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「超古代」は七難隠す

仮面ライダーアギト』感想・第11-12話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第11話「処刑台のG3」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
 前回書き忘れたのですが、タコアンノウンは、やたらレスラー度が高い。……編み上げブーツと腰巻きの問題か。
 そんなタコレレスラーに沈められそうになった北條さん渾身の逃走劇アバンタイトルでたっぷりと振り返られ、オペレーターが無能だから野球が出来ん、と主張する北條はG3ユニットから外される事に。
 強烈な縦社会の組織において、過去のスキャンダルをネタに上層部を強請って意を通した末の不始末としては、離島の資料施設に飛ばされないだけ大甘裁定といえますが、なおも食い下がろうとする北條は、これ以上「あかつき号事件」の事を蒸し返そうとするなら次は沖ノ鳥島で防波ブロックの一部になってもらうし、捜査一課に残れるだけでも我々は譲歩しているのだよ? と遠回しな恫喝を受け、大人の寝技に絡め取られる事に。
 バタバタと捜査一課に戻った北條は、車中で発見された完全にミイラ化した死体、という新たなアンノウン事件の捜査に参加すると氷川に対する敵愾心をますます燃やし、目を剥くその表情に照明が当たりまくって怖い(笑)
 かなり強い照明の光を入れてくるのは今作の演出的特徴といえますが、顔アップの多用含めて、ビデオ撮影においてどう見せるか、の模索期の面があったのかもしれません。
 翔一くんの過去を調べようと前回被害者の交友関係を独自に調べていた真魚ちゃんは、篠原佐恵子という女性に辿り着いてアポを取るが、翔一くんは今回も及び腰。
 「翔一くん……過去を思い出すのが怖いという気持ちは、分からなくはないが、君を想い、君を待っている人が、どこかに居るかもしれない。そう考えた事はないかね?」
 「俺を……待っている人?」
 「そうだ。それに、君が、昔の自分を取り戻したとしても、私たちとの、縁が切れるわけじゃない。人と人との繋がりというのは、大切なものだ。君との繋がりを断ち切られた事で、悲しい想いをしている人が居るかもしれない。そこのところ、よーく、考えてみなさい」
 これまで、大変懐の深い人物ではあるが、家庭でのコミカルな一面や、超能力が明確に存在する世界でそれを否定する道化的役割が目立っていた美杉教授が、年長者として翔一くんを諭すいいやり取り。
 現行作品だと『ゼンカイジャー』のヤツデさんが効果的に機能していますが、キャリアのある役者さんを配しておくと、こういった場面での説得力が高まるのは大きいところ。
 また、“みんなの居場所を守ろう”と戦う翔一くんだからこそ、“自分が誰かの居場所だったかもしれない”可能性が胸に響くのも、これまでの積み重ねをしっかりと足場にした鮮やかなジャンプでした。
 亡き父の手帳に書かれていた名前と住所を追う葦原はくしくも篠原佐恵子に辿り着き、話す気が無い、という佐恵子の車を、何故かバイクで追いかけていた。
 両者とニアミスした翔一&真魚は鷹揚な感じの佐恵子兄に家に招かれ、佐恵子が近くの湖に潜っては土器を引き上げている事を知る。その土器に貼り付けられた付箋にはアギトの紋章がメモされており……基本的にかなり地味な進行なのですが、要所要所でグッと引き込んでくる構成が非常に巧みで、サスペンス×ヒーローフィクションとして盛り上げてきます。
 一方、水底から引き上げた土器を乗せ、車に乗り込む佐恵子だが一向に車が前に進まず、振り向けばそこに、アンノじゃなかった葦原涼。
 如何にもな見せ方なのですが、まんまとしてやられました(笑)
 砂にタイヤを取られた車の発進を助けた涼は、佐恵子の好感度をゲットして家に招かれ、翔一くんとご対面? の寸前、ミイラ事件の被害者妻を襲撃したシマウマアンノウンの反応にきゅぴーんした翔一くんが家を(二階の窓から?)飛び出してしまいまたもすれ違い、の交錯が実に鮮やか。
 手帳に関する涼の問いかけは「知らない。……知らないわ。私は何も」と拒絶され、G3ユニットは待機命令に対する判断を迫られる。
 「何を迷っているんですか小沢さん! 確かに今の私はG3システムの装着員ではないが、アンノウンが現れた以上、上からの命令よりも人命救助が優先されるべきだ。違いますか? ……小沢さん!」
 護衛任務についていた氷川からの急報を受け、ためらう小沢の背を押すのが憎みきれない北條さん、多分に利己的な人格なのですが(今回も、どさくさ紛れに失地を回復する目論見はありそうですし)刑事としての正義感そのものは持っていて、力そのものを求めているのではなく、力を与えられれば世界を正しく導けると思っていそうなのが、面白いキャラです(笑)
 場合によっては第43話ぐらいで「G3――それはすなわち、人を越えた神の器。この力で、私が人類を正しく導いてあげましょう」とか言い出しそうな北條に焚き付けられて小沢はGトレーラーを発進させ、生身でアンノウンに立ち向かっていた氷川を救うHG3。
 前回の今回でG3装着して出動できる辺り、北條さんも北條さんで並の精神力ではありませんが……だから! どうして! 真っ正面からセメントマッチで勝てる気満々なんですか小沢さん!?
