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時は20年遡る……

百獣戦隊ガオレンジャーvsスーパー戦隊』感想

◆『百獣戦隊ガオレンジャーvsスーパー戦隊』◆ (監督:竹本昇 脚本:赤星政尚)
 《スーパー戦隊》25作目の記念作品として制作されたVシネマ。当時、3月発売が基本だったVSシリーズとは違い、『ガオレンジャー』放映中盤の8月発売であり、作品回顧などを語られている竹本昇監督のツイート〔竹本のぼる(監督)/Twitter〕によると、4月後半~5月前半辺りに撮影していた記憶との事で、本編がロウキ編の真っ最中辺りでありましょうか(その為、シルバーは影も形も登場せず)。
 ……今日も今日とてオルグと戦うガオレンジャーだが、地底から噴出した謎の力により、ツエツエとヤバイバ、おまけに戦闘員までが黄金角にパワーアップ。その猛攻の前に黄青黒白が次々と倒され、残るは赤のみになってしまうが、それは地底に眠っていた飯塚昭三声のはぐれハイネス・ラクシャーサの生み出した幻であった。
 ラクシャーサはその強力な幻術により敗北のショックを受けたガオレンジャーの心の隙間に忍び込むと戦士の魂を奪い取り、恐怖に囚われ戦意を喪失してしまうガオイエロー・岳、ガオブルー・海、ガオブラック・草太郎。赤が足止めしている間に3人を連れて逃げるガオホワイト・冴の前に謎の僧侶(宮内洋!)が現れると真っ赤な薔薇を育てる為の4つの色について説き、過去戦隊の存在が示唆される事に。
 ラクシャーサから強めの幻術攻撃を受けた赤が再生オルグ軍団に襲われる一方、逃げ出したGフォンを追いかけた残りの4人は、冴はメガピンク/今村みく、海はゴーイエロー/巽ダイモン、岳はレッドファルコン/天宮勇介、草太郎はギンガブルー/ゴウキとそれぞれ出会うのであった……。
 ツエツエに追われつつ、みくに振り回される冴は、女戦士といえば七変化! と聞かされて、ここから歴代シリーズのふんだんな回想シーンが盛り込まれ……ま、纏い持ち……実際の本編を見るといい話もあったりはしますが、女戦士×コスプレ回、となると映像的には割ととんちきな回が多いので、立て続けに繰り出されると脳が消化しきれません(笑)
 そして、はるな軍曹は何故、占い魔女回ではなく地獄ライダー回の方なんですか?!
 ナレーション「でも、これって、ホントに、女戦士の、嗜みなんでしょうかねー?」
 コスプレ以外の女性メンバーの活躍シーンも諸々まとめられ、ナレーションさんが、金の力で女力の促成栽培で名高いユウリマーク3カスタムに、全力でツッコんだ!!
 草太郎はゴウキからパワー系戦士の系譜を語り聞かされ、だいたい、パンチ。
 過去の戦士たちから4人の仲間がそれぞれ話を聞いて回想シーンが流れる合間に、幻術の中でひたすらオルグと戦う赤が、なんだかちょっと可哀想なのですが、よりによって何故ウェディングドレスオルグが選抜されたのかと思ったら、草太郎の立ち直りと機を同じくして、黒がウェディングを打ち破った戦法を赤が思い出して反撃を決め、成る程。
 作品としての主体は過去戦隊の紹介映像にかなりの比重があるのですが、合間に赤の戦闘シーンを入れる事により〔回想シーン→回想シーン〕の一本調子になる事を避けると同時に、殺意を失ったメンバーの立ち直りと赤が信じる仲間との絆を〔本編メイン回の活躍を思い出して逆転〕で象徴してみせるのが秀逸で、かなり良く出来た構成。
 海は雪印牛乳の戦士……じゃなかった研ぎ澄まされた技の数々を語られ、幻術の中の赤は、青のクレーン殺法を真似た急降下アタックで帆船オルグを迎撃。
 他カテゴリと比べると、だいぶ強引な感じもある技部門(スピード系のキャラはまあわかるとして)ですが、上記した竹本監督のツイートによると、分類の難しいキャラに関しては、「格好良く剣を使っている映像があったから剣に回そう!」といったやりくりもあったようです(笑)
 岳は4つの墓碑(……!)に花を捧げる勇介と出会い、少々太めのレッドファルコンは、当時レッドだった新堀和男さんが10年ぶりにスーツアクションを演じたとの事。
 ヤバイバ達の襲撃を軽々と蹴散らしたライブ赤は、かつての戦いで自らが得た戦士の心を岳に伝え……コロンさーーーん!!
