東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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覚え書き

読書が進みゲームが止まる

 最近読んでいる本に、作品感想でちょくちょく書いている要素がプロ作家の言葉でうまくまとめられているのを見つけたので、メモ兼ご紹介。


 なによりも先ず、読者に登場人物の身の上を心配させなければならない。これは余りにも明白なことなので作家は忘れがちだ。
 (中略)
 登場人物は読者が心配する気になるような人物で、プロットはアクションを提供し、葛藤状態にある人間の心――愛情と義務の対立である事が多い――を浮き彫りにするものでなければならない。これでサスペンスを盛り上げるお膳立ての道具はそろった。次はどう取り組むかである。

 サスペンスを盛るために、私がつねづね肝に銘じている言葉が二つある。「意図」と「予測」である。この二つの言葉は同じものではないし、実際、似ても似つかぬものであるが、どちらもサスペンスへの扉を開いてくれる。「意図」とは登場人物の意図であり、まず最初に書かれるべきものである。それが読者の心に「予測」を生み出す役割を果たし、この「予測」がサスペンスを盛り上げてくれるのである。

(『ミステリーの書き方』 第17章「サスペンス」――リチャード・マーチン・スターン)

 引用元は、アメリカ探偵作家クラブの会員によるアンケート回答をベースに、執筆方法や小説のテクニックに関する寄稿を集めた、作家による自己流作劇法紹介といった一冊。
 本国での出版が1976年なので、出版にまつわる周辺事情は当然違いますし、現代では変化している要素(書き方よりは恐らく受け止められ方の点で)も多々あるのでそのまま消化するタイプの内容ではないですが、ここに取り上げた「サスペンスとは何か?」などは、普遍性を持ったテーゼ(実際、この章内ではシェイクスピアの『ハムレット』が例に引かれています)であり、成る程の内容。
 で、キャラクターの「愛嬌」・「好感度」のコントロール・明確な「目的」や「意図」の提示・「葛藤」と「対立」の設定・視聴者の「予測」する楽しみの散りばめ方、といった要素を丁寧に抑えているといえば、現在の東映特撮関係では香村さんの得意とするところですが、やはり、基本的な物語を構成する力の高い方だな、と。
 東映特撮で見ていたいとは思う一方で、いずれ、別のステージで大きな仕事をする機会が来て欲しい方でもあります。