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「悪魔のドアからは逃げられないわ!」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第8話

◆第8カイ!「ドアtoドアで別世界?!」◆ (監督:山口恭平 脚本:香村純子)
 ゼンカイジャーの前に現れた、タコ焼きの王子様――その正体は、トジテンドの送り込んできた刺客・ステイシー!
 ギアトリンガーに酷似した装備で暗黒ギアからコピー戦隊を生み出したステイシーは、更にステイシーザーへと暗黒チェンジするとゼンカイザーと激突。コピー戦隊ロボの一群はジュランたちが撃破するが、ステイシーザーはギアを乱射して次々と巨大ロボを出現させ……前回もちらっと思いましたが、少々、ハッピートリガーの気配があります(笑)
 「やめろって! ロボで世界が埋まるだろ!」
 さすがに埋まらないとは思いますが、大変、介人らしい発想(笑)
 立ち向かう赤黄はダイデンジンバイオロボの必殺剣を受けて危機に陥るが、連射がたたってエネルギー切れでコピーロボ軍団は消滅していき、窮地の解決手段としてはざっくりめでしたが、ただでさえコピー戦隊(基本5人1セット)を召喚できるので、物量作戦の限界を早い内に提示したのはスマート。
 コピーロボ軍団の相手をする必要が無くなり、逆転全開だ、と5人ならんでシーザーを袋だたきにしようとするゼンカイジャーだが、そこにドアワルドをともなったバラシタラが乱入してくる。
 「手を貸してやるのでアル。息子の戦場デビュー祝いでアル」
 「「「「「息子ぉ?!」」」」」
 一同は驚愕の声をあげ、バラシタラ、バラすの早かった!
 「そいつの母親は人間である。398…………いや……483番目の妻だったか」
 「違う! ……893人目だ」
 「ヤバいどん引き……」
 このやり取り一つで、バラシタラの“妻”に対する感覚と、ステイシーの“母”、そして“父”への屈折した感情、更にはキカイトピア庶民の感覚は視聴者に近い事までが盛り込まれているのは、実に鮮やか(バラシタラが“番”で、ステイシーが“人”なのも、上手い)。
 ドアワルドの作り出したドアにバラバラに放り込まれたゼンカイジャーは、ドアをくぐる度に全く違う場所に転移してしまう安心と実績の魔空空間展開で、一般家庭、オフィス、茶室、エレベーター、ショッピングモール……トイレ、喫茶店、自動車の中、銭湯、柔道場……尋問室……動物園……とコミカルかつハイテンポに移動を繰り返し、混乱状況がエスカレート。
 バラシタラの「そいつの母親は人間」発言の直後に、アース-45人とキカイノイドを交えた二股男の修羅場が描かれているのがさりげなく秀逸で、各地に混乱が広がっている事を知る介人。
 「てことは! ドアが駄目なら! 窓だぁ!!」
 ……全く躊躇せず飛び出すのが、君は、ホント凄いな(笑)
 ところが窓からの脱出にも失敗し、かくなる上は、開いて開いて開き続けてやる! と合流を目指すゼンカイジャーは、姫路、沖縄、仙台、京都、北海道……とGWを合成映像で満喫し、更には、ロンドン、アーグラ、パリ、カイロ、南極……? と世界中をドアtoドアで駆け巡るダイボウケン。
