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仮面ライダーアギト』感想・第7-8話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第7話「告死の黒き弾丸」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 見所は、真魚ちゃんの部屋にある謎の白鳥。
 ……あれはいったい、なんなの、真魚ちゃん……?
 冒頭で前回クライマックスにおける野獣系ライダーの戦いが振り返られ、改めて、デザインは好き。空中踵落としを決めてから、獲物の胴体を蹴り飛ばしての反転宙返り着地は、歴代ライダーでもかなり格好いいアクションだと思っています。
 そんな涼の体を老化現象の異変が襲い、その前に現れた謎の逆光少年は、気を失った涼へと手をかざす……一方、三雲の失踪が氷川にも伝えられ、カメラの位置が制限されるのでしょうが、毎度、Gトレーラーの中は撮影がし辛そう。
 街ではミサイルのように超高速で標的に迫る鴉アンノウンによる体当たり殺人が発生し、飛行機雲だと思ったら怪人だった! というのが日常→非日常の接続具合として非常に格好いい見せ方。
 ところが警視庁における対アンノウンの切り札である筈のG3ユニットは上層部から活動の凍結が命じられ、宙ぶらりんの体制に。その裏には、あかつき号事件に関わるスキャンダル――本来、救難信号に応える筈だった巡視船が警視庁上層部の私用に用いられていた――の告発を材料にした北條透の揺さぶりがあり、氷川はあかつき号事件の日の出来事を、小沢と尾室に語る……。
 「あの日、瀬戸内海は、気持ち悪いぐらいの青空が広がっていたんです――」
 回想シーンの導入となる、この言い回しが、なんか好き。
 香川県警時代の氷川が目にしたは、不気味なほどに凪いだ海にそそり立つ巨大な光の柱。そして異常事態の中に向かった氷川が見たのは、あり得ないほど局所的な暴風雨と、遭難したあかつき号なのであった。
 「たとえG3を使えなくなっても、自分は自分なりに、アンノウンと戦って行ければ、と思っています」
 何やら「あかつき号事件」にも超常の気配が漂う中、G3になれるかどうかは本質ではない、とハッキリ口にする氷川くん、放映当時はあまりそういう風に見ていた覚えがないのですが(どうしてもアギトの前座感がありますし)、今見ると、凄く正統派のヒーロー。
 物語を貫くミステリーのコアに近い部分に居る翔一くんは基本的に受け身(これもまた一つのヒーロー性であり)、涼はまだ自分が何者なのかもわからない中で、能動的に事件を追いかける氷川くんの存在が非常に効いていて、G3と氷川くんの株が記憶の中の『アギト』よりだいぶ急上昇していきます。
 その頃、逆光の少年は廃病院に連れ込んだ涼を見つめていたが、手の甲の紋章が光り出すと輝きに包まれ、十代半ばほどに急成長。謎の少年は凄く謎なのですが、ひたすら荘厳なBGMの力で、なんか凄いよ! と押し通してくる力技。
 美杉教授の義理の兄にあたり、神話伝説の研究者であった真魚父が亡くなってから2年……父の命日に墓参に出かけた真魚の不在中、部屋の片付けをしていて新聞の切り抜きを発見した翔一は、真魚父が殺害されていた事を知るが、殺害現場の写真が何故か翔一の記憶を刺激し……帰宅した真魚は、部屋で倒れていた翔一を発見。思わず翔一の額に手を当てた真魚の中に流れ込んできたのは、真魚父の殺害現場から走り去る翔一……?
