東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

回る回るよカメラは回る

仮面ライダー鎧武』感想・第35-36話

◆第35話「ミッチの箱舟」◆ (監督:諸田敏 脚本:虚淵玄
 「長たる者の務めだ。自らの世界が滅びていくさまを、その目で見届けよ」
 校長ロードが、もはや人類滅亡待ったなしを宣告して貴虎を解放していた頃、鎧武とバロンは猛牛ロードと戦っており、たぶん本編で一度しか使われていなかったキウイリングを使ってくれたのは、そういうのが気になる性格なので嬉しかったです(笑)
 それはそれとして、今作の弱点の一つは、ストーリー上のキャラクターとバトル中のキャラクターの繋がりの弱さですが、後ろから撃つのは卑怯な弱者のやる事だけど、羽交い締めして仲間に撃たせるのはOKなんですね戒斗さん?!
 ……まあ、本来あまりツッコみたくはない部分なのですが、「各キャラの信念に基づいた行動」を重視している作品だけに、それがアクションとバッティングしがちなまま3クールも半ばを越えて完全に割り切られてしまっているのは、残念なところ。
 王妃復活の展望が見えた校長ロードは人類文明のお片付けを始め、世界各地に大量のクラックが発生すると地上にインベスの雨が降り注ぎ、10年を待たずして加速する人類終焉の刻!
 前回の展開から、沢芽市の特殊状況を継続すればするほどに整合性が取れなくなる可能性を危ぶんでいたのですが、全世界を同じ状況にしてしまえば問題なし、の力技は成る程(笑)
 ……一方で、人類文明をそのまま手に入れて玩具にする、緑ロードの目的とは既にズレている感は出てしまいましたし(校長と緑の目的が違うにせよ)、校長からすると人類文明は本当にどうでも良い存在だったように見えたので(その方が、王妃への執着もより強調できますし)、背景説明の都合でやたら理性的に描いてしまった校長を“敵”にする理由を作る為に色々とねじ曲げてしまったのは、『鎧武』の悪い癖といえます。
  まあ根本的なところでは、赤、緑、そして校長と、イコールではないが実質ヘルヘイムの森サイドが明確な悪意を持って人類文明を攻撃してしまった時点で、“善や悪とは切り離されたもの”としてのヘルヘイムの森のコンセプトが崩れてしまっているのですが、オーバーロードは当初出す予定ではなかった、と聞きますと、元々は“ただそこにあるだけのもの”により引き起こされる破滅の混乱の中で、それぞれの欲望や信念の交錯から自壊していく人間サイドの物語を、「ライダーバトル」として描く目論みがあったのでしょうか……。
 で、今作のディザスタームービー構造と、“ただそこにあるだけ”で近付く人間を右往左往させるものとを考え合わせると、ヘルヘイムの森とは“怪獣”のイメージというか、“怪獣”が象徴していたものを別の形で描こうとしたものでもあったのかなと。
 「俺たちがどうにかするしかない……」
 それはいいんですが……
 「もう沢芽市だけの問題じゃない」
 だいぶ前からそうでしたよね?!
