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秘密の銃で正義の雄叫び

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第1話

◆第1カイ!「キカイ世界はキキカイカイ!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 「天真爛漫に育っちゃってぇ……」
 「うぉぉぉぉ、爆速・ぜんかぁい!!」
 ……ものは謂いよう、ですね……。
 突如として、歯車にされていく数多の世界……そして最後に狙われた世界では――世界初の何かでっかい事がしたいと、意気盛んな平行眉毛の青年・五色田介人(ごしきだ・かいと)が、スカイツリーのてっぺんからバンジージャンプをキメようとして警備員に叩き出されていた。
 そんな青年の目の前で、世界が歯車に閉じ込められ……ずに、突如として街中に現れる機械人間たち。
 「もしかして……父ちゃんたちが発見した、並行世界の人?」
 積極的にコンタクトを図って、戸惑う機械人間に手を差し出す介人の立ち位置が一言で分かりやすく示され、流れ出す主題歌は、成る程こう来るか、という感じでしたが、今の児童にも響くのかどうかはさておき、「秘密の銃」というワードの破壊力が高い(笑)
 それから一ヶ月……キカイトピアからやってきたキカイノイドたちは人類と共存し、すっかり日常に溶け込んでいる光景が描かれる、だいぶブッ飛んだ展開。
 そしてこの状況を引き起こした張本人たちは……アース-45の歯車化に失敗し、原因究明に追われていた(笑)
 侵略作戦の初動に失敗してじり貧に追い込まれた悪の組織はこれまでにも幾つかありましたが、侵略しに来た事に気付いて貰えないまま1ヶ月経ってしまった組織は、史上初でありましょうか。
 事態に苛立つ壁王様が床に拳を叩きつけると幹部二人が衝撃で宙に浮き、この後も、素っ頓狂なやり取りに首を傾げて見守ったり、突然の巨大化に尻餅をついたりなど、基本的にこのラインで描写が統一されており、色々ぶっ飛ばし気味ながら端々のリアクションの積み重ねで丁寧に作品世界が示されているのは、さすがの中澤監督。
 置物系ボスを超えた壁系ボスの王様は、ペットの鳥が、もう腕力で侵略しちゃえばいいんじゃね? と言い出すと猫撫で声で大方針を即座に転換し……組織としては、なんかもう、凄く駄目そうです!!
 爆速全開した介人がキカイたこ焼きと綿菓子を物々交換していたところ、キカイトピア王朝トジテンドによる侵略活動が開始され、アース-45人もキカイノイドも区別なく蹂躙していく侵略部隊の戦車隊長に逆らった介人は、高々と吹っ飛ばされ、人間は、軽い。
 一方、バーベキューパーティーに飛び入り参加していた赤いキカイノイドは、参加者たちからは侵略者と誤解され、庶民キカイノイドであった事からコンセント怪人には攻撃を受ける散々な目に遭い、何やらキカイトピアは、厳しい階級社会に支配されている様子。
 ゴミ捨て場に着地して無事だった介人は、祖母のヤツデと共に祖母の経営する駄菓子屋に立てこもり、行方不明になっている両親が残した謎の鳥メカを手に、両親の言葉を思い出す――。
 「本気でやりたい事はな、結果を出すまで全力全開!」
 「「失敗も挽回、何回もトライ!」」
 ひびくぜ邪悪なクランチュラップ!