 混乱する真魚は部屋から翔一を追い出し、美杉家を再訪した氷川はまたも翔一のペースに巻き込まれ、のらりくらりとしたやり取りが行われている内に発生した新たな被害に、翔一はきゅぴーんと反応。
 『アギト』序盤のストーリー的問題点の一つは、アンノウンによる殺人に反応する時としない時が話の都合という点ですが、アギトレーダーの索敵範囲の問題でありましょうか。
 整備中のジェットコースターのレール上を突進してくる黒い弾丸! という鴉アンノウンの描写は非常に格好良く、鳥類×ペストマスクにぎょろっとした瞳を強調したデザインも秀逸で、ここまでの『アギト』怪人の中では、一番印象的。
 飛行能力を持つアンノウンに苦戦するアギトは、カウンター気味の必殺キックを叩き込もうとするも急上昇でかわされると、クレーンで吊られまくる鴉アンノウンに翻弄され、序盤の飛行系怪人に苦戦する、ある種のお約束。
 為す術のないまま観覧車のポールに叩きつけられたアギトは遊園地の浅いプールに沈む完敗を喫し、よく、ぷかぷかと浮かぶ、人生でした。
 ……改めて見ると、OPから砂浜に倒れて顔にざぶんざぶんと水がかかっている翔一くんは、僕が大量の塩水を浴びている間に、真由美さんを捨てて看護士さんといちゃいちゃしていたんですか葦原さん!? と殴りかかっても情状酌量の余地があると思います。
 その葦原は廃病院の一室で目を覚まし、真魚ちゃんは翔一の記憶に困惑し、次回――謎の少年が、緑色のライダーに名前を付けてくれる事に期待したいです(真剣)。

◆第8話「BLAZE YOURSELF」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 当然、翔一くん発見時の状況と重ねているのでしょうが、プールにうつぶせの大の字になって浮かんでいるヒーロー……って、あんまり見ない画ですね……。
 (どうして……どうして、翔一くんの記憶の中にお父さんが?)
 真魚の困惑が続く中、負傷した翔一くんは公園まで這ってきたところで気絶し、翌日になって目を覚ますと、子供の飛行機遊びから鴉対策を思いつく事に(この際のライトの当て方が、田崎監督というか『アギト』っぽい演出)。
 「選択肢は、一つしかないと思いますが」
 鴉アンノウンによる高速移動殺人が不可能犯罪と認定され、自らを装着員としてのG3ユニット再始動を暗に要求する北條さんは、「別の部署で活躍できる事を祈ってますよ」と氷川くんに満面の笑みを向け、エンジンがだいぶ暖まって参りました!(笑)
 「なんて嫌な奴なの!」
 「まあ、そう言うな。あれで根はいい奴なんだ」
 「どこがです?! じゅーぶん悪い奴ですよ、あれは」
 「ちょっと思い込みが激しいだけさ」
 憤懣やるかたない小沢に対して、北條の相棒である中年刑事・河野はフォローを入れ、まあ北條さん、アンノウンに立ち向かって市民を守ろうとする勇気も気概もあり、警察官としての使命感はしっかり所持しているのが、ただの卑怯者にはなりきらない面白さであり。
 あと、スキャンダルを材料に上層部を脅迫する、という立ち回り自体が、警察組織内部としては割と微妙が気がするので、河野刑事の「思い込みが激しい」という評は、かなり的を射ている気がします(笑)
 この小沢とのやり取りと北條評で、河野刑事の存在感も上がるのは、実にお見事。
 「でも氷川さんけっこう不器用だからなぁ……G3の扱い、北條さんの方が巧かったりして」
 「……不器用」
 謎の少年は謎のパワーで葦原の両手を癒やし、翔一に対する態度を決めかねる真魚は苛立ちを思わず氷川にぶつけ、「氷川さんて、ちゃんと刑事の仕事しているんですか?」ときつい言葉を投げつけるが、まあとりあえず、アポ取ってから来た方がいいですよね……。
 と思ったら今日はアポを取っていた事が判明したが、美杉教授はお湯を入れたカップラーメンを3時間後に食べた事があるぐらいには時間にルーズな人であり、ひとまずライダー3人が揃って進行に余裕ができたこともあってか、硬軟取り混ぜ、登場人物の幅の付け方と見せ方が実に光ります。
 「君は何をしているんです?」
 「ベッドを作っています」
 女子高生の部屋を平然と漁りまくった末にベッドを破壊した翔一くんだが、異常なまでの切り替えの早さ――記憶喪失ゆえに、過ぎた事を考えるよりも前向きにやり直す方向にのみ矢印が発達しているのが、納得できると共に重い――でベッド作りに氷川くんを巻き込み……氷川くんは、不器用だった。
 ノコギリを叩き割った氷川は、呆れる翔一からの「不器用」発言に自尊心を傷付けられてムキになると、折れたノコギリに責任を転嫁。