 せめて距離を取ってじっくり牽制しながらデータを集めるとか色々あると思うわけですが、真っ向勝負こそ勇気! 正面突破こそジャスティス! 狂気の沙汰ほど面白い……! と、どういうわけか銃を連射しながら接近戦に持ち込み、雄々しく殴り合いを挑んだ末に投げ飛ばされ、HG3戦闘不能
 そこへアギトが到着するが、不意打ちで出現した二体目のシマウマに足下をすくわれ、2対1で逆処刑ソングの窮地に! G3銃を拾った氷川くんが反動に苦しみながらも(高威力による反動が大きすぎて、スーツ無しではまともに使用できない描写が入ったのは秀逸)援護射撃を続けるが、反動の衝撃で地面に倒れて気を失い、迫り来る氷川くん処刑の危機(通算4度目)で、明日へーーーつづく。

◆第12話「湖のひみつ」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
 「北條くんのは情熱とは言わないの。あれは妄執っていうのよ」
 お気に入りの氷川くんがG3ユニットに復帰して、小沢さんがキレキレです。
 アギトの反撃によりシマウマ白黒は逃走して氷川くんの処刑は回避され、やけに氷川主任を持ち上げる上層部によりG3の装着員として再任命されるのですが、先程まで吊し上げられていた北條さんの命令違反が無ければ、その氷川主任は殉職していた気がしてなりません。
 ついでにいえば、あかつき号事件の当事者である氷川くんを栄転の名目で本庁の閑職に転属させて目の届くところで飼い殺しにしようとした上で、いざアンノウンが出てきてもそのまま最前線に送り込んでいるのは、死んだら死んだでもっけの幸いと考えているとしか思えないのですが……上層部の真意は、色々な意味で、余計な事しやがって北條、ではないか。
 そういう点では北條さんは、組織の悪をネタに自己の利益を誘導しようとした事で、組織の邪悪を未然に防いだのかもしれません(笑)
 この辺り、前作『クウガ』の警察上層部が割と物分かりが良かった事との差別化か、今作の警察上層部は大人の縦社会剥き出しなのですが、感じが悪い上にユーモアの欠片も無いので、リアリティ付加の為とはいえ、登場シーンそのものが面白くならないのは、辛いところ。
 後さすがに、アップが多すぎます(前回今回と、石田監督もまだ、今作の間合いを調整中といった感じ)。
 「しかし、まだ生まれていない赤ん坊まで襲うとは。いったいどんな理由があってそんな。……まるで、何かを恐れてでもいるかのようだ」
 「恐れている……アンノウンが、人間を?」
 アンノウンとは何者か、について警察サイドから一石が投じられる一方、自ら取り巻く謎を追う翔一と涼は佐恵子と再接触し、湖にまつわる聖なる戦部の伝説を聞かされる。
 「アギト?」
 「うん」
 「翔一くんが変身した姿、アギトっていうんだ」
 第12話にして、初めての確認(笑)
 「もし、何か関係があるなら、俺がなぜアギトになったのか、敵の正体はなんなのか、ヒントにならないかな?」
 翔一は湖の伝説とアギトの紋章を繋げ、第12話にして、翔一くんが建設的な発言を!(笑)
 前回の教授とのやり取りを経て、翔一くんが自分の過去そして正体と向き合い出す「変化」が描かれ、湖について調べる翔一と真魚だが、その結果わかった事は、湖の伝説そのものがまやかしであったという真実。
 佐恵子はPCの画面一杯に「私は何も知らない」と打ち続け、佐恵子兄は土器を湖に沈め直しており、「あかつき号事件」以後に正気を失った妹の為に嘘をつき続けていたと真相を告白。
 「あれは……幻想の中で生きてるんです。幻想を追い求める事で、辛うじて……心を保ってるんです」
 「でも……なんか変じゃないかな……?」
 「なにが?」
 「幻想の中で心を保ってるって、どうしてそんな必要があるんですか?」
 真魚・涼と共に佐恵子兄の話を聞いていた翔一は、真剣な表情で首をかしげる
 「現実に耐えきれない人間も居る」
 「どうしてですか? こんなに、世界は綺麗なのに。ほら、空も雲も、木も。花も虫も、鳥も。家も草も水も」