 ……なお、父の名前は功、母の名前は美都子、祖母の名前も含めて好き放題で、水面下で荒川さんが「叔父のショウゾウが出てくる話を書きます!」と交渉していても驚きません。
 「……そうだ。俺も諦めたくない。俺まだ何もできてない。……決めた! 俺は世界を守る!」
 「へ? どうやって?」
 「わかんない。でも、結果出すまで、全力全開だ!!」
 それがきっかけとなって鳥メカのセキュリティが解除されると、介人と祖母は、両親が駄菓子屋の地下に建造していた秘密研究所にご案内。
 五色田夫妻はそこで並行世界を研究する内に、地球を守ったヒーローが居る世界をたくさん発見しており、その「スーパー戦隊を参考に」見るからに物騒な銃を開発していた。
 〔1:沢山の並行世界が存在する! → 2:その中にはスーパー戦隊というヒーローの居る世界もある! → 3:よーし、その力を兵器に転用しようぜ!〕というのは、基本的な世界観の説明と同時に、超技術の由来としてはスッキリ。
 ……まあ、2と3の間に〔侵略者の脅威に立ち向かう為に〕などの何らかの動機付けがガッツリ抜け落ちているので、そこにあるから作ってみた感がヤバいですが、き、きっと……並行世界を侵略する存在に気付いて備えていた事が、後に床下から発見されるビデオメッセージで明かされたりするんですよね……?
 「やるよ。俺。戦う」
 笑顔で祖母を戦列に加えようとするも拒否を受けた介人は、赤いキカイノイドが身を挺して子供を守る姿を目撃すると、襲いかかるトジテンド兵に秘密の銃をぶっ放し、はじめてのコロシ。
 ……いやまあ、《スーパー戦隊》においては基本的に、キルマーク問題をややこしくしない為、人格があろうがなかろうが悪の組織に所属=デリート許可対象ですが、同種族と一ヶ月も共存していただけに、さすがに一線をどこに引いているのかは少々気になるところであり、主人公の顔にもなんとなく「……殺った……殺ってやったぜ……へへっ……殺ってみれば簡単じゃねぇかよ、ネズミを捕るのとなんにもかわりゃしねぇ」というイニシエーションを乗り越えた者の表情が見えるような気がしないでもなく(古代、部族同士の闘争は狩りの延長線上であり、集団に所属する若い男にとっての通過儀礼であったわけです)。
 「助けてくれてありがとう」
 介人の分け隔てのない態度は赤いキカイノイドの心にずーんと突き刺さり、助けた少年からもお礼を言われる気持ちいい展開から、俺が殺るから君も殺れ、ともう一つの銃を突き出す介人。
 「ねえ、俺と一緒にトジテンドと戦ってよ」
 「はぁ?! あ、いや、ちょ、ちょっ待てよ」
 狼狽して後ずさる赤にグイグイと銃を突きつけながら同族殺しを要求し、一切の躊躇がないのが、怖いよ君……(笑)
 「俺もおじさんと仲良くしたい! だって……あいつらとは違うじゃん」
 痛みは初めの内だけ慣れてしまえば大丈夫、と介人は笑顔で持ちかけ、要は心の在処なのだとばっさりと線を引かれるのは《スーパー戦隊》的でありますが、人形めいた戦闘員はともかくとして、明らかに人格を持った怪人レベルにおいて、同種族の闘争が避けがたく組み込まれるのは、シリーズでもかなり珍しいでしょうか。
 勿論、現実には人は人と争うのですが、それを寓話の中で描いてきた面を持つシリーズなので、変な火種にならないかは少々不安。香村さんのバランス感覚には信を置いていますが、下手に踏み込むよりは、あっけらかんと無視してくれた方が安心できそうではあり……まあ次回、トジテンド怪人の扱いに関してはエクスキューズが加わる可能性もありますが。
 「…………ああそうだ。あいつらとは違う!」
 戦闘員を見据えた赤は、頬をべしっと叩いて気合を入れると受け取った銃を手に前に進み出し、ここで軽く斜め上を見上げているのが、何やら過去に思いを馳せていそうでもあり。「おじさん」ながら「パーティー初体験」や「腐ったお偉方」発言などからも、硝煙くさい過去があっても面白そうではあります(『スター・ウォーズ』のストームトルーパーみたいな設定もありそうでしょうか……)。
 「おじさんじゃねぇ、ジュランだ。よろしこっ」
 「俺は介人。五色田介人。よろしくぅ!」
 そこに戦車隊長とコンセント怪人が現れ、さっそく秘密の銃をぶっ放し、イニシエーションを片付けるジュラン。かくして二人は狩人の赤い絆で固く結ばれ、ガトリングに戦隊ギアを取り付けてグルグル回すと、
 「「チェンジ全開!!」」
 45バーン! でゼンカイザー、16バーン! でゼンカイジュランに変身し、キカイノイドの仲間達も、あくまで「変身」をする、という事で成る程。
 「秘密のパワー! ゼンカイザー!」
 「恐竜パワー! ゼンカイジュラン!
