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捜し物は下駄ですか?

仮面ライダー鎧武』感想・第12話

◆第12話「新世代ライダー登場!」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄
 紘汰とミッチは、前回の囮作戦で知ったインベスゲームの真実とユグドラシルの暗躍について情報を整理し、黒板にチョークで描いたイラストと相関図の上に、固有名詞だけは印字されたプレートを貼り付けていくので、(メタ的には大変わかりやすいのですが)誰がわざわざプリントしたのだろう……と気になって仕方ありません(笑)
 ユグドラシルの思惑に乗らない為にも、しばらく変身を控えようと提言するミッチだが、襲われる市民の姿を目撃した紘汰は、即座にダイビングミカンを決め、インベスを撃破。
 直後に侵食する森を焼きにきたユグドラシルの工作部隊とニアミスし、バンの中から飛び出した大量の黒影が次々と道路の下にダイブしていくのは、なんか面白い映像。
 情報隠蔽の為にインベス退治そっちのけで森を焼くのを最優先している、と陰口をたたかれるユグドラシルですが、情報隠蔽の為なら野生のインベスも積極的に退治しないと駄目なような……。ユグドラシルが「他人の命を安く見積もっている」のは確実なのですが、どうも今作は、段取りを積み上げる意識はあるが精度が甘い、のが目立ち、そこをパワーでねじ伏せるのではなく、ロジックで納得させようとする作風だけに、ザルの網目の粗さが悪目立ちしてしまいます。
 その頃、舞は空き地に佇む戒斗を発見し、ここには昔、鎮守の森があったがユグドラシルによる開発でもう誰も覚えていないのさ……と感傷を語る戒斗、ドリアンに終始劣勢の上にメロンに手も足も出ずにやられたショックで、だいぶ弱っているな戒斗……。
 「ふん……思い出なんてものは、ただの記憶の残骸。この空き地と同じ……空っぽの廃墟だ」
 その視線の先には天高くそびえ立つユグドラシルタワーがあり、戒斗とユグドラシルの関係は「ダム開発と故郷の村を失った者」的なぞらえの部分があるのですが、「消失」ではなく(「喪失」ではあるのですが……)「変化」なので、街を離れていたわけではない事が立ち位置をわかり辛くしている部分はあって、どちらかというと、物語中盤で数年ぶりに沢芽市に帰ってきたニューライバル、とかの方が色々としっくり来たのでは、という印象……それなら登場当初は、下駄を履く事も出来たでしょうし。
 「それを確かめる為だけに、俺は時々ここに来る」
 タワーを見上げて憎しみのゲージをぎゅいーんと充填する戒斗さん、だいぶ弱っているのね……。
 そんな戒斗に、実はその鎮守の森に囲まれた神社の娘であった事を舞が明かし、舞のダンスのルーツは御神木への奉納神楽であった、というのは巧い繋がりで、舞の台詞に合わせて現在の二人と過去の二人が映像上で緩く重ねられるのは、良い演出でした。
 「今でも、この街で私が踊れる場所はある。形は変わっても、気持ちだけは残ってる。だから、思い出は残骸なんかじゃないよ。私にとっては、宝箱だよ、戒斗」
 「…………ふん、くだらんな」
 なんだかんだ女子と絡むと目が泳ぎがちの戒斗は背を向けて去って行くが、残った舞の前には、課金注意報を出す白い服の女が現れ(木の実コンビの前にもちゃんと出たんですかね……)思わせぶりな言葉を残して姿を消す。
 一方、いっそ全部ぶちまけちゃおうか、と口走る紘汰を止めようとするミッチは、怖い顔で口封じの手が舞にまで及ぶ可能性を匂わせ、純真な弟分かと思いきや保身の為に紘汰をコントロールしようとする面を覗かせるのは、主人公の身近に居るキャラとして面白い立ち位置ではあるのですが……ミッチの行動原理にそれを持ち込むと、「ミッチがチーム鎧武に加わっている事を貴虎は知らない」設定の無理が改めて目立つ事に。
