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史上最大の災厄(前編)

ウルトラマンG』感想・第12話

◆第12話「その名は“滅亡(ほろび)”-伝説2大怪獣登場-(the age of plagues)」◆
 「plague」は、「疫病、伝染病、大災厄」などの意味との事で、原題をそのまま訳するなら「災厄の時(代)」といったところでしょうか。
 オゾン層修復プロジェクトの為にユーマの衛星が宇宙へと打ち上げられるが、ジャックやジーン、キムはそれに反対しており、どうして打ち上げまでした後に、まだ隊員レベルで揉めているのか……。
 「地球は我々、人間だけの星ではないんです。必ず報いが来ますよ」
 「もう一刻の猶予もならん。計画を遂行する」
 そしていきなり、台詞回しが環境テロリスト化する隊長(笑)
 それは、これから、人類を滅ぼす人の言い方です!
 ところが起動した衛星の出力がダウンし、代わりにそれに呼応するかのような謎の地震が海底で発生。
 ナレーション「深海で“滅亡”という名の封印が解放されていた」
 に合わせ、海を泳ぐ巨影が画面を横切っていくのは、実に怪獣映画的で格好いい導入。
 怪獣から出現した巨大亀怪獣が漁船団を襲撃し、調査に向かったロイドとキムは、海面の変化と大量の魚の死骸を確認。それは、酸素を根絶し、毒性を持つ藻の影響によるものであった……。
 「ただの藻とは訳が違うぞ。今までで最強の敵かも知れん。――背後に何かがいる」
 海中に潜む亀怪獣が撒き散らしていると思われる毒性藻により死の海が広がり続ける中、調査中に海底から引き揚げられた謎の円盤を、ジャックがウルトラ解読。
 「“深海に閉ざされし者と――天空に追放された者が――眠りより覚めるだろう。そして第三の者が続く”」
 一度はジャックに、「筋肉の次はポエム自慢か?」と批判的な眼差しを向けるも、博物館に引きこもって円盤の解読を進める隊長と軍部の対立が再び描かれる中、宇宙から新たな怪獣が飛来。増殖を続けていく藻に対する決定的な対策も打てないまま、オゾン層修復プロジェクト再開の為にチャーリーは宇宙送りにされ、そこからいきなりの、
 ナレーション「アイクは港の警備課に降格された」
 により、多分、リュグロー騒動などで登場した情報局員?の視点から、海の死による食糧危機、配給制疎開、ゴーストタウン化した港湾部で身を寄せ合うように暮らす(恐らく)貧民層といった、急速に悪化していく世界情勢が盛り込まれ、脚本時点で意図されたものなのか、毎度ながらの『G』作劇が結果的にはまったのかはわかりませんが、會川さん好みの映画的に切り詰めた見せ方になる事に。
 その一方で、あちらこちらに散らばった要素が物語規模のエスカレートを綺麗な上昇曲線で描けているとは言いがたく、特に、「宇宙規模のプロジェクトを主導」「決行直前に文句を言う身内」「大規模な海洋汚染とその調査」「博物館に隊長が引きこもって一人で円盤を調査」「軍部との衝突」「とりあえずチャーリーを宇宙に飛ばす」「言い訳がましく登場する「ユーマ本部」という単語」といった、最終エピソードでも相変わらずのユーマ組織の規模と権力の不安定な描写は、物語に貫くべき芯を溶けた飴のようにしてしまい、今作全体の大きな短所となってしまいました。
 これは今作の「“怪獣”を単純な敵とする事を避ける」作風が一因といえますが、エピソードによってユーマの対立存在を怪獣以外――「軍」だったり「地元警察」だったり「シャーマン」だったり――に置く事を余儀なくされた結果、“ユーマの在り方”が対立存在に応じて不定になってしまう事に。
 故に、ソロで置いておくと「ヒャッハー! 怪獣は的がデカいから当てやすいぜ!」みたいなノリなのに、より好戦的な対立存在が出てくると「我々は調査・分析を重視するので、無闇な先制攻撃とかもっての他です」みたいな矛盾が各所に発生し、作品としてのアプローチそのものは面白かったと思うものの、志の高さが物語として設計しきれずに空回りしてしまった印象です。
 調整の為に衛星に乗り込んだチャーリーが宇宙から地球を見つめ、
 「ノミは象から離れなきゃ、象が生きてると――分からない」
 と、“一つの生命”としての地球の姿に感動を覚えるのは印象的なシーンなのですが、そこでも「チャーリーは初めて宇宙から地球を見る」事にしなくてはいけないので「巨大組織の筈なのに(子飼いとはいえ)この局面で宇宙初体験の人物を単独で衛星に乗り込ませる」事になり「それを示す為に身内からも抗議させる」ので「強権を振り回す隊長の行動が傍目に見てもおかしい」けれど「軍部の将軍よりは遙かに理性的な対応をしている扱いにしなくてはいけないので物語として擁護される」多重衝突が引き起こされてしまっているのが、今作の欠点として象徴的。
 映像面では使える人数の問題など予算的な制約も影響したかと思われるのですが、人類の罪と傲慢が絡む一大プロジェクト・それに呼応するかのように目覚める巨大怪獣・その存在を暗示していた古代の遺物! といった個々の要素は悪くないのに、それを貫く芯の扱いが雑なので美しい構造物にまとまらないのが、勿体なさを感じます。
 軍部が、迫り来る宇宙怪獣に対して人工衛星連動レーザーで対策する案をユーマ本部に承認させる一方、海底怪獣が港に上陸。ジャックはダイビング変身からグレートになると、鉄骨を振り回してルール無用の凶器攻撃を仕掛けるが、逆に顔を小突かれ、往復ビンタ。更には光線ドッジボールに敗れてタイムアップとなり、完敗を喫してしまう。
 何故か感動のEDみたいな曲が流れ出し、深海と天空で目覚めた破滅の使者の到来により、迫り来る地球最大の危機!
 最後にキムが拾ったのは、港で出会った少年を気に掛けていたアイクのサングラスでしょうか……? 死なれても気分が悪いし、かといって生死の謎をサスペンスにするような扱いのキャラでもないしで、むしろジャックの心配をさせるべきでは……と困惑しながら、つづく。