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愛の反対は無関心だから

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第34話

◆エピソード34「青と黄の熱情」◆ (監督:山口恭平 脚本:金子香緒里)
 前回ラストの出鱈目ゴーアローが振り返られ、改めて、あれで種ごと木っ葉微塵にならなかったジョーキー、凄いのでは(笑)
 「ええい! こんなものを、回顧するなーーーっ!!」
 「また邪メンタルがパワーアップしてる! ……負けた悔しさで、更なる力を得たのか」
 悪役としてはこれ以上なく便利な悪のMパワーもとい邪メンタルですが、「負けたと思うまで俺は負けない」メンタルを主人公に与えた際にさじ加減を間違えると、「諦めない強さ」を通り越して「いつまでも敗北を認めない粘着質」になってしまう事があるのですが、「敗北を糧にエネルギーに変える」メンタルを悪役に与えると、「必然的な敗北を強化の理由として消化した上に粘着質になっても特に問題がない」事で作劇がこんなにスムーズになるのか、という(笑)
 そしてクランチュラさん、これをわかっていて回顧映像を流していたのだとしたら、さすが悪のサポートポジション、ヨドンゴールド。
 「オラディン、そしてキラメイジャーの奴らめ……」
 「いいねぇ……。僕も奴らには、腹が立ってるんだ」
 そこに現れたヨドンナが手にしていたのはなんと、ヌマージョの邪面(とクランチュラさんが呼称していますが、沼女さんは邪面師と同質の存在だったのか……?)。オラディンに倒されたときに拾った、と微妙に怪しげな事を言い出したヨドンナは、それでキラメイジャーと面白い遊びをする、と宣言。
 一方その頃、激戦を乗り越えたキラメイジャーでは、為朝と時雨が超格好つけながら「ハードボイルドな男に似合う、大人の競技」――ビリヤードに興じ、久々にイケていない一般人を自認する充瑠から歓声を浴びていた。
 ……まあ、フィクションとしてツッコミどころではないのですが、初めてのビリヤードめいたリアクションからキューを真っ直ぐ手玉に当てられる時点で、割と凄いけどな充瑠……! 君はあれだろう、本当はビリヤード歴5年ぐらいの女子だろう!!
 「ま、充瑠にとってはミラクルだろ」
 「そうだよ! イケてる二人と一緒にしないでよ!」
 「「イケてる二人……」」
 そういえば俺たち、そういう設定だったような……と顔を見合わせるも、ま、当たり前すぎて忘れてる事ってあるよね……と余裕を見せる二人だが、ヨドン反応の連絡で出撃。走り出す二人の静止画に銃声と共にサブタイトルがかかる刑事ドラマ風の演出で、これは……渡辺監督……? と思ったら、山口監督でした。
 ヨドン反応に集った5人の前に現れたのは、邪面師ではなく、ヨドンナ。
 「この前は君に、仲間の素晴らしさを教えてもらった。今日はそのお礼として、君に苦痛を与えに来たんだー」
 挑発を受けて進み出た為朝に向けて、沼の邪面から毒液が放たれ、カバーリングした時雨に直撃。それは人間なら数時間で死ぬ毒液であり、その毒の影響は、沼の邪面を割らない限り消える事はない。仮面を割れるかどうかのゲームをスタートするヨドンナに黄・赤・緑が次々と打ちかかるが、今日のヨドンナ様は絶好調。初登場時を思わせる華麗な鞭さばきをみせ……邪メンタル、上昇している?
 時雨を本部に戻そうとする小夜だが、今度はジョーキーが出現。時雨は変身してヨドンナを追い、それに黄が続き、ヨドンナを追う男子トリオと、ジョーキーを止めに向かう女子コンビに分かれる事に。
 「よぅし、邪メンタル実験、開始」
 基本、生真面目に検証を重ね、能力を把握して数字を積み上げるタイプのガルザは邪メンタルを放出するとドリラーにパワーで押し勝ち、そこにキングエクスプレス@緑とザビューン@桃も参戦するが……
 「魔進エクスプレス! お前を待っていた!」
 屈辱の下半身扱いから約2クール……今遂に、合体ジャァァァック!!
