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CHILDHOOD'S END

仮面ライダー鎧武』感想・第24話

◆第24話「新たな強敵 オーバーロード」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄
 鎧武が勝ち鬨していた頃、肉体言語で異文明交流していたマンゴーバロンは一方的に叩きのめされていたところを、ピーチに助けられて辛くも撤退。
 「あなた、引き時ってものがわからないの?」
 何かと文字数過多の今作にしては珍しく、装飾を削ぎ落とした言葉が、駆紋戒斗とは何者か? を凄くシンプルに示していて、妙にツボに入った台詞(笑)
 そんな二人を見つめる緑のオーバーロードが姿を垣間見せる一方、なんだか春っぽい感じでミッチと舞はダンス関係の横断幕を作成しており、急にときめき演出が入りましたがなにぶん石田監督なので、ネタの範疇としてその場の勢いでやっている気がしてなりません(笑)
 私の中では序盤から、それでミッチは、紘汰と舞のどっちが好きなの?! という大問題が横たわっているのですが、どうもミッチは、たとえ自分が幸せでなくても「大好きな二人が幸せならそれが自分にとっての幸せ」なタイプのようで、「大好きな舞さんが最高の笑顔を見せるのは僕の紘汰さんの側に居る時だから、あの笑顔が僕の横になくても僕はそれで構わないむしろこの痛みが幸せ」ぐらいねじれていそうで、段々、見ていて楽しいキャラになってきました。
 「本当に大事なのはね、誰に与え、誰から奪うのか、それを決められる立場に立つ事なんだ(それが権力? 僕の求めていた、力――)」
 欲しいものに必死に手を伸ばさずに、代替行為を自分の望みだと思い込むのはミッチにとっての本質的な“逃げ”の部分かと思われますが、欲しいと思ったら我武者羅に手を伸ばす道を選んだ男――葛葉紘汰は、手持ちの錠前を整理してジンバーピーチを性能テスト中。
 発動した超聴覚の描写は、クウガ緑のセルフオマージュと思われ、ミッチを発見してビルの屋上から鎧武の姿のまま手を振り、こういう“軽さ”は物語の緩急としても今作が意図的に入れているところではありますが、“紘汰一人の軽さ”であって、他のキャラとの関係性の奥行きを広げるのに繋がらないのも、今作の難点の一つ(そして、腹に一物抱えた悪い大人たちが牽制球を投げつけ合うユグドラシルサイドの方が面白くなっている点)。
 「紘汰さん……あなた騙されてるだけじゃないですか?」
 「…………かもな」
 ミッチにDJ情報を伝えた紘汰は、さすがにいいように踊らされている可能性は自覚しつつ、それでもそこにチャンスを見て飛び込んでいた……事にされるのですが、そういった葛藤は事前に描かれないとなんら劇的にならず、物語を遡る劇的ではない心境の説明は(事前に考えていようがいまいが)後付けの言い訳にしかならない(例:「俺は……ヒューマギアだろうと人間だろうと、関係なく戦ってきた!」)ので、完全なる空疎。
 これをやるなら、劇中で新たな真実が判明するなどのセット要素が必要ですし(例:実は○○は××だった!→「私はそれを知っていたのだ」的な)、今更フォローを入れるなら、なぜ先にその葛藤を入れておかなかったのか、あまりにも大きな判断ミスとなりました。
 ミッチの諫止に対し、裕也を犠牲にしたからこそ、もはや立ち止まる事は出来ないと変わらぬ決意を語る紘汰は、また取り返しの付かない事になったら? という問いには
 「…………そんな時は、ミッチが真っ先に気付いてくれるさ」
 と返し、え、そこは、投げ飛ばすの?!
 紘汰からすると冗談交じりの信頼のメッセージの意図かもしれませんが、何を言われても止まる気はないけれど、何か言ってくれるお前を信じている、ってミッチからすると物凄い重荷で、振り返れば前半からそういう傾向はありましたが、同じライダーとはいえ世界の運命に関わるDJ情報をミッチに丸々流したり、止まらない自分を側でずっと見ていてくれる事を暗に求めたり、紘汰はミッチに甘え果てているのですが、それはミッチ、歪むよ……。
 (この人は、もっと痛い目に遭わないとわからないっていうのか)
 甘えるだけ甘えてきて土壇場で決して自分のものにならない面倒くさい男に捕まっているミッチは、暗い情念を内で熟成しながら紘汰に聞かされたDJ情報をユグドラシルへと横流しし、対応を迫られるユグドラクローバー。
 「まずいなー。ここに来てトラブルかよー」
 ミッチが程よく濁したオーバーロード関連の情報を貴虎に掴まれてはまずい、とプロフェッサーがシドに紘汰の口封じを頼んでいた頃、森から帰ってきた戒斗は舞に接触し、話を聞いてくれる人が、他に居ません!
 「もうすぐ、全ての弱者には裁きが来る。己の信じた強さにどれだけの価値があるのか……ハッキリする日が来る。どれほど圧倒的なものに踏みにじられ、絶望を味わったとしても、それでも踊り続けられるというなら……俺は、おまえの強さを認めよう」
 (こんな時、紘汰だったら、なんて言ってあげるのかな)
 「冗談言ってる場合じゃないんだぞ?!」ですかね!
 ……「どんな状況でも踊り続けられるなら、それは紛れもなく舞の強さ(敬服できる信念)だ」という言葉のニュアンスを取り出すとおかしなものでもないのですが、異世界転生者スイッチの影響で、必要以上にわかりにくくなっているのが、なんだかいっそ不憫。
 森に入った鎧武はテンション高いジンバーピーチを発動してオーバーロードの声をキャッチし、紘汰史上、最高に賢い。
 ところがその前に立ちはだかったシグルドが3つのスイカ錠前を同時起動すると、切り札のS錠前を用いた矢を放つ事で、スイカビークルを遠隔操作(正直ここはS錠前がなぜ必要なのかわかりにくく、切り札というにはインパクトが弱い)。対する鎧武は勝ち鬨を発動してスイカ一機をあっさり撃墜すると、挿入歌に乗せて剣とDJ火縄銃を合体させて2体のスイカブタックを鮮やかに撃破し、色々と慣れてきたのはありますが、勝ち鬨鎧武は素直に格好よく、兜飾りの豪奢さでグレードアップを表現していくのは巧いアイデア
 チェリーダッシュでシグルドを蹴散らした鎧武はオーバーロード接触すると交渉を試みるが、日本語を習得した緑のロードと、肉体言語で会話する赤いロードに一方的な攻撃を受け、弄ばれる。
 「おまえ、おもちゃになるか?」
 そもそも都合良く話を聞いてくれる訳がなかった、と異界の存在に冷たく門前払いを受けた鎧武が、「インベスを散々玩具にしてきた事」を(オーバーロードにその意識は無さそうですが)突きつけられる割とえげつない展開で、つづく。
 なおDJは、どういうわけかオーバーロードと言葉を交わしている怪しげなシーンが描かれるも、思わせぶりな事を言うばかりで引き続き正体不明のままでした(オーバーロードへの「油断大敵」という言葉が、貴虎に言っていた内容と全く同じなので、スタンスは一貫しているようですが)。