『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第39話
◆エピソード39「皇帝はスナイパー」◆ (監督:竹本昇 脚本:金子香緒里)
「ガルザよ、我の始末屋と共に地球へ行け」
ヨドンナにキラメイジャー抹殺を命令したヨドン皇帝は、ヨドンナの中から展開すると、顔の脇についた赤い邪面をかぶって、フード姿の怪人へと変貌――その名を、ヨドンヘイムの凄腕ハンター・シャドン。
「キラメイジャーのタマぁ、ワシが取ったる」
山路和弘声のラスボスの中から、黒田崇矢声のスナイパーヤクザが登場する仰天の展開で、地球の治安が今、神室町!
……戦隊シリーズでは闇のヤイバ先輩(『ボウケンジャー』)が印象深い黒田さんですが、黒田さんを呼ぶ事になったのでヤクザになったのか、ヤクザなので黒田さんをオファーしたのか、因果関係が少々気になります(笑)
思わぬ形でヨドン皇帝の脅威が迫る中、地球では宝路が、クリスタリア的な成人式を迎えたマブシーナの為に、為朝が見立てた指輪を社員割引でプレゼントしていた。
そもそもクリスタリアにおける成人年齢が地球換算で何歳相当かはわかりませんが、成人を迎えた妹に「いやまだ二分の一でしょ」扱いする姿が、相変わらず、脳内マブシーナの時間が止まり気味。
和解後も距離感が色々あれですが、プレゼントを自分で選ばずに、アドバイザーを連れてきただけ成長が見えるところでしょうか(笑)
放っておいたら多分、大きな熊のぬいぐるみとか買おうとして為朝に止められました!
なお、マブシーナと親しく女性でもある小夜にアドバイスを求めなかったのは、「なんか、誤解されちゃったら悪いな……てへ」的な自意識過剰の産物だと想像。
和気藹々と帰路に就く3人だったが、突然の、狙撃。
「いきなり外すとは、何が凄腕ハンターだ!」
皇帝の分身に対してもしっかりツッコむガルザだが、それは敢えて初撃を外す事で、キラメイジャーを一箇所に集めようというシャドンの目論みであった。敵の思惑通りとも知らずに合流した7人は倉庫に隠れようとするが、マブシーナを狙っていると思わせる、事によりカバーリングを誘導された銀が、真っ先にリタイア。
便利なキラメイビジョンを発動した黄は、余裕を見せてスナイパーの鉄則(「撃ったら移動」)を怠ったシャドンに反撃してライフルのスコープを破壊し……これが重要な布石になっているのですが、一見しただけだとわかり辛かった印象で、この後の納得度を引き上げる為には、“スコープが壊れた事による影響”を、もっとハッキリ言及させても良かったかなと(個人的には、台詞起こしの為に再見中に、ようやく成る程と気付きました)。
「ふん、少し骨のある奴がおるのう」
余裕を見せるシャドンの、影の中に沈み込むような描写は効果音が良く印象的で、倉庫に身を潜めて狙撃を警戒するキラメイジャーは、影の中に潜んで自在に動き回る能力を持つスナイパーの不意打ちを受け、桃がリタイア。
「ワシはシャドン。ヨドン皇帝の命を受けてきたが、おどれのお陰で、楽しい狩りになりそうじゃ」
キラメイメンバーへの認識などから、改めてシャドン自身はヨドン皇帝としての記憶を有してない事がハッキリして大変ややこしい事になっていますが……ヨドン皇帝、真面目な人なので、日々の激務による心労から生じた、「闇に身を潜めてチープなスリルに身を焦がしたい」とか「綺麗な女の子に生まれ変わって群がる男どもをしばき倒したい」といった願望の産物なのでありましょうか(そう考えるとキラメンタル的というか充瑠・オラディン寄りなのは気になるところですが……)。
形勢不利を悟ったメンバーは再び倉庫の外に飛び出すと広い空間に陣取り、遮蔽物の無い平地って狙撃の良い的では……と思ったのですが、恐らくここで“スコープの破壊により長距離狙撃が出来ない”意味が生まれる筈だったのかな、と。
本来シャドンのスタイルは、屋外では長距離狙撃、それを警戒した相手には影移動能力、の二段構えで標的を追い詰めていくものだったのが、狙撃を初動で封じられてしまったので影移動の一本槍になってしまった、と考えると色々と納得が出来るのですが、どちらにせよ、スコープの損壊を知らないと思われるキラメイジャーが、本来最も警戒すべき長距離狙撃を無視して影ばかりを気にしてしまっている(そこをズドンとやるのが本来の最高にいやらしいやり口だと思われるわけで)のは青黄健在の割には浅慮に過ぎて、情報共有の順番がちぐはぐになってしまったのは残念。
円陣を組んで周囲を警戒するキラメイジャーに対し、シャドンはガルザにスモッグジョーキーを繰り出させる事で影を作り出し、そこからの銃撃を受けて、青、リタイア。影からの出没を繰り返すシャドンに対して、カウンターで切りつける反応の早さに達人ぶりが見えて、メインでないなりに特徴を活かした格好良さが出ていて良かったです。
ジョーキーと邪面獣には赤がキラメイジンで立ち向かうが、虎バサミ邪面獣の噛みつき攻撃に苦戦し、バーンブラッカーが!
