『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第7話
◆第7カイ!「魔界の王子は気がみじかい!」◆ (監督:山口恭平 脚本:香村純子)
本日もキカイたこやき屋と物々交換を行う介人は、先日のゴミ騒動で見かけた黒衣の青年が、たこ焼きを頬張っているのを目撃し……前回ラストで思わせぶりに引っ張った要素を大胆にスキップして、次の登場シーンがたこ焼き! なのは、大変らしいノリ(笑)
「俺は五色田介人、そっちは?」
「名乗るようなものじゃない」
「えぇ?! もしかして、逆に有名人? 当てていい? ……バンドの人! いや違うな……アイドル! ……わかったぁ! マジシャンだ!!」
ぐいぐいと青年に顔を近付ける介人、仲間が居ると割と面倒見と付き合いの良いところを見せるのですが、単独だと改めて暴走特急であり、介人は介人で、仲間の存在が重石として必要なのだな、と。
……そういえば、かつて『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014)において、主人公のライト(ナチュラルボーン狂気)は、
「ライトって、どんどん風船みたいに飛んでっちゃうから、私たちもつい釣られるんだけど。ヒカリがちょっと、 重しになってくれるでしょ」
と評されていましたが、その伝でいくと介人は、糸の切れた凧といったところでありましょうか(カイトだけに)。
「君はなんなの?」
「ああ俺? 俺は基本、アルバイター! そんで、夢を追うチャレンジャー!」
介人は力強く自己紹介し、ここは如何にも山口監督っぽい見せ方。
だが青年は、溜めに溜めた「更に今は!」の途中で「仕事だ」と冷淡に立ち去り……まあ、たこ焼きを食べている最中に思い切り顔を寄せながら大声で叫ばれたら、それはイラッときます。
一方、ヤツデも介人も居ないと途端にキカイノイドへの対応が悪くなるガオーン(ここ数話はまさに、猫を被っていた模様)の態度に憤懣やるかたない赤桃青は街でトジテンド戦闘員に遭遇し、介人に連絡。現場へと急ぐ介人が向かうのは先程の青年と同じ方向で、介人に追い抜かれるやいなや、張り合ってダッシュを始める謎の青年……早くも、駄目な子なのでは(笑)
二人が同時に辿り着いた屋上では戦闘員のお片付けが終了しており、介人の手にするギアトリンガーに目を細めた青年が取り出したのは、ギアトリンガーそっくりの紫色の銃――ギアトジンガー、というネーミングは好み。
「そうか。君もゼンカイジャーだったのか」
鳥頭の意匠がゲゲになっているガトリングにギアをはめこんで撃ち出すと秘密戦隊ゴレンジャーが出現し、暢気に挨拶をする介人やジュランへと問答無用で襲いかかる!
「わかった! ドッキリだ! あの人マジシャンだし!」
「マジシャンじゃない。君達に恨みはないが、イジルデからの依頼でね」
「じゃあ君は、トジテンドの仲間?!」
「仲間? ……やめてくれ。僕はステイシー。それ以外の何者でもない」
謎の青年あらためステイシーの命令でゴレンジャーは介人たちに襲いかかり、介人、そして遅れてかけつけたガオーンもチェンジ全開。ステイシーは更に轟轟戦隊ボウケンジャーと魔法戦隊マジレンジャーも召喚し、困惑しながらの大混戦の中、ステイシーに斬り掛かろうとしたジュランをガオーンが咄嗟にハイキックで妨害。多勢に無勢で苦境に追い込まれたゼンカイジャーは、18バーンを発動してカクレンジャーの力で変わり身の術により一時撤退する事に。
「ゴレンジャーパイセンたちとはまともに戦わねぇ! ステイシーはかばう! 人間さえ守れりゃ、マジで俺たちはどうなってもいいってか! ……俺たちは一緒に戦う仲間だろう!」
ジュランおじさん、ホントこの戦隊の良心……。
「…………でも君達は! ……キカイノイドだろ!」
血を吐くように叫んで店を飛び出していったガオーンを介人が追いかけ、取り残される形になったジュランの元に歩み寄るヤツデ。
「……ガオーンちゃんはさ、ある意味あんた達を信用してんだと思うよ。……自分もおんなじキカイノイドだから!」
ヤツデはジュランの鋼鉄のボディを何度か叩き、種族間の明確な違いに一歩踏み込んでくる展開。
先の戦闘において割と袋だたきにされていたのに、「怪我がなくてなにより」で済んでいたのがしっかりと効果を発揮した上で、ガオーンの本音をそれとなく伝えるヤツデの、キカイノイドみんなの事をなるべく理解してあげたい、というポジショニングが絶妙です。
