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この星の明日の為にスクランブル

忍風戦隊ハリケンジャー』感想・第47-48話

◆巻之四十七「封印と宇宙統一」◆ (監督:諸田敏 脚本:吉田伸)
 冒頭から巨大カラスが大暴れし、苦戦一方の地球ニンジャーは天雷旋風神を繰り出すが、アルティメット扇風機を弾き返され、史上に残るレベルであっさりと完敗。
 「皆の者。今こそ、宇宙統一忍者流を、極める時だ」
 500年間、暖め続けてきたドリーム流派の話を持ち出す御前様だが、その為に必要な(設定の)疾風と迅雷の極意について、若き忍者たちの解答は頓珍漢。
 (何かもかも、変わった。変わってしまった……)
 怒りのあまり家出した御前様が移ろいゆく時の流れを見つめた末、やがて樹齢500年の樹に背中を預ける……というのは、図らずも長命を得た者の心情が滲み出て良いシーンでした。
 若者の軽いノリで御前様を怒らせるも、樹齢500年の樹を思いついた鷹介に連れられてその場を訪れた鷹介たちは、その地が御前様の生まれ故郷であり、樹齢500年の樹は長き時間を生きる御前様にとってまさに友であった事を知らされる(なお、回想シーンの御前様の父役は岡本美登さん)。
 悲しみに触れれば嘆きのメダルの封印が解けてしまう……それ故、心を殺し下々の者と心通わす事なく過ごしてきた御前様だが、メダルを狙うカラスが姿を見せ、御前様を守る為にハリライジャーは出撃。その間に御前様を直接狙うサメだが、天空忍者がスカッと参上!
 「御前様は、ミーが守る!」
 「フン、邪魔だ!」
 サメビームを受けて地面を転がり、10秒、保たず。
 ……うんなんか、可哀想な奴としてはちょっと面白くなってきたな……。
 役に立たない下僕はさておき、メダルの力を引き出した御前様は、御前ビームでサメを一蹴。だが二大ロボはカラス相手に大苦戦を強いられており、爆発の炎がスギの大樹に燃え移ってしまう(ヒーローの危機から御前様のウィークポイントへと繋げる)のは、鮮やかな展開でした。
 「あの樹が……」
 心の乱れからメダルパワーの制御を失った御前様はサメに追い詰められるが、すんでのところで割って入った緑がサメに切りつけ、奇跡の逆転ホームラン。
 そして死闘のさなか、ハリライジャーを支えるものに気付く御前様。
 「無限……それこそ未来。――疾風の心。絆……それは過去。――それこそ迅雷の心」
 それこそが疾風迅雷の極意であり、5人が既にそこに至っていた事を知った御前様は、緑と共に天空神に乗り込むと、再び三神合体。
 「過去と未来。二つの心、合わさる今。時空を超えて、この星を守る力が動き出す……宇宙統一忍者流、ここに極まる」
 「今、俺たちの力が!」
 「「「「「「「一つになる!!」」」」」」
 「宇宙統一忍者流奥義」
 「「「「「「アルティマストームマキシマム!!」」」」」」
 黄金の光を纏った天雷旋風神は、これまでを大幅に上回るエネルギーを放つ宇宙統一奥義によりカラスを粉砕し……強化の流れといい、イベントの見せ方といい、必殺技の発動描写といい、やけに《スーパーロボット大戦》風味(笑)
 若き忍者たちと御前様はお互いに理解を示して歩み寄り、亡き父の墓に手を合わせる御前様だが、封印の秘密を知ったサメが不敵に笑って、つづく。
 500年を生きる大樹と御前様を重ねたのは、映像的にわかりやすく、ドラマ性とも繋がって物語への良い落とし込みでした。