 vsケンヅノー回が大きく取り上げられてコロンさんファンとして大歓喜(笑) ……まあ、捨て身で戦うの極意は、ちょっと前作主人公が憑依していた時の勇介ですが(笑)
 そして勇介は歴代の剣の戦士たちについて語りだし、いきなりのブーバ地球に死す! は、竹本監督のツイートによると、当時まだソフト化されておらず、伝説の名シーン的な扱いだったので最初に持ってきたとの事(これ以外の回想は、どれがどの戦隊かわかりやすくする意図もあってか、基本的に放映順)。
 「誰も、ただ力があるから強いんじゃない。大切な何か、掛け替えのない何かを守りたいと願う優しさがあるから、強い力が生まれるんです」
 草太郎は守りたいものの為に力を発揮する優しさを、海はたゆまず技を磨き続ける精神を、そしてライブマンのバトルテーマでライブ赤と切り結んだ黄は、勝利の為に恐怖に打ち克つ勇気を取り戻す。
 「見事だ。それが、おまえの本当の剣だ」
 (……待ってろよ、レッド)
 ライブ赤に頷いたガオエイローは二刀を手にきびすを返し、絡む相手が赤から選抜の勇介になった事もあるのでしょうが、今作のガオイエローは本編より5割増しぐらい格好いいような(笑)
 連戦中の赤は携帯電話オルグを黄の見せたえぐい叩きつけ攻撃で打ち破り、再生オルグ軍団を一人で邪気退散すると、現実の世界へ自力で帰還するガオラオぶりで殺る気満々だぜぇ!!
 「ガオレッド何故だ? 何故おまえは絶望しない?」
 「俺には、仲間たちが居るからな!」
 残る冴は、殺意喪失した男達の分まで、と肩肘張りすぎていた事をみくに指摘され、『メガレン』からスーパーみく回がフォーカスされて、この回はEDテーマ「気のせいかな」の使い方が凄く良いエピソード。
 ツエツエとヤバイバに襲われる二人だが、再び謎の怪僧が現れると戦闘員軍団を軽々と蹴散らし、日本じゃあ二番目だ!!
 「貴様なにもの?!」
 「ふふふふふふふふふ……ジャッカー電撃隊行動隊長・番場壮吉。よろしく」
 墨染めの衣を脱ぎ去った男は、白いシルクハットに白いジャケット、赤青黄緑の4色に染められたど派手なスカーフ、という奇天烈な衣装を身に纏っており、この10年後の『199ヒーロー大決戦』の際はさすがに年齢が目立っていた宮内さんですが(確かある時期に大きな手術をされていた筈なので、その影響があったのかも)、今作時点ではぶっ飛んだ衣装をバッチリ着こなして華麗にステッキを操る姿が抜群の格好良さ。
 かくしてスーパー主役強奪タイムが始まり、番場は薔薇とステッキでツエツエとヤバイバを圧倒し、両者は海落ち。
 「目の輝きが、戻ったようだな」
 Gフォンに見限られたのではなく、Gフォンに導かれた事で絶望を乗り越えたガオの戦士たちは独り戦いの場に残った赤の元に急ぐが……スーパー主役強奪タイムに必須の生け贄として、ガオレッド・獅子走は十字架に磔にされていた。
 冴は番場とみくの協力を得た変装作戦で走を解放し、男3人も復帰。
 「みんな、やっぱり戻ってきてくれたのか!
 「当然だ。俺たちは5人揃ってガオレンジャーだぜ」
 「そうだよ! なあブラック!」
 「ああ。ネバギバだぜ!」
 チームが再集結する割と良いところで『メガレン』の曲なのは、『メガレン』好きとして嬉しい。
 「見たかラクシャーサ。俺の仲間たちを舐めんじゃねぇ!」
 力・技・そして勇気! それだけデカく強くなる! と岳海草は生身で強化戦闘員を撃破していき、そこに駆け付けた師匠たちも勢いで戦闘員を叩きのめし、そう、鍛え上げた筋肉は、嘘をつかない!
 「よーしみんな、行くぞ!」
 番場が当たり前のように音頭を取ると、総勢10人が個別変身する大サービス。


「命あるところ、正義の雄叫びあり! 百獣戦隊!」
「「「「「ガオレンジャー!!」」」」
「我ら!」
「「「「「「「「「「スーパー戦隊!!」」」」」」」」」

 10人揃い踏みの大爆発から、先輩たちはラクシャーサの呼び出した再生怪人軍団に立ち向かい、ここで『ライブマン』主題歌!! から、完全にヒーローのターンで、完封爆殺。
 ガオレンジャーの方も主題歌に乗って、冒頭で苦戦していたツエツエやヤバイバを圧倒すると、残ったラクシャーサを破邪百獣剣で一刀両断。
 即座に巨大化したラクシャーサに、ガオマッスルで立ち向かうもあっさりやられて地面に投げ出されたその時――ガオライオンを中心にスーパーメカが大集合し、実に竹本監督の好きそうな絵であります。
 三浦参謀長と新命明の号令が挿入され、メカ軍団(歴代赤マシン)が次々とラクシャーサに攻撃を仕掛ける大盤振る舞いは、戦隊ロボ好きの竹本監督らしい構成ですが、本編映像に加え、当時の撮影用ミニチュア、スタッフの私物含めた玩具、更には写真までを素材として合成を駆使しているとの事で、各種弾着や特殊効果を組み合わせる事により、しっかりと巨大な敵に集中攻撃を仕掛けているように見えて凄い。
 放水に梯子車パンチに火炎放射と変化球を交え、新規CGの戦闘機部隊によるフォーメーションアタックから、なんかロボット降ってきた!!