 「完成。ジャアクキングエクスプレス」
 これまでいいようにされていたキングエクスプレスから主導権を奪い取って目つきの悪い邪悪エクスプレスが誕生し、分割展開 → 二人乗りロボの活用 → ガルザ待望の逆転劇、と今作ここまでの要素を丁寧に組み込む事で、納得度の高い流れ。
 「やられたらやり返す。乗っ取り返しだ!」
 半沢ガルザはザビューンを軽々ノックアウトし、緑と桃が早くも実質的な戦線離脱の一方、赤黄青はヨドンナを取り囲むが、沼の邪面は沼の毒を受けたものにしか割れない、と追加ルールの発表により、銃撃無効。
 「なんなんだよ! そもそも、俺に苦痛を与えたいんだろ!? なら俺に毒をかけやがれ!」
 「一応いっとくけど、僕はあえて、君の仲間を狙ったんだよ。青い奴は君の事、きっとかばうと思ったからねぇ。君は、仲間が居るから勝てるんだろ? じゃあ、仲間をやれば、君は勝てないってことだ。それに、自分がやられるより、この方が君にとって、苦痛だろ?」
 ヨドンナは黄を嘲弄し、「仲間が傷付けられた方が怒る」は定番中の定番中ですが、仲間想いで責任感の強い為朝のキャラクター的積み重ねと、ヨドンナ自身の見てきた劇中の為朝の言行に結びつけられているので今作の物語の中にしっかりと落とし込まれており……ヨドンナのタメくんに対する理解度が、もはや、愛。
 為朝とヨドンナの因縁を拾い、為朝の責任感の強さを嫌らしく突き、時雨は毒に侵されてもやせ我慢の美学で変身し、ガルザの書類を丁寧に揃える性格と二人乗りロボを掛け合わせて雪辱を果たさせ……劇中要素をよく見て拾い合わせる事で物語の説得力を上げていく、金子さんの持ち味が存分に発揮され、出来れば来季も続けて起用してほしい脚本家です。
 見せ場を引き立てるのは、黙って耐える溜めだぁぁ! と必殺剣を振るう青だが、毒の影響で剣筋がぶれて味方に誤爆。消耗の激しい青をその場に残し、沼の邪面を奪い取ろうと接近戦を挑む黄は敢えなく膝蹴りで吹っ飛ばされて、今日のヨドンナ様は絶好調。
 「アニキ……本当にやるの? やっちゃうの?」
 「飛ばねぇ男は、ただの男だーーーーー!!」
 赤と黄がヨドンナを挟み込み、ジェッタの背に乗った青は上空からのダイビングブルーストラッシュの一撃に賭けるが、またもや誤爆
 「いよいよ毒で、体が動かなくなってきたなぁ」
 そうこうしている内にドリ巨神が邪悪エクスプレスに完敗して博多南から救援要請がもたらされ、なんか勢いで前回ばりの大ピンチだ!
 「行ってくれ、充瑠!」
 「でも!」
 「こっちは、俺たちでなんとかする。……任せろ。俺と為は、イケてる二人……だぜ?」
 「……うん」
 年長組の発言権を上げすぎるとバランスが崩れるので前半は控え目にしていたのでしょうが、今回は年上の出来る男としてアニキが年少者の背中を押す、真っ当な格好良さを見せてきます。
 赤は不死鳥モードを発動して王様を召喚し、「懲りないガルザにはこってりお仕置きだ」と、どうも対応の軽い王様ですが、待ち受けるガルザは、気力充実迫力満点。
 「やっときたかオラディン。待ちくたびれたぞ」
 お気に入りの塗り絵を勝手に完成させられたあの頃……欲しかったゲームを完全ネタバレされたあの頃……好きな女の子に懸命に書いたラブレターを全校放送で朗読されたあの頃……(オラディン的には、全て善意)……高まる邪メンタルはグレイトフルフェニックスと互角のパワーを発揮し、
 バーンブラッカーが……!
 バーンブラッカーが……当たった!!