 事ここに至ってそれを肌で実感するのが葛葉紘汰というキャラクターの位置づけなのでありましょうが、ヒーローフィクションの主人公としては、もう少し高い視点が欲しいというか、戒斗と足して2で割ると丁度良さそうというか、視野は物凄く狭いのに唱える理想の風呂敷だけは物凄く大きいギャップ――そして、その摺り合わせをしようとする意識が全くない――が個人的にはなかなか好意的に捉えづらく、ここまで来ると負のバイアスがどうしてもかかってしまうのが、辛いところです。
 「ユグドラシルは……世界を守る事ができなかったのか……」
 荒廃した街を彷徨する失意の貴虎は紘汰の姿を目にするが、戒斗と耀子が同行していた為、物陰から様子を窺う事に。その3人は、さらわれた人々を救出しようとユグドラシルタワーへの潜入径路を探していたが、各所のインベスに阻まれていた。
 いい事閃いた! と、ミッチの名前を出す紘汰に対し、さすがにいい加減にしろ、と顔を見合わせる戒斗と耀子の一体感が妙に面白い事になっていますが、これで戒斗一人だと対立と孤立が強くなってしまうので、耀子の存在が効いています。
 あと戒斗、微妙に気を遣って、群れて空気悪くなるなら一人でサバイバルするぜ、みたいなところありますが、耀子さんは逆に、言いたいことを言った上で平気な顔をしてガレージの真ん中でふんぞり返りそうなのでバランスが取れているというか(笑)
 これまでの立場や周囲との付き合いの差からもう少し物怖じするのかと思ったら全くそんな事はない耀子、ミッチに「おまえの居場所はここにない」と言い放った後に自分はガレージに戻っていく「私の居場所はここにあるけどね」宣言が強烈でしたが、環境激変の結果、一番面白くなっている気はします(笑)
 「ミッチが俺を騙す? なんのために」
 深い信頼といえば聞こえはいいですが、ミッチの行動=俺や舞の為、と強烈な思い込みに支配されている紘汰は戒斗と耀子の言葉に勿論頷かず、そうこうしている間に結局インベス軍団に見つかると、ひとまず雑魚を掃討して撤収。
 ダークスーツを身に纏ったミッチは、囚われた人々の中からチーム鎧武の仲間二人は救うが、残りの人々は王妃復活マシンの動力源として生命エネルギーを吸収されていき、オーバーロードはすっかり悪の秘密結社路線(ブラックサタンが倒れて、海の向こうからデルザー軍団がやってきた的な)。
 そしてミッチは、本命の舞を救おうと接触
 「僕らの邪魔をしない人たちだけで、人間の社会を作り直すんです。僕たちの為だけの、自由な世界なんですよ」
 思うにならない事と世界の危機また危機による過度のストレス状況でだいぶ壊れているのは確かなのですが、ミッチはミッチで、これで舞を説得できるつもりなのがとても困った子で、ひたすら負の連鎖が続きます。
 「生き残る価値のある人たちだけを選んで、残すべきだ」
 「そんなの、ユグドラシルがやろうとしていた事と同じだよ? 紘汰が許すわけないよ!」
 舞も舞で、自分の意志を示すより先に紘汰の名前を出してしまうのが大変いただけないのですが、どうして紘汰の名前を出すのかといえばミッチを刺激する話の都合であり、その為に舞がキャラクターとして一本立ちする機会を潰して、紘汰のサポーターでしかない所に押し込めてしまったのは、非常に残念な会話の組み立て。
 「……そもそも紘汰さんがおかしいんですよ!」
 紘汰の言行は、後先考えずに無責任すぎる、とミッチは糾弾。
 「それでも紘汰は間違ってない。私はそう思うから。私の意志で一緒に戦うって決めたの」
 「……どうしてなんです。…………どうしてあなたは、そうやっていつも紘汰さんの事ばっかり。どうしてそこまで! ……あんな奴を信用できるんです」
 「私が信じてるのは紘汰じゃない。――希望だよ」(※カメラ回転開始)
 で、作り手もどうかとは思ったのか、「紘汰が許すわけない」→「私の意志」→「私が信じてるのは紘汰じゃない」と話を運ぶのですが、真っ先に「紘汰が」と言わせてしまったので、どうしても後付けの言い訳めいてしまいます。
 また、紘汰が皆に慕われ、励まし引っ張っていく存在、というのは「チーム鎧武」の中の話としては理解できるのですが、それが外部に拡大していく様相をしっかり描けていないので、舞と紘汰の関係性も「チーム鎧武」という箱の中から今もって抜け出せず、ミッチの行動原理も要するに「チーム鎧武から気に入らない先輩を追い出す」なので、恐らくは意図的に「人類文明の危機とチーム鎧武内部の痴話喧嘩」を接続しているのですが、それが面白いのかというと、個人的には、うーん……といったところ。