 「世界は、美しいだけじゃない」
 「そうかな? そういうのって、見方によるんじゃないですか。幻想の中で生きるなんて、勿体なさ過ぎますよ」
 翔一くんの、今、自分が立っている現在を受け入れるあっけらかんとした底抜けの明るさは、愛嬌と同時に底抜けの狂気(アギトの持つヒーロー性と表裏一体のものでもあり)にも繋がる事が描かれ、翔一くんの陽気を物語として肯定するばかりではなく、メイン3人の一人にカウンターを当てさせてくるのは、巧いバランス。
 「人間がみんな自分と同じだとは思わない方がいい」
 「大丈夫です」
 佐恵子に世界の美しさを伝えようとする翔一を涼は思わず殴り飛ばし、他人のネガティブな感情をのらりくらりと受け流す事には定評のある翔一くんの対応や如何に、のところでシマウマ黒が前回と同じ女性を狙って出現し、翔一くんは無言できゅぴーんダッシュ
 重点的に警護に当たっていた警察は女性をパトカーに乗せて逃げ出し、なんだかんだと、氷川くんと北條さんがコンビ行動を取るのが、熱い。
 「行きますか、私たちも。今、佐恵子は自分の中に潜ってるんです。私たちの出る幕じゃない」
 兄と真魚が立ち去った後、湖に向かう佐恵子はシマウマ白に襲われ、その気配に気付いた涼は、バイクに乗ったまま「変身!」すると、イメージが重なる形でギルスへと変身し、シマウマ白を、轢いた!
 ヒーローのイニシエーションをキめたギルスはシマウマ白と激突し、アギトはシマウマ黒に襲われるパトカーに追いつくと、パトカーの屋根の上で互いに組み合う激しいバトル。
 迫力のカースタントから両者揃って振り落とされ、アギト捕獲を優先しようとする北條に叩き込まれる不器用なパンチ!(殴る演技に関しては氷川くんの方が涼より巧い。或いは、北條さんの殴られ演技が器用)
 その間にアギトは処刑パワーを発動し、シマウマ黒を渾身の飛び蹴りでダイレクトに爆殺。ギルスもシマウマ白に必殺飛び踵落としを叩き込んで勝利を収めるが、佐恵子は涼の前で水底へ――深く深く、閉ざされた自分自身の中に沈んでいくのであった……。
 湖を舞台の中心に置く事で、〔死-水-(再生)〕のイメージが繰り返し持ち込まれているのは今作における3人のヒーローそれぞれの背景と重ねていると思われ、作品を貫くモチーフとして印象的。
 佐恵子兄の言葉により、あかつき号事件の時点で実質的に佐恵子が「死んでいる」(記憶を失っても今も「生きている」翔一くんとの対比でもあり)事は示唆されているのですが、怪人を倒すもヒーローの伸ばした手は届かぬままゲストが水底に消えていき、1クール目の締めとしてここまでの『アギト』でも一番クラスの重さ。
 重い、といえば、新婚の夫をアンノウンに殺害された上にお腹の赤ん坊をアンノウンに狙われる事になった女性もかなり悲劇的なのですが、アンノウン事件の特性は、もう狙われない事が証明できない点で、この先もアンノウンの影につきまとわれ続けるのかと思うと極めて重く、『アギト』の残酷な面が色濃く出たエピソードでありました。
 一方、荘厳な音楽と共に高級リムジンから降り立った男――津上翔……ではなく、沢木哲(小川敦史ーーー!)が訪れたのは、謎の青年の身柄が確保された施設? で、つづく。
 前作でメイン監督を務めた石田監督が参戦して1クール目を締め、徐々に重要性を増していくあかつき号事件の謎と、ここまでの積み重ねをしっかりと活かした翔一くんのステップアップが絡み合って面白かったです。
 前作を彷彿とさせる超古代の戦士がアギトの正体? と思わせてからのそんな伝説はありませんでした、は白倉さんの性格の悪いところが出たような気もしつつ、1クール目の締めに謎だらけだったヒーローの正体が超古代絡みと明らかになったと思ったら全て捏造だったと放り投げられるのは、『特捜ロボ ジャンパーソン』第13話を思い出すのですが、単なる偶然だったのかどうか(笑)
 そして、『超光戦士シャンゼリオン』大好き人間としては、黒岩都知事こと小川敦史さんの登場が大変嬉しいのですが、次回――どこからどう見てもドクトルG