 一方、黄青はとうとう変身解除に追い込まれ、ヨドンナの振るう鞭に合わせて次々と爆発が起こり、その中を駆ける為朝が時雨を拾って物陰に飛び込むのは格好いいシーンでした。
 「俺に気ぃ遣って元気なフリしてんの、見え見えなんだよ! 邪魔だから大人しくしてろ」
 「……おまえこそ、勝手に責任感じるな」
 一人で事態を解決しようとする為朝に対し、途切れ途切れの息の下で絞り出すように口にする時雨の言葉が素晴らしく、責任背負い込み気質の為朝に対して、仲間だからこそ、勝手に背負うな、というのは極めてクリティカル。
 俺はおまえに背負われる男か? という問いかけにより為朝と時雨、イケてる二人の関係がびしっと収まり、振り向かないなりに動きを止める為朝の無言の間も良かったです。
 「「おまえは俺を気にしすぎだ!」」
 シビアな判断を率先して買って出るところも含めて為朝の責任感の強さは長所ではあるが、それはそれで落とし穴でもある、というのを、悪の作戦のみならず味方側から殴らせたのは実にお見事で、前回、為朝が小夜に対してやや過剰に責任を感じていたのも、巧い具合に布石となる事に。
 時雨に責任を感じる為朝と、為朝に責任を感じさせたくない時雨と、お互いに気を回しすぎて万全の戦いが出来ていなかった事を認めた二人は苦笑を浮かべ、ビリヤードの一件を思い出した事で時雨がひらめアクター。
 突破口を見出すと再びヨドンナに挑んで変身する黄青だが、強化ペチャット軍団に囲まれて青がダウン。
 「青いのは終了。これでやっと、君の無念の顔が拝めるよ。ははははははは! はははははははは! ははははははは!! なあ、ここ笑うとこだよな?」
 「それはどうかな!」
 欲しかったやり取りもきっちり入って、黄が放った弾丸を倒れた青がシールドを発動して反射する事による、神ショット作戦で沼の邪面をチェックメイト
 「そんな攻撃を思いつくとは」
 「これが、イケてる俺たちの、チームプレイだ」
 アバンタイトルの時点から予想された通りの伏線でしたが、友情タッチをかわしあった青黄は反撃開始で、溜めて溜めてここからはヒーローのターン! が気持ちのいい流れ。
 「覚悟しやがれ。今度はこっちが笑う番だ!」
 遠近コンビネーションからW必殺技で、ヨドンナ様、割と大・爆・発。
 「……人間、如きがーーーーー!!」
 だが突如、その瞳が真紅に輝くと膨大な澱みのオーラが噴出し、時同じくして、貴様の販促キャンペーンは前回で終了だ!! むしろ現在話題沸騰なのはチェーンソーだ! と王様フェニックスに愛機のチャームポイントを叩きつけるガルザの脳裏に、重く昏い声が響き渡る。
 (ガルザ……)
 その言葉に従ったガルザは、にっくきオラディンを仕留める機会さえ捨てて戦線を離脱するとヨドンナを回収し、いよいよ、ヨドン皇帝らしき存在が片鱗を見せ、ヨドンナの存在にも何やら秘密が漂わされる事に……。
 「ピンチ続きでどうなるかと思ったけど、良かったぜ」
 君は! 今回! 1000%何もしていないな!!(涙)
 窮地窮地また窮地を脱したキラメイジャーだが、戦場でガルザと同じ声を聞いていた充瑠はココナツベースで憑かれたように筆を動かし、スケッチブックへ向けた畏怖の表情が、まだ見ぬ暗黒から感じ取った衝撃を巧く伝えてくれて良かったです。
 「頭の中に、声が聞こえたんだ……そしたら、このイメージが、頭の中に浮かんで……」
 充瑠が描き上げた赤黒い影こそが、ヨドン皇帝なのか?! そしてその声は、なぜ充瑠にも聞こえたのか?! 終章へ向けた大きな布石も打たれて、つづく。
 充瑠×為朝に重点が置かれていた事もあり、積極的な絡みは薄かった為朝×時雨のコンビ回でしたが、二人のキャラの色分けがハッキリしてきた後だからこそ、掴み重ねてきたキャラクター像からの自然な関係性が描かれて満足の行く出来でした。
 難を言えば、ゲームのルールを把握して大逆転、は普段なら為朝の役割ですが、ここは見せ場の配分で致し方なかったところでしょうか。時雨が時雨らしい格好良さを全編に渡って見せてくれた上で、為朝の格好良さとそれ故の陥穽に敵味方の両サイドから触れてくれたのは、終盤の掘り下げとして非常に良かったです(後はあくまで絶対的な信頼を寄せるショベ爺と向き合う事で、為朝が過去を払拭する回とかあると良いですが、そこまでねじ込むのは難しそうでしょうか……)。
 為朝×ヨドンナに関しては完全敵対となりましたが、ここで一つ因縁の激突を描いた事で、これ以上は特に無くても納得は出来ますし、ここからヨドンナ関係で一ひねり、があったとしても丁度いいステップになりますし、良い取り上げ方でした。
 出来ればヨドンナと為朝の間に更なるドラマが欲しいですが、それをやると為朝にスポットが当たりすぎるのでバランス的にはちょっと難しそうでしょうか……。タメ×爺話と、タメ×ヨド話と、どちらか一つと言われたら、ブコメが欲しいです荒川さん!
 今回は女性陣が割を食ったので女性コンビ回も欲しく、残り話数が見えてきたところで、あれも欲しいこれも欲しいとなってきますが、次回――姫様withドリル。クリスタリア空手を見せてやる!!