 で、舞はこの極限状況下でも異常に肝が据わっているわけではなく、悪い意味で、ビートライダーズ時代と視野が変わっていないのでは、と考えると、この一連のやり取りで、舞の台詞が妙に空疎に聞こえた理由が腑に落ちて、個人的に舞は、「周囲の状況を受け止めた上で希望を選んでいる」というよりも「周囲の状況を消化せずに判断基準を紘汰に丸投げしている」ように見えてしまっています。
 「……希望?」
 「だから、希望を諦めない紘汰についていく。あいつ一人に背負わせたりしない。同じものを信じた人だから、最後まで一緒に戦う」
 突き詰めると、舞は「同じもの」をいつ信じたっけ……? という話になるわけですが、紘汰の存在感を高める為に舞をサポーターに用いて補強するならば、舞の「視野の変化」と「諦めない強さ」をこそ描かなければならなかったのに、そこがごっそり欠落しているので、本人は戦友と主張しているけど、依存に見えてしまうところ。
 前半、戒斗との絡みで「それでも踊り続けられば強さ」といったやり取りがあったので、そういう強さを描きたい意図はあったのかと思われますが、それはねじ込むべき要素だったかなと(丸投げにしろ依存にしろ、この状況下で前向きに行動している事そのものは立派なので、それが「舞」として跳ねずに「紘汰」に吸収されてしまうのが残念)。
 「……舞さん」
 「ミッチも諦めないで。オーバーロードの言いなりになる必要なんてない。一緒に戦おうよ」(※カメラ回転終了)
 舞の説得に答えぬままミッチは背を向けて去って行き、定期的にこういうやり取りを入れないと先に進まない『鎧武』ですが、個人的にはもっと劇的に圧縮してズバッと描いてくれたほうが好みであり、何もかも台詞にしようとすれば、それはカメラも、約35秒間に渡って回ります。
 「……希望だと。それが、舞さんと僕とを距てている壁なのか。……なーんだ、そんな脆いもの、簡単に壊せるじゃん」
 ミッチに助けられた鎧武モブが地下の装置とそこに繋がれている紘汰姉を発見していた頃、ミッチはパフェ屋を訪れて紘汰と接触。同じく紘汰と接触の機会を窺っていた貴虎は、それを目にして盗み聞きを続行する羽目になり、まあ、ピーチさんに思い切り撃たれていたから、近付きにくいのは仕方ないですね……。
 外に連れ出した紘汰と話し合うミッチは、そもそも裕也を犠牲に舞さんを救ったなら落ち込む余地ゼロでしょ? 最善の選択として誇りに思うべき、と切れのいい回し蹴りを放ち、裕也の件を引きずる紘汰に対する「そこがね、おかしいんですよ」の言い回しは、ミッチ史上最高に良かったです(笑)
 「希望っていうのはタチの悪い病気だ。それも人に伝染する。紘汰さん、あなたはね、そうやって病原菌を撒き散らしてるんですよ!」
 何やら聞き覚えがあるな、と思ったのですが、サン=テグジュペリの言葉からでありましょうか(ミッチなら、意識的に引用してもおかしないキャラでもあり)。
 「あなたの希望に巻き込まれて、僕の大切な人が破滅しかかってる。もうこれ以上は見過ごせない! 紘汰さん……舞さんを救うために、あなたには犠牲になってもらいます!」
 「…………みつざねぇ!」
 ミッチはメロンに変身して紘汰に襲いかかり、明確な殺意を向けられて初めて、真っ正面からミッチと向き合った紘汰も鎧武に変身し、ぶつかり合う両者で、つづく。
 次回――兄弟対決。……物語における役割を考えると、今度こそ兄さん完全退場の可能性もありそうで、ドキドキ。

◆第36話「兄弟の決着!斬月VS斬月・真!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:虚淵玄
 見所は、ヘルヘイム果実をエナジードリンク代わりにする呉島元主任。
 「どうしてだよミッチ?!」
 「それがわからないあんたが許せないんだよ!」
 他人の勝手な期待でレールに乗せられる事に鬱屈を感じていたミッチが、紘汰に勝手な期待を押しつける身勝手さは皮肉でありますが、そんなミッチに甘え果てていた紘汰も紘汰なので、この、どっちもどっち感。
 鎧武には変身はしたものの本気で戦えない紘汰に弓矢の一撃が迫った時、割って入ったのは帰ってきた貴虎。
 「おまえはそんな事をする男じゃないはずだ!」
 「うるさい!! あんたに何がわかる……いつも偉そうに僕に指図して、肝心な事は何もわかってないくせに、なんで今更また出てくるんだよ!!」
 ぐさぐさぐさっ!