バーンブラッカーが、(敵に)当たった!(5話ぶり3回目?ぐらい)
キラメイジンは強制合体解除となり、赤が「こうなったらぁ!」と王様を召喚するのですが、「なぜ最初から○○を呼ばないのか?」に対する理由付けが「(クリスタリア的に)畏れ多いから」はやはり苦しく(しかも呼ばれる当人がそれを気にしないので尚更)、王様に関しては存在そのもに関するリスクを与えておいた方が良かった気がしてなりません。
地上の3人に迫るシャドンの攻撃は咄嗟の姫様フラッシュによって阻まれるが、影が消え去って身をさらすや否や即座に手榴弾を放り投げて再び身を潜めるのは、皇帝陛下のこだわりが見えてこちらも格好良かったです(笑)
「……わたくしが捕まれば、お二人は、助かるのでは……?」
無力さを歯噛みするマブシーナは自らを犠牲にする事を考えるが、敵の真の狙いがそこには無い事を見抜く為朝。
「……わたくしが何も出来ないから、ヨドンにそこを付け込まれたんですね。わたくしのせいでみなさんが……。……これでわたくしも立派な大人だなんて……情けないです!」
「……安心しろマブシーナ。さあ、これを飲むんだ(日本茶)」
「これは……?(日本茶)」
今、姫様のクリスタリア空手が、大地を裂き影を断つ!!
……じゃなかった、
「わたくしに……なにか出来る事が?」
「ああ。だが今は何もしなくていい。ただ合図を待て」
為朝はマブシーナに手伝って貰う策を提案し、邪面獣はフェニックスが撃破するが、辺り一面が影に沈む夜が迫り、直接対決を挑んだ黄が敗北。
ここで「ワシのスコープを壊した礼じゃ」発言が出るのですが、先にこれを把握している前提でないと、“シールド持ちとはいえ遮蔽物の全く無い空間で悠長にマブシーナの悩み相談に耳を傾ける為朝と瀬奈”の図が大変間抜けな事になってしまう為、折角の頭脳戦だったのに、「長距離狙撃」カードが宣言なく場から取り除かれた事になってしまったのは、非常に残念でした。
残る緑と赤をまとめて始末するべくジャドンがガルザに撤収を命じると、目前の脅威の去った赤はフェニックスを降りて緑&姫と合流するが、サイズがサイズとはいえ、娘の危機にただ飛び去っていくだけの王様が、完全な転落事故。
ここもフェニックス/オラディンになんらかの制約が明示されていれば切り抜けようもあったのですが、今作全体における“オラディン王の収まりの悪さ”が(博多南回で多少の緩和はしたのですが)連続で火を噴きます。
フェニックスの巨影を利用したシャドンの不意打ちを受けて緑がリタイアし、赤も眉間に銃口を突きつけられて絶体絶命のその時、どこからともなく響いた為朝の合図に従って姫がフラッシュを放つと、いつの間にか頭上に浮かんでいた魔石たちが姫様フラッシュを受けてまばゆい輝きを放ち、多方向からの強烈な光により、全ての影をかき消す白輝の空間が発生する!