思えばヤツデからすると、居候たちはみな子とか孫のような年齢のわけですが……ジュランが介人の疑似父になるよりも、ヤツデの疑似息子として格好いいところを見せるエピソードとか見たくなってきました(笑)
「俺のこと……いつもかばってくれて、ありがとな」
「……介人はニンゲンだから。僕たちほど……頑丈じゃないし」
介人は介人で、ニンゲンを叩いたり斬ったり撃ったりしたら取り返しのつかない事になる場合もある、というガオーンの気持ちを汲んでおり、ベンチに並ぶ二人(背中から見ると、割と太めに見えるなガオーン……)。
「僕たち?」
「んん?」
「ジュランたちの事、仲間だって思ってくれてんだって」
「……まあ、一応? ニンゲンたちを守る、同志かなーとは」
ニュアンスとしては、口を滑らせたところに畳みかけての再確認でありましょうが、10%ぐらい、仲間だと思ってくれていない可能性も考えていたようには聞こえます(笑)
「情けないよねぇ……今までは、トジテンドみたいなクズも、あんなのに支配されてる他のキカイノイドも、自分のこともぜーんぶ嫌いで、遠慮なく、戦えたなのに」
「情けなくないよ。迷うの、わかるし……正直俺も、ステイシーの事どうしたらいいかなって」
基本、異星/異世界の敵対的生物=怪人、として処理する《スーパー戦隊》――逆に、「敵対」という要素が脱落すれば幾らでも手を取り合えるのと表裏一体であり――としては、見た目人間だから戦うのを迷うのは、作品単独としてよりもシリーズ総体で蓄積してきた約束事に爆弾を投げつかねないので微妙な要素なのですが(『タイムレンジャー』などそこに工夫を凝らした作品はありますが)、介人にとってのデリート対象の線引きをすると共に、今作の特徴として踏み込んでおきたかったポイントではありましょうか。
とはいえやはり、見た目人間を相手には迷うけど、トジテンド所属のキカイノイドなら躊躇なく殺っていい一線は揺るがないので、掘り下げて面白い部分かといえば、下手に触らない方が良い印象が強く、触れたからには後々、物語全体の流れの中で活かされる事を期待したいです。
「てか、ジュランたちが凄いんだよな」
いや……うん……一番最初に、同族殺しを要求したのは誰でしたっけ(笑)
迷える気持ちはお互い一緒、と気持ちを共有する介人とガオーンだが、その背後から、ゴレンジャーとガオレンジャーが強襲。
「見つけたぞゼンカイジャー。さあ、バトル再開だ」
介人は居並ぶ戦隊を、父ちゃん母ちゃんがいいって思ったヒーローがトジテンドの手先になる筈が無いから偽物だと断言し、ちょっとメタが入った感じの台詞ですが、その視点に立つと、「父ちゃん母ちゃんがいいって思ったヒーロー」を参考にしてその力を使うゼンカイジャーというのは、究極のなりきりヒーローであるのかもしれません。
かつて『烈車戦隊トッキュウジャー』が、かなり意識的に“ごっこ遊び”の延長線上のヒーローを描いていたのですが、ゼンカイジャーは更に本格的なコスプレの位置づけなのかもしれず、そうすると『ゼンカイジャー』とは1年かけてオリジナルの戦隊になる物語なのかも……と考えると同じく記念作品であった『海賊戦隊ゴーカイジャー』が思い浮かぶところではありますが、企画に全く噛んでいないの?? と思うぐらいには、宇都宮Pラインが見え隠れはします。
介人はステイシーの元へと走り、ガオーンがコピー戦隊を食い止めているところに、赤桃青が到着。
「今、どういう状況でしょう?!
「ぼさっとしてない! こいつら倒して、介人を助けるのが今の僕らの役目だよ!」
「生意気なぁ……“ぼくらの”ね~。癪だけど、今日のところは折れてやるよ」
ジュランは、ガオーンの物言いにムッとしている桃青の間に入って肩を叩くと率先して変身し……ホントこの戦隊の、良識。
「ステイシー! おまえ人間だろ! キカイノイド? なんでイジルデの味方すんだよ!」
「ニンゲンかもね? ――半分は」
「半分?」
「君達に恨みはないが……暗黒チェンジ」
謎めいた言葉と共に閉じンガーに暗黒ギアを填め込んだステイシーが自らの体にそれを撃ち込むと、白銀のマフラーをたなびかせた紫ボディのスーツ姿へと変貌し、マフラー・頭部の形状・口元の開いたマスク、を見るに、モチーフはバトルジャパン(『バトルフィーバーJ』)?
