東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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青春ジグザグハート

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第43-44話

◆第43話「6人目の戦士!」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 「どうして僕はこんなに弱いんだろう……。一度でいいから強くなって、みんなを見返してやりたい……」
 運動音痴のガリ勉野郎、として体育会系気質の強い『ターボレンジャー』世界では肩身が狭く、クラスメートから馬鹿にされる3-Aの学生・ケンイチ(跳び箱を失敗した際、皆が笑う中で高速戦隊のメンバーは心配して駆け寄るのがしっかり手堅い)は、校庭の裏庭で射撃訓練中のガンマンボーマを目撃。
 ガンベルトをかけ、両肩にショットガンを装備したガンマンボーマは、頭部にリボルバー拳銃の意匠がほどこされており、横から見ると顔の側面が木製グリップのイメージになっているのが、格好いいデザイン。
 ズルテンに襲われたケンイチを横っ飛びで助けた洋平は、その場でブルーターボになってウーラーたちを蹴散らした事で実力者としてガンマンボーマに目を付けられ、そういえば、射撃寄りのキャラでした。
 早撃ち対決に敗れた青は駆け付けた仲間達に助けられ、マシンガンの斉射を浴びた高速戦隊はケンイチを連れて撤収するが、事情を説明したケンイチから、高速戦隊に入りたいんだ、と頼み込まれる事に。
 「頼むよ。もっと強くなりたいんだ。強くなって、みんなを見返してやりたいんだ」
 「無理だよケンイチ、おまえには」
 明らかに心根に問題があるのですが、ズバッと言いにくかったのか厳しい訓練が必要と説得するも、身近にある強さを目にしてしまったケンイチは諦めない。
 「このブレスレットがあれば、変身できるんだろ?!」
 「駄目なんだケンイチ。おまえはターボレンジャーには変身できない」
 「なぜ?!」
 「妖精パワーを浴びた人間じゃなきゃ、駄目なんだ」
 「妖精?」
 バイオ粒子やアースフォースと同系統といえば同系統なのですが、物語途中で説明した結果、今明かされる真実、というよりも、身も蓋もない前提条件めいてしまったのは、改めて劇作があまり上手く行かなかった部分。
 暴魔城へ赴いたガンマンがターボレンジャー撃破を宣言する一方、ケンイチは、昨日のお礼と称して手作り弁当を洋平に渡し……それを喜んで受け取る洋平、君は、あれだな……女子の弁当とか当たり前に貰いすぎて、色々マヒしてるな……(笑)
 ところがそこには睡眠薬が混ぜられており、眠り込んだ洋平からブレスを奪って逃走したケンイチは、少年期に妖精の光を浴びていた事が判明。
 たまたま強盗事件に行き合ったケンイチは、変身に成功するとブルーターボとして強盗を叩きのめし、一歩間違えると、爆発四散したケンイチとそれに巻き込まれた強盗の二つの焼け焦げた死体が路上に転がるところだったので、妖精の光が思い違いではなくて太宰博士が法的に助かりました。
 「僕にもターボレンジャーの資格があるんだ。もう誰も僕を馬鹿に出来ない。みんなを見返してやるんだ」
 「おまえに戦士の資格は無い! ブレスレットを返すんだ!」
 地面に倒れた強盗を、力を誇示するように踏みつけるケンイチターボの姿を目にした洋平は、ブレスの返却を要求。
 「なに?!」
 「ケンイチ……おまえには戦士に本当に必要なものがわかってない」
 力を過信し、強さの意味を履き違えるケンイチ(物語の因果としては、たとえ妖精パワーを浴びていても、そういう人間の元には力は訪れない、という事であり)を重ねて説得しようとする洋平だが、ガンマンボーマがそこに出現。一度は立ち向かうも、反撃を受けるとケンイチボーマはへたり込み、生身でそれをかばった洋平、割と思い切り撃たれる。
 「ケンイチ、逃げろ、逃げるんだぁ!」
 それでもケンイチを守ろうとする洋平を人質に取ったガンマンは、ケンイチをメッセンジャーとして三日月ヶ原に高速戦隊を呼び出し、力たちにそれを伝えるもブレスを返す踏ん切りをつけられなかったケンイチは、理科室で思い悩む。
 (変身した僕より、生身の洋平くんの方が勇気があったなんて……)
 本当に必要なもの、自分を変えられる力とはなにか――
 「洋平くん、僕に出来ることは……そうだ!」
 得意の化学知識で何やら細工を施したライフル弾を作ったケンイチは、ガンマンに追い詰められていた高速戦隊の元に駆け付けると、再びブルーターボに変身。へっぴり腰ながらも果敢に突撃すると、銃弾を浴びながらの決死のダイブにより銃弾のすり替えに成功し、ケンイチは《狂気》がLV1に上がった!