◆巻之四十八「罠と永遠の命」◆ (監督:諸田敏 脚本:吉田伸)
 「宇宙統一忍者流に、敵はない!」
 兄者、けっこうノリノリ。
 嘆きのメダルを守り抜き、アレ復活を阻止するのだ、と意気上がる地球ニンジャー。お引っ越し以来、忍風館のソファに座っている御前様が微妙に間抜けなのですが、後の『シンケンジャー』における座布団(+お座敷)は、見事なアイデアだったなと(笑)
 「地上に平和が戻れば、またどこかに身を隠し、この世を見守り続けるだけ。永遠の命と共に」
 そんな御前様を、命ある限りいつまでも守ると宣言する忍者たち、だが……
 「ならぬ」
 「「「え???」」」
 「私はそのような事を望まぬ。おまえ達は、自分の道を進むのだ」
 画面手前側で若者達に背を向けながら微笑みを浮かべる御前様だが、表情を引き締めると永遠の道行きを拒否し、頑なに距離を取りながら立ち去るとその背で扉が閉まる流れが、好演出。
 演出・脚本・演技の全てにおいて、レギュラーキャラとの間合いを計りかねていた感がある御前様ですが、物語の方向性と、それにともなう演技プランがハッキリしてきたようで、前回今回でぐっと表情が魅力を増しました。
 一方、サメの召喚した猫忍者がカラスの羽により地球ニンジャーの分身を作り出し、6人のシノビが街を炎に包む大混乱が発生。
 「儂の教育が悪かったのか……」
 ニュースを見て落ち込むハムスター、後の某猫に負けず劣らずの節穴路線。
 「あー良かった~、偽物やったんや~」
 「当たり前じゃ。儂は、儂は信じとったぞ」
 本物が街に駆け付けて偽物と判明すると手の平を返す姿が最終盤としては親子揃って余りにひどく、ここはギャグにせずに信頼を描いた方が良かったような。
 名乗りまで行う偽地球ニンジャーと戦う真地球ニンジャーだが、サメの作り出した結界に閉じ込められて大ピンチ。御前様がメダルパワーで結界を破壊した事により見事に偽物を撃破したのも束の間、偽物の素体になっていたカラスの羽が猫の忍術によって首輪に変じると6人の首に巻き付き、猫に操られるがままに御前様へと刃を向けてしまう……!
 守り刀で6人の攻撃を防いだ御前様は、メダルパワーで次々と吹き飛ばしていくが6人を傷付ける事に動揺を隠せず、この局面で、変身解除による“傷ついた”表現の不可能なシュリケンジャー……最後まで使い方の難しい奴……。
 「悲しみ、嘆き、人間とは脆いものよ」
 6人の痛々しい姿にサメの精神的揺さぶりを重ねられ、メダルの制御力を失う御前様だが、けしかけられた猫忍者の首輪を破壊する事で、6人にかけられた忍術を解除。怒りの鷹介たちはシノビチェンジし、可哀想な緑は江戸っ子モードを発動し……ああ成る程、緑のこれは、劇的な場面における「チェンジ」の代替え機能があったのか、と初めて納得。
 ビクトリーガジェットの横で三味線ガンを構え、必殺技にも参加しましたが……
 「宇宙統一忍者流の、名の下に!」
 はどうも、劇中の熱量についていけません。
 “流派を越えて、心を一つに”まではわかるとして、“疾風流も迅雷流もなく、宇宙統一忍者流こそが、地球忍術の到達点”と言われると首を捻るというか、それはあくまで「御前様の意志」であって、「鷹介たちが主体的に目指したもの」ではないので、目的としても手段としても間違ってはいないのですが、物語としては、鷹介たちに自発的に辿り着いてほしかった場所かな、と。
 その都合で、迅雷流への一鍬のこだわりとか、完全にベッドの下に捨てられてしまいましたし……。
 「見たか! 俺たちの力を!」
 宇宙統一ビームに猫忍者は爆散するが、一瞬の気の緩みを突いたサメが御前様を強襲。怒りのメダルの力により、体内から強引に嘆きのメダルを取りだし、二つのメダルが合体してしまう!
 髪のほどけた御前様が倒れ、忍者たちの無言の絶叫が響き渡るのは、重く劇的な演出で、下卑た高笑いをあげながら、サメは撤収。
 「これで遂に、アレが生まれる。ふふふははははは、ふふははははは……!!」
 ムカデ様も高笑いを響かせ、倒れた御前様に駆け寄る地球ニンジャー。
 「鷹介、みんな、頼む……ジャカンジャから、この星を守るのだ。…………おまえ達に、出会えて……本当に……良かっ」
 御前様は消滅し、鷹介の絶叫が響き渡り、つづく。
 登場時点から、悲劇的な運命の行く末は想定された御前様、単勝1.5倍の結末に辿り着きましたが、前回今回でマジックアイテムを脱し、キャラクターとして物語の中に降りてくる事に成功したのは、吉田さんの巧い部分が出た所だったかな、と。
 次回――土壇場のスポット回で、奇跡のV字回復なるかシュリケンジャー?!