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決めるのは いつでも 君自身だ

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第43-44話

◆第43話「伝説の勇者に」◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久

 ――君が超えたいものは何? 大空 逆風 昨日の自分

 「ただ地獄に落とすのではつまらん。地球で、公開処刑にせよ」
 ダマラスに完敗し、陛下の前に引っ立てられたマベは処刑宣告を受け、その命は風前の灯火……ガレオンではハカセがソファで体育座りし、鳥に対して、雑誌の記事は自分が作った悪戯だったと白状。
 「みんなに、嘘ついたままになっちゃった……」
 突然の別れの後にこの認識が襲ってくるのが身から出た錆として大変辛く、取り返しのつかないやるせなさと、そこからの逆転に向けたバネのたわみとして、これを挟み込んでくるのが、実に巧い。
 「伝説の勇者でもなんでもない。……僕はただの嘘つきだ」
 沈み込むハカセは、可愛い女の子にひょいひょいついていったら強面の男二人に密室で契約を強要され、月1万ザギンの50回払いでモバイレーツとレンジャーキーを押しつけられた日の事を思い出す……。
 「え?! 僕も戦うの?!」
 「ったりめぇだろ。海賊なんだから」
 「でも……僕……」
 「心配すんな。出来ない事はしなくていい。出来る事だけやってくれ」
 前回のダマラス戦でも緑をかばっていましたが、戦闘力では一歩劣る緑を非難する事なくあるがままに受け入れているのは一貫した部分で、マベちゃんらしい仲間に対する責任感の見えるところ(グレート殿下編では、これが行きすぎて「捨て身で守る」になってしまったわけですが)……まあ、「出来る事」の基準が緩くなりがちなのも、マベちゃんらしさ(笑)
 一方、ダマラスは古式に則り十字架に磔にしたマーベラスを地球人に見せつけ、処刑の執行を宣言。
 「これでもう地球征服を止められるものは一人もいない。地球人ども。絶望し、ザンギャックに服従せよ」
 忌々しい海賊を殺すと共に地球人への示威行為になる一石二鳥の公開処刑で、そこに顔を見せるバスコ。
 「貴様の役目は終わった筈だ。何をしにきた」
 「一応、むかーしからの友達だからさぁ。最期ぐらいは見届けてやろうと思ってねぇ」
 身動きできないマーベラスに嫌がらせで追い打ちをかけるバスコは、サンバルカンファイブマンの“大いなる力”を回収した事を、マーベラスに見せつける。
 「マベちゃんが死んだら、残りもぜーんぶ俺のもん。楽しみだなぁ今から!」
 そしてガレオンでは、マーベラスの処刑を知っても何も出来ずに居るハカセに、鳥、渾身の平手打ち!
 海賊戦隊の真ヒロインに活を入れられたハカセは、脅えて岩場に隠ていたところをゴーミンに囲まれるも黄に助けられた、初めての戦いの記憶を思い出す……。
 「あ、ありがとう。……でも……ごめんね。女の子に、助けてもらったりして」
 「なに言ってんの。海賊はね、出来るやつが出来ることを全力でやって、補い合えばいいの」
 さらりと「女の子が戦っても別におかしくない」事を大前提にした上で、「出来るやつが出来ない奴を助けて」ではないのが、ポジティブで絶妙な言い回し。また、海賊戦隊のメインテーゼである「やりたい事をやるだけ」とかかっているのも、巧い。
 「出来ることを……やる」
 緑は黄の拳銃を手に取ると、ドラム缶を転がして二丁拳銃で連射し、海賊たちの武器交換スタイルが人数の増加の中で自然に生まれていった事を描きつつ、ハカセが戦いの一歩を踏み出したのは、あ、ちょっとルカに、いいとこ見せたかったのね、と(笑)
 「やったぁ……倒せた! こんなのもあり?」
 「ありあり。やればできるじゃん」
 「いいぞハカセ
 「二丁拳銃。やるじゃないか」
 ジョーに戦闘スタイルを認められるのは、海賊戦隊の通過儀礼です。
 「僕、すごく嬉しくなっちゃってさ……」
 “はじめての爆殺”で目覚めてしまったハカセは、最初は強引に巻き込まれた海賊の一員として、皆と一緒にずっと旅を続けたい、と思うようになるが……
 「でも……僕一人じゃ、何も出来そうにないや……」
 すっかり広くなってしまったた船内を見回し、落ち込むハカセの胸に蘇る、マーベラスの言葉。
 ――「出来ない事はしなくていい。出来る事だけやってくれ」
 「僕に、出来ること……」
 拳を握るハカセは、前を向き、顔を上げる。
 「――僕やるよ。みんなについちゃった嘘、真実に変えてみせる。この僕たちの旅は、絶対に終わらせない!」
 アバンとOP込みでAパート約9分と短めの配分で、ここから怒濤のBパート。
 「よし、始めろ」
 「おい、忘れてねぇか。俺の仲間にはまだ、一人すげぇ奴が残ってる」
 「まさかあの軟弱な金髪の事か? ふふ、ふ、はははは! 笑いしか起きぬわ」
 処刑執行を宣言されながらも、ギリギリまで仲間を信じるマーベラスと、力なきものを蔑むダマラスの姿が決定的な差として描かれ、宇宙帝国ザンギャックの一つの象徴として、ダマラスの“悪”を補強。ダマラスはどうしても、視聴者目線で貧乏くじを引かされた渋くて有能な武人イメージが強くなってしまっていたので、ここでしっかり、倒すべき“悪”としての性質を見せたのは良い目配りでした。
 そしていよいよ処刑寸前、槍を構えたドゴーミンに銃弾が突き刺さり、刑場の真っ正面からドラマチックなBGMと共に超格好良く登場したのは、緑のコートを翻したハカセ……!
 そして、歌い出した……!!


