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これこそが暴魔百族

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第34話

◆第34話「ズルテンの裏技」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「シーロン、人々を助ける方法は無いのか?!」
 「わかりません! こんなに下品で酷い作戦があるなんて、私も初めて知ったんです!」
 シゴキボーマのスパルタ指導を受けたズルテンが街中に催眠おならガスを撒き散らしながら走り回り、妖精族からのリアクションが、厳しい。
 「流れ暴魔の癖によくぞズルテンの裏技に気付いた。それにしても面白い。あいつも少しはしごかれた方が良いわ」
 一方の大帝様は、この数ヶ月に色々ありすぎて、ハードルが下がっております。
 人々を昏睡状態に陥らせていくズルテンは踏み切り事故であわや電車に轢かれそうになって倒れた所をターボレンジャーに囲まれるが、そこに炸裂するスクリューラガーキック……じゃなかった、スピンヤミマルキック!
 「人間なんて奴らはな、ズルテンのおならを吸ってくたばるのがお似合いなのさ!」
 2万と18年前――魁偉な風貌と不思議な力を持つ事から鬼っ子として忌み嫌われ、人間から迫害を受け続けたヤミマルの過去が語られ、無銭飲食の罰とはいえ、木に吊されて全身に矢を射かけられるのは、ショッキングな映像。
 「俺は決して忘れておらん! 二万年間、この世を流離いながらひたすら腕を磨き、復讐の時を待っていたのだ!」
 「ヤミマル、逆恨みをするな!」
 初登場から約20話、とうとうヤミマルを突き動かす情念の核が明かされ、対する力は極めて正道ながら、ヤミマルが背負う時間の重みに比べるとどうしても言葉が軽くなってしまう部分がありますが(勿論、重ければ正しいわけではないのですが)、そこのバランスを物語として納得できるラインまで引き上げられるかが、今後の一つのポイントになりそうでしょうか。
 へっぴり作戦を強要されて逃亡したズルテンは、力たちに取り囲まれると泣き落としを図り、揉めている間にヤミマル登場。今度は、助けを求めて辿り着いた暴魔百族からも残酷な仕打ちを受けた過去が語られ、燃える松明を押しつけられ、槍で手を貫かれ、かなり凄惨。
 全体のバランスを取る意図かヤミマルの回想以外はかなりコミカル寄りで展開する為、敵幹部がおならをしながら走り回るエピソードで、ライバルの悲劇的な過去と人間の持つ排他性が炙り出される事になり、一気にヤミマルに注ぎ込まれる、憎悪と怨念のガソリン。
 「これが流れ暴魔の歴史なのだ。……よもやズルテン、忘れちゃぁいまいな」
 ヤミマルの語る過去に辛そうに表情を歪めるキリカには、他者を思いやる気持ちが残っている事が示されるとともに、それだからこそ、“ヤミマルの哀しみを受け止めようとしてしまう”事が悲劇性を加速させ、ヤミマルはズルテンに対して人間社会崩壊の為に捨て駒になればいいと高笑い。
 (ヤミマル……奴は憎しみだけで生きているのか)
 力は隙を突いてズルテンバイクにまたがって逃走するが頭上からコウモリミサイルの爆撃が迫り、バイクモードがこんな格好いい使われ方をするとは(笑)
 「りきぃ! そんなやつ助ける事はない!」
 「それが出来ないのが力なのよ……」
 「しかし、相手が悪い」
 「ズルテンだけはどうしても信用できない!」
 敵味方の垣根を越えて手を伸ばすヒーロー、として力が描かれ、相撲や氷炎兄弟を踏まえた上で、「顔が信用できない」扱いを受けるズルテンだが、爆撃を受けて吹っ飛ばされてもなお、力は一緒に逃げようとズルテンへ手を伸ばす、
 「炎力、君は本当に優しい奴なんだな……」
 だが、ヤミマルの追っ手に囲まれると、ズルテンは力を蹴り飛ばして吹き矢を撃ち込み、節操なく鞍替え? と思いきや、敵味方をかまわずおならを撒き散らすと、その混乱の中で吹き矢の中に解毒剤が仕込まれていた事が判明。
 「ヤミマル! 憎しみからは、何も生まれない事を教えてやるぜ!」
 ズルテンからのメッセージに気付いた力たちはその成分を太宰博士に転送し、ヤミマル一派と主題歌バトルに突入。鞭でしごかれる青黒だが、5人が合流するとコンビネーションキックからジャンピングGTクラッシュ、そしてVターボバズーカでビクトリー。
 今回はヤミマルが角から巨大化ビームを放ち、大妖精17からの出撃シーンが入ってターボマシンが若さにターボ! 未来にターボ!
 開幕のダッシュ斬りを放つも鞭に阻まれるターボロボだが、鞭を掴んで投げ飛ばすと、土手っ腹に風穴を開けて大勝利。
 「見ているがよい! その内必ず、ラゴーンさえも倒してみせる」
 「そう言うだろうと思っていたわ」
 「人間と暴魔百族の血を引く我らこそ、人間界と暴魔界、二つの世界の王者のなるのにふさわしいのだ」
 ヤミマルとキリカは暴魔コウモリにまたがって飛び去り、膨れあがっていくその野心。2万年間レベルを上げ続けてきた男の強烈な動機付けが明らかになり、それは同族を見つけたら盛り上がって熱烈に口説く筈だと納得です。ヤミマルの栄光は“泡沫の夢に過ぎない”事は既に仄めかされてはいますが、果たして野望の階段の行き着く世界はどこなのか。
 ……指揮権を握って2回目にして、幹部クラスから裏切り者を出す離れ業はまさに、「暴魔百族よりも、暴魔百族らしい」作戦として、大帝様も大喜びの筈です!
 便利なコメディリリーフとして活躍してきたズルテンは、クライマックスバトルの前に逃亡したまま消息不明となりましたが、次回しれっと暴魔城に復帰していたらどうしよう(笑) 暴魔百族サイドに笑いの要素がゼロだと、それはそれできつそうですが……新任の上司が過去の残虐行為に復讐する気満々なら逐電は納得いきますし、これまでしてきた悪行の数々を考えると因果として許しにくくはあるものの、コロッと人間に与してしまう事自体は、実に暴魔百族(笑)
 こういったカードを伏せておいて後で開くのは曽田さんの得意の手法とはいえますし、巧く活用されてほしいところです。
 そして、ヤミマルの境遇に自らも重ねるキリカは、その“孤独”に寄り添い続ける事が出来るのか――力との関係性も含めてキリカ周り(ひいてはヤミマル周り)の厚みが増してきて、過去に囚われた男と未来を見つめる若者たち、の構図が浮かび上がってきたのも期待したい好材料
 次回――予告の映像がだいぶトンデモ(笑)