 一方、父親の横槍で標的を無作為にばらまかれたタコ焼きの王子様はゼンカイジャーを探して走り回る羽目に陥り、王宮に戻ったバラシタラは「面白そうな戦いの行方が気になる」と、それを高みの見物。
 筋力に偏ったバトル好きかと思いきや、バラシタラの性質にぐっとえぐみが増したのはトジテンド上層部の描写として面白くなり……もしかして意外と、壁王様が一番素朴な人格なのでは(笑)
 川辺に置いてあった重機の中から飛び出した介人は仲間たちよりも先にステイシーと遭遇し、父親に悪態をつくステイシーの姿に、ふっと表情を緩める。
 「なんか安心したっていうか……バラシタラも、自分の子供を可愛く思う心があるんだなーと思って」
 う、うーん……あまり安易に悪役サイドに人間的な情を見てしまうと、その後の行動がダイレクトに家屋倒壊を招きかねないので、前回につづき、この辺りはちょっと危うげ。
 勿論、なんでもかんでも全面戦争に持ち込まずに講和の可能性を残しておくのも悪い事ではありませんが、良くも悪くもその辺りを濁す事で寓話として効果的に成立している部分はあるので、さじ加減を失敗しないように祈りたいところ。
 「適当な事を言うな! 俺の母は、あいつのせいで……」
 激高したステイシーは介人の胸ぐら掴み、ステイシーに関しては勿体ぶらずにどんどん情報公開しながら、立ち位置を明確にしていく見せ方に。
 「おまえ……親を取り戻すって言ったな? トジテンドにさらわれたのか?! じゃあ今頃おまえの親も、捨てられて野垂れ死んでるかもなぁ。俺の母みたいに!」
 バラシタラ、幾らなんでも妻が多すぎでは……と思ったのですが、「さらう」「捨てる」といったステイシーの言い分をそのまま受け止めると、トジテンドが様々な並行世界を侵略した際に、バラシタラが“戦利品”として女性を確保し、遺伝子を抽出するなどして、ドアイシーやスシイシーなど様々なタイプの子供を生産している、という可能性がありそうでしょうか。
 ……自分で書いていて、これはちょっと黒すぎる気はしますが、バラシタラが「実は……」で、ステイシーが誤解をしている可能性は現段階では低そうですし、ステイシー母が征服されたマカイトピアの姫だとすれば、“魔界の王子”もソウルネームではない事に。
 「……いや、逆の可能性もあったな。おまえの親はさらわれたんじゃなく、おまえを捨てた。バラシタラみたいに」
 邪悪な感想書きみたいな推測を突きつけて揺さぶりをかけるステイシーだが、介人の信念は揺るがない。
 「それはない! ……絶対ない。俺の父ちゃん母ちゃんは、そんな事しない!」
 「どうして言い切れる」
 「俺が、全力全開で、信じてるからだ」
 「……君達に恨みはないと言ったが、少し変わった。ゼンカイザー……いや、五色田介人と言ったな。僕はおまえが嫌いだ」
 親の愛を感じていないステイシーが、親の愛を信じ抜く介人のネガとしてきっちり収まり、個人的感情を介人に抱いたステイシーは、暗黒チェンジでバトル邪バーン。
 ドアワルドの介入を拒否したステイシーは、暗黒マスクマン&ファイブマンを召喚して10対1の戦いに持ち込み、劣化コピーとはいえ多勢に無勢で追い詰められていく白だが、Vソードの一撃を受けて地面に転がったその時、巨大な足が飛んでできて、コピー戦隊を踏みつぶした(笑)
 見上げるカイザーの前には巨大赤黄桃青が並び、4人は巨大化により、ドアを通らずに、走って/飛んで/泳いできたのだった!
