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1・2・3・4・5! ファイブマン!

地球戦隊ファイブマン』感想・第1話

◆第1話「五兄弟戦士」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ……頭に、語。
 ナレーション「銀河系には、命の宿る星が、沢山ある。だが、それらの星が、次々と滅んでいくという、謎の現象が起きていた。そんな星の一つ、辺境惑星シドンに、死の星を生き返らせようと、対策に取り組む、地球人の一家があった」
 銀色の宇宙服に身を包んだ親子が、一面の砂漠と化した異星で、リトルグレイ系の現地の子供たちと共に星川緑化試験農場で植物を育てており、おおおおお、SFだ。
 異星の知的生命体の存在が認識されていたり、異星にさらわれたりはあるものの、地球人が外宇宙に進出している事が明確に描かれる世界観は、シリーズ史上でも初でしょうか。
 地球から持ち込んだ植物にシドンの地で花が咲いた喜びを分かち合っているところに、カプセルに入った双子の新生児を連れて人型ロボット・アーサーG6(声優は、前作で当時20代だったのに何故か老婆声の怪人を担当させられていた松本梨香)が姿を見せ、「地球を出てから8年」……という事は、子供達全員、地球を離れてから作った……?
 一家は花をバックにしてシドン星人と共に記念写真を撮るが、そこに赤文字のサブタイトルと深刻なジングルが入り、不吉すぎます(笑)
 その直後、それぞれの表情が静止した4つのカットで描かれ、何かに気付いた父博士がスローモーションで驚愕の表情を作る演出が、えぐい……!
 一同が見上げた空には、巨大な赤い宇宙戦艦の偉容が浮かび、その砲撃によって農場は無惨に破壊され、咲いたばかりの花は薙ぎ倒され、シドン星人の子供たちは死亡する(自分の命を省みず、不毛の母星に甦った花を守ろうとした末なのが実に痛切)。
 「何故、何故こんな事を……!」
 星川博士の悲痛な叫びがこだまする中、戦艦から降り立つ割とカラフルな一団。
 「余計な真似はやめてもらおう」
 はくちょう座の聖闘士を彷彿とさせる青い兜を輝かせ、多分この軍団の二枚目ポジションの銀河剣士ビリオン!(ブルー)
 「この星は、この私たちが滅ぼした。生き返る事は許さん!」
 カニレーザー、ならぬカニ頭だが多分この軍団の参謀ポジションの銀河博士ドルドラ!(イエロー)
 「なんだと?! じゃ、今この銀河で、次々と星が滅びてるというのは……」
 「銀帝軍ゾーンの偉大なる支配者、銀河皇帝メドー様の作戦や!」
 大黒様のような頭巾を被り、多分この軍団のコメディリリーフの銀河商人ドンゴロス!(レッド)
 その背後では卵ヘッドの女が無言で頷き、多分この軍団のクールポジションの銀河の牙・ザザ!(パープル)
 「メドー様の狙いは、全銀河の命を抹殺する事。いわんや一度滅ぼした星を甦らせようなどというような者は、絶対に許されん!」
 最後に髭面の男が剣を振り上げ、多分この軍団のリーダーを務めるガロア艦長!(ブラック)
 五人揃って――ギンテイジャー!!
 過去数年を踏まえると、『マスクマン』や『ターボレンジャー』で生じた幹部多すぎ問題が脳裏をよぎりますが、商人除いて顔出しの、彩り豊かな幹部陣の活躍は期待したいです。
 剣を振り上げた艦長に向けて、震える手で星川少年(長男)が光線銃を放ち、顔に傷を負うガロア。その隙にアーサーフラッシュが放たれて一家は逃走するが、空飛ぶ怪物ガメルギンが召喚され、その豪腕は、一家の逃げ込んだ宇宙基地の扉を易々と切り裂く。
 星川夫婦はアーサーに子供たちを託すとバリケードを作って必死に時間稼ぎを行い、オーソドックスではありますが、亀怪人の造形の良さに、緊張感を保ったハイテンポな見せ方は迫力があり、ぐいぐいと引き込まれます。
 子供たちを連れたアーサーは、なんとか宇宙船マグマベースに乗り込むが、その眼下で、両親を飲み込んで基地は爆発。涙を呑んでアーサーは発進レバーを引き、弦楽器の悲痛なメロディに乗せて惑星シドンを飛び立つマグマベース……
 「子供だけでどこまで飛べるやら」
 ギンテイジャーはそれを見上げて厭らしく嘲笑い、1年間の大河ストーリーの導入として、冒頭8分、滅茶苦茶面白いぞ……!
