東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

狼、弾く

牙狼GARO>』感想・第21話

◆第21話「魔弾」◆ (監督:横山誠 脚本:小林雄次
 「俺は……」
 「いいの。何も言わなくていい」
 そうやって! 甘やかすのが! 良くないと思います!
 「あの時、鋼牙に出会えたから……ありがとう」
 花束とか抱えて乙女度を上げるカオルの笑顔に挙動不審になる鋼牙は目を逸らし、二人が向かった場所は……第1話でカオルから絵を買い取った際に口にしていた、鋼牙が育った街。
 「おまえにこの風景を見せたかった」
 カオルの絵と目の前の風景が重ねられ、正直忘れていたので、拾ってくれて良かったです(笑)
 「俺はあの時、魔戒騎士の掟を破ってでも、人を護ろうと決意した。その選択を、俺は一度たりとも後悔していない」
 ホラーの返り血を浴びたカオルを前にした時、ただ義務ではなく、魔戒騎士として“人を護る”とは何か、と向き合う大きな転機になった事を鋼牙は語り、最終章を前にこれまでの要素を色々と整理。
 「私も同じ。……あの時、逃げなくて良かった」
 逃げたくても逃げられなかったんですけどね!!
 若干、美化された思い出が捏造されている空気の勢いで鋼牙はカオルの肩に手を回して抱き寄せ、しかし……
 (それは、嵐の前のひとときの平穏にすぎなかった。悪夢は、私たちにじりじりと、忍び寄っていたのだ――)
 冴島邸に謎の脅迫状が届けられ、凶報をもたらした謎の男は魔弾で人間を撃つ事によりホラーを憑依させていき、お馴染みの口調で淡々と喋る森本レオ×人間を虫の様に扱うサイコ悪役、が今回もはまった好キャスティング。
 「罠だろうと、ホラーを狩るのが魔戒騎士の義務だ」
 呼び出しの場所に向かった鋼牙を待ち受けていたのは、謎の男と大量のホラーガンマン軍団で、白いコートを翻して銃弾をはじくアクションが格好良く、白黒のコントラストが鮮烈な、成る程これをやりたかったのか、という剣VS銃! の肉弾アクション。
 「貴様ぁ、何故こんなばかげた真似を」
 「なぜ? もちろん君を、狩る為だ。私は、この世界をホラーが住みやすい環境に変える為、魔戒騎士を駆除するのだ。君たち魔戒騎士が、ホラーを狩るのと同じ理屈だ」
 迫り来る銃弾の雨に対して、鋼牙は鎧を召喚し、黄金騎士とガンマン軍団の接近戦での立ち回りから、ガンマンホラーと激突。
 「その、黄金の鎧こそ、魔戒騎士の矛盾を覆い隠すまやかしに過ぎない」
 「それは貴様の理屈だ!この黄金の鎧には、一点の曇りもない!」
 ホラーの正義を語るガンマンホラーの胴体を両断するガロだが、倒れたホラーの正体は操られた犠牲者に過ぎず、緞帳の奥から姿を見せたのは、魔弾を操る謎の男。
 「待ちくたびれたよ」
 その正体は、ホラーではなく正真正銘の人間にして、かつて鋼牙が倒した氷炎ホラーの父親。
 「……おまえは何もわかっちゃいない」
 「……なに?」
 魔戒騎士のホラー狩りとは殺戮に過ぎず、残された人間の痛みや悲しみを思い知れ、と憎悪を向ける男に防戦一方を余儀なくされる鋼牙だが、一瞬の隙を突いて拳銃と魔弾の回収に成功すると、背を向ける。
 「何故だ! なぜ! ……殺さん」
 「それは貴様が……人間だからだ」
 鋼牙はあくまで己の一線を守って魚ホラー回で見せた迷いを乗り越えた事が示され、ギルドに復讐をそそのかされ、娘の魂といえる氷炎ホラーの短剣を自らに突き刺した男は復讐心のあまりホラーへと変貌するが、その肉体は憑依に耐えきれず、藻掻き苦しむ事に。
 「ぐ……ぁ……苦しい……こんなに苦しいのか……き、君は……この苦しみから娘を、救ってくれたのか」
 陰影の強調された画面で、OPピアノバラードを背に立つ鋼牙の姿は非常に劇的になり、再び鎧召喚。
 ヒーローの行動に別の視点から切り込む……と言えば聞こえは良いですが、暗黒面をつつく事でこれまで物語が積み重ねてきた(視聴者に見せてきた)カタルシスにノイズを加えるのはあまり気持ちの良くない作り手側の自己満足に陥りかねないところから、魔戒騎士のホラー調伏の意味を改めて描く事で綺麗な着地。
 また、魔弾の男の行為は許されるものでもないし、娘はホラー抜きでも連続殺人鬼であり、完全に歪んだ盲愛なのですが、そういった人間の復讐に囚われて狂ってしまう部分を今回においては正論でぶった切らない事で、一抹の哀しさを漂わせたのは、エピソードとしての“巧い嘘”の付き方で良かったです。
 カオルとの語らいを含めて、終章を前に、今作におけるヒーロー――魔戒騎士とはなにか――を鮮やかに描き、渋い好篇でした。
 その頃、妙な胸騒ぎを感じて冴島邸に向かう零だが、そこではカオルの首筋に不気味な黒い紋様が浮かび上がっていた! で、つづく。