つまり、
「ダンスのパワー!」
……じゃなかった、
「暗黒のパワー――ステイシーザー!」
ステイシー、って、悪のライバルにしては語感が柔らかいな、と思っていたのですが、どうやらこちらにも「ザー」を付けたい狙いがあったようで、ジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)と掛けた名前でありましょうか。
あと、「ステンシル」と語感が似ているとも思ったのですが、テンプレートを用いた図形や文字の事を指すので、戦隊のコピーを用いる攻撃を考えると、それも意識しているのかしていないのか。
「イジルデ。なぜステイシーを選んだのでアルか」
「へへへ、なるべくゼンカイザー、つまり、ニンゲンに近いものでためしたくてねぇ」
「ふむ、なるほど。実験兵士か。あんな奴でも、役に立つとは」
前回ラストで父親扱いを受けたバラシタラはステイシーとは情の通った関係ではないようで、ステイシーの登場によりトジテンド側の人間関係も絡み合ってきたのは、大変好材料。
「あいつを越える為に、ゼンカイジャーを倒す」
これまでダッシュ勝負以外では淡々としていたステイシーにも、コアにある情念の存在をきっちりと匂わせ、シーザーの銃撃を回避した介人の頬を、かすった弾丸で赤い血が流れ落ちるのが対比として秀逸。
「わかった、おまえと戦うよ。――俺、何がなんでもやられるわけにはいかないから! トジテンド倒して世界守ったり! 父ちゃん母ちゃん取り戻したり! 世界初ゲットしたり! やりたい事たくさんあるから!!」
英雄の大義も、個人の夢も、全てを一緒に並べ、欲張る事を選んだヒーローである五色田介人は、チェンジ全開!
「秘密のパワー! ゼンカイザー!」
両者は激突し、これを銃声と両者の上半身で下から確認し、仲間達主観でその決断を知るカットが挟まるのは冴えた演出。
ゼンカイザーはガオーンに25バーンをパスし、野生の力でガオラオガオラオ。更に1バーンの力でゴレンジャーパワーを発動すると、ゴレンジャーハリケーン(どちらも物真似)対決となり、ゼンカイジャーハリケーン消しゴムで偽ゴレンジャーを消去するが、シーザーは閉じガトリングの更なる力を用い、戦隊ロボを召喚(玩具のパッケージから……?)。
「ロボの偽物まで出せるのですか?!」
「イジルデ天才全開じゃん!」
どんどん不穏になっていくイジルデ周りですが、テンション最高潮のセッちゃんが興奮のあまり奇声をあげて絶叫し、どーんと並んだ、大獣神・ガオキング・マジキング・ダイボウケンとWゼンカイオーが激突。
そこから4vs4の巨大戦を全天カメラで見せる趣向は面白く、苦戦する赤黄桃青は、もっと大きくなって踏みつぶしてしまえばいいのでは、と禁断の手段をひらめキング。ところが巨大化状態で更にギアを発動すると、4人が巨大になる代わりにガトリングが巨大化し、ゼンカイガトリングバスターが誕生する。
「スーパー戦隊名物・必殺バズーカっぽくなったチュン!」
カイザーから受け取った10バーンをエネルギーに4人は豚の角煮ーーーで4大ロボを消し飛ばすが、カイザーと取っ組み合うシーザーは次々とギアを乱射し、更に12体の巨大ロボが! このまま12体のロボの名前を絶叫し続けたらセッちゃんの血圧が心配すぎるーーー大ピンチで、つづく。
予告で見せた色合いからニンジャ担当かと思ったらバトルジャパンだったステイシー(ザー)、独自の装備を用いて過去戦隊の力を実体化するのはバスコ(『ゴーカイジャー』)と丸被りとなりましたが、個人的に過去戦隊の力をエピソード怪人とはあまり繋げてほしくなかったので、ひとまずそれを当面のライバルキャラに集約してくれたのは、ホッとした点。
父子関係におけるネガ介人の要素や、筋力担当めいたイメージに非情さの奥行きが加わったバラシタラなど、新キャラ登場の影響が他のキャラにもしっかり波及しているのが鮮やかで、トジテンド関係がどう掘り下げられていくのかは大変楽しみ。役者さんの雰囲気も良く、今後の活躍を期待したいです。
そして次回――更なるニューカマー! ……マスクのデザインがどこからどう見ても宇宙海賊ですが、額に輝く35にはアカレッド関係者の気配も漂い、果たして、どんな嵐を巻き起こすのか。
新キャラ、更に新キャラ、と一桁話数で怒濤の展開が続きますが、この20年間に特に開拓してきたファン層を切り捨てるつもりはないですよ、というメッセージを早めに打ち出す必要性は意識したのだろうか、とちょっと邪推。
メタ的には、若手役者の登竜門として機能して/期待されている(事でオーディションのレベルも上がっていると思われる)以上、諸々のキャスティングの事情含め、制作サイドとしても切り離せない部分ではあったでしょうか。
……ところで、魔界の王子要素ゼロだったのですが、これは、“漆黒の堕天使”的なソウルネームとかですかね……? アバンの「……バンドの人! いや違うな……アイドル!」が伏線で、介人とステイシーとニューカマーで、ビジュアル系ロックバンドを結成するんですかね?!
爆音戦隊! マカイジャー!!