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海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第49話

◆第49話「宇宙最大の宝」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久

 ――悲しみの夜が つづいても 君は負けずに 朝を待て

 34戦隊の“大いなる力”は揃った。
 だが、バスコがラッパで強引に奪い取った五つの力を勝手に使ってしまっていいものなのか……?
 鎧の言葉にそれもそうだと考え込む姿で、スーパー戦隊たちに対する態度の変化が描かれ、悩める海賊たちは気がつくとスーパーもやもや空間へ入り込み、その前に浮かぶ、五つの顔――
 元バルイーグル・飛羽高之(太陽戦隊サンバルカン)、元チェンジグリフォン・疾風翔(電撃戦隊チェンジマン)、元グリーンフラッシュ・ダイ(超新星フラッシュマン)、元ブルーマスク・アキラ(光戦隊マスクマン)、元ファイブイエロー・星川レミ(地球戦隊ファイブマン
 の5人が劇場版と同じ具合で一気に投入され、20年余り経つとだいぶ面変わりされている方も居るのが80年代勢の難しい部分ではありますが、その点では『ライブマン』から登場の西村和彦さんは、当時の雰囲気や面影をばっちり残していたなと改めて。
 また、作品としてそういった「20年も経つと色々あるよね……」を取り込みたくなる誘惑もゼロでは無かったと思うのですが、辛い事も苦しい事もあったかもしれないけれどそれでも彼らは「ヒーロー」で我々の「レジェンド」なんだ、という点を物語の精神として貫き、オファーを受けた役者さんの側もそれを汲んでくれたのは、今作において幸福な科学反応であったと思います。
 「ゴーカイジャー、太陽のように輝いて生きろ。俺たちの分までな」
 5戦隊からを免許皆伝を受け、遂に34の“大いなる力”を揃える海賊たち。
 「これで晴れて、宇宙最大のお宝ゲットだ!」
 6人は通常空間に戻り、マーベラスは鳥の頭をむぎゅっと鷲掴み。
 「鳥、扉になれ」
 雑! 雑だよマベちゃん!
 ナビィに隠された割れ目やスイッチを探して海賊たちがすったもんだしている頃、増援艦隊の到着を待つ帝国旗艦では、地球侵略作戦が完了した暁には軍事法廷送りでただで済まないと思うよ? とインサーンがプレッシャーをかけられていた。
 「インサーン、手柄を上げるなら、今の内だぞ」
 陛下の言い回しが、大変嫌らしくて、素敵。
 ガレオンでは海賊たちが色々と物騒な工具を手にしていたが扉は見つけられず……座り込んだマーベラスが何の気なしに宝箱を開けると、そこから放たれた黄金の光を浴びたナビィ、物理的に扉になる(笑)
 ここで「宝箱を開ける」要素が拾われたのは劇中要素の使い切りとして嬉しかったですが、レンジャーキーをベルトに連動して送り込むなど、この宝箱も大概マジックアイテムで、アカレッドは用意周到すぎてどうも信用できないタイプ。
 鳥の扉に掛かっていた大量の鍵をレンジャーキーを使って開くと、その中には洞穴のような道が延びており、中に入った6人は、台座に置かれた小さな黄金のピラミッドのようなものを発見。
 「宇宙最大の宝、俺たちのもんだ!」
 マーベラスは満面の笑みで黄金ピラミッドを手に取り掲げ、それにより、遺跡で眠りについていた偉大なる大神官ガジャ様が目覚め……じゃなかった、
 【ようこそ地球の中心】
 なんか、喋った。
 【私はこの星の意思。この宝を通じて話しかけている】
 お宝は、地球意思さん(CV:関智一か?)と交信する媒介の役割も有しており、盛り上がる海賊たちに向けて、地球意思はお宝の価値と使い方を説明。
 【その価値を決めるのは、君たち自身だ。これに、34のスーパー戦隊の“大いなる力”を宿せば、全宇宙を好きなように作り直せる】
 それとなくアカレッドの台詞を下敷きにして、なんか、とんでもない事を言い出した。
 「もしかして、ザンギャックの居ない、平和な宇宙なんてのも……ありなんですか?」
 【ありだ】
 なんか、雑な感じでOK出した。
 【この宇宙に、ザンギャックが居なかった事にすればいい】
 「……それって、過去を変えられるって事?!」
 【そうだ】
 地球意思さんの衝撃発言に海賊たちは次々と飛びつき、例えば、ファミーユ星の復興は……?