 沢芽市におけるチーム鎧武の知名度を考えると、貴虎本人が直接それに触れないとしても、部下から情報が上がってくるルートが以前から幾らでもあったと思うのですが、主任へ向かう情報を握り潰して「ふふふ、この情報は私たちだけの秘密……」とほくそ笑むさすが主任ファンクラブの暗躍がそこに?!(会長はきっとプロフェッサー)
 俺は、俺の手でファンクラブを取り戻す! と、脱・やられ役に向けて立ち上がった戒斗は格下のチームワイルドにインベスゲームを挑むと、ドライバーの損壊で変身できない初瀬が苦し紛れに繰り出した雑魚インベス相手に王様ムーヴを決め、空き地の向こうから全力で01ハカイダーが手招きしています。
 「戦極ドライバーが無いんじゃ、レイドワイルドも終わりだね。ま、一から出直すしか無いんじゃないの?」
 城乃内に切り捨てられた初瀬はチームのメンバーにも見限られて膝を付き、夢の中へ夢の中へ行ってみたいと思いませんか? るるっるー。
 「さてと……こうなると、今度はまた新しい、かませ犬を探さないとね」
 悪い顔になった城乃内がピエールに取り入ろうとしてクリームをかき混ぜさせられている頃、ユグドラシルに一杯食わせたいならば、ベルト(力)を捨ててしまえばいい、とミッチから思い切った選択を迫られる紘汰だが、野良インベスを見かけると「力の使い道」として、それと戦う事を選ぶ。
 「変身すれば、ユグドラシルの連中の思うつぼだって!」
 「ああそうかもな! だがユグドラシルだって関係ねぇ!」
 ミッチをもぎ離して紘汰はダッシュミカンし、紘汰のヒーロー度を上げつつミッチとの間に生じていく距離感が示されて、鎧武はインベスの群れへと突撃。
 「ここからは俺のステージだ!!」
 変身アイテム(能力)が悪役サイドと関連している、のはシリーズとして一つの定番であり、「リスクのある力」と「目の前の命」を天秤に乗せて葛藤と選択を迫り、主人公がそれを決断する事でスタンダードなスタート地点に入ったといえますが、やはりここまでに1クールを使ったのはどうにも長く、4話ぐらいに圧縮していたらだいぶ印象が変わっていたのでは? とは思うところ。
 インベス軍団に囲まれて苦戦する鎧武の姿にドライバーを構えるも、躊躇するミッチが決断をし切れない内に鎧武は単独で敵勢を撃破。……それは、かつて間違いなくミッチが憧れたものの筈でありながら、二人の間には遠い隔たりが口を開け始め……一方、森では黒影軍団に囲まれた主任が新たなドライバーを用いてメロンエナジーを起動。皮が剥けて弓矢を装備した赤肉メロンフォームへと変身し……ううん、基本フォームの方が格好いいな……。
 ところで、森ではしゃいではいけないのでは? と思ったら、赤肉メロンが黒影軍団を次々と撃ち貫いたのはシミュレーションルームの出来事で、エナジーロックシードの完成を喜ぶメッシュ白衣(誰もまだ、劇中で名前を呼んでくれない……あと、DJタイムの範囲外なので、「斬月」も誰も呼んでくれなくて微妙に困ります……実質、ユグドラシル内部では「仮面ライダー主任」)。
 「これでもうすぐヘルヘイムの力は我々のものになる」
 「ならばもう、街のモルモット達は――用済みだな」
 「ほう、じゃ、彼らのインベスゲームは」
 「遊びの時間は終わりだ。そろそろ悪ガキ共には、現実と向き合ってもらおう」
 前振り期間が長かった割には、もうゲームは終わりだ、の急展開で、つづく。
 石田監督が参戦し、今作との噛み合わせが悪ノリ方面に加速しないか不安だったのですが、パフェ屋のシーンなどでクドい演出はあったものの、概ねいい石田。紘汰とミッチ、戒斗と舞、それぞれの関係性の変化の見せ方は映像が効果的でかなり良かったです。