『牙狼<GARO>』感想・第22話
◆第22話「刻印」◆ (監督:横山誠 脚本:小林雄次)
「なぜカオルの体がゲートに?!」
カオルの首筋に現れた紋様……それは、因果の宿るオブジェが開く、魔界へのゲートであった。かつても、究極のホラー・メシア召喚の為に人間の体がゲートにされた例が記されており、物語の基本ギミックが、形を変えて最終章の仕掛けになるのは、引き込まれる展開。
ホラー喰いの魔戒騎士はメシアと融合する事により究極の力を得るとされており、暗黒騎士の目的がカオルをゲートにしたメシア召喚と目された事で、カオルの悪夢の中に登場する、顔に十字の傷がある男の候補として、大河の元弟子・バラゴが再び浮上する。
「闇に囚われし者よ……汝、力を欲しているな」
己が力への自負と、ホラーへの強い復讐心のあまり、暗黒騎士キバの力に魅入られたバラゴは、己の肉体を鎧に食わせる事で、ホラー喰いの暗黒騎士へと変貌。弟子を止めようとした大河はバラゴに返り討ちに遭ってしまうが、最後に放ったガントレットによる攻撃が死の紋様をその顔に刻み、バラゴは死んだ筈だった……。
だが、何故かバラゴは生きていた……と視聴者的には通りの良い説明をどうして迂回していたのかについては、指輪の誤認と大河からの口止めであったと理由が付けられましたが、回想の少年鋼牙視点でもバラゴを怪しんでおかしくないように見えたので、物語としてこれといって“衝撃の真実”にならないものにしては、随分遠回りな見せ方になってしまった印象。
正直、「赤酒」の回で鋼牙が父の仇をホラーと認識し、別件としてバラゴの話題が出てきた時は困惑しましたし(「(ホラーと化した)元弟子に惨殺された」というのが、大河の死に様が嘲笑されている理由だと思っていたので)。
自分の身に起こっている状況に苦悩するカオルの元に届いたのは、かつて壁画を修復した幼稚園の倉庫で見つかった、父の絵本。その最後のページはやはり白紙であったが、そこに十字傷の男の幻影を見たカオルは、鋼牙に一つの決意を告げる。
「――斬って。私を」
ここでカオルがぐいっと脱皮を見せ、鋼牙への思いを自覚したが故に強くなれた、という流れに。
「この刻印さえ消えれば、メシアは食い止められるんでしょう? ……もういいの。これ以上、鋼牙に迷惑はかけられない。私のせいで」
「カオル。…………わからないのか。俺にはおまえが必要なんだ」
……こいつ、この期に及んで、顔ごと目線を逸らしたぞ!!!(笑)
この場に居たら鳩尾に蹴りの一発ぐらい入れてくれそうな邪美さんの退場が実に惜しまれます。
「二度と馬鹿な事は口走るな」
そんな二人の前に漆黒のローブに十字傷の男が姿を現すと、鋼牙と零を体術で圧倒。そしてそれをきっかけに、カオルは幼い頃にその男と出会い、15年ほど昔に既に、ゲートの刻印を埋め込まれていた事を思い出す。
「カオルは……今までずっと奴に監視されてきたんだろう。……いや、俺たちも」
全ては、バラゴと東のギルドにより紡がれてきた長い長い因果の糸であったのか……?
「カオル様、どうぞご安心下さい。鋼牙様は、決して、あなたを見捨てたりは致しませんよ」
「だから辛いんです。私のせいで、鋼牙が傷ついていくのが……」
ゴンザとカオルの間に、浄化を巡るやり取りを再現した上でカオルの言葉を変える事でその心情の変化を強調したのは鮮やかで、絵本をめくっていたゴンザは、白紙のページに描かれた子供達の自由な絵に目を止める……。
一方、零が鋼牙を仇とばかり思い込んでいたのは、仇敵と太刀筋がそっくりだったから……と同じ大河の弟子で合った為の一致とこちらにも理由を付けるが、殴られたり刺されたり嫌がらせを受けたりした事を鋼牙は意外と根に持っていた(いや、流れとしてはカオルを傷付けた事の方を怒っているのでしょうが、押し倒しの一件を認識していたら、ここに来て共闘が決裂するところでしたね……)。
「おまえには責任を果たしてもらおう。俺と共に戦い、カオルを守る。それがおまえの義務だ! 口答えは許さない」
「二人とも、素直じゃないんだから」
「素直に協力し合おうと、どうして言えないんだ?」
保護者から、ツッコまれた!
互いの魔道具の呼吸が合ってくるのは期待に応えてくれる楽しいアクセントで、そこに姿を見せるカオルとゴンザ。
「いつも、ここで修行を?」
……ここしばらくは、庭で誰かに何かをアピールしていましたけどね!
「ここは魔戒騎士だけの聖域だ。……中に入れるのは――俺が心を許した者だけだ」
いつもの拒絶? と思わせてからの巧い台詞でしたが、先に零が入っているので効果半減(笑) ……いやまあ、零が入っているのは魔戒騎士だからなのかもですが。
鋼牙は、カオルの前に黄金騎士の鎧を召喚してその性能をアピールすると、零と共に東のギルドへ乗り込む事を宣言。
「だが心配は無用だ。俺たちはもう、一人じゃない」
鋼牙にとってのカオルであり、カオルにとっての鋼牙であり、そして二人にとってそれ以上のものであり、闇に生き闇を狩る宿命の騎士の辿り着いた場所として、素敵な言葉でした。
「……大丈夫だって。こいつが簡単にくたばるわけねぇだろ。なんてったって俺と互角に渡り合った魔戒騎士だぜ」
「零、一言余計だな」
「鋼牙が一言足りないからよ」
魔道具が息の合った夫婦漫才を見せ、黄金の騎士の輝きを背に皆が笑みを浮かべるのが決戦を前に極めて印象的なシーンになり……全員、生き残れるといいですね……。
「二人とも、気をつけてね。私、信じてるから」
カオルさんが今最大のヒロイン力を投入し、決戦の場へと歩み出す、白と黒、二人の狼。
果たして、因果の先に待ち受けるものは何か、闇に光はもたらされるのか――
「物語には、無限の結末がある。未来は、自分の手で描くものだから。お父さんは、きっとそれが言いたかったんだ」
白紙の意味が語られて、つづく。