 発送の転換と今作ならではの特性で怪人の能力を打ち破り、
 「5人揃って!」
 「「「「「機界戦隊・ゼンカイジャー!」」」」」
 吊り橋の上に飛び上がったカイザーの背後で、巨大な4人がポーズを決める大きさ不統一名乗りが面白&格好良く決まり、色々なアイデアを見せてくれて楽しい部分です。
 「行くぜ! 全力全開!」
 「ふん! ドアトピアのパワー、思い知らせてやるドア!」
 世界中、ただひたすらドアが立っているのはホラーというかシュルレアリスムだな……と想像するも束の間、ドアワルドは背後からシーザーに撃たれて爆死し、残った閉じるギアを巨大兵士に投げつける事で巨大ドアワルドを誕生させたシーザーは、白との一騎打ちを続行。
 暗黒フラッシュマンに囲まれた白は、44バーンでキラメイジャーのパワーを纏い、「ひらめキーング!(自動音声)」から周囲にキラメイストーンをばらまく事で窮地を脱し、直近の戦隊という事でか、物凄くざっくりした使われ方。
 ゼンカイオー赤黄と桃青も巨大ドアワルドを撃破し、ロボをお代わりするシーザーだが、突如として黒雲が湧くとそこから放たれたビームが暗黒ロボを消し飛ばし、続けて巨大なメカが空中に姿を見せる。
 「えーーー!」
 「「なんだあれ?!」」
 白と紫は並んで声を合わせ……この辺り、山口監督のノリと解釈が強そうですが、ステイシーは隙だらけ(笑)
 驚く二人の前にメカから降り立ったのは、黒いロングコートに真っ青なシャツを合わせた、奇抜な衣装の金髪の男。
 「よほほい よほほい よほほいほい~ 俺は海賊 お宝求めて 海から海へ~ 俺は海賊 自由求めて 世界から世界へ 必ず手に入れるぜ そしたら気分つーかい! よほほい!」
 白と紫がリアクションに困っている内に、軽快なリズムに乗せて通る声で歌い始めた男は笑顔を浮かべながら踊り出し、視聴者を含めて、全員を置き去りにしていく物凄いニューカマー。
 「なんだおまえは?」
 「ゾックス・ゴールドツイカー」
 一瞬、なんで「ソックス(靴下)」? と思ったのですが、ストレートに「賊」ですね……そして今これを書いていて、「ツイカー」=「追加」という、ごてごてとしていると見せて物凄く身も蓋もないファミリーネームだと気付きました(笑)
 35バーンのギアを手にした自称海賊は、操舵+カトラス+銃、という複合装備にギアを填めてグルグル回すと、チェンジツーカイ。円盤型の装備品をタンバリンのように叩くのは成る程で、激しいリズムに合わせて踊り狂うとツーカイにレボリューションし、黒地に金、そして赤の縁取りというド派手な姿へと変身。その名を――
 「海賊のパワー・ツーカイザー!」
 10年前の記念作品の追加戦士が銀色だったので、今回は当然金色、といった感のある黄金の戦士は、顔から胸部にかけては完全にゴーカイジャーながら、ワニの口を思わせショルダーアーマーがごつめにせり出し、足のギザギザのラインが特徴的。
 歌って踊って(キョウリュウジャーリュウソウジャー)、楽器をかき鳴らし(スターニンジャー)、ワニ感がある(ジュウオウザワールド)のは、近年の金色戦士(登場作品)の要素をかき集めてみたような感がありますが(ジュウオウザワールドは3色戦士ですがワニは金色部分)、とにかく情報量過多で、言及したい部分が整理しきれません(笑)
 ……あと、ビートバスターとパトレンXは、待機列に並んで物語の進行をお待ち下さい。
 「ツーカイに行くぜ!」
 なにやらギアを狙ってシーザーに襲いかかったツーカイザーは、場慣れした様子で膝蹴りから回し蹴りを叩き込み、シーザーが取り落とした暗黒ギアを破壊。
 これで同じコピーを使えないという事になりそうですが、初登場直後に追加戦士の踏み台にされてしまったシーザーは捨て台詞を残して撤収し、早くも、可哀想すぎる子になったのは、戦隊史に連綿と続くと一部で伝わる、「王子」の呪いなのか……?!
 「で……おまえら……何?」
 「「「「「いやこっちの台詞!」」」」」
 一同が全力で金にツッコんで、つづく。
 前回の予告時点で心理的に“ツーカイザー待ち”になってしまった為、登場までの成り行きが全て前座になってしまい、予告で見せないわけにはいかなかったのでしょうが、引っ張った末にクライマックスを持っていく構成は、あまりよろしくなかったかなーと。
 後、暗黒コピーとハッキリはしていても、偽戦隊や偽戦隊ロボを使い捨ての障害物扱いにするのは個人的にちょっと抵抗があり、過去作品との距離感に関しては、ステイシー登場前の方が好み。
 メタ要素との距離感と使用法という、作品開始前の不安要素が少し顔を出してきましたが、上手い舵取りを期待したいです。