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恐竜戦隊

 『鎧武』主題歌の英語スキャット部分が「コセイドン コセイドーン コセイドン コセイドーン」に聞こえる病気にかかっており、感想を読んで下さっている皆様にお裾分けしたい気持ち(なお、見た事はない)。

仮面ライダー鎧武』感想・第7-8話

◆第7話「大玉スイカ、ビッグバン!」◆ (監督:諸田敏 脚本:虚淵玄
 ドリアン邪面はモヒカンヘッドアタックで黒影を粉砕すると、小ずるい不意打ちを狙ったグリドンも撃破し、その強さに観衆からは大喝采
 「あんた、こんな事してなんになるんだ?」
 「pardon?」
 「今のは勝負にもなってないじゃないか! 勝てるとわかりきっている相手を人前で叩きのめして、そんなに楽しいのかよ!」
 え(笑)
 ……まあ、相手がインベスではなく中身人間とか、メロン問題を契機に考え方が変わった、とかいった理由なのかもしれませんが、あまりにも「最初から俺の信念」みたいに叫ぶので、「人間的成長と心境の変化」というよりも、「衝動に任せてその場その場で自分に都合のいい理屈を持ち出している」ように見えてしまうのが、この主人公の困ったところ。
 ピエールは、全ては血に飢えた観客の為の本物のエンタメだと紘汰を嘲笑うが、一人だけ目的とルールの違う人が現れて、インベスゲームはまた一段とややこしい事に……。
 ピエールのショーマンシップと、それに喝采を送る観衆の姿は、今後の為に必要な下地なのかとは思われますが、序盤からこういった大衆の暗黒面を露悪的に見せつけてくるのは、今作のあまり好きではない部分(この辺りも、アメコミ的な文脈の影響は感じられますが)。
 ドリアン邪面はDJによってブラーボと名付けられ、更に他のダンスチームにも次々とカチコミを仕掛けていた。
 「無様だな」
 パフェ屋の奥の席で一人でコーヒーを飲んでいた戒斗は、ピエールにぐちぐちと文句を言い続ける紘汰を鼻で笑うと上から目線で強さを語りながらナチュラルに会計に向かい、凄い勢いで面白キャラになっていくのですが。
 ユグドラシルの身元調査により、ピエールは精鋭特殊部隊に所属経験のある元軍人と明らかになり、そんな危険人物にドライバーが渡った件についてシドを責めるメロン兄さんだが、そこに普段と全く違う様子のDJが介入し、今見ると、流行の柄(黒と緑のチェック)……(自転車ジャージ?)。
 「呉島主任、あんただって貴重なスイカのロックシード、どっかでなくしたそうじゃないか」
 派手な飛び火に続いて、「プロフェッサー」なる人物からも様子見に賛同されてしまい、胡散臭いのと胡散臭いのと胡散臭いのに囲まれて、ストレスの溜まりそうな職場だった。
 (誰一人、メロン兄さんに弟がブドウを被っている件を教えていないのが、酷い……)
 一方、ドリアンを俺の強さで黙らせる宣言をしていたバナナは、案の定、ぼっこぼこにされていた。
 「あなた達とは、鍛え方が違いましてよ」
 「力技だけで勝てると思うな」
 バロンはインベスを助っ人にかり出し、力ではかなわないので数をけしかけるのが、凄くハカイダースピリットに汚染されつつありますね……。
 「でも気をつけなさい。美しさと脆さは紙一重!」
 インベスを軽々と蹴散らしたドリアンの、ビューティフルモヒカンフラッシュの直撃にバロンは完敗を喫し……来週、田舎に帰ってしまうのでは戒斗……。
 骨折級のダメージを負いながらも立ち上がろうとするガッツを見せた戒斗にバナナシードを返したピエールは、続けてチーム鎧武のステージへ。本物として偽物を駆逐する、と面倒くさい使命感に燃えるピエールははドリアンを召喚し、待ってましたとステージに上がると、力強く「あいつは強敵だ。助太刀するぜ」と、2対1で袋だたきにしてやろうぜ宣言する主役、主役!
 数を頼りの鎧武コンビも軽くあしらうドリアンは、場を盛り上げようとバナナの真似をしてインベスを召喚するが、使い方を知らなかった為にコントロールを離れたインベスが観衆に襲いかかる大混乱を招いてしまう。
 鎧武と龍玄は人々を逃がすためにインベスと戦う事になり…………ううーん、単純な戦闘力では格上のドリアンと正面からの勝負付けを済まさない為に不測の事態を発生させて状況をあやふやにしているのですが、「ダンス無視して自分ルールで殴り込んでくる」身勝手さと「自分の不始末で他人に迷惑が及んでも知らんぷり」の身勝手さは全く違うものなので、自分の呼んだインベスが一般人を襲っているのに狼狽するだけでドリアンが何もしないのは、話の都合すぎて大変残念(だいたいドリアン、前職はともかく、今は客商売しているわけで……)。
 龍玄からロックシードのパスを受けた鎧武は大玉スイカを召喚し、巨大スイカモードで周囲のインベスを轢き殺していくと、スイカブタックにスーパーチェンジし、ブラーボを一撃粉砕。ところが生き残りのインベスが大量のキーを喰らって急成長しててスイカアーマーとCG戦になり、基本、怪人戦がそこまでの話の流れと焦点のズレた不慮の事故にしかならないのが、どうにも盛り上がりません。
 鎧武は巨大インベスを撃破、ドリアンも倒した事になり、ランキング首位となるチーム鎧武! で、つづく。
 次回――落ち目の戒斗、ヒロインと二人旅のおいしい展開で起死回生?! ……毎度、新ライダーを出したり新フォームを出したりしないといけない都合で、どうしてもキャラの浮き沈みが激しくならざるを得ないのは、厄介そうだなとしみじみ。

