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狼、疾風のごとく

牙狼GARO>』感想・第9話

◆第9話「試練」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:梶研吾小林雄次雨宮慶太
 注目は、足を潰してダウン状態の鋼牙に当たり判定のある置き波動を重ねてダメージを与えてくる心の中の黄金騎士ガロさん。
 今作ここまでの登場キャラの中で、ドクターホラーの次ぐらいにえぐい。
 魔界騎士ギルドを報告で訪れた鋼牙は、突如として狼像の中に吸い込まれ、「父親の歩んだ道を辿ろうとしている」と告げながら、その内なる魔界に姿を見せたのはなんと、黄金騎士ガロ。
 「私は、おまえの内なる影。そして、おまえの最も恐れる存在」
 金色ボディの至る所に何やら黒い文様の浮かぶガロは、数多くのホラー討伐ミッションを達成してきた鋼牙に、新たな力、ゴウテン召喚の許可を与える。
 「その力が欲しくば、私を倒す事。それが、おまえに課せられた試練だ」
 「…………興味は無い」
 許可なのか試練なのかハッキリして欲しい、と刀を収めて強制クエストを拒否しようとする鋼牙だが、父親の事を持ち出されると形相を険しくして剣で切りつけ、あの鎧姿で上段回し蹴りを決めるガロが格好いい。
 ぶつかりあう両者だが、タイミング悪くホラー出現の連絡で戦闘は水入り。
 「行ってこい」
 あ、話のわかる人だった(笑)
 「まずは、魔界騎士としての使命を果たすのだ。私は、いつでもここでおまえを待っている」
 ただし、ちょっと面倒くさい人だった(笑)
 いつでも待っている宣言を受けつつホラー退治に向かった鋼牙だったが、ざっと身の丈3倍はあろうかという巨大ホラー(正統派ゾンビ系デザインの目が怖い)の纏う装甲にあらゆる剣撃を弾かれ、初の装着解除から、ホラーの逃走を許してしまう。
 「逃げ出してきたのですか?」
 「尻尾を巻いて」
 「情けない」
 鋼牙さんが何かやらかす度に、私脳内で三神官が合唱を始めます!
 「牙狼剣が効かなかった……」
 己の未熟を痛感した鋼牙は、冴島家に代々伝わってきた剣を手に試練へ臨み、対ホラー用とは違う鉄剣の取り回しに戸惑いつつも、内なるガロと激突。
 一方のカオルは、父親が描いた油絵修復の依頼を受け、絵を描く事に心血を注ぐあまりに家族を蔑ろにしていた父へのわだかまりが明らかとなり、少女時代に病死した母など、カオルの過去も徐々に紐解かれていく事に。
 完全に絵が剥離してしまった右手の空白の再現に悩むカオルは両親の事を思い出し、ガロに刃を届かせる事のできない鋼牙は苦闘の中でもがき、鋼牙とカオルが共に自らのルーツと向き合い、己の内面に挑む姿を重ねる構成。
 (見つけた筈だ……親父もきっと)
 「あいつはあいつなりに逃げずに頑張ってるんだね」
 辛い記憶から一度は修復作業を投げ出すカオルだが、ゴンザの言葉に鋼牙の戦いを知ると踏ん張る気持ちを新たにし、“ヒーローが誰かに勇気を与える”構造の『牙狼』的再構成になっているのですが、ヒーローと対象の間を離して間接的に描く事で他のヒーロー作品と差別化したドラマ性を意図した結果、「ゴンザに言われると素直に呑み込む」のは、やや安易な形で劇的さを損ねてしまった印象。
 まあ、鋼牙が基本「口に出さないヒーロー」なので面と向かっても歯車が噛み合いませんし、そんな鋼牙とカオルの間をつなぐゴンザの役割を示し、鋼牙の戦いを見ているカオルの心境の軟化を描くという意味で納得はできるのですが、個人的にはもう少し、ダイレクトに繋げてくれた方が好みではあり。
 これは、カオル方面のドラマが今回配置された要素から定型文通りに進むので、もう一押し、カオルの「個」ならではの展開を見たかった、というのもありますが。
 とはいえ、ガロと戦う鋼牙の斬撃と、父の絵と向き合うカオルの筆の動きを重ねて両者の同調――行為は違ってもそれは同じく、自己との対話である――を描くのは、非バトル型ヒロインの存在感の見せ方として面白かったです。
 (この壁画は、お父さんがお母さんに残した、最後の、そして最高の、愛情表現だったんだ)
 欠けていた右手の真実に至ったカオルは、絵の事しか考えていないと思っていた父親の母――家族への愛情をそこに見出し、無事に絵を完成……させた帰り道、どこかの魔界騎士さんが取り逃がした眼球ホラーとエンカウント。
 「なんで綺麗に終われないのー?!」
 個人的には、絵の修復を依頼してきた園長先生がいつ変態の本性を露わにするのかドキドキしていたのに、最初から最後まで極めて真っ当な人物だったのがガッカリです!
