東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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若さ全開 5人の中に君が居る

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第1-2話

◆第1話「頼むぞ!ターボレンジャー -10大戦隊集合-」◆ (演出:東條昭平 構成:鈴木武幸/小村芳弘)
 「覚えているか? 戦士達の熱い魂を。生きているか? 君の、胸の中に。10大戦隊集合! 頼むぞ、ターボレンジャー!」
 田中信夫さんのナレーションに乗せ、新戦隊ターボレンジャー登場と、地球を守ってきた10大戦隊を映像で振り返る特別編。……「第1話」にカウントして良いのかわかりませんが、とりあえず、東映Youtubeでの表記に準じます(東映Youtubeは割と適当な所があるのですが、Wikipedia覗いて変にネタバレしても嫌なので)。
 新たな悪の組織・暴魔百族の登場からスタートし、一団を率いるアンモナイト頭の博士は石橋雅史! 敗れ去った歴代悪の組織の無念を感じ取り、我々が地球の征服を成し遂げてやろう、と息巻く暴魔百族だが、そこに現れる5人の戦士。
 「俺たちの名は、高速戦隊!」
 でカット切り替わると、いきなり5人で直立ピラミッド組んでいるのは、衝撃的な初登場(笑)
 「ターボレンジャー!」
 「この地球、おまえら5人に守り通せると思っておるのか!」
 「それは違うぞ。見ろ!」
 「「「「「「「「おーーーーー!!」」」」」」」」
 沢山、出てきた。
 バトルフィーバーJからライブマンに、ターボレンジャーの5人を加えた総勢53人が特別編時空に大集合し、ここが特別編時空でなければ、開始前に暴魔百族が壊滅するところでした。
 ここから主題歌をバックにナレーションで随時説明されながら各戦隊の本編映像が流れていき、10年分の映像が次々と見られる、大変豪華な特別編。
 ナレーション「ここに、無敵の、巨大ロボと、変身スーツの、五人の戦士。巨大スーパー戦隊が、このバトルフィーバーJなのだ!」
 当時のシリーズ史に基づき『バトルフィーバーJ』が初代戦隊として紹介されるのですが、このナレーション「巨大ロボと変身スーツがセットで巨大スーパー戦隊」が公式の基準だったのか、今回の便宜上の定義付けだったのかは不明。
 1戦隊あたり1分以上の時間があるので、ヒーローのバトルシーンのみならず敵組織からサポートキャラまでフォローされるのが嬉しく、以下、印象に残った点を幾つか。
 ・アイシー怖いよアイシー。
 ・やはり爆発を強調されるダイナマン(笑)
 ・メギド王子からダークナイトに繋いでくれたのが素晴らしい。
 ・何故か出てこない夢野博士。
 ・バイオロボ怖いよバイオロボ
 ・伊吹長官が大暴れし、第1話のヘリコプターからサブマシンガン掃射はまだともかく、どうしてわざわざ第36話から、身内に光線銃をぶっ放すシーンを選びましたか(笑)
 ・「伊吹長官と、電撃戦隊のメンバーと共に、彼らの、燃え上がる情熱は、やがて、大宇宙をも、正義の祈りで震わせる」は沁みるナレーションでした。
 ・ダイジェストで紹介される『マスクマン』の言い訳の効かないヤバさ。光戦隊の闇は深い。
 「今こそ青春を燃やす時が来た! 暴魔百族、この世界は渡しはしない!」
 暴魔百族は俺たちに任せて下さい、と先輩たちに誓ったターボレンジャーがエールを受けて突撃し、EDは抜きで次回、というか初回予告となり、つづく。

