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史上最大の災厄(後編)

ウルトラマンG』感想・第13話

◆第13話「永遠(とわ)なる勇者-伝説2大怪獣登場-(nemesis)」◆
 ジャックとアイクは消息不明となり、残されたのはアイクのサングラスのみ……こ、これは、アイクが新たなウルトラマンGになる展開ですね!!
 と期待していたら、浜辺にフワフワしていたところを、アイク&少年にあっさり助けられました。
 一方、円盤の解読を進めていた隊長は、衝撃の真実に辿り着く。
 「3匹目の怪獣は――この地球だ」
 謎の円盤に記されていた第三の怪獣とは、地球そのもの。その先触れたる深海怪獣と宇宙怪獣は、地球自身が人類排除の為に呼び出した“ネメシス”――戒めの使者であった!
 「災厄は我々が悟る最後のチャンスだ。痛みに泣き叫ぶ地球の声が銀河の向こうに届き――怪獣たちが現れ出たのだ」
 刻一刻と状況が悪化していく中で、滅びに救済を見出す狂信的な扇動家が現れ、それに熱狂する、一部避難民。
 「我々は裁かれ、平和を見つけるのだ。神をも恐れぬ者たちから未来を取り戻さねばならん」
 軍を抜け、避難民サイドに立って行動するアイクも熱に浮かされたように拳を振り上げ、避難民サイドの視点を提供する役割になるのですが、そもそも前編の描写だと、避難民サイドがイレギュラーな存在(あえて港湾部に残っている貧困層?)に見えるので「『G』世界の一般大衆の代表」になりえず(もしその意図で描写しているのだとしたら、見せ方に首をひねります)、「一部の極端なカルト出現」(世紀末的な世相の暗示の意図もあるのでしょうが……)に最終回のみスポットを当てるのが、まるで効果的にならず。
 「3匹目の怪獣は――この地球」を中心に、二大怪獣に勝てるのか?、人類と地球の関係、暴走する軍部、取り残された人々とカルト的指導者の登場、と残された時間にやりたい事を端から詰め込んだ結果、全くまとまりがない率直に残念な内容。
 あちらもこちらもと手を広げている内に、アイクと関わった少年は雑にフェードアウトするなどキャラクターの行動に奥行きが不足し、一切の刈り込みをせずに全ての枝に花を咲かせようとした結果、養分が足りずに全ての花が枯れてしまう事に。
 「彼らは“ネメシス”なんです。戒めの使者です」
 「一体、誰を戒めに来たんだ?」
 「人間さ」
 「君の人生観に興味はない」
 グレートと一体化している影響かとは思われますが、妙に高みからものを言うジャックは「グレートに変身する」以外は事態の解決に全く役に立たず、生き残る為に足掻き続ける将軍の方がまだ好感度が上がってしまうぐらい(笑)
 「これを捧げる」
 「ついていけません」
 アイクはアイクで、隊長から強奪した円盤を怪獣に捧げようとする扇動家をあっさり見限り、取り返した円盤をユーマ本部に持ち込むキーマンになるのですが、話の都合で動いているだけの上に、アイク以外にもっと焦点を当てるべきユーマ隊員が居たのでは、と目が点。
 前後編の構成なのに、後編ぽっと出の扇動家が事態を引っかき回す事そのものがどうかと思いますし、立ち位置もUFO生物回のマッドサイエンティストと被り気味で、丁寧な蛇をこそ描けば良かったのに、角を生やしたり脚を生やしたりした結果、龍にもなれず蛇にも戻れない出来損ないのキメラが地面をのたうっている感。
 「どうやって地球と戦うんだ」
 「戦いません。敵の正体は――我々自身ですから」
