東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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初春の読書メモ

長期シリーズから初読まで

●『卒業したら教室で』(似鳥鶏
 実に5年ぶりとなる、待望の《市立高校》シリーズ最新作!
 劇中の時間の流れから期待された通りの柳瀬さん卒業編であり、一つの区切りとしても待望の一作でしたが、相応に満足のできる内容でした。
 実は先月の内には読み終わっていたものの、感想としてどこまで触れるかを悩んでいる内に4月も終わりそうになってしまったのですが、なにぶん刊行が足かけ14年に渡っている(旧版・新装版・最新刊で、イラストレーターは同一人物なのに画風が変わっていたり)ので追いかけ続けているファン向けであるものの、逆にファンからすると、ちょっと内容に触れるとネタバレに直結しそうなのが厄介な一作(根本的なところでアレはどうなんですかね……)。
 そんなわけで、シリーズ一つの節目という事で、過去作に登場した人物の再登場があり、凝った構成があり、また今作全体が某エピソードを意識していると思われるのが、憎い作り。
 ミステリとしては、劇中の謎に対して筋を通しているのですが、筋を通す為に持ち込んだ設定が、シリーズの積み重ねを考えて納得はいくものの、その設定にして良かったのか? というのはちょっとあり。
 また、そちらは別に筋を作らなくても良かったのではないか……? と思う要素にも筋を通しているのですが、これは、シリーズに対する受け止め方で印象の変わるところでありましょうか。
 作中で○○○の逆転が発生するのは、面白い仕掛けでもあり、微妙な不満点でもあり。
 なんかフワフワした事しか書いてませんが、ここ数年では屈指のお気に入りシリーズであり、シリーズ第2作『さよならの次にくる<卒業式編>・<入学式編>』が凄く良いので、お薦めであります。

●『銀扇座事件(上下)』・『久遠堂事件』(太田忠司
 《狩野俊介》シリーズ。
 『銀扇座事件』は、上巻の仕掛けはある程度のところでわかった上で、それが下巻の背後に横たわる大きな謎となる構成なのですが、種明かしがうーん……。あと、次の『久遠堂事件』もですが、基本的に、大きめのハッタリをしかける作風なので、ハッタリと事件内容が、シリーズを追うごとにバランスが悪くなっている感はあり。
 敢えてそのギャップを取り込んでいるシリーズではありましょうが、物足りなさを感じる2作でした。

●『生ける屍の死』(山口雅也
 今更ながら、初・山口雅也
 医学的に死亡が確認された死者が、数時間の内に甦り、肉体は死にながら、生前同様に思考し行動する……そんな蘇り事件が続発する世界において、ニューイングランドの巨大霊園で殺人事件が発生するが、殺された筈の被害者が、甦ると何故かその場から逃走してしまう。果たして死者は何を知り、何をなそうとするのか? 富豪一族の遺産問題に、地元で続く若い女性の失踪……入り乱れる事件は混迷の度合いを増していき、スラップスティックとブラックユーモアをふんだんにまぶした長編ミステリ。
 準備運動に時間がかかるタイプの作品でしたが、100ページ前後からグッと面白くなってきて、楽しめました。
 ミステリのジャンルには、「フーダニット(誰が?)」「ホワイダニット(どうして?)」「ハウダニット(どうやって?)」という区分がありますが、この作品は「○○ダニット」だった、事が明らかになった瞬間、本格ミステリとして収束するのがお見事。