東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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誰か名前を呼ぶだろうか……

仮面ライダーアギト』感想・第5-6話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第5話「電波系ヒーロー」◆ (監督:六車俊治 脚本:井上敏樹
 「実は、僕も前からスチュワーデスには興味がある、はい」
 「変態か、あんたは」
 サイコメトリ的な能力でテストを解いている(故に“見える”時と“見えない”時で点差が激しい)事が判明した真魚ちゃん、持てる能力の活用ではありますが、テストを真っ当に解こうとする様子がまるで窺えず、ちょっと心配になります(笑)
 太一は前回の件でこっぴどく怒られ、美杉教授はゼミの学生・片平真由美を真魚の家庭教師に付け、翔一が真由美にデレデレする中、虚空から衆人環視の公園に落下してきた男が死亡。
 被害者の血縁だった真由美のガードに付いた氷川が、翔一と真魚を同乗させて真由美をマンションまで送り届けると、マンションの前には葦原が所在なげに佇んでおり、家庭教師の女子大生を中心に、翔一@ただの下心・氷川@真面目に仕事・葦原@元カレが出会い、何これ?!(笑)
 手の込んだ悪ふざけのような状況でメインライダー3人が初めて一堂に会した後、誤解しないでほしいと弁明する真由美に、
 「驚いたな。おまえ……まだ俺の事好きなのか」
 ……って、凄いな葦原!!
 これまで親身になってくれていたコーチに拒絶された事で、水泳に打ち込むあまりに蔑ろにして関係が自然消滅していた元カノの前に恐る恐る姿を見せた葦原と、自分の前では弱みを見せてくれる男への断ち切れない想いを抱えていた真由美はよりを戻し、第5話にしてアクセルがベタ踏み。
 その真由美にコブラアンノウンが迫り、ガードに付いていた氷川くんは警棒で立ち向かい、電波を受信した翔一はダッシュ反転。
 「翔一くん! ちゃんと帰ってきなさいよ! いつもの翔一くんのままで帰ってきなさいよ!」
 面白いとは言いがたいエピソードだったのですが、それを見送る真魚ちゃんの言葉はとても良かったです。
 コブラに立ち向かうアギトだが、更に女性型のメデューサアンノウンが姿を現し、荘厳なコーラス入りBGMでその戦いを見つめる謎の少年……一方、腹痛に苦しむ葦原の体が変貌して、つづく。
 経緯はわかりませんが、当時、TV朝日制作部所属だった六車監督が演出を担当。新風を吹き込みたい意識だったのかもしれませんが、起伏の付け方が甘くて全体的にのっぺりした上で、経験の浅い役者のやり取りを普通に撮りすぎて、正直ちょっと辛い出来。

◆第6話「覚醒する獣」◆ (監督:六車俊治 脚本:井上敏樹
 見所は、氷川くんがお土産に持ってきたリンゴを他人の台所で自発的に剥いた上に一人で食べ始める翔一くん(笑)
 途中の経緯を大幅にスキップしたと捉えるべきなのかもですが、真由美の父親が死んだ事になっているのに、真由美に葬式の準備とかそういった気配が全くないまま物語が東京で進行していくのが苦しく、脚本段階の問題か演出と編集の問題かなんともいえませんが、血縁が狙われるミステリーとゲストヒロインを中心に物語を転がす都合が正面衝突。
 少なくとも、数日の間隔が存在した事をハッキリと描く必要があったかな、と。
 真由美にガードが付くきっかけになった前回の被害者も、恐らく遠い親戚ぐらいかとは思うのですが(あれが父親だとすると、真由美の行動があまりに不自然なので)、その後、超能力関係の質問の都合で真由美父も殺される為に余計な疑問符が増える事になり、話の成り行きと不可欠な要素の噛み合わせがスムーズに行かなかった感。
 真由美の護衛と共に事件の捜査を進める氷川の前に、新たな被害者が出たと北條が姿を見せ、わざわざマンションの前で待っていて教えてくれる北條さん親切ーと思いきや、氷川にジェラシーファイヤーを燃やす北條は、その過去に触れる。
 「まさかあなたが、あの「あかつき号」事件の英雄だったとは」
 およそ半年前、暴風雨の中で遭難したフェリーボートの乗員乗客を救出(その際、一人だけ行方不明に)する功績をあげた氷川だが、どういうわけかそれは警視庁にとって封印したい事件であり……氷川くんがG3装着員に選ばれたのは、口止めの為の栄転だったのでは、と北條は糾弾。
 とても栄転コースとは思えないのですが、北條さんはそんなに、小沢さんに詰られたり踏まれたりしたいんですか?!
 それはそれとして、かつて「英雄」だった氷川誠が、警察という組織の中で「人造のヒーロー(G3)」の仮面を被せられている、のはなかなか考えさせられる設定です。
 再びコブラ怪人が真由美を襲い、真由美をかばった涼は、致命傷を受ける寸前に異形の姿へと変貌。
 「……あれが……あれが、俺が、水泳を辞めた理由だ。もう、普通の体じゃないんだ」
 「同じじゃないあなたも。あたしを襲った奴と」
 「違う、俺は……」
 涼を拒絶した真由美は、大学を辞めて実家に戻る事になり……
 「でも、さみしくなるな、真由美先生が居なくなっちゃうと。ね、翔一くん?」
 「え? なんで?」
 「て、さみしくないの?」
 「だって、会いたくなったら、会いにいけばいいじゃない」
 底抜けの笑顔を浮かべ、色々凄いぜ翔一くん!
 真由美を狙うコブラの前に立ちふさがった涼は、カラスのイメージを背負いながら、自らの意志で異形の姿へと変貌。
 「二度と真由美には触らせない。二度と真由美の前には立たせない」
 精神的なショックに苛まれていたとはいえ、怪物として否定されてもなお、愛する女の為に立ち上がる姿はヒロイックではあり、第三の“仮面ライダー”は、ダークヒーロー的な雰囲気もあり。
 今作の舞台がアメリカだったら、世界との繋がりは元カノではなく別れた妻と娘で、かつては正義感に溢れていたが、大企業の権力に屈して牙を抜かれ、失意から酒浸りになった元ジャーナリストに違いありません(笑)
 戦闘スタイルとしてはアマゾンを彷彿とさせる、野獣系ライダーが咆哮をあげると角が伸びて処刑ソングが流れ始め、爪や噛みつきを用いる残虐ラフファイトから、ジャンピングネリチャギでビクトリー。
 真由美は実家に戻る事になり、人知れず元恋人を守り抜いた涼は、去りゆく彼女の姿を電柱の陰から見つめるのであった……。
 一方、アギトの処刑を逃れた蛇女は、どういうわけか元オーパーツ研の三雲を刺殺するが、それを見ていた謎の少年に粛正を受け、消滅。
 オーパーツ研と三雲は、謎の少年を生み出したのでお役御免、とばかりに組織解体から完全退場となり、だいぶ雑。20年ぶりに見ても首をひねる雑さですが、どうしてこんな、雑……。
 次回――相対的に、なんだか出来る男ポジションになっている氷川くんに迫るリストラの危機?!