 「そんな事はありませんノコギリが悪かっただけです。こっちのを貸して下さい」
 「いや、もういいです。こっちのまで壊されちゃ、大変ですから」
 「そんな心配はありません僕の方が巧い筈だ!」
 これまでも、同年輩の一般人で場の空気をウォーハンマーで破壊していく翔一くんには、きつい視線や言動で“普段と違う顔”を見せていた氷川くんですが、翔一のペースに巻き込まれていく内にそれがどんどん加熱して素を垣間見せるようになっていくのが実に巧妙(演技ベースか演出ベースか脚本ベースかわかりませんが、息継ぎの無い早口が実においしい)で、古びない面白さ。
 放映当時はかなり井上敏樹に傾倒していた(『超光戦士シャンゼリオン』大好き人間)ので、今回、20年ぶりに見てどうなのかな……? という不安は、そこをある程度フラットに見る目的があったとはいえ多少あったのですが、演出含め会話のドッジボールからのキャラクターの広げ方が実に鮮やかな手並みで、前回と今回で作品全体がぐっと面白くなって参りました。
 「いや、もう結構です」
 「いいから貸したまえ!」
 とうとう高圧的にノコギリを奪い取るも再び粉砕した氷川くんは、事件発生の報告を受けて逃走。
 一方、高架橋の上で精神を集中した真魚は、翔一の記憶を通して父の事件の映像をより鮮明に確認し、その日、父がプレゼントとして買ってくれた鳥が、地面に投げ出されて飛び去っていく光景を目にする。
 「ありがとう、お父さん……欲しかったんだ、私」
 前回-今回と、回想シーンで真魚ちゃんの父への想いを描き、真魚ちゃんのヒロイン力もきっちり補強する手堅い組み立て。
 ようやく帰宅した美杉教授からまたも超能力を否定された不器用刑事は、あなた署での立場はそれで大丈夫なの? と若干の憐憫のこもった視線を向けられ、翔一くんからはベッドの運搬係として扱われ、一生懸命ベッドを作る“今の翔一くん”の姿に疑念を封じる真魚
 (お父さん、翔一くんじゃないよね。翔一くんは、翔一くんだもんね)
 無事にベッドを設置した翔一はきゅぴーんし、バイクで走りながら発光変身すると、新たな標的へと迫る鴉を……はねた!
 更に、追い打ちで轢こうとした。
 前作ほどのこだわりはないものの、“移動手段”としてのバイクはしっかり物語に組み込んでくる今作ですが、使い方が割とえげつない(笑)
 『龍騎』はちょっと特殊な位置づけ(だったような覚え)、『555』は車の方が印象にある、『剣』は(會川昇らしいアプローチで)再び象徴としてのバイクを物語に組み込み直す……といった《平成ライダー》と“バイクの扱い”に関しては、真面目に検証してみたいところはありつつ、バイク要素に注目して全話見直す根性がありませぬ。
 アンノウンの出現に、無断でトレーラーを出動させようとする小沢だが正式に装着員として通達を受けた北條によってトレーラーは改造に出されており、アギトは夜陰の中で鴉怪人と激突。
 飛び回る鴉に対してベルトから剣を取り出したアギトは体色が赤に変化し……初お目見えの時と青、そして今回の赤と、新フォーム登場で夜間撮影が続きます。
 個人的には、明るいところでバシッと決めてくれた方が好きなのですが、これは戦隊寄りの発想なので差別化もあったのでしょうし、発光ベルトやキックの紋章が映えるなど、複合的に田崎監督の中でアギトは夜だ! とか様々な理由に基づく設計でありましょうか。
 アギトが剣を構えると、金色の角を模すように剣の鍔が開くのは格好いいギミックで、赤いアギトは突撃してくる鴉を紙飛行機に見立てると、回避を許さずに一刀両断。
 「何者なんだ、奴は、いったい……」
 一方、今回もずっと病院に居た涼は、タガメを観察する謎の少年を見つめ……その前で再び紋章の輝いた少年は、瞬く間に中性的な美青年へと変貌する。青年の視線に恐怖を感じた涼が絶叫すると大量の窓ガラスが砕け散り、その姿は再び異形に。
 「アギト……いや、ギルスか。珍しいな」
 名前呼んでくれたーーー! でつづく。
 なにぶん、前作の「劇中でゴウラムって言ってくれない」案件があったので戦々恐々としていたのですが、早々に謎の青年が名前を付けてくれて、ありがとう謎の青年!
 前作『クウガ』は名乗りの要素を排除しつつ、劇中で明確な呼称(「未確認生命体第4号」)を与えた上でその意味づけを行っていたのですが、今作は名乗りの排除は継承しつつ、固有名詞に関しては割とざっくり路線。それを示したのがアンノウン&謎の青年であり、言い回しからすると既知の存在である事を物語のミステリーとして繋げ、次回――器用なG3、爆誕
 ……予告が完全に北條さん主役なんですが、まず間違いなく、酷い転落が待っているのかと思うと ワクワク ドキドキします!