 「学、もうお休み」
 「アーサー……!」
 漆黒の宇宙を行くマグマベースの中で涙を流す少年がアーサーに抱きつくと、たまたま押したスイッチにより最後の家族写真がプリントアウトされるのがまたえぐく、『マスクマン』から4年連続のパイロット版担当となった長石監督の演出がキレキレ。
 「博士……お母さん……! 子供達は、この僕が必ず、立派に育ててみせます」
 アーサーは写真の中の星川夫妻に誓い、地球を離れ異星で生まれ育った5人の子供が悲劇的な運命の結果、意志と感情を持ったロボットに育てられるとか、これは、もう、スペオペだ……!!
 年端もいかない幼い子供たち、それを託されたロボット、一連の出来事を胸に刻み込んだ少年、幸せな瞬間の写真、そして全てを飲み込む漆黒……それぞれの姿が映された後、宇宙空間をゆく巨大なマグマベースの姿が大変叙情的で、この間合いが掴みとして大変沁みます。





ナレーション「こうして、アーサーG6が、5人の子供達を地球へ連れ帰ってから、20年の歳月が流れた」


 ――1990年・春。
 マグマベースの食卓には朝食が並び、フライパンを叩いて5人を起こすアーサーと、消防士のようにポールを伝って降りてくる5人。日常と非日常が混ざり合う空間で、成長した5人は揃ってニュータウン小学校の先生になっており、音楽を教えるレミ、体育を教える健、算数を教える数美、書道を教える文矢、理科を教える学、それぞれの授業風景が描かれる。
 前作は色のイメージからなんとなく属性に基づく(赤→炎、など)ネーミングでしたが、今作はそれぞれの得意科目に紐付けられており、長男の学(がく)だけ、総合する形。
 兄妹5人が同じ学校に就職とか、下の二人は何歳で教員になったの?! とか、疑問は幾つか湧きますが、そもそも1962年に星川夫妻が地球から惑星シドンに出発した世界なので、恐らく、二度に渡る世界大戦が起きずに原子核物理学とロケット工学とオーラパワーが宇宙開発分野で発展したとかそんな感じのアース-14なのです。
 (一応軽く調べたところ、短大卒で小学校教諭二種免許状の取得が出来るので、現実に20歳で教職につくのも可能?ではある模様。また、シドン→地球間に数年かかっていると思えば、年齢の違和感は薄くなりますが、その場合、学が30越えになる可能性があり、どれを取るのがいいのか(笑))
 もしかして:三十路、が浮上した学は屋外での授業中、学校の花壇に、あの白い花が咲いた事を生徒から報される。
 「とうとう咲いたか……」
 「先生はどうしてこの花がそんなに好きなんですか?」
 「ん? いろんな思い出が、一杯詰まってるんだよ……」
 花を見つめる学の脳裏には、遠いシドンの日々が思い浮かび……現在と過去を交錯させた切ない感情の見せ方が実に長石監督の得意技ですが、物思いにふける学の耳は近付く轟音を捉え……えええええ、なにこれ、面白すぎるのですが!!
 幸福と悲劇、そして家族――を象徴する思い出の花が咲いた時、20年(以上?)前の父と、成長した学の行動が重なるのが実に劇的で、死を運ぶ深紅の銀河戦艦バルガイヤーが地球に出現するとその巨影が地上を覆い、書道の授業で校庭に散らばった半紙に書かれた「夢」の文字が、暗闇に沈んだ世界で叩きつけるような風に煽られるのが、破壊者の到来を示すサインとして、これまた鮮烈。
 (来た! 遂にあいつが来たのか!)