「おまえが隠れる場所はもうどこにもないぞ!」
困惑するシャドンの前にはリタイアした筈の黄が姿を見せ、偽装作戦はストレートでしたが、代わりに路上に放置されたのは宝路か……。
「石の連中は、キババスラに傷付けられ、光る気力も残っておらんかった筈!」
「マブシーナの光は、宝石の輝きを増す力があるんだ!」
「ちっ」
「どんなに傷ついても、仲間を救いたいという気持ちが、俺たちを強くするのさ!!」
アイデアは悪くなかった一方で、ところどころに空いた穴の大きさが気になる内容でしたが、作品テーマを踏まえた啖呵を格好良く切り、挿入歌に合わせてフェニックスする黄が格好良すぎたので、だいたい許します(笑)
黄とシャドンは同時に引き金を引き、ゆけゆけキラフルゴーアローで
ジーザーース!
俺の名だ! 地獄に堕ちても忘れるな!!
シャドンを打ち破った事でドロ団子と化していた4人も復活し、赤い仮面の砕け散ったヨドン皇帝が「この恨み、必ず晴らしてやるぞ」と言い残して撤収。青い仮面はヨドンナ相当なのか、それともまだ別の人格があるのか……今回の担当が為朝になった事で、為朝×ヨドンナ話はもはや無さそうなのは、残念なところ。
マブシーナは足手まといになった事を6人に謝罪するが……
「勘違いするな。みんながおまえを守るのは、弱いからじゃない」
「うん、大事だから守りたいんだ」
……ん?
「シーナちゃんは、わたしたちの癒やしだもの」
んん??
「俺たちにとって、かけがえのない存在だ」
「優しく笑ってくれるだけで、みんなが笑顔になるんだよ?」
うーーーん…………戦場で大暴れする姫様を期待していたわけではないですし、「それぞれの出来る形で輝けばいい」という作品のコアを外しているわけでもないのですが、結局のところ「癒やしだから守りたい」ポジションとして「守られる立場」からは一歩も動かないのは、「そのままの自分」の肯定ではあるが「そうありたい自分」の否定の一面もあって、少々首をひねる着地点。
特にマブシーナの場合、物語を通して亡国のプリンセスの再起と成長を丁寧に描いてきただけに、その到達点に近そうなエピソードでのキーとなる行動が「為朝の指示に従ってフラッシュ」では、ダルマさんが転んだ邪面回よりも後退しているようにさえ思えて残念でした。
そのダルマさんが回を担当した金子さんが、沼女の呪いが解けた後に物語の焦点からやや外れてしまっていたマブシーナに改めてフォーカスしてくれたのは嬉しく、魔石から「姫様の輝きは、僕たちの煌めきを導く力!」と象徴としてのマブシーナ像を示す台詞もあるにはあるのですが、姫様の奮闘を描いたダルマさん回を担当した金子さんだけに、「そのままの自分」を否定はしないが(どういう形であれ)「そうありたい自分」に一歩近付くマブシーナを見たかったというのがあり、姫様関係の流れ&ここまでの金子脚本の出来から、こちらのハードル設定がかなり高かったというのもありますが、当たり障りの無い形でまとまってしまったのは物足りなく惜しまれます。
今作には裏主人公としての姫様の成長物語の面もあると思うので(まあこれも王様の復活と、王様とろくに会話が無い事で薄らいでしまった部分なのですが……)、マブシーナに関しては、最終決戦でもう一度ジャンプの機会がある事を期待。
その辺りの不満は不満として……
「もう、大人とか子供とか気にすんな。マブシーナのおかげで強敵を倒せた。これが全てだ」
タ メ くーーーーん!!(笑)
相変わらず、相互にその気の無い女子には無自覚クリティカルを華麗に導きシューティングするタメくん、直後にマブシーナが泣き出すと激しく狼狽するのも凄くタメくん。
スナイパーとの頭脳戦、マブシーナへのフォーカス、キラメイジン以外での魔石の活躍の場を作る、と取り上げた要素そのものは良かったものの、全体的に粗が目立って勿体ない出来でしたが、為朝回としては大変満足度が高かったです(笑)
「わたくし、皆さんと出会えて、本当に良かった!」
うれし泣きのマブシーナは笑顔を取り戻し、帰路に就く7人で、つづく。
そして――
「為朝は本当に撃つのが得意じゃのう」
「まあな。女の子のハート以外なんでも射抜くぜ、っておぉーーぅい!!」
本編のオチとおまけコーナーの関連性が非常に芸術点が高く、完璧でした(笑)
タメくんは多分、射抜いたときに限って全く気付いてないからな……。
次回――大変貴重な充瑠の私服から、ここに来て割とトリッキーなアイデアを続けてきますが……友達?! 充瑠に友達が居たの?!