ふぁいやーー ふぁいやーー
あーかーい まじあかいー まほうのほのおー
あーつーい まじあついー おをひいてー

 「ハカセ……!」
 「これはまた予想外な」
 「……格好つけやがって」
 勇者はフェニックス……!!(※本当は、「海賊(つわもの)たち~宇宙海賊のテーマ~」という挿入歌です。今回の日記タイトルはその歌詞から)
 「ゴーカイジャーが6人居るって事を忘れたのか、ダマラス。僕こそ伝説の勇者、ドン・ドッゴイヤーだ」
 剣を構えたハカセフェイクニュースの写真そのままのポーズを決め、こっそり自室で練習を繰り返していました!
 「せっかく見逃してやったものを。貴様ごときに何が出来る」
 「出来る事が出来るんだ!」
 今回のキーワードを拾った上で、そこはかとなく謙虚な啖呵がハカセらしい案配として絶妙に決まり、人は愛と勇気というナイフを持った戦士だから戦わずに生きてゆけないのです。
 挿入歌をバックにゴーミン軍団と真っ向から切り結ぶハカセは、ギンガ緑とマジ緑にゴーカイチェンジし、風の戦士はピンと来なかったものの、マジ緑は今作序盤から紐付けられていたハカセのテーゼである「勇気」から納得のチョイス。
 まさかの正面突破を図る緑に、信じていたマーベラスでさえ困惑するが、蟻の一噛みに苛立つダマラスが自ら躍り出てマーベラスから離れた隙を突いて、十字架に近付いた鳥が拘束を解こうと鎖をつつき、それを敢えて見逃すバスコ。
 ハカセずんばらりん寸前、解放されたマーベラスがダマラスの前に降り立ち、鳥の活躍は嬉しいところ。
 「ゴーカイジャーには七人目の戦士も居るんだよ!」
 「そーいうこと! じゃあね、ばいばーい!」
 そして、すぐに帰る(笑)
 「ま、奴を油断させるにはいい作戦だったぜ。で、次は?」
 「無い!」
 マーベラスの向こうを張って腕組みしたハカセ、力強く、断言(笑)
 「……はぁ?!」
 「僕は出来ることをやった。次は、マーベラスの番だ」
 「……こうなったら、行けるところまで派手に行くか!」
 格好良く身構えるも劣勢は歴然の二人だが、その時、別の方向から飛んできた銃弾がゴーミンの集団に突き刺さる!
 「俺たちも混ぜてもらっていいか」
 ジョー達4人が無事な姿を見せ、バスコの必殺剣を食らった際、爆炎をカモフラージュに猿によって身柄が回収されていた事が種明かしされ、猿……凄いぞ、猿……。
 そして動揺するダマラスの不意を突いた完全バスコが、その背に深々と剣を突き立てる。
 「言ったろ。そいつらを生かしとくには、事情があるって。宇宙最大のお宝を手に入れるには、そいつらの力が必要なんだよ」
 自らの力を恃むあまり、どう考えても信用できないバスコを手駒にできると慢心したダマラスが足下をすくわれ、ダマラスの敗因の一つを作りつつ、前回下げた奸物バスコの株を再び引き上げているのが実に巧妙。
 「強力な悪役が主人公達にトドメを刺さずに見逃す理由」も物語に取り込んで穴を埋め、マーベラスに見つけてほしい“大いなる力”がある、と告げたバスコは、前回拾っておいた電話とキーをマベに返却して撤収。
