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天を獲る

仮面ライダー鎧武』感想・第1話

◆第1話「変身!空からオレンジ?!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:虚淵玄
 ナレーション「君は、運命に抗えない。だが、世界は君に託される」
 開幕、大塚芳忠さんによる重々しいナレーションが響いているのですが、奇抜な見た目のライダー達、モノトーンの怪物たちと極彩色の華やかな色合いのコントラスト、馬に……乗ってる……? と、画面の情報量が多すぎて、何を喋っているのか全然頭に入ってきません!(笑)
 イメージシーン的な馬とバイクとモンスター軍団の激突の後、物語の舞台は、計画都市・沢芽市(ざわめし)へと移り、そこでは今、不思議な錠前・ロックシードにより不思議空間から召喚されるモンスターを戦わせる、ポケモンならぬインベスバトルが大流行中……?!
 ストリートでダンスチーム同士の諍いを解決する代理闘争としてのインベスバトルに観衆たちも熱狂……しているらしいのですが、インベスバトルが致命的に面白くなさそうなのであまりにも説得力が薄く、世界観を示す掴みの要素でもあるだけに、ここはもう少しどうにかならなかったものなのか。
 ホビーアニメの最初の悪役じみたチームバロンのこすっからい嫌がらせにより、錠前を落としたヒロインに制御を失ったインベスが襲いかかったその時、通りがかった主人公が、バイクで、轢いた!
 四輪ないし二輪で怪人相当の存在を轢くのは、東映ヒーローにおけるポピュラーなイニシエーションであり、作品構造を考えると、割と意識的に持ち込んでいるのでは感(笑)
 主人公・葛葉紘汰は、ヒロイン・舞の所属するダンスチーム鎧武の元メンバーで、チームを抜けた現在も舞を除く後輩たちに慕われており……第1話段階では、ダンスチーム=暴走族、インベスバトル=暴走族同士の抗争、葛葉紘汰=引退した特攻隊長、だと受け止めておくと構図がわかりやすい感じ。
 「なあ姉ちゃん……大人になるってどういう事だと思う?」
 「……自分で自分の面倒を見られるって事。今の紘汰は、食費も家賃も、全部自分で稼いでるじゃない。だからもう立派に大人だよー」
 「でも、自分の面倒しか見ていられない。仕事ばっかで手一杯でさ。他にもある筈の大事なこと、全部ほったらかしにしてんだ。こんなんじゃ俺、昔と全然変わってねぇよ」
 「紘汰……」
 「俺、変身したいんだ。もっと強くて、なんでもできる自分に」
 思わせぶりに「変身」を強調したやり取りですが、冒頭の迷子相手の対応に続き、初回から若いキャストに長い“語り”を割り振りすぎて、テンポが悪い&道徳の授業めいたわざとらしさが出てしまったのは、脚本の色といえるのかもしれませんが、今後に向けては修正していってほしい部分。
 両親を早くに亡くし、姉と二人暮らしの紘汰は、姉にこれ以上の苦労をかけない為にも早く一人前の大人になりたいとバイト三昧の日々を送るが、苦境にある昔の仲間達の事も忘れられず……そんな中、チーム鎧武のリーダーが怪しげなアイテムを売り込まれ、それを披露したいとメールで呼び出される。
 同じく呼び出された舞と出会った紘汰は、呼び出しの場所に存在していた、空間を割る巨大なチャックに気付いて不用意にその中に入り込むと、奇妙な木々が茂る森の中で人間大のインベスを目撃。そしてリーダーが見せようとしていた“ベルトのバックルのような”物を拾った紘汰が物の弾みで身につけると、引きつけられるように手にしていた妖しげな果実がロックシードへと姿を変え、虎のような怪人に見つかって襲われる事に。
 這々の体で謎の森から抜け出し、舞を逃がす為に囮を買って出た紘汰が怪人に追い詰められたその時――脳内に響き渡る男達の荒い息づかい!
 《ふははふは! ふはい! はーーーー……》
 ……いや、BGMなのかもしれませんが、演出的に、腰に巻き付いたベルトの副作用の可能性が捨てきれなくて。
 「どうすりゃいいんだ……こうか?」
 なんとなく握りしめていたロックシードが開くと、形がそれっぽいな……と視線を向けていたバックルの中央に填め込み、脇に付いていた刀型のレバーを動かすと、二つに割れるロックシード。
 ……まあ、その発想はかなり突飛だとは思いますが、劇中ガジェットの使い方に主人公が少しずつ“気付いていく”過程が順を追って描かれ、物凄く圧縮されていますが、『仮面ライダークウガ』への意識を感じる見せ方。
 ベルトのギミックを作動させると、頭上に開いたチャックの穴から巨大なミカンが振ってきて紘汰の頭に被さり、怪奇ミカンヘッド男誕生! ……じゃなかった、幸い、ミカンの皮が剥けて展開する事で紘汰の体が装甲に包まれ、その姿は、驚天動地の武者オレンジに!
 第1話は放映当時にも見たので、さすがにこの変身は7年経っても忘れがたいインパクトですが、これがホラー映画だったら、初回で主人公が巨大ミカンに頭を喰われて終わるところでしたね……そして紘汰は、失われた首を求めて夜な夜な沢芽市を彷徨う怪奇キラーミカン男になるのだ……。
 与太はさておき、状況に困惑しながらも武装の使用方法に気付いてく形で戦いは進み、初めての銃撃から、二刀を連結。
 「逃げんじゃねぇ!」
 優勢になると、素のチンピラ感が出ます(笑)
 「気をつけて……貴方は、運命を選ぼうとしている。この先に踏み込めば、もう二度と、後戻りはできない。最後まで、戦い続ける事になる。世界を、己の色に染め上げるまで」
 「俺は……でも俺は、おまえを守る為なら!」
 突如現れた、舞に瓜二つの謎めいた女の示唆により、ロックシードを武器に填め込んだ武者オレンジは、薙刀クロスからのオレンジチャージで、怪人を成敗!
 「これが俺の、変身……」
 紘汰はいつも通りの舞と合流し、果たして、その得た力は何を意味するのか……? で、つづく。
 上述したように第1話は放映当時にも見ており、確か当時も「インベスバトル……」と思った以外の記憶はあまり無いのですが、改めて見ると、かなり『クウガ』への意識が窺える内容。
 『クウガ』が、《昭和ライダー》を踏まえて、積み重ねられてきた約束事・作劇を“現代に生きるヒーロー”を立脚させる物語の中にどう落とし込み再構築するのか、をやっていたのに対し、今作は、既にTVシリーズの本数としては《昭和ライダー》を凌駕した《平成ライダー》の中で積み重ねられてきた約束事・作劇を、改めて組み立て直そうとする――その端的な表現が、ウェポンガジェットの物語への落とし込み方――いうなれば、平成《平成ライダー》みたいな狙いがあるのかな、と。
 それが作品のコアなのか、取っかかりなのかはわかりませんが、(主人公の善性を示すわかりやすい表現としても)親とはぐれた子供と向き合う初登場シーンやラストの台詞は、『クウガ』へのオマージュに見えますし、その意識がどこへ向かうのかも含めて、派手な色彩のもぎたてライダー達がどう交差し、どんな運命と向き合っていくのか、この機会に改めて楽しめればと思います。