 「洋平くん……やっぱり……ブルーターボは、君の方がふさわしい」
 倒れたケンイチは洋平にターボブレスを返し、激しい銃撃戦となるも追い詰められる青だが、ケンイチのすり替えた弾丸が暴発した隙にJガンで反撃すると、Vターボバズーカでビクトリー。
 今回も謎の肉塊がガンマンを巨大化させ、ターボロボ発進。距離を取っての撃ち合いは相手の土俵と見たターボロボは地面を撃って目くらましをすると高速剣で斬り掛かってターボクラッシュで勝利を納め、巨大戦における殺陣の工夫は今作の特色であり長所です。
 「みんなを見返してやろうなんて馬鹿だった。戦士に必要なのは勇気。勇気は、みんなを守ってやりたいという、愛から生まれるんだね」
 反省したケンイチは洋平たちに謝罪すると、自分に自信を持って胸を張って生きていく勇気を身につけ、跳び箱にチャレンジ。
 目的を果たす為なら弁当に睡眠薬を仕込める精神性と行動力、火薬調合の知識のみならず擬装用の弾丸を所持、トドメに銃弾の嵐の中に突っ込んでいく覚悟と狂気を身につけてしまったケンイチ、完全にテロリスト予備軍であり、一歩間違えると数年後の同窓会がデスゲームの会場になっていた可能性もあるので、人を守る愛と勇気に目覚めてくれて本当に良かったですね……。
 同級生の葛藤を通し、ヒーローに必要な「力」ばかりではない本当の「強さ」とは、主題歌にも歌われている普遍的な「愛と勇気」なんだ、とまとめたのは『ターボレンジャー』らしく、同時に、たとえ悪と戦う戦士にはなれなくても、「勇気」を持って自分を変える事は出来るんだ、としたのは綺麗なフィードバックでした。
 ただ、薬を盛ってブレス強奪をしたケンイチの精算として相応の活躍をさせる必要があった結果、ブレスを返して5人でも苦戦する高速戦隊を助けるのではなく、ブレスを返さずに調合している間に4人が苦戦の形になってしまった為、素直にブレスを返せば良かったのでは……となってしまったのは残念。
 かといって先にブレスを返すと高速戦隊の元へ向かう推進剤が不足してしまいますし、ブレスを返すに返せなかった事情か、火薬調合以外で5人を助けるか、もう一段階の工夫を仕込めなかったのが惜しまれます。
 次回――え、ええええええっ?!

◆第44話「流れ暴魔伝説」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:渡辺麻実)
 キリカの枕元にお守りボーマが立つと「真の暴魔になる時が来た」と流れ暴魔伝説の存在を告げ、月影家を訪れたキリカは謎の儀式に没頭。
 再び姿を見せたお守りボーマの霊魂から、宇宙より飛来する鎧ボーマと一体化する事により人間の血が消え、真の暴魔となった時に史上最高の力を得られる事を教えられ、一歩間違えると『カーレンジャー』が始まりそうでドキドキします(笑)
 「これでヤミマルと二人で、地球をこの手に」
 運命の男の為にその力を得ようとするキリカだが、流れ暴魔として二つの世界を支配する事にアイデンティティがあったのに完全な暴魔になったらそれを失う上、キリカの方が史上最強になったら、ヤミマルさん、地味に傷つくのでは……。あの人多分、男の沽券に関わる、とか言いながら旅に出るタイプですよ……。
 妙な噂を聞いて月影家に不法侵入した力は、この儀式を目撃。スモークを焚きしめた妖しい儀式の間でキリカと一当たりするも敗北し、シーロンの口から流れ暴魔伝説を確認。
 「よせキリカ! 合体したら、もう人間ではいられなくなるんだぞ!」
 数万年周期で地球に接近する小型彗星の正体がヨロイボーマで、それと合体する事で真の暴魔に新生する、というのは改めて伝奇浪漫テイストですが、ヤミマルがターボレンジャーを足止めしている間にキリカは合体を果たし、予告映像が衝撃的だった重装甲キリカが誕生。
 「我が名は、ヨロイキリカ」
 凄く重そうですが、動けるんですかね、これ……。
 「苦しめ! 苦しんでのたうち回りながら死ぬがいい!」
 剣を振り回すと燃え盛る岩石が飛び回り、その斬撃は大地を断ち割り、魔神剣なんていらなかったんや!
