5人。
 さらっと生身で混ざっている介人、初回から垣間見せる身体能力と頑健さは、アース-45人をベースにノリの範疇(ギア使用後はその影響も?)だと捉えていたのですが、ステイシーがゼンカイザー(介人)に近い存在、というイジルデ発言を踏まえると、介人も半人半機の可能性も生じ……つまり功博士はアース-45人に偽装したキカイトピアからの亡命者だった?!
 或いは、愛する子供を事故で亡くした五色田夫妻がイジルデと手を結び、ニンゲンの介人はちょっと車にぶつかっただけで死んでしまったが、キカイのおまえは簡単には死なない。やりようによっては、ニンゲンの何百倍のパワーも持てるし、分離・変形・がっ(通信が途絶しました)。
 疑念はさておき、5人が根性全開で瓦礫を投げ飛ばした後、介人とキカイノイド市民が、同時に「「大丈夫?!」」と声をかけて笑みを浮かべるのは、「世界が広がると、いろんな人が居るって事チュン」を投げかけた上で、でも、どんな世界でも共通した他者を思いやる気持ちはある筈だ、と融合世界の光景として示して、今作のテーマのど真ん中で気持ち良かったです。
 そしてこのテーマ的には、介人は純正のアース-45人である方が活きるので、出生の秘密とかは無さそうではありましょうか。
 「馬っ鹿だなぁ……これでおまえが死んだら、大事な家族取り戻せなくなんのに」
 「……おまえがそういう奴なのは、よーくわかった。おまえは、全力全開で、トジテンド倒す事だけ考えてればいい」
 「ん?」
 「みんなの事は、俺が……いや……俺たちが守る! おまえら界賊の分も、全力・全開で守ってやる!」
 てっきりここから、家族も取り戻す、世界も守る、両方できないのは、おまえが全力全開じゃないからだ!! とかやってゾックスの心の隙間に突入するのかと思いましたがそこまではやらず、ステイシーといい界賊といい、「家族」テーマで繋げつつ、「家族」を万能の解決手段にするのは、慎重に避けている様子が窺えます。
 一方で、そういうおまえを全力でシめる! という方向に行かない理由が、〔市民の被害<ゾックス側の事情もわかる〕で飲み込むのは厳しい部分があり、ほぼメタ的に“ニンゲンだから”になってしまっているのは、やはりステイシー関連で余計な地雷を設置してしまった印象はあり。
 これでゾックスが見た目ニンゲンではなく、生物系着ぐるみ、例えば『ガオ』のロウキみたいな姿で投入できていれば、また違った意味も生まれてきたのですが。
 「……ふん。じゃ、遠慮なく」
 ツーカイジャーはまずはシンケンフォームで雑魚と大立ち回りを演じ、チェンジ全開した介人たちは、流れ弾からひたすら市民をカバーリング。ツーカイとの対比に加え、三日三晩不眠不休なので本調子ではない、という理由も乗せたのでしょうが、ばちばち弾丸を受けながらの名乗りや、戦闘に参加できずにカバーに徹するしかない、のはあまり面白く感じず。
 個人的に、眠い芝居があまり面白く見られない、というのもありましたが、苦境を乗り越えてこそのヒーロー、を「守る」で表現するにしても、戦闘員の豆鉄砲レベルでは盛り上がりにも欠け、いまひとつ冴えませんでした。
 宣言通りに遠慮のない戦いで戦闘員を壊滅させた金は、超力にレボリューションすると真昼ワルドに猛然と蹴りかかり、
 回して踊って! 伸ばして縮めて! ニータッチ! ニーキック! あちゃあ! ほぁたぁ! マッスルボーイ! よっほほーい! あちゃあ! うぉりゃぁ! U・A・O・H マッスル! プッシュ! キック! (どう見てもエアロビクスだ!!) ほぁぁたぁぁぁぁ!! どきゅーん!!
 古代超力文明に伝わっていたとされる(※独自の研究です)闘技・獲亜炉美駆守によって真昼ワルドを粉砕すると世界に夜が戻るが、すかさず巨大真昼ワルドが誕生し、充ち満ちる真昼パワー。
 睡眠不足の赤黄が戦闘不能に陥る中、占いには夜の神秘が必要、と桃がキレてゼンカイブルマジが出撃すると、日食グラスで太陽攻撃を打ち破って大勝利。
 言行は迫力に欠けるものの、大規模な法則干渉系の能力で地味にゼンカイジャーを窮地に追い込んでいた真昼ワルドですが、宇宙に居る相手には通用しなかった! は頓知の効いた敗因で面白かったです(笑)
 「やはり結束には至らぬようでアル。これはいずれ、奴らの命取りになる筈でアル」
 界賊一座は、眠りこけるゼンカイジャーを放置して立ち去っていき、まだまだ波乱含みの関係で、次回へつづく。