 【勿論できる】
 ハカセの故郷も取り戻せる?
 【ああ】
 ルカの妹も甦らせて暖かい家で暮らせる?
 【そうだ】
 シド先輩とも再会できる……?
 【うん】
 海賊たちが過去に抱える傷跡が重い一方、地球意思さんの方はなんだか選択肢が「はい」しか実装されていないみたいな感じで不安を誘うのですが、単調にならないようにか返答の台詞を全て変えた結果、妙に軽い雰囲気になってしまった気がします(笑)
 ……まあ今作世界が過去戦隊と繋がっていると考えると、この地球意思さん、突然地面の上に天装術カード出したり、夢に怪電波を送って彫刻を彫らせたり、少年に化けて信者たちを翻弄した上で全ては試練とか宣う連中の元締め(そのもの?)感があるので、そう考えるとむしろ非常に納得できるようなしてしまっていいものなのか……コプーは正義! ドルゲは悪!
 【この宇宙にある全てのものの存在も、出会いも、君たちの思いのままだ】
 その価値、まさに全宇宙。
 “奇跡”の発動装置であった宇宙最大のお宝、“世界の再構築(破壊と再生)”を成す鍵、というのは珍しいアイデアではありませんが、辿り着いたその正体がシリーズ過去作でいうと“アレ”を思い起こさせるのは、日笠プロデューサーへのオマージュという面も多少はありそうでしょうか(穿ちすぎかとは思いますが)。
 「さあ始めましょう。誰もが幸せになるよう、宇宙を造り替えましょう」
 そして、勢いで、ラスボスみたいな事を言い出す姫(笑)
 ガレオンに戻った6人は、地球意思さんのマニュアル通りに三角形に手をかざして意識を集中、それぞれの願いを込めて世界の作り直しに手を染めようとするが、なんかこれ、「ふふふ、私が新世界の神になる」って悪役みたいだよね……と、何かに気付いたハカセが咄嗟に儀式を中断。
 「宇宙を造り替えたら、これはどうなっちゃうのかな?」
 元バルイーグルの「太陽のように輝いて生きろ。俺たちの分までな」という言葉が引っかかっていたハカセは、レンジャーキー、そしてそこに込められていた“大いなる力”の行方を気に懸け、それに答える地球意思さん。
 【宇宙を作り直すために、34のスーパー戦隊の“大いなる力”を使う。その結果、彼らの力も、存在そのものも全て消える】
 それが、世界を造り替える“奇跡”の代償。
 【34のスーパー戦隊が居たという事実が無くなり、歴史から消える。それだけの事だ】
 地球意思さんは平坦に告げ、遂に掴んだ夢と、思いも寄らなかった救いの一歩前で、選択を迫られる海賊たち。
 大きすぎる“奇跡”が相応の“代償”を必要とするのが摂理としてしっくり来ると同時に、前回マーベラスがバスコに対して言い放った
「俺たちゴーカイジャーの夢を邪魔するもんは――誰であろうとぶっ潰す!」に対して、ではそれが、誰かの「未来」を閉ざすものであった時、本当に何もかもぶっ潰せるのか?をすかさず突きつけてくるのが、“宇宙最大のお宝”の置き場所――彼らはあくまで“海賊”なのか、それとも“スーパ戦隊”なのか? の分岐点――として、絶妙。
 それぞれの失ったものを取り戻し、宇宙全体の平和を得る事と、34のスーパー戦隊の存在そのものを天秤の上に乗せ、それは果たして許される行為なのかを考え込む海賊たちだが、突如轟音がガレオンを揺るがし、巨大ロボット・グレートインサーンがその姿を現す!