 円盤を奪われた責任者であるところの隊長は、諦観を口にするか、部下に癇癪を飛ばすか、特に何も対策は取らないけど将軍には反対するか、と腰の据わらない支離滅裂な言行を繰り返した挙げ句、アイクがユーマ本部に円盤を持ち込むと突如「これで作戦が立てられる」と言い出して将軍を追い出し、結局、円盤を填め込んだ謎のビームライフルで怪獣と戦い始める錯乱ぶり。
 滅茶苦茶ポジティブに解釈すると、「破滅を前に様々な人々の正解の無い意志が交錯している」ともいえますが、ジャンルがカタストロフ物ではないですし、登場人物は単に行動の芯が無いだけで(良くも悪くも一本筋が通っているのは、むしろ憎まれ役ポジションの将軍という)、ユーマの面々も妙に悟った事を言うばかりで、では人類が生き残る為に何をするべきか? を掲げてくれるわけでなく、落丁・乱丁はいつもの事ではありますが、特にジャックの生への足掻きがちっとも見えないので、グレート最後の変身が全くヒロイックにならないのが致命傷。
 なんだかんだと地球人類の為に二大怪獣に立ち向かってくれるグレートさんなのですが、グレート本人は元より、依り代であるジャックの破滅に抗う意志もこれといって劇的に描かれないので、物語が問いかけてきたテーゼに対し、主要登場人物が誰もアンチテーゼをぶつけないけれど、とりあえず怪獣は物理で排除するという構成にただただ困惑します。
 海底怪獣は、円盤と謎のキャッチボールの末に爆死し、宇宙怪獣に火であぶられるグレートだったが、最後の力でウルトラ手刀ビームを伸ばすと首を切り裂き、至近距離からの光線を土手っ腹に叩き込んで逆転勝利。グレートは倒れた宇宙怪獣を持ち上げて飛び立ち、去りゆくウルトラマンからペッと吐き出されるジャック。
 「これで決着が?」
 「“炎と混沌が石に返った時――一人なる者に平和が訪れる”」
 「“されば地は報いを受けん。人 全て罰を受けるだろう”」
 隊長とジャックが円盤に刻まれた碑文を読み上げ、一同揃って宇宙を見上げて、おわり…………のところで、右上のインフォメーションバーから「ゴーデス細胞との闘いは続く!」と伸びて、僅かばかりの余韻が完膚なきまでに爆破されました(笑)
 ……しかしまあ、ラスト2話だけでも無理矢理ゴーデス復活させた方が、まだまとまったのではないか感。
 日豪合作というやや特殊な制作体制の下、オーストラリアの大地を活かした映像には独自の面白みがあり、後半は字幕も改善されてきてストーリー的な妙味も出てきたのですが、ラスト2話は、とにかく手当たり次第に詰め込みすぎて頭からひっくり返ってしまい、じたばたもがいている内に場外でタイムアウト、という印象。
 あまりにも剪定が足りません。
 せめて最後にユーマメンバーが個性を活かして大活躍、とかあればまだ良かったですが、そういう意識が見えなくは無かったものの特に劇的な展開にはならず、さして役に立たないまま宇宙から帰ってくる(あれだけ反対していた衛星レーザー攻撃を何故かチャーリーに主導させる隊長……)とか、突然特攻をかけようとするとか、ジーンのヒロイン力は第11話がピークとか、ユーマの一員みたいな顔で立っているアイクとか、四方八方に断片が散らばるばかり。
 行どころかページ単位で成り行きが抜けがちなのは今作の通常運行ではありますが、前後編でこれはさすがに荒っぽすぎて、残念な最終章になってしまいました。
 好きなエピソードは、植物コンピューター! 後、「第47格納庫」は素材は良かったと思うのですが……杉村升脚本に仕立て直して東條昭平の演出で見たいかなと(笑)
 時代性を反映した環境テロテーマなど90年代後半のシリーズ作品へ繋がっていくのかなという部分が見え、今作の存在そのものの意味など、その後のシリーズ作品の礎になった面もあるのでしょうが、一つの作品としては(字幕版の問題も含めて)作りの粗さが気になり、惜しい作品でありました。