 更にW恐竜が連続攻撃を仕掛け、後の豪獣レックスは割とそのままだったのだな……と(笑)
 それだけの猛攻を受けながらも未だ絶望しないラクシャーサだが、それはガオレンジャーの魂にも火を点け、真打ち登場、百獣合体ガオキングは、歴代ロボの必殺パワーのソウルを受け取り、殺る気満々アニマルハートで、ラクシャーサを滅殺。
 しかしラクシャーサは、逃げようとしたツエツエとヤバイバに与えていた邪悪エネルギーを吸収して雄々しく復活。
 「この世界に、邪悪な衝動が渦巻いている限り、俺が死ぬ事はない!」
 圧倒的オルグガッツを見せるラクシャーサだが、それを打ち破るのは、地球を守り続けてきたスーパー戦隊魂!
 ライブ赤がとうっと飛び上がると、崖の上に勢揃いした歴代レッドが過去映像で名乗りを決め(レッドターボは個別名乗りがなく、新規撮影との事)、更にそれぞれの決めポーズの煽りカットをオール新規で加えて、大変豪華。
 「みんな……ここで俺たちが諦めちゃ、百獣戦隊の名がすたるぜ!」
 その後押しを受けてガオレンジャーは立ち上がり、強大無比のはぐれハイネスに向けて正義の雄叫びをあげる!
 スーパー戦隊魂――それは、どんな時でも決して諦めない心だ!」
 ガオレンジャーは5人のスクラムコンビネーションにより、天空高く舞い上がった赤が歴代レッドの殺意を上乗せしたエネルギー弾をオーバーヘッドキックするガオレンジャーストームをラクシャーサに叩きつけ、邪気蒸散。
 はぐれハイネスは跡形もなく消滅するが、歓喜した5人が振り返ると、スーパー戦隊の戦士たちも忽然と姿を消しているのであった……。
 アニマル島に帰ると、はぐれハイネス出現に驚きのあまり滑って転んで気絶したままだったテトム(色々、本編で記憶に不具合の多いキャラだったので、リアルに心配になります……)が目を覚まして、はぐれハイネス復活から夢だったに違いない、と自らを納得させ、全てはオルグの見せた夢幻だったのか、それとも確かに歴代戦士たちが同じユニバースに実在しているのか、或いは地球のパワーが世界をひととき交差させた淡い希望の欠片だったのか……VS世界観についてはややふんわりとした解釈の余地を作った上で、冴たち4人は、手元に残った真紅の薔薇を、リーダーとして仲間を信じ、希望の火を消す事なく戦い続けた走の胸に挿す。
 「ガオライオン! 約束するぜ! この星は、俺たちガオレンジャーが守り抜く。スーパー戦隊魂を受け継ぐ者として――」
 「「「「「やる気満々だぜぇ!」」」」」
 から、後の「スーパー戦隊ヒーローゲッター」の先駆的なEDテーマ「燃えろ! スーパー戦隊魂!!」(途中、全て「○○パワー」で済まされる戦隊や、「爆発するぜダイナマン」など、微妙に歌詞が危うい(笑))が流れて、おわり。
 歴代戦隊を紹介する過去映像のウェイトが大きい作品でありますが、今見ると、『ゴーカイ』の10年前にこういった工夫で見せていたのかという部分と、ふんだんなオリジナル映像に『ゴーカイ』とは別の豪華さがあり、山盛りのサービス精神に貫かれて、なかなか面白かったです。
 特に、見せる必要のある要素や尺の違いはあるものの、巨大戦に関しては、『199ヒーロー大決戦』よりまとまりが良かったのでは感(笑)
 また、戦う魂を失った若き戦士たちに先達が志を伝えるという構成上、スペシャル作品ゆえのシンプルさも含めて、ヒーロー作品のエッセンスを凝縮してストレートに描けたのは、スッキリと飲み込みやすかったです。
 そして全体に緩急を付ける機能に加え、仲間を信じて(これがポイント)戦い続ける赤の姿を挟む事で、先輩達の偉大さを讃えつつ、現役戦隊の格を保った構成は、非常に秀逸。
 以前に比べてコラボ作品を鷹揚に見られるようになった事や、去年完走したばかりの『ライブマン』ブーストも加えて、楽しめる作品でした。