 学は白い花を見つめ、アイキャッチ映像無し(画面右下にタイトルのみ)でBパートへ進み、地球へ辿り着いた銀帝軍は、銀髪に包まれた黄金の瞳の巨大な女性の顔、という銀河皇帝メドーに跪く。
 銀河皇帝メドー、『デンジマン』のへドリアン女王以来となる女性(型)首魁に驚きましたが、星王バズー(『チェンジマン』)に倣いつつ、どこか猫めいた雰囲気の幻想的なデザインは面白く……今見ると、『牙狼』感もちょっとあり(笑)
 「私は既に、命溢れる星を、999個、滅ぼした。あと一つ、1000個の星を滅ぼした時、私は永遠の命を得るだろう。全銀河の、永遠の支配者となる事が出来る。ガロア艦長、この地球こそ、まさに最後の1000個目を飾るにふさわしい星だ。死の星と化して、私に捧げよ」
 「ははー。地球を滅ぼせー! 銀帝軍ゾーン、しゅつげーーき!」
 オカルト寄りの人だったメドーの命令により、地球が銀帝軍の目標として定められ、テントウムシ+クモ、的な戦闘機が出撃すると地球を爆撃し、職場(小学校)、吹っ飛んだ(笑)
 「子供たちは、子供たちだけは絶対に守るんだ!」
 すがりつく子供たちの姿にかつての自分たちがフラッシュバックしながらも、星川兄妹は生徒を無事に避難させるが、市街地は爆炎に飲み込まれ、学校もその中で崩壊してしまう……。
 「ふふふ、1000個目の星も、もうすぐ銀帝軍ゾーンのもの!」
 「ガロア、この星はつまらん。あっという間に滅ぼす事が出来る。俺の腕と剣が泣いているわ」
 バトルジャンキー系の発言が出たギンテイブルーは、この後、手にしていた酒瓶を地面に叩きつける描写があり、きっと独自の美学も持っていそうなので、あれこれ盛られていて楽しみです(笑)
 果たして地球は、このまま銀帝軍ゾーンに攻め滅ぼされ、死の星としてメドーに捧げられてしまうのか……?!
 悲しみと怒りの嵐が吹き荒れる中、近付く轟音に気付いたギンテイジャーが目にしたのは、地平線の彼方から姿を見せた3台の巨大マシン!
 ヒーローの変身をスキップし、第1話のクライマックスがメカ戦になる変化球で、赤い戦闘機がドッグファイトでゾーン戦闘機を次々と撃墜。青い車型マシン(共に二人乗り)もアクロバットな動きで敵機を叩き落とすと、マシンから降り立ち、ギンテイジャーの前に並んだのは、赤青黒桃黄の五色の戦士。
 「何者だ?!」
 「地球戦隊!」
 「「「「ファイブマン!!」」」」」
 名乗りを決め、銀帝軍が動揺している内に有利な高所を取ったところにナレーションが入って、つづく。
 ……まあ、「地球戦隊・ファイブマンとは何者」かは、サブタイトルで実質宣言されているわけですが(笑)
 第1話でヒーローの直接戦闘シーンが無いのはやや物足りなかったですが、物語の発端となる過去シーンが大変面白かったので、プラマイでいえば、プラス。
 今作と同じくAパートを過去の前振りに用いた『ライブマン』では、ヒーロー苦戦のまま続いて第1話が消化不良になっていた面があったので、メカ戦で大暴れ→名乗った所でつづく、のはその反省を活かしたといえそうでしょうか。実際、『ライブマン』に比べるとせわしなさも少なく、ニューヒーロー登場の勢いを保ったまま、盛り上がりのあるつづくになったと思います(『ライブマン』はその後、第3話で傑作回を放り込んできますが)。
 3話かけて真の覚醒からチームアップを描いた『マスクマン』、完全に前後編構造だった『ライブマン』、シンプルな作りにしつつ第3話(第1話が特別編だったので実質第2話)で変身パワーを失わせた『ターボレンジャー』、と80年代後半の長石パイロット版には、シリーズのマンネリ打破の為の工夫が色々と持ち込まれているのですが、前半を物語の背景に費やしつつ、メカ戦先行で第1話を派手に締めてつづく、のもまたその流れを感じます。
 ところで今作に関してはかねがね、「地球戦隊」とはあまりにそのまますぎるのでは、と思っていたのですが、かつてその存在を知り、その到来に備えていたからこそ、地球を守る強い決意が「地球戦隊」の名前に込められているのは、非常に劇的となり、ゾーンに対する「地球(の)戦隊」なのだ、というのがとても良かったです。
 また、少年学の射撃の傷がガロア艦長の顔に残っており、20年の時を繋ぐ強烈な因縁になっているのは、素晴らしい。
 シリーズ史上初の兄妹戦隊、掴みとしては、『フラッシュマン』(異星で育ち、メンバーがかなり家族的)+『ライブマン』(強烈な過去の因縁が物語の発端で、第1話で色々と吹き飛ぶ)といった印象ですが、そこにまぶされた時間と空間のスケール感が好みで、シリーズ歴代でも、第1話としては、かなり好きかも。
 ED映像は、OP映像や本編クライマックスに続いて巨大メカへのスポットが強く、その合間に兄妹の成長とそれを見守ってきたアーサーの姿が節目の記念撮影の形で挟み込まれ、物凄くツボなのですがこれ……現時点でちょっと、終盤にアーサーに泣かされそうな気配があるというか、そういう盛り上がりを期待。
 次回――いきなりの出・入・り(実家のような安心感)。