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愛と勇気とピチピチのT

ウルトラマンG』感想・第11話

◆第11話「第47格納庫(the survivalists)」◆
 アメリカでいうところの「エリア51」(宇宙人を捕まえているとか共同研究しているとかいった類いの噂話で有名な米軍の秘密基地)のイメージと思われる「第47格納庫」が登場し、そこには本当に、未知の乗り物が秘匿されていた!
 そのUFOに近付いた不審者を確保するユーマだが、男は特殊な洗脳技術によって脳死状態で操られており、同様の洗脳技術を用いて過去に事件を引き起こした、過激な環境保護主義者にして狂気の天才科学者ノルバーグの存在が背後に浮かび上がる。
 UFOを調査した帰路、その技術を我が物にせんとするノルバーグの配下によってジーンが誘拐され、いつの間にかその情報をユーマが把握しているのが、凄く『グレート』ですが、甲高い声でまくし立てる車椅子のマッドサイエンティストの造形は秀逸。
 「人類の敵は人類自身だ。その敵が今こそ姿を現す。時は来た。我が軍団は、あの宇宙船の技術を使い――最後の聖戦に臨むのだ」
 「それは侵略者の考え方よ」
 「我々は生き残る」
 ジーン救出の為、ノルバーグの病院に潜入役を買って出るジャックだがまんまと敵の手に落ち、洗脳技術によって作り出されたピチTコンバット軍団の一員に加えられてしまう(勿論、グレートさんの能力に守られてており、洗脳は偽装)。
 世界をピチピチのタンクトップで埋め尽くすのだ!
 ノルバーグは狂信的な自身の思想に基づいてUFO強奪の為に行動を開始し、ジャックの発信器が素通し(ユーマ隊員は体内にインプラント型式で埋め込まれたりしているのでしょうか……)とか、ユーマ丸出しの車で追跡するバックアップメンバーとか、全方位に雑。
 「似合いの車ね」
 「ゴミは、使い捨て社会へ怒りをぶつけに戻ってくる」
 テロ部隊を乗せた改造車(ゴミ収集車ベース)についての皮肉の応酬は、エコテーマとも繋げて面白かったのですが……第47格納庫を襲撃し、UFO奪取を目論むピチT軍団と警備兵のドンパチは正直やっすい映像で、普段、オーストラリアの広大な大地を活かした絵作りに独特の迫力がある分、悪い方向に落差が目立ちます。
 不意を打って寝返ったジャックはジーンの救出に成功し、バックアップのチャーリーとキムとも合流するが、ノルバーグはUFOに融合。狂ったように笑いながら地上を攻撃するとその矛先を、ユーマ本部へと向ける。
 本部を空襲するノルバーグと隊長には何やら過去の因縁があるらしく(隊長の知り合いはマッドサイエンティストばかりなのか……)、降伏を迫る博士に悠揚と対応する隊長は格好いいのですが……
 ・これといった布石の欠片もないまま「UFOを手に入れた博士がユーマ本部を狙う」のが隊員の共通認識になっている
 ・気がつくとピチTコンバット軍団がユーマ基地を制圧している
 ・隊長はどうやら時間稼ぎをしているらしいが狙いが全く不明
 と、毎度の事ながら落丁と乱丁が酷すぎて、話の展開がしっちゃかめっちゃか。
 隊長とロイドの間に「諦めたと見せかけて勝負に出るか」という会話があるのですが、これは「ジーン救出作戦の展開中で、博士が第47格納庫を襲撃する前」の段階のやり取りにも拘わらず、UFO強奪という極めて大きな状況の変化があった後の展開に何故かそのまま繋げられてしまっており、結果として、事態の激変に全く対応しないまま隊長が基地で時間を潰しているように見える大変奇妙な成り行きに。
 破綻を承知で強引に話を繋げると、「敢えてUFOを確保させた上でユーマ本部で迎撃する作戦」という事になるのですが、特にユーマ本部に切り札があるわけでもなくUFOに蹂躙されるがままなので、まるっきり無駄な損害となっており、お陰で隊長を軽くからかうオチも、本当に無為無策で卓球ゲームをしていただけなので、どういう目で見ていいのかわからず。
 いつの間にやらピチT軍団がユーマ本部を半ば制圧しているのも脈絡が皆無なのですが、第47格納庫を襲撃した部隊は割とあっさり撃退されているので、普通に火力で迎え撃った方があらゆる面で良かったのでは……。
 「強い者が生き残る。おまえは進化の落伍者だ」
 「勘違いするな。進化は力でなく調和の産物だ。おまえには分かるまい」
 「憎まれ口も今のうちだ」
 「人間は独りでは生きられん。人類が滅びればおまえも死ぬ」
 スタッフも勿体ないと思っていたのか、隊長と博士のやり取りは、ゴーデス編ラストをわかりやすい形に再構築して繰り返したといった感じ。
 やり取りの間にUFOが強化変形し、内部の博士は完全に取り込まれて消滅。外からはUFOの爆撃、内部では帰還したジーンたちとピチT軍団の白兵戦が描かれ、ここで使われるBGMが大変格好いいのですが、物語の流れがあまりにも段取り皆無で、事態の咀嚼と欠落したページの穴埋めで手一杯で盛り上がりようがないのが、実に悪い時の『グレート』。
 殿を勤めていたピチTジャックがグレートに変身するも、カニUFOに全く攻撃が通用せずに苦戦。それを見ていた隊長の命令で、チャーリーとジーンの乗り込んだハマー戦闘機が支援の為に出撃し、つい先程まで基地内部で白兵戦をしていた筈のピチT軍団が気がつくと排除されていて、とにかく目が白黒する展開が続きます。
 白兵戦そのものも、ロボトミー的な洗脳技術により“ゾンビのような状態”と言及されてはいるものの、見た目一般人を射殺する映像はどうかと思ったのか、互いに照準の狂った銃を撃ち合っているだけなので緊迫感は無いに等しく、物語のサスペンスとして全く機能していないので、色々な意味で必要があったのかレベル。
 ハマーの支援を受けたグレートは、拘束リングを打ち破ると渾身のファイヤー波動拳を叩き込み、カニアーマーを解除したUFOは、地球を飛び去っていくのであった……。
 「狂信的環境テロリスト率いるピチTコンバット軍団が地球外のオーバーテクノロジーを入手しようとする」という、《レスキューポリス》×『ジャンパーソン』×《ウルトラ》、みたいなエピソードの構成要素は悪くなかったのですが、『グレート』名物の印刷ミスで、比喩表現抜きで“筋書きの無いドラマ”になってしまったのが、残念でありました。