 「許さんぞ……! この私をここまでコケにしおってぇ……!」
 怒れるダマラスに対し、復活した海賊戦隊は、6人揃ってゴーカイチェンジ。主題歌をバックに、一人一人が爆発を背負ってのフル名乗りで、緑のポーズがちょっと力強くバージョンアップしてくるのが、実に気が利いています。
 「海賊戦隊!」
 「「「「「「ゴーカイジャー!!」」」」」」
 「どーんと行こうぜ!」
 雑魚さん達を蹴散らしたゴーカイジャーは、親衛隊を相手にオールグリーンを発動し、シュリケンジャーのフェイスチェンジを回収。
 ダマラスの圧倒的なパワーを前に青黄桃銀が吹き飛ばされるが、残った赤緑が武器交換からアクロバットなコンビネーションを叩き込み、最後は緑が二丁拳銃で放った弾丸を赤が二刀流で叩きつける合体ファイナルウェーブを直撃させる。
 「馬鹿な……この私が押されているだと?!」
 事前に完全バスコが深傷を与えてていたのが戦力バランスとして納得のいく布石となり、ひるむダマラスにガレオンバスターが直撃するが、宇宙最強の男はそれでも耐えてみせる。
 「この私を、舐めるなぁ……!!」
 ……こんな時、昔のヒーローは言いました。
 「よし、もう一度だ!」
 追撃の緑バスターが今度こそ土手っ腹を貫き、大地に倒れ伏したダマラスは、無念の大爆発。
 「ダマラス様……ご武運を」
 インサーンはなんだかんだ最後までダマラスに敬意を払い、遂に巨大化。
 「これが最後の命。必ず貴様等を倒す」
 巨大ダマラスは隠し武器のガトリング砲を使って二大ロボを追い詰めるが、勇気は不思議なフェニックス、傷つく度に強くなる!
 「大丈夫……宇宙で一番強くても、あいつには仲間が居ない。だから、僕たちが負ける筈がない! ね?」
 「そうだな」
 圧倒的な個の強さを振るう代わりに、それぞれの出来ることを束ねられなかったダマラスの喉元に海賊戦隊の刃が迫り、マジドラゴンがガトリングを破壊。そして、パトカー、ライオン、風雷丸、マッハルコンが立て続けに繰り出され、銀がちょっぴり蚊帳の外になりましたが、5人がこれまでに集めた力を1つずつ召喚するのが、非常に綺麗にはまりました。
 「どうだ! 仲間の力を集めれば、10倍にも、100倍にもなる!」
 この星で、様々な出会いを経て誕生した敢然ゴーカイオーは、ダマラスのパンチをものともせずに弾き返すと、海賊フルバースト。
 「馬鹿な……私は信じぬ……! 海賊ごときに、この私がぁ……!」
 その直撃を受けたダマラスは、最後まで強者のプライドにこわりながら、地球に散るのであった……。
 宇宙最強の男vs海賊最弱の勇者、という組み合わせから、海賊達のモットーである「やりたい事をやる」は、「強い者が好き勝手にやる」事ではなく、「出来るやつが出来ることを全力でやって、それぞれが補い合う」事である、と改めて仲間の意味を描き、海賊戦隊とダマラスの対比が綺麗に決まって、見事な着地点でした。
 バスコの暗躍もあり、その結束で死闘を乗り越えた海賊たち、次々とおかわりを要求される勇者ドンさん、でつづく。