◆第2話「君達は妖精を見たか!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 人類を滅ぼし、世界を支配しようとする暴魔百族が長い眠りから復活!
 時同じくして、都立武蔵野学園高校3年A組に在籍する5人は、助けを求める何者かの声を耳にする。
 (あなた達こそ、暴魔百族と戦う戦士なんです)
 自分たちにしか聞こえない声に困惑する5人は、問答無用の妖精パワーにより教室を叩き出されると、人権無視の妖精ワープで荒れ地に放り出され、いち早く復活したイワガミボーマが封印の石を破壊し、上級暴魔たちが大復活する姿を目撃。
 「人間ども、かくも長き間、よくも封印の中に閉じ込めてくれたな。暴魔百族の恨み、思い知れ」
 匂いを嗅ぎ取られた5人は姫暴魔の鞭攻撃を受けるが、そこに飛んできた謎の光(妖精)が変身ブレスを強制的に装着させ、二つ一組で両手首に装備するデザインが、控え目に言って
 手錠
 にしか見えず、歴代でもかなりキてるなこの妖精!
 「なんなんだこれは?!」
 「戦士・ターボーレンジャーの印です」
 「戦士、ターボレンジャー?」
 「さあ、早くスイッチを入れて」
 どさくまぎれに変身させようとする妖精だが装置は作動せず、5人はそこにジープで乗りつけてきた男性に拾われて辛くも逃亡し、今回も爆発が近い!
 「良かった……助かって。探していたんだよ。ずーっとずーっと、君達のような若者を探していたんだ」
 救いの手かと思いきや、こちらも危ない人だった。
 「……いったいあなたは?」
 「太宰と呼んでくれ。一応、博士だけどね、妖精シーロンと一緒に、そのブレスレットを作ったものだ」
 完全に、回し者だった。
 退路を断たれた5人はそのまま太宰邸に連れ込まれ、約2万年前、人間と妖精が暴魔百族と戦った記録の一部(と称するもの)を見せられる。地上の支配を目論む暴魔百族は、人と妖精に多くの犠牲を出しながらもなんとか封印され、それ以来、かつて人と共生していた妖精たちは、封印の守り手となったのだった……だが、
 「人間は空を汚し、海を汚した。その為に、妖精たちは生きていけなくなってしまったんだよ」
 いつしか妖精の存在を忘れてしまった人類文明の発展の結果、自然環境の悪化により姿を減らした妖精は封印を保持できなくなってしまい……科学文明のネガとしての環境破壊がそのまま悪の出現に繋がるという基本設定が、実に1989年。
 「君たちが聞いた声……あれはね、この世に生き残った、たった一人、最後の妖精、シーロンの叫びなんだよ」
 妖精には妖精で切羽詰まった苦しい事情があったのだとフォローが入り、初対面の高校生に向けて無茶苦茶なボールを全力投球してくるのですが、鋭い眼光で力強く言い切る事で謎の説得力を持たせるのが、実に戦隊博士キャラ(笑)
 暴魔博士らは、暴魔城を探し出すべく甲虫っぽい飛行メカを召喚して街を攻撃し、太宰博士に煽られた勢いで外に飛び出していった5人は、第1話らしく景気良く吹き飛んでいく街の爆発に巻き込まれてしまう。
 瓦礫の中に倒れる5人は、妖精の声で目を覚ますと、どういうわけかテトラポットに引っかかっていた妖精シーロンを発見。
 手の平サイズのシーロンは、「会話する時は拡大しています」と衣装と銀髪カツラの子役で表現され、雰囲気はなかなか“らしい”のですが、人間と一緒に画面に映る際は凄く雑な感じのぬいぐるみ状態となり、やや苦しい。
 妖精の存在を信じ、懸命に助ける姿で5人のヒーロー性を補強し、分類するなら宿命でも職業でも選抜でもなく“素養系”とでもいった導入ですが、現代人には聞こえない妖精の声が5人には聞こえた! よりも、妖精を助けた事で戦士として選ばれる、方が劇的だった気はするものの(《ウルトラ》に近い導入といえますが)、新たな一歩を踏み出す11作目の戦隊として、ぐっと平均年齢を下げた史上初の高校生戦隊を明示する為に学園生活を最初に見せる事にこだわった部分はありそうでしょうか。
 結果的に、事情を把握していない未成年を死地に放り込み、死にたくなければ変身しようよボンボン! と契約を持ちかけ、動作不良を起こしたところに助けに来た人はグルだったという、実に戦隊的な狂気と鬼畜ぶりになりました。
 妖精(この後の台詞からも、今作においては、自然そのものの象徴)の美しさに心打たれる5人に、ノクトビジョンめいた妖精グラスを装着した博士が合流し、時村博士(『超新星フラッシュマン』)の親戚だなこの人……!
 恐らく、「妖精は絶対に居るんです!」と主張して学会を追放されたり警察に通報された過去があるに違いありません。
 「シーロン、俺たちはやるぜ」
 この職務質問待った無しの装備を身につけないと私には妖精が見えないし意思疎通できないのだ、と妖精おじさんから高い妖精眼の素質を買われた5人は再び、暴魔百族へと挑んでいく。
 「おまえら、ただの人間じゃないな」
 「そうさ。俺たちはこの世で一番美しいものを見たんだ。そして誓ったんだ!」
 「貴様たちと戦う事をな!」
 初回はレッドに続いて、ブラックが割とスポット多め。
 暴魔関取が現れてホラ貝を吹き鳴らしたのに対し、5人は今度こそブレスを起動し、妖精を心から信じて見る事が出来たからこそ変身できた、という流れなのでしょうが、「妖精を心から信じる」くだりが非常に弱いので、劇的に噛み合い切らなかったのは残念。
 「「「「「ターボレンジャー!!」」」」」
 大地を走る車のイメージカットが挟まってスーツを身につけ(白で抜いたTの意匠がお洒落)、横並びではなく、四分の一回転してカメラに視線を向ける斜め並びの独特のポーズから、やはりインパクトの強い直立ピラミッド。
 主題歌をバックに暴魔幹部達と戦闘を開始するも当然のように苦戦するが、怪人相手にいきなりのコンビネーションアタックを炸裂させ、黒青の上に黄桃が立ち、その真ん中に火の輪くぐりの要領で赤が飛び込んでいくサプライズアタックから、ターボレーザーのエネルギーを集めて落とすプラズマシュートで撃破。
 爆発をバックに、西部劇よろしくクルクル回した銃をホルスターに収めると、またも斜め並びでカメラに向けてVサインを決めるのが独特で、フレッシュ感をあれこれと押し出してきます。
 暴魔博士は戦闘機にターボレンジャーを攻撃させ、妖精おじさんの指示でレッドターボは巨大マシン・ターボGTを召喚。スマートなデザインの巨大スポーツカーが激走、と思いきや、タイヤを畳んで飛翔すると車そのもののデザインで華麗な空中戦を展開して暴魔戦闘機を撃墜。その震動が大地を揺らした時、響き渡った獣の吠え声は聖獣ラキア……? で、つづく。
 初回という事でまだ海のものとも山のものともつかない感じですが、80年代中盤から模索の見えた、戦隊ヒーローにおける「公」と「私」の問題は一旦脇に置かれて、「地球を守る」目的意識が非常に明解なニューヒーローとして誕生。
 明解ゆえに、「ヒーローとして立つ」部分の動機付け――話の組み立て方――が劇的さを欠いたのは初回として残念な部分で、デンジ犬アイシーと伊吹長官が手を組んだ、みたいなノリでシーロンと太宰博士が概ね持っていってしまいましたが、次回、敵味方の陣容が揃いそうで、どんな風に転がっていくのか期待したいと思います。