『牙狼<GARO>』感想・第11-12話
◆第11話「遊戯」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:林壮太郎/梶研吾)
本日のお言葉。
「態度だけは大きい癖に、意外と度胸ないのね」
三神官の毒舌は、鉄面王子に対していいアクセントだなーと(笑)
そんな王子に迫る、謎の影。
「背後から、怪しげな思念が来るぞ」
TV番組に出演して高額賞金をゲットだ! と鋼牙にペアを持ちかけるカオルだが、鋼牙は当然、それをすげなく拒否。
「ちょっと、ホラー狩る意外に興味ないのー?」
「無い」
「……じゃあもういいよ! 零くんに頼むから」
突然、モノローグの代わりに黒バックに白抜きで文字が出て、学生の自主制作映画みたいになって思わず笑ってしまったのですが、人間にゲームを持ちかけて魂を奪う楽天ホラーの登場シーンが舞台セット風だったりと合わせて演出上のオマージュだったのか、特に関係なくアフレコの際に何かトラブルもであったのか……。
賞金も欲しかったけど、
本当は……普通の男の子として、
ゲームを楽しむ鋼牙を見たかった。まだ見たことのない
鋼牙の笑顔を、
私は見たかった。
ギルドから新たな指令を受けた鋼牙だが、ホラーの元に向かう途上で、ばったり出会った零と激突。
「目的はなんだ」
「ガロの称号を持つ者は斬る。それだけだ」
「なぜだ?」
「気に入らないんだよ。恨みを晴らす事に必死で、自分が恨みを買われてる事にも気付かない、愚かな黄金騎士がな」
「なんの話だ!」
「おい、二人とも」
今度こそトイレ掃除をさせられるぞ!
……じゃなかった、
「三匹の小番犬に、また命を縮められたいの?」
互いの保護者から仲裁されて、激突は水入り。
「お互い、長生きは出来ないな」
捨て台詞めかして零は去っていき、マントを翻して駆ける鋼牙は、楽天ホラーと接触。敵に主導権を握られるままカオルの魂を賭けたゲームに挑む事になり、引っかけクイズに割と真面目に挑む鋼牙(笑)
ゲーム空間は、背景やオブジェクトにイラストを多用して幻想的な雰囲気を出し、アニメジャンルでいうと新房昭之監督を思わせる演出。オマージュ元などあったのかもしれませんし、こういった変化球を交える試みは面白かったですが、個人的にはあまり好きではない見せ方。
楽天ホラーを撃破するも、マネキンカオルの群れから本物を見つけださなくてはいけなくなった鋼牙は精神を集中すると回収したCGを回想し、メモリに登録されていて本当に良かった!
哀しそうな表情のカオルを本物だと見抜く事に成功した鋼牙は、取り返した魂を定着させる方法として、(騙されていないか念入りに指輪に確認しつつ)カオルを抱きしめながら呪文を唱え……眠り姫の目覚めは王子様の口づけなのが、凄く『牙狼』です(笑)
「なんか変な事しなかったでしょうね」
「誰がおまえなんかに」
「……やだ……頭痛い。なんか魂一度抜かれたような気分」
「まったくだ」
「……ふっ」
「今笑った? 笑ったよね?」
「笑ってない」
指輪の勧めもあり、体力の戻らないカオルを座らせ、鋼牙は渋々と肩を貸し、つづく。
◆第12話「大河」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:梶研吾/雨宮慶太)
おまえちょっとやかましい、と外された指輪には専用の台座がある事が判明し、こういった小道具へのこだわりは、今作らしさを感じます。
「たくましく、成長されたものです」
「あのチビがな……」
シャドー剣舞を重ねる鋼牙を見つめるゴンザと指輪の呟きから、幼年期の鋼牙の修業時代に話は移り、何度か言及されてきた父・大河(演:渡辺裕之)が遂に劇中に登場。
二人旅の途中で出会ったホラー退治の一幕を挟み、鋼牙を屋敷に残してゴンザに託した大河は、かつての友・バラゴとの戦いに臨み、てっきり女絡みかと思っていたら、大河の死因はホラー化した(?)友人との戦いによるものでした。……まあ、バラゴが女ではない、とはまだ言い切れませんが。
大河の赤い血と、バラゴの粘液のような体液を滴らせる対比が人外の化生の表現として印象的で、部分変身から格好良く鎧を装着する大河だが、壮絶な戦いの末に敗北。最後は飛び出してきた鋼牙をかばって腹を貫かれるも、瀕死の状態からの反撃で深傷を負ったバラゴは姿を消し、1クール目のラストに、父親の最期と因縁の仇敵が明らかに。
遺された父の剣はクレーンでさえ回収できず、魔導輪・ザルバと契約し、激しい修行を続けた末、遂にそれを引き抜く事に成功する青年・鋼牙。
ソウルメタルは手にする者の心に応え、隕鉄のように重くも羽毛のように軽くもなる――という大河の言葉から、形見となった剣を手にする事で鋼牙が魔戒騎士として歩み出す資格を得た事が描かれるのは劇的なビジュアルとなり、綺麗な流れでした。
華やかなクリスマスの灯火とは無縁で、“護りし者”として血の宿命に生きる鋼牙の来歴は、ヒーローフィクションとしては珍しくない背景なのですが、今作の場合、ホラーと関わる人々の感情や、着の身着のままめいた姿で父に従う鋼牙の姿など、見せ方が全体的に生々しい作風なので、閉鎖環境における厳しくも暖かい(と感じる)父との絆や、それはそれとして旅の途中で保護されそうな生活感の描写から受ける印象が、個人的にはヒロイックを通り越してグロテスクの領域に入ってしまったのは、引っかかった部分。
その為、いまわの際の「今日からおまえがガロの称号を受け継ぐのだ」も、“呪い”のどぎつさが強烈だったのですが、以前に鋼牙は零と剣を交えながら「魔戒騎士の血は、この俺で途絶えていい!」と発言しているので、ここからその宿命に対して批判的なテーゼが入ってくるのか、気になるところです。
逆にそこを肯定的に描くなら、もう少しオブラートに包まないと、露悪が過ぎたかなと。
一方で、父親に代わり鋼牙に温もりを与えるゴンザの存在感が光り、うかうかしていると、ヒロインの座を持っていかれるぞ、カオル!