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嵐の前

超獣戦隊ライブマン』感想・第45話

◆第45話「アシュラ逆転一発勝負」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「やはり君たちこそ真の天才……君たちは私の期待に応え、日増しに才能を伸ばしている。ただし、ただ1人の例外を除いてな」
 湾曲した鏡面に映った姿を更に窓ガラスに映す、みたいな凝った映像表現で登場したビアス様(現在のビアス様の、不安定な状態を示している、といえるのか)は、アシュラに落第を宣告。
 ケンプとマゼンダが900点に到達したのに対し、アシュラは600点にまで後退しており、この点数そのものがある段階からはビアス様が適当に操作している感が溢れていますが、「数字は正直だ」と嘯くビアス様そのものによって、「数字による評価」の空虚さが示されるのが今作の背景にある受験戦争への風刺になりつつ、「350」という数字に縛られて暗転してしまったケンプの運命の悲劇も引き立てます。
 「我が、世界征服作戦には、最も優れた者1人の手助けが必要なのだ。それが千点頭脳。ケンプ、マゼンダ……私の夢をかなえてくれるのは、どっちだ」
 アシュラを切り捨てる事により、ビアスは残り2人の競走を更に加速させ、怒りのアシュラはビアスの口にした千点頭脳を目指し、暖めていた作戦を決行する。
 「こうなったら手段は選ばねぇ。ドクター・アシュラ、奥の手で勝負してやるぜ!」
 それは、ハッカーヅノーの能力を用い、自らの脳を巨大コンピュータに接続し、その力を我が物とする事。
 コンピューターの計算力を得たアシュラは、ハッカーヅノー、そしてサイバー分身に最も効率のいい指示を出し、ライブマンを追い詰めていく。
 「思い知ったかライブマン。俺の頭が更に良くなったので、アシュラ3人衆も頭が良くなったってわけだ」
 「「「わけだ」」」
 のポーズが素敵(笑)
 「とどめはアシュラミサイルだ」
 何をするのかと思ったら、仰角や発射速度を計算して分身に指示を出しながら、自らミサイルの弾頭になって、飛ぶのが、凄くアシュラです。
 「負けずに目指せ千点頭脳を! 一刻も早く見せてくれ。栄光の、千点頭脳を……!」
 その大暴れに慌てるケンプとマゼンダをビアスは煽り立て、肉体の限界(?)によるビアスの焦りが、ボルト陣営を自ら壊滅に突き進めていくのが、実に自然な流れ。
 ここまでの情報から、弟子たちの知らない大教授ビアスの真の目的は「12個目の優れた頭脳――千点頭脳――を入手する事」と明らかになってきましたが(最終目的の為の「手段」の面もあるとはいえますが、少なくとも表向きの「目的」とは別に存在している)、面白いのはビアスの目的の二重構造が、シリーズとして前作・前々作を踏襲しているといえる事。
 前々作『フラッシュマン』・前作『マスクマン』は、ヒーローに「悪の組織の撃破」とは別の目的を与える(『フラッシュマン』の場合は「親探し」、『マスクマン』の場合は「恋人の奪還」……もっとも後者は結局、ほぼ同一化してしまいますが)事で、ヒーローのパーソナルな部分を物語に組み込んでキャラクター性を引き上げようとするも、狙いほど効果を発揮できなかったのですが、今作ではそれを、悪の組織サイドで行っているのが、鮮やかな逆転の発想。
 ボルトの活動目的が「地球の支配」を表看板にしたビアス様による「千点頭脳の入手」と明らかになり、弟子たちの一つ一つの敗北にはそれほど大きく意味が無くなった事で、これまでのビアス様の悠揚とした態度への理由付けを行い、戦隊作劇の宿痾としての悪の組織(首領)の格落ちを回避すると同時に、立て続けの幹部クラスの退場による組織の自壊さえビアスの真の目的の為にはむしろ必要な事である、と説得力を持たせているのが、シリーズの蓄積を反映した見事な構成です。