 ……ボディデザインが巨大なインサーンの顔なのは、帝国の最先端トレンドなのでしょうか(笑)
 虫などがその模様を巨大な目などに見せる擬態のニュアンスだと考えると、実態以上に自分を大きく見せようとする虚栄心の象徴、とも取れますが。
 「おまえ達の首を手土産に、私は出世コースに返り咲くのよ! 私が開発した武器で、全宇宙の征服を成し遂げる。そして私は、全宇宙で最も偉大な科学者になる。その夢をかなえるまで死ねるものか!」
 切羽詰まって自ら巨大ロボを操るインサーンが、自分本位で他者を虐げる夢を嬉々として語るのが、夢=無条件で肯定されるものではない事を示し、手堅い対比。
 「ご覧下さい皇帝陛下。これが私の技術で開発したグレートインサーンです。素晴らしいでしょ? おーっほほほほほほほほ!」
 ゴーカイオーとドリル神をGインサーンバーストで吹き飛ばしたインサーンは、天を見上げて高笑いし……冗談で書いたら、本当にそういう名前だった(笑)
 増援のスゴーミンはドリル神が相手をし、風来丸を召喚するもGインサーンバリアに千本ノックを跳ね返されたゴーカイオーは、チェンジマンの“大いなる力”を発動。ゴーカイスターバーストがここにきて妙に格好いいエフェクトで強化されたゴーカイパワーバズーカと化してバリアを正面から粉砕し……こ、これはもしかして、原典のハードウォールネタ?!
 アースフォースを信じるんだ!!
 更に、マスクマンの“大いなる力”によりメカ観音を背負ってゴーカイオーラギャラクシーでGインサーンの両腕を破壊し、オーラパワーを信じるんだ!!
 トドメはサムライ斬りでGインサーンを一刀両断し、離脱したインサーンを追うゴーカイジャーは、今回“大いなる力”を授けてくれた5人のヒーローに、原典になぞらえた変身シーンでゴーカイチェンジ。
 助っ人親衛隊×4&インサーンに、主題歌インストと必殺攻撃で個別戦闘を見せ、突然やると改めて奇抜なオーラチェンジ(両手を広げて飛翔)ですが、ブルーマスクの中国武術二刀流とジョーの組み合わせは絶妙な嵌まり方。
 イーグルの必殺剣がインサーンを両断し、弱ったところをまとめてライジングストライク。……もともと、悪辣な作戦を展開していたところに衝突したわけではなく(物語の積み重ねとしてはそうなりますが)、軍内部で追い詰められた末の特攻に近かったので、少々、オーバーキル風味に(笑)
 宇都宮P作品としてはこの後、『ジュウオウジャー』のナリア、『ルパパト』のゴーシュに引き継がれていく、巨大化担当悪女の系譜のはしりとなりますが、井上喜久子さんの好演もあって印象深い悪役となりました。鞭アクションは大変格好良かったです。
 「う、嘘よ……この私がこんなところで……いや……アクドス・ギル様ーーー!」
 救いを乞うように天に向かって跪きながらインサーンは爆散し、その最期にほくそ笑むダイランドー。
 「グッバーイ、インサーンちゃーん。ふへへへ、時間稼ぎ、ご苦労チョイ!」
 「もう、海賊どもに何もさせぬ」
 皇帝が重々しく口にした直後、合流した海賊戦隊に頭上からの艦砲射撃が降り注ぎ、ザンギャックの大艦隊が、文字通りに空を埋め尽くすのは、帝国の脅威をこれ以上なく示す迫力の物量。
 「レジェンド大戦の時と同じ……いや、あの時の何倍も居ます!」
 「冗談でしょ?!」
 ……某映画のせいで、あ、これ、戦艦破壊大好きお姉さんが出てくるところだ……と思いましたが、ここはユニバースが違うので、飛んでこないのであった!
 「海賊どもよ。よくぞここまで持ちこたえた。だがこれで終わりだ。貴様等も、この地球の人間どもも、皆殺しにしてやる」
 皇帝の言葉と共に砲撃が嵐のように降り注ぎ、宇宙最大のお宝の使い方で悩んでいる場合じゃない! で、つづく。
 宇宙最大の宝に関しては、代償が示された時点で、ここまで来た彼らなら使わないだろう……と思わせたところから、ではこのままだと、「地球も海賊も壊滅必至」ならどうする? と物語の始まりともいえるザンギャックの脅威(レジェンド大戦)の再来により天秤の片方の重みを上乗せしてくる事で、改めて葛藤と選択に意味を持たせるのが、実に巧み。
 それはそのまま、もう一つの更に乗せるもの――重さを跳ね返す答――に要求される重みが上がる事を示すわけですが、果たして、マーベラスたちはどんな答を見出すのか、いよいよ物語はクライマックス!