 圧倒的なパワーで5人を地割れに叩き落としたキリカは、Bパートでは暴魔城の広間を高笑いしながら歩き回り、思ったより動けました。
 「この力は永遠で、しかも無限だ!」
 「ならば何故、連中にトドメを刺さなかった!」
 「私の力をもってすれば、いつだって奴らを倒せる!」
 「どんな力でも、過信すると痛い目に遭うぞ!」
 ところがヤミマルとは何やらすれ違いが発生し、
 「この力、私一人のものではないのだ。きっと、ヤミマルの力になると思って……」
 肩を落とすキリカの、この心情をきちっと描いてくれたのは良かったところ。
 一方、ヨロイキリカに完敗したターボレンジャーは、周囲の惨状に愕然となり……実際の映像は、火を噴きながら砕けた岩石が周辺に散らばっているというものなのですが、5人のやり取りの内容からすると、本来は街を破壊して廃墟の中にでも立たせたかった雰囲気でしょうか。
 前作ならほぼ確実に廃墟を出してくるだろうところを舞台が何もない荒れ地になったのは、キリカ救済の余地を残す為なのか、バトルや予算の都合だったのかはわかりませんが、間接的ながら、瓦礫と破壊の炎――ヤミマル&キリカの支配する世界の象徴、のニュアンスを示す意図は感じられ、蓑輪監督が巧い見せ方。
 「どうすりゃいいんだよ?!」
 「でも、戦うしかない……」
 「勝ち目がないってわかっていてもか?!」
 「じゃあ黙って奴らの思うままにさせるのか?!」
 「でも……」
 「俺は嫌だ! ……人間を自ら捨てるような奴に、この地球をめちゃめちゃにされてたまるか!」
 「……力」
 「俺たちの他に、誰が地球を守るんだよ!」
 そしてその炎と瓦礫の中から、諦めずにヒーローは立ち上がり、作風もあってあまりリーダーとしての押し出しは強くない力ですが、力強く格好いい宣言でした(角度的な無理は承知で、炎を背負う――炎の意味が転換される――カットも秀逸)。
 「この地球は、おまえの好きにはさせん!」
 「その台詞、私に勝てたら言ってごらん!」
 大変、気合乗りのいいキリカは氷の吐息で5人を吹き飛ばすが、ひるまず突撃から赤が一騎打ちに持ち込み、それを見つめるヤミマル。追い詰められた赤だが、投げつけられた剣を受け止めるとそれをヨロイの中央部、呪符の部分に投げ返すと、思い切りよく吹き飛んでキリカとヨロイボーマは分離。
 ヤミマルはキリカを助けに現れ、左右非対称のデザインが割と面白かったヨロイボーマはターボレーザーからVターボバズーカでビクトリー!
 巨大戦は高速剣での立ち回りとなり、剣を失ったターボロボはラガーファイターを呼び出すとスーパーシフトし、ヨロイ光線を不動の構えで受け止めると、スーパーミラージュビームで消し飛ばし、無慈悲。
 「私が真の暴魔になれば、ヤミマルにも力を分けられると思って」
 「もういい……もういいんだ! ……流れ暴魔でいいさ! 二人なら。それでも必ず、地球を手に入れてみせる!」
 元の鞘に収まる二人、星空を見上げるターボレンジャー、ナレーションさんが煽る“新たな脅威”とは……でつづく。
 なにはなくとも、重装甲キリカが常態化しなくて良かったですが、これまで見た渡辺脚本回では一番面白かったです。ヤミマルとキリカの微妙なすれ違いを掘り下げて引っ張る……までは行かなそうですが、終盤戦を前に、力のヒーロー性を押し出せたのは特に良かったなと。
 そして、しばらく気にしていたけどちっとも変わらないので諦めていたED映像が、いつの間にかヤミマルキリカバージョンになっていた!
 次回――新たなる脅威・超魔術!