 「「二人合わせて、機界戦隊・ゼンカイジャー!!」」
 矢印飛び交う名乗りポーズから、二人はVを形作り、白地のボディに赤を中心に青緑黄桃のラインが走り、黄金の鎧に角を生やして赤マントのゼンカイザー、大変、目にうるさい(笑)
 二人合わせてゼンカイジャーは戦闘員相手に大暴れを始めると、戦隊ギアを用いて、40バーンでジュウオウジャー、39バーンでニンニンジャーの力を発動して、ギミック見せ。戦闘員を壊滅させると戦車隊長が巨大兵士を召喚し、ゼンカイザーがコンセント怪人と戦っている間に、ギアを裏返しにして発動したジュランは巨大化。
 そのまま勢いで機界変形して恐竜ジュランとなり、人型の巨大化はまあともかく、どういう心持ちで変形しているのだとうと思ったら平然と流され、超ロボット生命体みたいなものだと思っておけばいいのか……。
 恐竜ジュランvs巨大兵士、ゼンカイザーvsコンセント怪人のバトルが同時展開し、どうしても動きの制限されそうな赤黄桃青に加え、センターのカイザーもせり出した肩アーマーなどごつごつした装備なのは、ここ数年の戦隊アクションとはだいぶ違うものを要求されそうで、そこはちょっと今後の不安点。
 ただ今回の、カイザーがコンセントの攻撃を回避して壁蹴り……どころか壁ダッシュジャンプから空中で反転、に恐竜ジュランの大ジャンプを重ねるのは格好良く、ゼンカイジャーはダブルフィニッシュ。
 ……ところで、体を丸めて火炎で空を飛ぶジュランの姿が完全にゴジラ(『ゴジラvsヘドラ』)なわけですが、佛田さん……?
 侵略者に対する初勝利をあげた介人とジュランは駄菓子屋に戻り、祝勝パーティに雪崩れ込もうとするが、ヤツデの悲鳴に外に飛び出すと、道行く人々の頭にキノコが?! で、つづく。
 45周年記念作品と位置づけられるも、人1+機械4、という最初の発表から、もっと思い切って《スーパー戦隊》の文法を外してくるのかなと身構えていたのですが、蓋を開けると思ったよりも《スーパー戦隊》だった、というのが第一印象。
 勿論、敵味方の関係性、引きの作劇、二人スタート、などセオリー外しは色々と加えているのですが、基本の文法そのものは完全に《スーパー戦隊》で、そこは堅守方針なのかな、と(この先わかりませんが)。
 キカイトピアとの部分融合をさっくり片付けたのをはじめ、全体的に疾走感重視の展開ながら、今作のリアリティラインはこの辺りですよ、ときちっと示してくるのは中澤監督の巧さが光り、「※イメージです」を二回使う事で、冒頭の軽いジャブが中盤のギャグのスムーズさに繋がるのは、実に鮮やかでした。
 スタートしたばかりでどう転がっていくかはわかりませんが、ひとまず気になるのは怪人ポジションの薄さ。今回は説明も多い第1話という事でこだわらなかったのかとは思いますが、今後は、インパクトのある怪人に期待したいです。
 後は、それは渡辺宙明先生に音楽をお願いするわけだ、というバラバラババンバン『ゴレンジャー』の押し具合が予想を超えていましたが、あまり内輪受け方面に進まないといいなとは思うところです。
 香村純子×中澤祥次郎、の鉄板コンビでまずは悪くない滑り出しだった第1話、次回――イニシエーションを果たすのは誰だ?!