◆第44話「素敵な聖夜」◆ (監督:坂本太郎 脚本:香村純子)

 ――「諦めちゃ駄目。クリスマスは、一年中でいっちばんキラキラした日じゃなくちゃいけないんだから」

 「宇宙海賊か……確かに侮りすぎていたかもしれん。地球征服に向け、本格的に軍を立て直す必要があるな」
 ダマラスの敗死を受け、皇帝が地球征服に本腰を入れる一方、ガレオンでは鳥にも賞金がついたと大喜び。バスコとサリーの手配書も確認され、緊迫する海賊達だが、その空気を踏みつぶし、鎧がクリスマスツリーを手に凄いテンションでやってくる。
 スキップする鎧に突き飛ばされたジョーが、抜き身の剣を肩にかついで凄く怖いのですが……
 「「「「「クリスマス?」」」」」
 地球の行事を知らない海賊にクリスマスのハッピーさを主張する鎧だが、サンタからプレゼントを貰えなかったルカはおかんむり。そこに、岩田光央声の毒々しい魔法少女行動隊長が現れ、次々と人間を人形に変えてしまうドルルンパ。
 子供をかばった鎧が人形にされ、一当たりした海賊戦隊は「リタルンパ」の呪文で人形を元に戻せる事を知るが、ダイランドーの巨大ハンマーに行く手を阻まれ、ノリの軽いダイランドーが、幹部クラスらしい実力を披露。
 「大丈夫。まだクリスマスは終わってないよ」
 知り合った少女をなぐさめ、人形作成を頼むルカだが、偽装人形作戦に失敗して、ドルルンパ。だがそれも作戦の内であり、油断した怪人に少女の変身したゴーカイイエローが背後から襲いかかって魔法のステッキを奪い取り、リタルンバ。
 「相変わらず、ルカさんは無茶苦茶しますね」
 「……あんたが言ったんでしょ。クリスマスはハッピーな日にしなくちゃね」
 鎧とルカをはじめ被害者たちは全て元に戻り、掟破りの一般人変身でしたが、年が明けて最終章突入を前に、第2話で用いられたアイデアを意図的に取り込んだ感。またそれによって、心意気に応えて変身セットを貸して戦わせる事は同じながら、海賊戦隊が地球人により踏み込むようになった距離感の変化が鮮明にもなりました。
 ゴーカイジャーは、オールイエローからバトルフィーバーJに変身して、ダンスでバトル。あぶれた銀は、赤と緑のキーを借りるとジングルベルの自己暗示により妄想世界の扉を開き、赤と緑のキーを、合・体。
 「年に一度の聖なる変身! 赤と、緑の、ゴーーーカイクリスマス!」
 「おまえは何でもありだな……」
 久方ぶりの妄想変身を炸裂させた直後、
 「あははーは! あ、はははは! あっはっははーは!」
 高笑いしながら敵を切り刻むのが、凄く、怖いです。
 ゴーカイクリスマスの無法地帯から、ペンタフォースとクリスマスフラッシュが同時炸裂して、魔法少女隊長は大爆死。
 「まったく、好き放題して……」
 かつての自分を棚に上げたインサーンが超嫌そうに巨大化した魔法少女は、クリスマスSPという事で今回も次々と繰り出される“大いなる力”に切り刻まれ、ほぼギャグ怪人だったのに、ダマラスと同じ技で倒されました(笑)
 戦い終わり、海賊達がツリーを見上げるシーンではジョーマベが並んで一緒にポーズを決め、激化の止まらぬ派閥争い。
 ルカがマジマザーにチェンジして、リアル雪を降らすホワイトクリスマスの大サービスで、子供達は大喜び。
 「今日のルカさん、さいこーですーー!」
 それを見ていた、パンダを連れたサンタさん(演:大葉健二)からバトルフィーバーJの“大いなる力”が与えられ、まさかの帳尻合わせから次回、ニンジャを接待……?!
 前回のカロリー消費が大きかったので、ざっくりした感想にしましたが、大きな山を越えて、年末進行の小品といった内容。メイン回でやや不遇なルカのいいところが取り上げられ……と思ったら、ゴーカイクリスマスに全て持っていかれ、終わってみれば海賊戦隊名物・好き放題シリーズ、完結編……?