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キセキはエモい?

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第29話

◆エピソード29「まぼろしのアタマルド」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:井上テテ)
 見所は、王様の手を引いてランナウェイする充瑠。
 聖地アタマルドは、オラディンの精神が作り出した理想世界(つまり、実体化した超巨大な二次創作)であり、魔石を治療するミラクルストーンの力は、オラディンの死によって失われてしまっていた……ハコブーの言葉に一度は落胆するキラメイジャーだが、充瑠が夢でオラディンから鍵を受け取った事に賭けて、アタマルドへと向かってみる事に。
 そのオラディンは、クリスタリア陥落時に確かに殺害されていたが、肉体の崩壊前に魂を移し替えようとするもヨドン皇帝により阻止されて、ヨドンヘイムに封印されていた事が判明。
 どうやらこの状態から充瑠(というか、波長の近い人間)に向けて数々の電波を発信していたらしく、オラディンと力が拮抗しているどころか電波漏れを許してしまっているヨドン皇帝の株価が激しく下がったのですが、この先に向けて大丈夫でしょうか。
 地球人とクリスタリア人(第29話にして、国民も王族と同じ鉱物人間であると明らかに)が共に暮らすオラディンの夢一杯な理想世界で、充瑠たちはオラディンが示唆したと思われる扉を発見。
 時間が無いので迷っている暇は無い、と先行した為朝・瀬奈・時雨・小夜は、それぞれにとってなじみ深い場所で自らのシャドーに襲われ、キャラクターを分散・一対一でスーツとの絡み・アクションシーンを消化、と現行の撮影状況を鑑みた構成なのですが、残った充瑠が正解に辿り着くとさくっと解放され、純粋にただの時間潰しトラップでしかなかったのは物足りず、もう少し物語としての面白みをプラスして欲しかったところであり。
 充瑠が扉に「鍵穴を描く」事で閃きにより正解を掴み取るのは悪くなかったのですが、「一人一回」と説明されているのに適当に扉を開く仲間達が、元より突撃娘の瀬奈はともかくとして、やけに粗忽になってしまったのも残念。真っ先に扉を開いた瀬奈が中に吸い込まれてしまうぐらいの勢いをつけても良かったかなと。
 恐らく、ヨドン皇帝の呪力から魂を隠していた部屋より、充瑠によって連れ出された(充瑠のキラメンタルのブーストを受けた?)オラディンは、ミラクルストーンを器として奇跡の復活。
 「見よ! 私は、本当の不死鳥になったぞ!」
 オラディンフェニックスはテンション高く翼を広げ、王子様は巨大重機ロボになり、王様は石のフェニックスになってしまうこの勢いそのものは、嫌いではありません(笑)
 ある意味、デカマスターとかゴセイナイトとか宇宙刑事ギャバンとかが出てきて敵を蹂躙していく時の笑うしかない光景に近いものを感じますが、改めてオラディンは、そういう系譜のキャラクターなのだな、と(それが、オラディンそのものへの好感になるかというと、物語の組み立ての問題でちょっと微妙なのですが)。
 王様フェニックスを先頭にキラメイジャーと魔進一行は元の世界へと帰還し、フェニックスの一撃が、苦戦するドリ巨神を助け、巨獣を軽々と吹き飛ばす!
 「ははは、クリスタリアの王、オラディン! ここに復活!」
 「え?! え、父上ーーー?!」
 母上に続く出鱈目ぶりで大変あっけらかん路線となりましたが、王様夫妻が普通に復活すると、「新たな女王になる」と腹をくくったマブシーナと、「クリスタリアでそれを支えていく」事を決めた宝路の覚悟があまり活きないので、今回ラストに姿を消した事といい、タイムリミットのある復活の可能性もありはしそうでしょうか。
 現状の今作の方向性からすると、形が形なので国は子供達に任せて旅に出ます! とか爽やかに無責任路線もありそうですが、できれば、姫様の成長の流れとして、女王への道はしっかり扱ってほしい要素。
 「あーーーーーーーーーー?!」
 「なぜオラディンが復活できたんだよ?!」
 「奴は言う……王は奇跡を生む者だと。なにが奇跡だ!!」
 激怒するガルザの言葉に大変気持ちがこもっており、上半期で国家予算を使い尽くされ、大慌てで補正予算のやりくりをしている真っ最中に「はっはっは、宇宙サマージャンボで一等を当てたから結果がオールライト!」とか言われる下の人間の気持ちにもなってみろ!!
 不死鳥モードとなった赤が王様フェニックスに乗り込むと、ダブル「「ひらめキーング」」でハコブーと魔進合体し、新たなる巨神・グレイトフルフェニックスが完成。
 飛翔する巨獣と激しい空中戦を演じ、ゴールデンアックスで叩き斬り、主題歌をバックに盛り上げようとはしてくるのですが……うーん……まあ前回時点で、「先々はともかく、キラメイジン復活させても巨獣相手に役に立ちそうにない」という致命的問題が横たわっていたわけですが、「キラメイストーンの治癒が話の焦点だったのに、治療後に本当に何もしないまま終了」という素通しの致命傷になって目が点。
 勿論、魔石=キラメイジン(巨大戦力)だけなわけではなく、それぞれの大切な相棒(復活後にむせび泣くタメくん!)であるわけですが、なればこそ、このエピソードの中で、相棒が戻ってきた意味を描いてほしかったところであり、それが描かれた後ならばトドメはグレイトフルフェニックスでもまだ納得できたと思うのですが、詰め込み切れず。
 今作、物語全体の構成そのものは上手く行っていると思うのですが、「新ロボ登場回に限ってエピソードの焦点と新ロボの属性が全く噛み合わない」という、もはや恒例行事がまたも炸裂してしまい、商品展開との相性の悪さがとにかく惜しい(根本的なところで、1人乗りロボそのものがシリーズの鬼門なわけですが)。
 シルバーの時は、人機一体のインパクトと図らずも狂気のマッドサイエンティストぶりを発露してしまった博多南の設計が突き抜けましたが、今回はそこも二番煎じになりましたし。
 虎の子の巨獣を破壊されたヨドン陣営は歯噛みし、オラディン復活を目にしたガルザは、「考えがある」としばらくヨドンヘイムを離れる宣言。
 そして改めて、王様フェニックスの前に並ぶキラメイジャー。
 「ありがとう、充瑠くん」
 「父上! 父上……俺も……頑張って戦ってました!」
 「また会おう諸君!」
 緊張しながら進み出た宝路を完全無視して王様フェニックスは飛び去り、この、身内は全く誉めない辺りは凄くオラディンですが、多分それが積み重なったのが反乱起こされた原因の一つなので、真剣に反省した方が良いと思うのですが。
 今作の短所が剥き出しになった新ロボ後編でしたが、王様復活! というよりは出鱈目な強化アイテムが登場、といった具合で、後々なにか事情があったとされそうな気はしますが、息子・娘・友人・間接的な被害者たちの感情に一切頓着せず、高笑いしながら姿を消すオラディンへの元から低めの好感度がストップ安。
 しかもこの後しばらく、販促の関係で都合良く出入りされるのが想像され、上手く物語に落とし込めればいいのですが……。
 後、優先度が低いのは仕方ないとはいえ、ここまで綺麗にキャラ回→音楽祭を繋げていたのが小夜のところで途切れてしまったのは残念で、でも次回、博多南回はやるんだ……というのは、少々複雑な気持ちに(博多南回そのものは嬉しいのですが)。
 音楽祭は、女帝のいじりにくさのよく見える名場面集で、代わりにアニキが繰り返し投げ飛ばされ……なんか、変だよね。