 一方、鉄剣の真実に気付いた鋼牙は、影を恐れず自らの心の内側に踏み込む事でガロに刃を届かせ、一つの殻を破って新たな段階へと踏み出す事に成功する。
 「急げ。おまえの助けを待つ者がいる」
 内面に抱えた闇との相対をバトルを通して描く事で(変身前でも超人的な立ち回りの出来る鋼牙のヒーロー性を活かして、対敵するガロの使い方が秀逸でした)戦士としての奥行きが増した鋼牙が、無言で外へと体を向けて走り出すのが格好良く……無愛想で言葉足らずで女子を平気で投げ捨てるけど、ここぞの場面で鋼牙を“ヒーローとして格好良く見せる”事にてらいがないのが、今作の気持ちの良いところ。
 ここを恥ずかしがられると、個人的には途端に好みから外れてしまうので。
 逃げ惑うカオルに迫る眼球攻撃を鋼牙がヒーロー登場で弾き飛ばし、満を持してのボーカル曲が流れ出すのが大変痺れます!
 「行け!」
 が、歌詞の「ゆけ かぜのごとく」に重なっているのも格好いい。
 鋼牙は鎧を召喚して黄金の騎士となり――
 なにゆえ戦うのか それは剣に聞け
 ……ああ、鋼牙、素で言いそう……。
 ストイックなダークヒーローを意識した歌が流れる中、黄金騎士は切っ先で空間にキングの印を刻み……予告で見ていた気がするのにこの瞬間まで完全に忘却していたのですが、馬、出てきた。
 物陰で戦いを見守るカオルは、黄金の馬にまたがった黄金の剣士の組み合わせに絵本の挿絵を思い出し、なぜ馬??? と思ったのですが、むしろ、騎士だけに馬、という実に正統派でした。
 「相変わらず硬い奴だぜ」
 「承知!」
 そして鋼牙は、馬上でいつになくテンションが上がっていた(笑)
 この流れだとランスになるのもありかと思いましたが、馬上の黄金騎士の握るソウルメタルの剣は主のハイテンションに応えて分厚く巨大化し、魂込めた怒りの刃を叩きつけて強敵ホラーを一刀両断。宿命の剣士は闇に光をもたらすのであった。
 挿入歌が格好良かったので歌詞を確認したところ………………これまで「魔界騎士」と書いていたのがどうやら「魔戒騎士」らしい事が発覚し、どうしたものか脳内協議中なのは、余談です。
 「おまえ、今日はいい顔付きしてるな」
 戦いを終えた鋼牙は、カオルを見つめて顎をくいっと持ち上げ、その王子ムーヴは、天然?! 天然なのっ?! お父さんもそうだったのーーー?!
 から、久方ぶりの気がする帰路エンドで、つづく。
 鋼牙が自らのルーツ、そして影の部分と向き合う事で新たな力を得るのは呑み込みやすく、そこにカオルの過去を絡めて両者を重ね、強化要素の馬から忘れかけていた絵本を引っ張り出した構成は秀逸。
 一方、中盤までの話のテンポが遅く(今作全体にいえる話ですが、もうワンテンポ、ツーテンポ速い方が個人的には好み)、構成は良いが勢いが弱い印象でしたが、クライマックスバトルの格好良さで不満点は帳消しして十分以上にプラスが出て、我ながら、何が見たいのか(勿論、そこに辿り着く道程も重要なのですが)、がハッキリ感じられたエピソード(笑)
 内なるガロの「急げ。おまえの助けを待つ者がいる」以降は、非常にツボにはまる展開でした(挿入歌が、ものの見事に無限リピート中)。
 ところで、創作の世界にままある共時性の一種かと思われますが、同期の『マジレンジャー』にも騎士モチーフのキャラとギミックとしての馬が登場し、特撮ヒーロー作品で同年に馬ギミックが重なる、のはかなり珍しいでしょうか。ちなみに、これも企画タイミング的に無関係と思われますが、2005年というと日本競馬の世界では歴史的名馬ディープインパクトが無敗三冠を達成した年であり、不思議な馬の縁を感じるような感じすぎのような。
 次回――今回お休みだった零、再び。そして、EDクレジットのスクロールがちょっと遅くなった……?