◆第8話「バロンの新しき力、マンゴー!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:虚淵玄/七篠トリコ)
 街中で奇妙な草を見つけた舞は、異界への入り口を発見。バイトの面接中で紘汰に連絡が繋がらなかった事から、行方不明の総長を探すために思い切って中へ入り込むが、その背後でチャックは閉じてしまう……。
 一足遅れた紘汰は鎧武に変身するとバイクで異界へと突入し、バイクが消えた後に桜の花びらが舞い落ちるのが格好いい演出。
 インベスに囲まれた舞はロックシードのトレハン中だったバロンに助けられ、帰り道を探して微妙な距離感で同道中、戒斗の負傷に気付く。
 「そんな無理してまで強い錠前欲しいの? そうまでして、勝ちたい?」
 「当然だ。勝ち抜く力のある者だけが生き残る。それが出来ない弱者は消えるだけだ」
 戒斗が見せる力への強い渇望――それは、一地方都市だった沢芽市がユグドラシルによって再開発された荒波に揉まれ、消えていった父親の会社に原因があった。
 「ユグドラシルは全てを奪っていった。当然だ。奴らは強く、そして、あの頃の俺は弱かった。だが、今は違う……俺は二度と誰にも屈服しない」
 大企業の横暴により人生を歪められた戒斗の過去が語られ、これまで長らく一人だけ異世界に転生して来た人みたいだった戒斗の情念の根幹が判明。舞もまた同じような身の上を語るが……
 「多分、私の思う強さと、戒斗の思う強さって、違うんだよ」
 「……なんだと?」
 「辛い事や悲しい事があっても、どうにか折り合いをつけながら、元気に生きている人だっている。それって、凄い事だって思わない? ……私は、それが本当の強さだって思うの」
 如何にもなやり取りですが、『鎧武』名物、キャラとのリンク感の薄い強引な語りになってしまったのは否めず、語りたい(語らせたい)台詞が先行しすぎて、キャラクターという肉体がついていけてないのが困りもの。
 今回の戒斗のように、後から肉体を加速して追いつかせる事は可能なのですが、「こんな事を言っているこのキャラはどんな背景を抱えているのだろう」と興味を惹くよりも、「今そのやり取りをさせたいから今言わせているだけ」となりがち(どんなに作り手の中では背景に基づいて説得力があっても、受け手にそれを面白く見せようとする工夫が感じにくい)なのが、どうにも悪目立ちします。
 「悲しいこと我慢して頑張ってる人を、少しでも笑顔に出来たらって。私は……ダンスしか、出来ないから」
 「そんなものは強さでもなんでもない。強さとは、勝利し、奪ってこそ生まれるもの。……行くぞ」
 「え?」
 結局お互いの求める“強さ”は相容れないが、戒斗がなんだかんだと舞のボディガード役を買って出てトレハンついでに脱出チャックを探すおいしい役回りに落ち着いていた頃、鎧武は崖から顔面ダイブしてひくひくしていた。基本的に陽性ヒーローの鎧武/紘汰ですが、今回は主役ポジションを完全に戒斗に奪われている事もあり、実質的にコメディリリーフの扱い(笑)
 裂け目を発見するもドラゴンインベスと遭遇し、バナナの槍が全く通じない相手に追い詰められていたバロンは、鎧武と龍玄(シドから新たなバイクを入手して合流)に窮地を救われる屈辱の大失態。ドラゴンにはミカンの剣もブドウの銃も通じず、ひとまず舞を連れて森から脱出すると、鎧武がパインを発動。
 パインでひたすら殴るとなんとかダメージを与える事に成功し、それを見ていたバロンは、「どうやら使い分けが必要らしい」と手持ちのマンゴー召喚。
 下向きの角にマントを羽織り、超重量のメイスを手にしたマンゴーバロンへと変身し、これが割と、色はともかく暗黒騎士然として格好いい。
 〔ヒロイン(一般市民)の窮地を救う・ヒーロー3人がかりでもかなわない強敵・新たな力を発揮〕、と登場がヒーロー物のスタンダードな文法に沿っている、というのもありますが。
 鎧武とバロンは挿入歌に乗せてひたすらドラゴンを殴りつけ、トドメはパインキックと大回転マンゴースローのダブルアタックで大勝利。属性攻撃、大事だな……と学ぶ戒斗であった。
 今回の騒動はひとまず片付いたが、同じように異界へ繋がる裂け目が自然発生し、そこからインベスがこちら側の世界に出てきたら危険なのでは……と不穏な気配を振りまきながら、つづく。
 中澤監督の方針だったのか、脚本連名の七篠さんの志向だったのか、ストーリーのタイミング的な問題だったのかはわかりませんが、アーマードライダーがひとまず出揃ったところでスタンダードなヒーロー物の文法を取り込んで進行し、頭と口だけ肥大していびつな頭身になっていたいた戒斗の筋トレと強化展開も素直に噛み合って、ここまでの今作では一番すんなりと見やすいエピソードでした。
 そういった見せ方の要素も含めて、マンゴーナイトが格好良かったのも、良かったです。