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今週は省エネ気味に

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第19話

◆第19話「激突!魔兄弟」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 前作『ライブマン』第40話以来、かれこれ半年ぶりの井上敏樹参戦。
 「我が怒り思い知れ! おまえたちの数々の失敗、自らの血で償うのだ!」
 早い! ちょっと早いです大帝様!
 冒頭からお怒りの大帝様は背後のプレートから腕をぐいっと伸ばすとジャーミンらの首をねじり上げ、人体から完全に隔絶したパーツを動かしつつ、中央の獣身が身振りを交えて幹部たちを恫喝するのが迫力たっぷりで、大帝様の造形は実に良い出来。
 特に、伸びた手が首を絞める様子を手前に置きながら、その奥の大帝本体にズームインしていくカメラワークは、“ラゴーンならではのアクション”を印象的に見せて格好良かったです。
 減俸処分を言い渡されたジャーミンは、寺の仁王像に封印されていたイチロー兄さん……ではなく、氷魔・炎魔の極悪魔兄弟を復活させるが、好戦的な弟・炎魔に対して、戦い続ける事に倦んだ兄・氷魔は、「私は一滴の血も流したくないのだ」とまさかの入団拒否。
 「意外な! あれほど仲の良かった極悪暴魔兄弟が、反目しあうとは!」
 「兄弟なら当然連携して、闇エナジーを集めて邪面獣を召喚してくれると思ったのにぃぃぃ!!」
 ……じゃなかった、
 「ふん、反吐がでる! しょせん兄弟愛など、砂の城のような儚きもの」
 「にへ、なにかあったな?」
 「黙れズルテン! 我ら戦士は孤独なもの。星のようにな!」
 「むふ、おけつがかゆいってんだ~」
 今のところ掘り下げの浅い悪役サイドでは脚本の内容がそのまま反映されやすいのか、ジャーミンとズルテンのやり取りは如何にも井上敏樹といった台詞回しですが、家ボーマ回における“家族”に対するジャーミンの負の感情を拾い、パスを繋げていたりもされています。
 「暴魔獣に兄弟愛ね」
 「俺は弟を死なせたくない」
 腰抜けの兄貴になど用は無い、と単独で市民を襲っていた炎ボーマだが、弟を死地から遠ざけようと平和を求める氷ボーマはそれを止め、3年前、事故で弟を喪った過去を持つ俊介は、その想いに共感。
 だが兄の裏切りに憤る炎ボーマはジャーミンにそそのかされて血の兄弟杯をかわしあい……原点回帰といえばこれもまた原点回帰でありますが、荒くれボーマ回に続いて、今回もヒーロー・ヤクザ・ファンタジーが展開していきます(笑)
 ジャーミン会の後援を受けた炎ボーマは。チャカじゃ、チャカ持ってこい! と街で暴れ回り、氷との対比として炎ボーマの暴れぶりは見せたいが、かといって一般市民を焼き尽くす描写を避けた結果、炎ボーマの攻撃を受けた人間が丸太と化すのはどうにも苦しく、緊迫感を削いで勿体なかったところ。
 氷魔と俊介は次々と炎魔の説得を試みるが、そこにジャーミンが介入。炎魔を手助けすると見せかけて背後から攻撃し、炎魔を人質に合体を強要するが、力たちが駆け付けてウーラー軍団との戦いとなり、怒りの氷魔はジャーミンへと襲いかかる。
 「氷魔は戦うことが怖くなったわけじゃない。ただお前のことを思っているんだ」
 俊介は炎魔に氷魔の気持ちを伝え、氷魔はジャーミンと互角の勝負。
 「この私を地に這わせるとは!」
 なんだか一気に井上テイストになったジャーミンですが、幹部を〔作戦指揮〕と〔行動隊長〕に分類せず、ズルテンでさえ作戦を最初から最後まで主導させる構造にした為に明らかに頭数を持て余していた(ジンバ……)ところに、濃厚味噌バターな第三勢力まで加えてしまったので、多少極端でも、キャラの個性が強まるのは期待したいところです。
 兄の真意を知った炎ボーマは身を挺して兄をかばい、兄弟の絆は取り戻されるが、「炎魔の命を救う為には合体する他はない」レベルの重傷を負い、事はジャーミンの思惑通りに。
 「兄貴……合体するな……俺は死んだっていいんだ」
 「……炎魔」
 「氷魔、弟を見殺しにするつもりか」
 「――死なせはせん。たとえ再びこの身が魔界に落ちても」
 合体に対する意思が逆転する仕掛けは面白く、弟を死なせたい為に戦場を離れようとした兄は、弟を死なせない為に闘争に身をやつす事を選び、チェンジ・暴魔じゅー・01!
 光り輝く太陽電池の極悪ボディ、理性を失った凶悪無比のゴクアクボーマ(毎度ながらのひねらないネーミング路線)が誕生し、そのタックルがターボレンジャーを吹き飛ばすどころか、遠景に切り替わってそのまま高層ビル群を吹き飛ばすのが、合体暴魔獣の桁外れの能力の見せ方として鮮やか。
 「もっと暴れろゴクアクボーマ! この世の全てを焼き尽くせ!」
 説得にこだわる俊介だが、凄い縦回転で吹き飛ばされ、もはや奴は完全な暴魔銃、と逃げ遅れた人々を救う為、ターボレンジャー
 「目を覚ませ! ……仕方ない!」
 の切り替えの早さが凄く80年代で、「おのれ死神バッファロー、もはや貴様は人間ではない! 来い、ドグマ怪人!」(『仮面ライダースーパー1』)の某エピソードを思い出しました。
 悪いのはドグマの心だ!
 ボウガン3連射を受けた極悪ボーマはVターボバズーカで木っ葉微塵に吹き飛び、ターボロボ発進。貫通剣からの逆手X斬りでトドメを刺すと丸太にされた人々は元に戻り、ターボレンジャーは瀕死の氷炎ボーマを発見。
 兄弟は、我らの魂は永遠に一つ、と手を握り合って消滅し、後には、一つの茎から赤と青、色違いの二輪の花を咲かす野草が残るのであった……と、美しい花に集約されて終わるのは、長石監督らしい映像。
 次回――猛毒! 記憶喪失! 裏切り! の幕の内弁当でお届けします。