 「コンピューターがなんだってんだ。戦うのは人間だ!」
 更なる脳の強化を目指すアシュラにライブマンは再び追い詰められるが、臆せず立ち向かっていく黄の姿に活路を見出した赤が、ノーガード戦法で正面突撃。その計算を越えた行動にアシュラは動揺し、カット変わると一気に至近距離で睨み合っている構図が格好いい。
 そしてアシュラのパンチを受け止めた赤は渾身の右ストレートを叩き込み……勇介はホント時々、前作の主人公が乗り移ります(笑)
 「ファルコンが勝ったわ!」
 「……何故だ」
 「コンピューターは、勇気まで計算する事が出来なかったんだ! 哀しいな、アシュラ……おまえはもう、昔のアシュラではない!」
 千点頭脳(については、アシュラの発言から共有)を目指す余り、人間の肉体を疎かにしたと指摘した赤は、同じ筋肉の使徒として、もしかしたらわかり合えたかもしれない男へと剣をかざす。
 「そんなおまえでも倒さねばならぬのが、戦う者のさだめか」
 ……勇介はホント時々、前作の主人公が乗り移ります(笑)
 ファルコンは突撃してきたアシュラを切り払うと、サイバー分身をファルコンブレイクで一掃。アシュラ3人衆は打ち上げ花火のようなエフェクトで消滅し、逃げ出したアシュラはヅノーベスにアクセスして成績を確認するが、600点から全く動いていない事にショックを受ける。
 「そんな馬鹿な……一点も伸びていないなんて」
 もはやアシュラの価値は、ケンプとマゼンダを発奮させる為の踏み台でしかないのが残酷ですが、事態を受け入れられず、ハッカーヅノーに再確認を命じたアシュラは、偶然ヅノールームのコンピュータにアクセスした事で、ビアスの隠す千点頭脳の秘密に触れてしまう。
 苦悶するビアス様は地上へどギガブレインウェーブを送り込み、アシュラが移動アジトとしていたトラックを大爆破。自らハッカーヅノーを操ってライブマンを攻撃するが、ライブマンは終盤にありがちな突然の合体光弾攻撃・スパークアタックでダメージを与えると、バイモーションバスターだ!
 ヤマアラシ的な基本モチーフに加え、腹部にサングラスをかけた人の顔を思わせる意匠が入った、ちょっと面白いデザインだったハッカーヅノーは、スーパービッグバーストでざっくり焼却。
 「アシュラ……コンピュータに頼ったばっかりに……」
 勇介たちは、粉微塵に吹き飛んだアシュラの最期に一抹の寂しさを覚えるが、いや、君らも、頼ってるけどな。
 コンピューターを“道具として使う”事と“人間性を捨てて依存(同化)する”事は違い、「人の健全な肉体と意思があってこその知性」といったニュアンスだったのでしょうが、ここはだいぶ言葉足らずになってしまい、勇気と筋肉がマジックワード的に空回りしてしまいました。
 冒頭、アシュラのコンピュータージャックによるインフラ被害が超高速で描写され、停止したエレベーターの中でハッチを開く丈の姿などが唐突に挿入されていたりもしたので、だいぶ脚本を削ったか編集段階でカットを余儀なくされた事は想像されますが。
 ところが、その場を立ち去ろうとした5人は、傷だらけのアシュラ……いや、毒島嵐を発見。
 「嵐だと……? …………どうなっちまったんだ? ……俺は、俺はもう、ドクターアシュラじゃねぇのか?!」
 久方ぶりの世紀末ファッションに戻った嵐は、自らの姿に驚嘆すると斜面を滑り落ち……そのまま爆発するのかと思ってドキドキしましたが、さすがのビアス様もアシュラに自爆装置は内蔵していなかったようで、朦朧とする意識の中、勇介たちに拾われる。
 「ビアスめぇ……落とし前をつけてやるぜ!」
 咆哮した嵐は気を失い、ここでまさかの、元に戻った毒島嵐を、引いた!
 上述した言葉足らずもあり、如何にも繋ぎ回、という少々物足りない出来でしたが、次回、ラスト・オブ・アラシ! そして、あの男が再々登場?! と期待大。
 ……なんかもう、サブタイトルから、スタッフの岡本美登さん愛が、熱い。