 色々と刺さる兄さんだが、そこに戒斗と緑ロードが介入すると、緑ロードが脇から悪臭をばらまいて、撤収。
 アジトに戻った一同はミッチがユグドラシル関係者の肉親であったことなど、諸々を共有する。
 「ミッチは俺たちの友達で居るために嘘をついてた。嘘をついてまで、友達で居たいと思ってくれてたって事だろ」
 あ、そこはわかるんだ……。
 「おまえらは騙されて悔しくないのか?!」
 「悔しいさ! でもな……人を騙し続けるのは、もっと辛いんだ。……もう一度ミッチと、今度こそ本音でしっかり話し合わないと」
 ……え。
 ミッチが嘘をついていた事も、騙されていて悔しい事も認めた上で、先の衝突が「本音でしっかり話し合っていない」事になるのはさすがに目眩がしてきますが、ここはミッチが道を踏み外した事を受け止めた上で、引っぱたいてでも連れ戻す宣言をするところなのでは……。
 「お人好しも……ここまで来ると病気だな!」
 「なんだと?」
 「話しても駄目だった奴と、おまえは戦ったばかりじゃないのか?!」
 最近メキメキと知力が上がっている戒斗、とうとう、物語そのものにツッコむ。
 主任は耀子の裏切りについてはさらっと水を流し、ダンスの練習に打ち込みながら、友達を諦めるのは弱さだ、とミッチを見限らない事を宣言する舞の言葉に頷く戒斗。
 「認めるしかない時もある。……おまえは、おまえなりに強い」
 前回は紘汰依存めいた発言をしていた舞が、今回は紘汰よりもよほど納得できる姿勢を見せ、舞に関する描写の欠落として引っかかっていた部分を補ってはくれたのですが、やるならもっと前にやっておくべきだったと思いますし、紘汰に主導権を持たせたいのなら、紘汰主導のレールをハッキリ引いた方が良いと思いますし、ここに来て、物語の組み立てがどうもちぐはぐ。
 呉島邸に隠していたドライバーとロックシードを手にした貴虎はミッチを呼び出し、兄弟対決を止めようとする紘汰は緑ロードに阻まれ、やたらめったら強い極フォームは、入手方法が入手法だっただけに、活躍すればするほど心の温度が下がっていきます。
 「そうか……貴様はもう既に……」
 「逃げる気か!」
 「まだ何もわかっていないようだな。いずれおまえがその力の意味を理解する時が楽しみだ」
 緑ロードは思わせぶりな事を言って姿を消し、加熱するメロン対決では、空中で凄い回転をする兄メロン。悲劇的な兄弟対決、という事でか、かなり激しいバトルが展開するのですが、正直ミッチ関係は、破裂まで時間をかけすぎて、一番の食べ頃を逃してしまった印象。
 また、前回2クール余り溜め込んでいた「紘汰さんおかしいですよ!」を爆発させた直後に、十数年溜め込んでいた「兄さんポンコツなんだよ!」を噴火させた事で、特上天丼に箸を付けた直後に特上寿司が桶で出てきたみたいな事になっていて、どちらも美味しくいただくのは無理があるというか、少なくとも私はお腹いっぱいで消化しきれません。
 自己弁護の為に出来事の前後が入れ替わってさえいるミッチの姿は痛々しさが勝っていますし、予告時点で兄さんが土壇場でトドメを刺せないのがわかりきっているのも加えて、二つのバトルのどちらもノれず(盾メロンは好きなので、その再登場は良かったですが)。
 寸前で刃を止めた兄メロンは至近距離から矢を受けて埠頭から落下すると海底に沈んでいき、この期に及んで水落ちな兄さんですが、果たして……そして、緑ロードの妨害をくぐり抜けて戦いの場へ急ぐ紘汰だが、次回――今度は何週間遡るのでしょーか(確か夏の劇場版がブラジルワールドカップ合わせだったのでしたっけ……)。